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39. 青い鳥
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「ところで、ブルーバード国に名前を変えたのはどうしてですか? 青い鳥に何か関係があるのでしょうか?」
「連れ去られた聖獣を忘れない為に国名を変えたんだ」
「聖域が襲われたその時、聖獣がそこにいたのです。普通、聖獣は聖女の側に控えて……その、聖獣というのは従来、聖女に懐いて離れないものなんですが、当時の聖獣は聖女以外の乙女に懐いていまして……」
「その上、聖獣は王宮の中を割と自由にウロウロしていたそうだ。人に驚かれない為か、小さな恰好になって」
「本来、聖獣は人を乗せられるほど大きな青い鳥が本体なんです。ですが、あまり大きいと王宮や屋敷の中に入れませんし、鳥の姿ですと人と触れ合う事が出来ないと考えたのかもしれませんが、違う動物の姿を取る事がしばしばありまして、その当時は青い子犬の姿をとっていたんです。そして、姿を変えるとその動物の習性に性格を合わせてしまわれることがありまして、」
「当時の聖女が連れ出した聖獣というのが、青い子犬だったのですが……子犬になっていたせいか半分切り取られた聖石に嚙みついてそのまま、連れて行かれてしまったんです」
「当時、聖地で石にされた神官が見ていたそうですが、「聖獣は切り取られた聖石に噛みついて離さなかったので、そのまま連れて行かれたのだろう」と言っていたそうです」
「せめて、聖獣さえ残っていれば、と思っていたのですが」
「聖獣に寿命はあるのですか?」
「いえ、ずっと昔から存在していたそうです」
「でも、聖獣が聖石を咥えていたんだったら、聖石は取り出せないよね。聖石って必要なの?」
「聖石を中心に置いて国の建国を宣言します」
「当時の前聖女の話だと、聖獣もろとも聖石を建国の要にしたのではないかと」
「えっ、と、つまり……」
「人柱ならぬ聖獣柱にされたのではないか、という事だな」
「その、抗議はしなかった? 例えば、というか、そんなことしたら戦争、いや、魔術師相手だから一人だから、そんな強引なことして国として認められるのか?」
「聖女が、自分から魔術師に協力したので嫌でも、認めざるを得なかった」
それはつまり、青い犬の聖獣を犠牲にしてこの国を建国したって事? でも、本体は青い鳥、聖獣がそんなに簡単に魔術師に負ける?
「魔術師が寿命で居なくなれば、国はよりどころを失くすのではない? 魔術師さえいなければ何とかなりそうな気がするけど」
「アイツは希代の魔術師だったんだ。むしろ、寿命のある魔王かもしれない。奴はこの国が存続するための方策を残していった。何をしたのかは分からないが、その聖女の次の聖女はもうわが国には生まれなくなった。聖女はこの世界に必ず必要だ。しかし、次の聖女はこの国に生まれたらしい。そして、いつの間にか聖女は召喚することとなり、その聖女は2、3年で消えてしまう。聖女の能力をこの国に残して」
「うーん。何をしたんでしょう?」
「わからない。ただ、今回、わが国の聖石が聖女召喚に合わせて反応した。半分しか残されていないが、これ迄の聖女召喚では何も示す事はなかったんだ。今回の聖女には何かあるのではないか、聖女が聖石に触れる事で何か、変わるのではないかと神官たちが期待している」
今回の聖女召喚で違う事と言えば、私とシオリの二人が召喚されたということだろうか。シオリは『聖女』ってステータスに出てるから、性格が悪くても聖女だとして、私も聖女って事が何か関係しているのかもしれない。
「何とか、聖女にわが国に来てもらいたいと思っていたんだが……」
「シオリなら、レナード王子が優しく誘えば喜んで行きますって言いますね」
「聖女は呼びたいが、あの女は嫌だ」
「殿下、凄く好かれてますから」
「何だか、近くに寄られると鳥肌が立つんだ。あの、わざとらしいしゃべり方も腹が立つ」
「あれで、喜ぶ男は多いんですよ」
「どうかしている」
レナード王子がブルッと震えて、腕をこすった。それにしても何だか疲れた。
「あの、青い卵はどうします? 隠し部屋に皆で行ってみますか?」
「王宮の隠し部屋か、行きたくても行けないな」
「さすがに、王宮の中を自由にはいけないですか?」
「ブルーバード王国の人間は王宮の中央施設以外には立ち入りができないんだ」
「えっ、でも王宮の中に離宮がありますけど、……不思議には思っていたんですけど、どうしてワザワザ王宮の中に別の国の離宮があるのでしょう? 普通は他国の方は王宮の客室を使いませんか?」
「あっ、俺もそれは変だなって思ってた」
「この離宮はこの領に王女が降嫁した時に作られたもので、当時の王がブルーバード国の「とある資格のある者」しか立ち入りができないように設計の時から作り上げたんだ。この国ができた時にワザワザ離宮を王宮の中に入れ込んで、利用しようとしたらしいが、どうしてもは入れなかったらしい」
「そのまま、オブジェとして置いておくことにしたらしいんだが、聖女のお披露目の時にブルーバード国なら、この離宮が利用できることがわかって、今は使用料を払って一応、大使館として借りている事になっている。本来、所有権はわが国の王室にあるんだが」
「他の国の人間は入ってこられないのでその点は快適です」
「王宮の客室は居心地がよくないし」
そういう事ね。他国の人間が入ってこられないなら、セキュリティの面でも安心? あら、私とアランは他国の人間じゃない? いえ、アランはレナード王子の弟だとしたら、私はどういう扱いになるのかしら、聖女だからOKってこと?
