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33. 舞踏会
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「えっ、私も舞踏会に行くんですか?」
「そう、一応、私の侍従として、行くのはどうだろう。ドレス姿も見てみたいが、ドレスは残念ながら間に合いそうもないから、男装という事で。一応、レイちゃんは侍従としてこの国に入国したことになっているから」
「入国? した覚えはありませんけど」
「その辺は何とでもなるのさ。この国は割とザルだから」
いつの間にか、レナード王子は私の事をレイちゃんと呼ぶようになっていた。それは、アランが玲ちゃん、玲ちゃんって呼ぶからかな。レナード王子は元々とてもフランクなタイプだったけど、何度か一緒に飲み会をしているうちに、というか、酔いが回ると私の口調も気安くなっている自覚はある。
「この世界の舞踏会がどうなのか気にならない?」
「うーん。どんなものかな、とは思いますけど」
「本当はドレス姿を見てみたいし、一緒にダンスを踊りたい」
「えっ、私、ダンスなんて踊れません」
「教えてあげよう」
「駄目だよ! レナード、兄さんは忙しいんだろう!」
「アー君、焼きもち焼いている?」
「違うし」
「アー君にも教えてあげるよ」
からかうようにレナード王子はアランをのぞき込んだ。この場合、私のほうが当て馬になるのだろうか? でも、ドレスはちょっとだけ着てみたいような気もするけど、ダンスは全く踊れないし……、たまにテレビで見る事がある社交ダンスとか無理だし。そういえばテレビで見た舞踏会のダンスはクルクル回っていたような記憶があるけど、どうなのかしら。
「一応、王家の人間としてダンスは踊れたほうが良いから教師を手配するね。もう、あまり時間はないからダンスの披露は次回という事になるけど」
「えー、ダンス、練習するのか~」
「二人で練習すると良い運動になるよ」
「運動、それはありかも」
そういえば、この離宮にきてから実に怠惰に過ごしてしまった。
「酷暑」の時も山奥の川辺でゴロゴロしていたし、このままだと太ってしまうかもしれない。
キッチンがあるせいで何かと作ってしまうし、冷蔵庫の中身は補充されるから材料が使い放題、というのもあって、お酒のつまみも色々作っている。
朝食、昼食、夕食にオヤツに夜食、時々飲み会の酒のつまみ。それも結構ガッツリしたもの、唐揚げとかポテトフライとか、コロッケとかも食べているし、考えてみたらコーラ割りとかも糖分、かなり取っている。オヤツもホールケーキとか作っているし、これはヤバいかもしれない。おデブの聖女様なんて様にならないし、ダンスの参考に舞踏会をこっそり見るのはありかも。
舞踏会、本当はあまり出たくなかったんだけど、見学も兼ねて仕方なく参加する事になった。王子さまと側近たちも勧めてくるし。
何でも、私はレナード王子の従妹に当たる公爵家の令嬢にとても顔が似ているそうだ。髪と目の色も同じなので、その令嬢が隠れて付いてきた、という設定にするそうだ。
令嬢なのに、侍従の格好をしているのはお忍びで付いてきたので、ワザとその姿をしているという事になるんですって。
「まさに、ご令嬢が男装した感じですね」
「えーと、私とその公爵令嬢って、そんなに似ているんですか?」
「ああ、よく似ている。初めて会った時に似ているな、とは思っていたが髪が金髪で目が青いと本当に良く似ている」
「よく似ておられます。むしろ、公爵家御令嬢よりもご先祖様に当たる、あの方に似ているかもしれません」
「あの方って?」
「……聖女様のご先祖です。元々、聖女さまはわが国にいらしたのですから」
側近の人は苦々しい顔をした。聖女の事になるとチョッと言いよどむのはなぜかしら。何となく聞きづらい雰囲気があるのと、深入りしない為にも知らないふりで良いかな。今度、レナード王子を酔わせてそれとなく聞き出してみよう。
「玲ちゃん、外国の血が入っている?」
「わからないわ。でも、確かに一族にたまに異国風の顔立ちが生まれる事はあったみたい。私の母も日本人離れしている顔だし、お祖母さまもそんな感じ」
「玲ちゃん、美人だし、ハーフと言っても良い雰囲気かな。むしろ異世界の遺伝子が混ざってたりして」
「まさか。どうやって混ざるのよ、もう。顔立ちが洋風なのは確かだけど、眼鏡と目立たない髪型で誤魔化していたのに。日本ではあまり目立っても良い事はないのよ。目立つとシオリが絡んでくるし」
「シオリかぁ。どんなのか見るのが楽しみな気もする」
「一応、美人で猫かぶり」
「ふーん、一応ね」
「あっ、そうそう、アー君は気配を消して、こっそり潜入してね」
「えっ!? 俺は舞踏会不参加?」
「アー君、その顔だすと王家の人間ってわかってしまうから。見られちゃまずいでしょ」
「だって、離宮の皆にはもう見られている」
「離宮のみんなには精霊様と思われているから、大丈夫」
「大丈夫なのか……」
という事で舞踏会当日。
王宮の舞踏会はとても華やかで、色取り取りの煌びやかなドレスを身に付けた女性に、同じようにキラキラしい飾りに勲章を付けた男性がアチコチで楽しげに語り合っている。
軽食コーナーには様々な食事が用意され、飲み物を片手に談笑する人々。まるで、アニメか映画の世界に迷い込んだような気がする。
レナード王子は流石に正装するとザ・王子様という感じになった。私は王子の侍従としてこの舞踏会に参加している。王子様だから側近2名と従者も参加できるとの事。
アランも存在レベル2で参加。せっかくだからと正装している。アラン、その服似合っているし、凄くカッコいい。王子様に見える。
