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32. お月見
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「玲ちゃん、この団子美味しいね」
「そうね。お月見にはやっぱりお団子は必要だわ」
「これはお月見団子というのか、美味いな。この触感がたまらん。それにこの酒がよくあう」
「そうかな~。お月見団子にカルピスソーダ割りが合うかなぁ。お茶割りのほうが合うし、美味しいよ。カルピスソーダもそれなりに美味いけど」
「そうね。カルピスソーダにはドライフルーツはどうかしら? でも、レナード王子、さっきからポテトサラダとドライチーズとサラミのカナッペをやたら食べているけど、気に入ったの?」
レナード王子はお月見団子とポテトサラダを一緒に食べては合間にカナッペを摘まんでいる。甘い物としょっぱい物を交互に摘まむのは美味しいけど、食べ過ぎてしまうから、どうなんだろう。王子様って節制ができるんじゃないの?
私達は月を見ながら酒盛りをしていた。「月が綺麗なので一緒に月見をしませんか」とのお誘いがきたのだ。レナード王子は暇さえあればアランの顔を見に来ていたけれど、このところ忙しくて本当に顔だけ見て直ぐに去ってしまっていた。
「忙しくてしばらく一緒に過ごせなかったので、ストレスが溜まっているようです」との側近の言葉を受けてのお月見となったのである。日本のお月見の風習とは違って、本当に月を見ながらお酒を飲むだけみたいだけど、この世界の月は丸くて大きくて二つあった。
月を見ませんか、というのはお酒を飲みませんかとのお誘い文句らしい。
「俺たちって見た目が15、6歳に見えるみたいだけど、本当は20歳過ぎているから、お酒は飲み放題。飲んでも、飲んでも補充されるから本当に飲み放題。酒場を開ける」
「というより食料も補充されるからレストランも開けるわ」
「アー君は16歳じゃないか、もう、お酒を飲んでもいい年だよ。アー君と一緒にお酒が飲めるなんて嬉しいな」
レナード王子が父親のような事を言っている。この世界でのアランの年は16歳だし、お酒も飲んで良い年になっているんだった。アランとレナード王子は似ているからもう、少しの年齢の差異はどうでもいいような気がしてきた。何か、フワフワして楽しいし。
「玲ちゃん、少し酔っている?」
「うーん。そうかも。このカルピスソーダ割り、美味しい」
「玲ちゃん、甘いお酒、好きだね」
「ふふ、そうね。戸棚の奥に焼酎が置いてあるなんて知らなかったわ。誰が隠したのかしら? 私、色々なチューハイ、飲んで見たかったの」
「玲ちゃん、カクテルも好きなんじゃなかった?」
「カクテル、そうね。戸棚の中にカクテルシェイカーのセットもあったわ。でも、シェイカー、使った事がないわ」
「俺も。でも見た事はある」
「私もあるわよ~」
「俺はない」
レナード王子、それはそうでしょう。この世界にシェイカーなんてない? でもカクテルはあるのかしら。コーラやカルピスはないみたいだからコークハイやカルピス割りはないわね。ふふっ、何だか楽しい。
この部屋には小さな厨房が付いていて簡単な料理もできるから、夜食やオヤツ、おつまみは手作りしている。お忙しいレナード王子にも差し入れしたらとても喜ばれた。
離宮の料理も美味しいんだけど、やっぱり和食はできないから和食を作ると気持ちが落ち着く。アランも喜ぶし。
「ああ、そういえばやっと聖女に会えるんだ」
「聖女?」
「ああ、そもそも聖女に会うのが目的だったから。それのついでに今のこの国の様子を俺の目でみて判断してほしい、ってのが依頼内容でさ」
「依頼?」
「国からの依頼。俺、一応、第二王子だから」
「一応、なんだ!」
ケラケラとアランが笑う。アランってお酒を飲むと楽しそうにちょっとした事で良く笑う。この前、箸を転がしてみたら本当に「ハハハッ、箸が転がった。ハハハッ。ヒーハハハッ」って笑い転げてた。アラン、愉快な奴。
でも、この国の聖女ってシオリだからシオリにレナード王子が会うのは嫌だな~。コロッと猫かぶりのシオリに騙されるかも。だって、シオリってイケメンが大好きなんだもの。
「聖女に個人的に会うの?」
「いや、舞踏会が開かれるから、そこでご挨拶。聖女の気が向けば王族と共に会食」
「あー、それならシオリはイケメン好きだからすぐに会えるわ」
「イケメン?」
「顔が良いって事! お兄ちゃん、凄く良い顔してる。カッコいい!」
「えっ、そうか。カッコいいか。カッコいいお兄ちゃん、嬉しいなぁ。アー君もとても可愛い」
「嫌だ。俺もカッコいい」
「ああ、ごめん。アー君はとてもカッコいい」
「そう、そう」
そうして、二人はハグをして笑いあった。もう、この酔っ払い兄弟は楽しそうでいいなぁ。
私の家族は一体何しているんだろう。心配しているかなぁ。
でも、本家の後を継ぐ娘は時折、姿を消すから、「ああ、やっぱり」って思っているかも。
シオリは? シオリは血のつながりはないし、巻き込まれたと思っている? まさか、シオリが聖女になって、私がオマケ扱いとは思いもしないだろうなぁ。本当にどうして、シオリが聖女なんだろう。私が聖女なのは間違いないんだけど。
この離宮は居心地が良くてノンビリさせてもらったけど、そろそろ身の振り方を考えなくてはいけないかしら。いずれ、日本に帰れるとは思うけど、どうやって帰るんだろう。聖女って存在するだけで良いみたいだけど、しばらくすれば自然と帰れる? その時、シオリも一緒に帰還してしまう?