そういえば、レナード王子たち、聖女さまって言っていたのが、呼び捨てになってます。これもシオリ効果?
「連れ去られた聖獣を忘れない為に国名を変えたんだ」
「聖域が襲われたその時、聖獣がそこにいたのです。普通、聖獣は聖女の側に控えて……その、聖獣というのは従来、聖女に懐いて離れないものなんですが、当時の聖獣は聖女以外の乙女に懐いていまして……」
「その上、聖獣は王宮の中を割と自由にウロウロしていたそうだ。人に驚かれない為か、小さな恰好になって」
「本来、聖獣は人を乗せられるほど大きな青い鳥が本体なんです。ですが、あまり大きいと王宮や屋敷の中に入れませんし、鳥の姿ですと人と触れ合う事が出来ないと考えたのかもしれませんが、違う動物の姿を取る事がしばしばありまして、その当時は青い子犬の姿をとっていたんです。そして、姿を変えるとその動物の習性に性格を合わせてしまわれることがありまして、」
「当時の聖女が連れ出した聖獣というのが、青い子犬だったのですが……子犬になっていたせいか半分切り取られた聖石に嚙みついてそのまま、連れて行かれてしまったんです」
「当時、聖地で石にされた神官が見ていたそうですが、「聖獣は切り取られた聖石に噛みついて離さなかったので、そのまま連れて行かれたのだろう」と言っていたそうです」
「せめて、聖獣さえ残っていれば、と思っていたのですが」
「聖獣に寿命はあるのですか?」
「いえ、ずっと昔から存在していたそうです」
「でも、聖獣が聖石を咥えていたんだったら、聖石は取り出せないよね。聖石って必要なの?」
「聖石を中心に置いて国の建国を宣言します」
「当時の前聖女の話だと、聖獣もろとも聖石を建国の要にしたのではないかと」
「えっ、と、つまり……」
「人柱ならぬ聖獣柱にされたのではないか、という事だな」
「その、抗議はしなかった? 例えば、というか、そんなことしたら戦争、いや、魔術師相手だから一人だから、そんな強引なことして国として認められるのか?」
「聖女が、自分から魔術師に協力したので嫌でも、認めざるを得なかった」
それはつまり、青い犬の聖獣を犠牲にしてこの国を建国したって事? でも、本体は青い鳥、聖獣がそんなに簡単に魔術師に負ける?
「魔術師が寿命で居なくなれば、国はよりどころを失くすのではない? 魔術師さえいなければ何とかなりそうな気がするけど」
「アイツは希代の魔術師だったんだ。むしろ、寿命のある魔王かもしれない。奴はこの国が存続するための方策を残していった。何をしたのかは分からないが、その聖女の次の聖女はもうわが国には生まれなくなった。聖女はこの世界に必ず必要だ。しかし、次の聖女はこの国に生まれたらしい。そして、いつの間にか聖女は召喚することとなり、その聖女は2、3年で消えてしまう。聖女の能力をこの国に残して」
「うーん。何をしたんでしょう?」
「わからない。ただ、今回、わが国の聖石が聖女召喚に合わせて反応した。半分しか残されていないが、これ迄の聖女召喚では何も示す事はなかったんだ。今回の聖女には何かあるのではないか、聖女が聖石に触れる事で何か、変わるのではないかと神官たちが期待している」
今回の聖女召喚で違う事と言えば、私とシオリの二人が召喚されたということだろうか。シオリは『聖女』ってステータスに出てるから、性格が悪くても聖女だとして、私も聖女って事が何か関係しているのかもしれない。
「何とか、聖女にわが国に来てもらいたいと思っていたんだが……」
「シオリなら、レナード王子が優しく誘えば喜んで行きますって言いますね」
「聖女は呼びたいが、あの女は嫌だ」
「殿下、凄く好かれてますから」
「何だか、近くに寄られると鳥肌が立つんだ。あの、わざとらしいしゃべり方も腹が立つ」
「あれで、喜ぶ男は多いんですよ」
「どうかしている」
レナード王子がブルッと震えて、腕をこすった。それにしても何だか疲れた。
「あの、青い卵はどうします? 隠し部屋に皆で行ってみますか?」
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「さすがに、王宮の中を自由にはいけないですか?」
「ブルーバード王国の人間は王宮の中央施設以外には立ち入りができないんだ」
「えっ、でも王宮の中に離宮がありますけど、……不思議には思っていたんですけど、どうしてワザワザ王宮の中に別の国の離宮があるのでしょう? 普通は他国の方は王宮の客室を使いませんか?」
「あっ、俺もそれは変だなって思ってた」
「この離宮はこの領に王女が降嫁した時に作られたもので、当時の王がブルーバード国の「とある資格のある者」しか立ち入りができないように設計の時から作り上げたんだ。この国ができた時にワザワザ離宮を王宮の中に入れ込んで、利用しようとしたらしいが、どうしてもは入れなかったらしい」
「そのまま、オブジェとして置いておくことにしたらしいんだが、聖女のお披露目の時にブルーバード国なら、この離宮が利用できることがわかって、今は使用料を払って一応、大使館として借りている事になっている。本来、所有権はわが国の王室にあるんだが」
「他の国の人間は入ってこられないのでその点は快適です」
「王宮の客室は居心地がよくないし」
そういう事ね。他国の人間が入ってこられないなら、セキュリティの面でも安心? あら、私とアランは他国の人間じゃない? いえ、アランはレナード王子の弟だとしたら、私はどういう扱いになるのかしら、聖女だからOKってこと?
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