見えるのは私だけだけど
「そう、一応、私の侍従として、行くのはどうだろう。ドレス姿も見てみたいが、ドレスは残念ながら間に合いそうもないから、男装という事で。一応、レイちゃんは侍従としてこの国に入国したことになっているから」
「入国? した覚えはありませんけど」
「その辺は何とでもなるのさ。この国は割とザルだから」
いつの間にか、レナード王子は私の事をレイちゃんと呼ぶようになっていた。それは、アランが玲ちゃん、玲ちゃんって呼ぶからかな。レナード王子は元々とてもフランクなタイプだったけど、何度か一緒に飲み会をしているうちに、というか、酔いが回ると私の口調も気安くなっている自覚はある。
「この世界の舞踏会がどうなのか気にならない?」
「うーん。どんなものかな、とは思いますけど」
「本当はドレス姿を見てみたいし、一緒にダンスを踊りたい」
「えっ、私、ダンスなんて踊れません」
「教えてあげよう」
「駄目だよ! レナード、兄さんは忙しいんだろう!」
「アー君、焼きもち焼いている?」
「違うし」
「アー君にも教えてあげるよ」
からかうようにレナード王子はアランをのぞき込んだ。この場合、私のほうが当て馬になるのだろうか? でも、ドレスはちょっとだけ着てみたいような気もするけど、ダンスは全く踊れないし……、たまにテレビで見る事がある社交ダンスとか無理だし。そういえばテレビで見た舞踏会のダンスはクルクル回っていたような記憶があるけど、どうなのかしら。
「一応、王家の人間としてダンスは踊れたほうが良いから教師を手配するね。もう、あまり時間はないからダンスの披露は次回という事になるけど」
「えー、ダンス、練習するのか~」
「二人で練習すると良い運動になるよ」
「運動、それはありかも」
そういえば、この離宮にきてから実に怠惰に過ごしてしまった。
「酷暑」の時も山奥の川辺でゴロゴロしていたし、このままだと太ってしまうかもしれない。
キッチンがあるせいで何かと作ってしまうし、冷蔵庫の中身は補充されるから材料が使い放題、というのもあって、お酒のつまみも色々作っている。
朝食、昼食、夕食にオヤツに夜食、時々飲み会の酒のつまみ。それも結構ガッツリしたもの、唐揚げとかポテトフライとか、コロッケとかも食べているし、考えてみたらコーラ割りとかも糖分、かなり取っている。オヤツもホールケーキとか作っているし、これはヤバいかもしれない。おデブの聖女様なんて様にならないし、ダンスの参考に舞踏会をこっそり見るのはありかも。
舞踏会、本当はあまり出たくなかったんだけど、見学も兼ねて仕方なく参加する事になった。王子さまと側近たちも勧めてくるし。
何でも、私はレナード王子の従妹に当たる公爵家の令嬢にとても顔が似ているそうだ。髪と目の色も同じなので、その令嬢が隠れて付いてきた、という設定にするそうだ。
令嬢なのに、侍従の格好をしているのはお忍びで付いてきたので、ワザとその姿をしているという事になるんですって。
「まさに、ご令嬢が男装した感じですね」
「えーと、私とその公爵令嬢って、そんなに似ているんですか?」
「ああ、よく似ている。初めて会った時に似ているな、とは思っていたが髪が金髪で目が青いと本当に良く似ている」
「よく似ておられます。むしろ、公爵家御令嬢よりもご先祖様に当たる、あの方に似ているかもしれません」
「あの方って?」
「……聖女様のご先祖です。元々、聖女さまはわが国にいらしたのですから」
側近の人は苦々しい顔をした。聖女の事になるとチョッと言いよどむのはなぜかしら。何となく聞きづらい雰囲気があるのと、深入りしない為にも知らないふりで良いかな。今度、レナード王子を酔わせてそれとなく聞き出してみよう。
「玲ちゃん、外国の血が入っている?」
「わからないわ。でも、確かに一族にたまに異国風の顔立ちが生まれる事はあったみたい。私の母も日本人離れしている顔だし、お祖母さまもそんな感じ」
「玲ちゃん、美人だし、ハーフと言っても良い雰囲気かな。むしろ異世界の遺伝子が混ざってたりして」
「まさか。どうやって混ざるのよ、もう。顔立ちが洋風なのは確かだけど、眼鏡と目立たない髪型で誤魔化していたのに。日本ではあまり目立っても良い事はないのよ。目立つとシオリが絡んでくるし」
「シオリかぁ。どんなのか見るのが楽しみな気もする」
「一応、美人で猫かぶり」
「ふーん、一応ね」
「あっ、そうそう、アー君は気配を消して、こっそり潜入してね」
「えっ!? 俺は舞踏会不参加?」
「アー君、その顔だすと王家の人間ってわかってしまうから。見られちゃまずいでしょ」
「だって、離宮の皆にはもう見られている」
「離宮のみんなには精霊様と思われているから、大丈夫」
「大丈夫なのか……」
という事で舞踏会当日。
王宮の舞踏会はとても華やかで、色取り取りの煌びやかなドレスを身に付けた女性に、同じようにキラキラしい飾りに勲章を付けた男性がアチコチで楽しげに語り合っている。
軽食コーナーには様々な食事が用意され、飲み物を片手に談笑する人々。まるで、アニメか映画の世界に迷い込んだような気がする。
レナード王子は流石に正装するとザ・王子様という感じになった。私は王子の侍従としてこの舞踏会に参加している。王子様だから側近2名と従者も参加できるとの事。
アランも存在レベル2で参加。せっかくだからと正装している。アラン、その服似合っているし、凄くカッコいい。王子様に見える。
見えるのは私だけだけど
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