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36. シオリ無双?
しおりを挟む「レナードさまは次の王様になるんですか~。そうだったらいいなぁ」
「な、何を!……」
王太子が絶句している。そうだよね。いくら聖女といえども隣国の後継に口を出すなんて、ましてやご本人に直接、聞くなんて常識的に考えてありえない。
私は何故シオリがこんな事を聞いて来たのかわかるけどね。シオリとしては好みのタイプであるレナード王子が隣国の王太子になるならば、乗り換えてもいいなぁ、って思っているに違いない。
「……」
「……」
流石に周りの皆も黙ってしまった。王太子も固まっている。凍り付いたような雰囲気の中、甘えた声でさらにシオリが声をかける。
「ひょっとして、聖女の応援があったら王太子になるのに、有利になったりします~。だったら、応援しちゃおうかな~キャハ!」
「……お気遣い感謝いたします。しかし、わが国の国王はまだ若く、王太子は兄が拝命する予定になっております」
「だって、まだはっきりと決まってないんでしょう~? 第二王子は優秀だから、次期王になるかもって、皆が噂してましたよ~。あたしもレナードさま~が王様になったの、見てみたいかも~」
「聞かなかったことにします……」
「せ、聖女さま、他国のこういった事には口を出さない不文律がございまして……」
この国の王太子が呆けていて何も言わないので、側に控えていたお付きの人、この人も側近かもしれないけどシオリに小さな声で囁いた。聞こえているけどね。
「あら、それはあたしには関係ないんじゃない~。だって「聖女がいるからこの世界も持っている」って誰かいっていたもん。あたしって世界の聖女なんじゃないの~」
「それはそうですが、聖女さまはわが国が召喚して、そのままわが国にいらっしゃるのが決まりになっております。聖女様はわが国の聖女さまです」
「そうなんだ~。じゃあさ~、お隣の国と合併しちゃえばいいんじゃないの~。ほら、小さい町とか合併して何とか市とかになっているし、んん~? 王様がふたりになっちゃう? じゃぁ二つの国の上に帝王とか作っちゃったりして。帝国の中に二つの王国があるとか、面白くない~?」
「ハハッ、確かに面白い冗談ですね」
レナード王子の頬が少し、引きつっている。冗談で済ませてしまう事にしたみたいだ。
「ハハハッ、聖女さまの世界の冗談は面白いですね」
「いや、本当に」
「そ、それにしても聖女様の本日のネ、ネックレスは見事ですね。こんな大粒のサファイアは滅多にないと思いますよ」
「あら、ほんと~。前の世界で手癖の悪い下女にサファイアを取られたから、サファイアが欲しいっておねだりしたらもらえたのよ~。似合ってる~?」
「凄くお似合いです。見ているだけで神々しい。ドレスもとても華やかでひと際目を引きます。そのドレスもブギウ殿下からの贈り物ですか?」
「ふふっ、そうなの~」
それからは周りの連中がシオリをほめ殺しにして、お菓子や軽食を勧めたり飲み物を捧げたりした。シオリは宝石やドレス、美味しいお菓子に関心が移って行ったみたいで、チヤホヤされる事に機嫌を良くしていた。
話題が誘導された事に気づいていないようだけど、もの凄く、マヌケに見える。こんな聖女って今までいなかったんじゃない?
お菓子を摘まみながらレナード王子に「アーンってしてほしい~」とか言っていたけど、レナード王子はさりげなく間に人を入れて近づかないようにしていた。そして、「そういえば、国から大事な連絡がはいる事になっていたのです。また改めて、聖女さまとは是非お話できたらと思います」と逃げ出そうとした。
「あっ、そう言えば会食するってお話でしたよね~。明日は寝てるから~明後日とか、ううん、ドレスとかアクセとか選ばなくちゃいけないし、1週間後はいかがですか~?」
「1週間後ですね。喜んでご招待承ります」
「あっ~、それから~、公爵令嬢は連れてこないでくださいね~。美少年ならいいけど~美少女はいらないかな~」
そう言うと、シオリは従僕の姿をしている私のほうを見て。フフンと鼻で笑った。上から目線で感じ悪い。私の事を隣国の侯爵令嬢だと認識したみたい。可愛い女の子はシオリにとって敵だものね。私ってわからないのはいいけど、あの態度はさすが、シオリ、通常運転。でも、かりにも聖女がこれで良いの?
※ 舞踏会の後、別室で。
「どうなっているんだ! あの聖女の態度は?!」
「私にもわかりません。これまでの聖女とは違い過ぎる」
「聖女には隷属と魅了のアクセサリーを付けさせているはずだったな」
「ええ、そのはずなんですが……」
「魅了の効果がすべての若い男、それも顔が良いのに惹かれているのはどうしてだ? 隷属についてはまるで効いていない。これまでの聖女と違い過ぎる。聖女としての力が強すぎて魔道具の効果が打ち消されているのか?」
「ひょっとしてですが、魔道具そのものが古くなりすぎているとか……」
「そういえば、作られてから随分時間が経っている」
「聖女がこの国に居たいと思わせなければいけないですからね。どうやら、レナード王子がお好みのようです」
「あのタイプが好きという事は……」
「……そうですね」
「少なくても2年間はこの国に引き留めなくてはならない。仕方ない」
「父上!」
「王太子はお前だ。それは変わりない。あれは権力に興味がない」
「そうでしょうけど、聖女は権力志向にみえます」
「まったく、本当にあんなのが聖女とは」
「聖女らしくはないですね」
「どうしてもダメなら、閉じ込めて洗脳するか」
「洗脳してしまうと神力が落ちます」
「できれば、使いたくはない」
「ええ……」
悩める男たち。
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