そうしたらシオリが本当の聖女でしたって記憶に残って、私の存在はなかった事にされるのかなぁ。それもちょっと嫌かも。アランはこの世界の人間みたいだけど、私がいなくなったらアランのステータス、どうなるんだろう。
「ピピピ、ピピ」
そうだよね。ルナもいるんだった。ん? 何でいるの? 今は夜だけど。鳥目じゃないの? 元気に唐揚げをつついているけど、小鳥なのに肉食? それ、鶏肉だよ。
聖鳥、だから良いのかしら。
「そうね。お月見にはやっぱりお団子は必要だわ」
「これはお月見団子というのか、美味いな。この触感がたまらん。それにこの酒がよくあう」
「そうかな~。お月見団子にカルピスソーダ割りが合うかなぁ。お茶割りのほうが合うし、美味しいよ。カルピスソーダもそれなりに美味いけど」
「そうね。カルピスソーダにはドライフルーツはどうかしら? でも、レナード王子、さっきからポテトサラダとドライチーズとサラミのカナッペをやたら食べているけど、気に入ったの?」
レナード王子はお月見団子とポテトサラダを一緒に食べては合間にカナッペを摘まんでいる。甘い物としょっぱい物を交互に摘まむのは美味しいけど、食べ過ぎてしまうから、どうなんだろう。王子様って節制ができるんじゃないの?
私達は月を見ながら酒盛りをしていた。「月が綺麗なので一緒に月見をしませんか」とのお誘いがきたのだ。レナード王子は暇さえあればアランの顔を見に来ていたけれど、このところ忙しくて本当に顔だけ見て直ぐに去ってしまっていた。
「忙しくてしばらく一緒に過ごせなかったので、ストレスが溜まっているようです」との側近の言葉を受けてのお月見となったのである。日本のお月見の風習とは違って、本当に月を見ながらお酒を飲むだけみたいだけど、この世界の月は丸くて大きくて二つあった。
月を見ませんか、というのはお酒を飲みませんかとのお誘い文句らしい。
「俺たちって見た目が15、6歳に見えるみたいだけど、本当は20歳過ぎているから、お酒は飲み放題。飲んでも、飲んでも補充されるから本当に飲み放題。酒場を開ける」
「というより食料も補充されるからレストランも開けるわ」
「アー君は16歳じゃないか、もう、お酒を飲んでもいい年だよ。アー君と一緒にお酒が飲めるなんて嬉しいな」
レナード王子が父親のような事を言っている。この世界でのアランの年は16歳だし、お酒も飲んで良い年になっているんだった。アランとレナード王子は似ているからもう、少しの年齢の差異はどうでもいいような気がしてきた。何か、フワフワして楽しいし。
「玲ちゃん、少し酔っている?」
「うーん。そうかも。このカルピスソーダ割り、美味しい」
「玲ちゃん、甘いお酒、好きだね」
「ふふ、そうね。戸棚の奥に焼酎が置いてあるなんて知らなかったわ。誰が隠したのかしら? 私、色々なチューハイ、飲んで見たかったの」
「玲ちゃん、カクテルも好きなんじゃなかった?」
「カクテル、そうね。戸棚の中にカクテルシェイカーのセットもあったわ。でも、シェイカー、使った事がないわ」
「俺も。でも見た事はある」
「私もあるわよ~」
「俺はない」
レナード王子、それはそうでしょう。この世界にシェイカーなんてない? でもカクテルはあるのかしら。コーラやカルピスはないみたいだからコークハイやカルピス割りはないわね。ふふっ、何だか楽しい。
この部屋には小さな厨房が付いていて簡単な料理もできるから、夜食やオヤツ、おつまみは手作りしている。お忙しいレナード王子にも差し入れしたらとても喜ばれた。
離宮の料理も美味しいんだけど、やっぱり和食はできないから和食を作ると気持ちが落ち着く。アランも喜ぶし。
「ああ、そういえばやっと聖女に会えるんだ」
「聖女?」
「ああ、そもそも聖女に会うのが目的だったから。それのついでに今のこの国の様子を俺の目でみて判断してほしい、ってのが依頼内容でさ」
「依頼?」
「国からの依頼。俺、一応、第二王子だから」
「一応、なんだ!」
ケラケラとアランが笑う。アランってお酒を飲むと楽しそうにちょっとした事で良く笑う。この前、箸を転がしてみたら本当に「ハハハッ、箸が転がった。ハハハッ。ヒーハハハッ」って笑い転げてた。アラン、愉快な奴。
でも、この国の聖女ってシオリだからシオリにレナード王子が会うのは嫌だな~。コロッと猫かぶりのシオリに騙されるかも。だって、シオリってイケメンが大好きなんだもの。
「聖女に個人的に会うの?」
「いや、舞踏会が開かれるから、そこでご挨拶。聖女の気が向けば王族と共に会食」
「あー、それならシオリはイケメン好きだからすぐに会えるわ」
「イケメン?」
「顔が良いって事! お兄ちゃん、凄く良い顔してる。カッコいい!」
「えっ、そうか。カッコいいか。カッコいいお兄ちゃん、嬉しいなぁ。アー君もとても可愛い」
「嫌だ。俺もカッコいい」
「ああ、ごめん。アー君はとてもカッコいい」
「そう、そう」
そうして、二人はハグをして笑いあった。もう、この酔っ払い兄弟は楽しそうでいいなぁ。
私の家族は一体何しているんだろう。心配しているかなぁ。
でも、本家の後を継ぐ娘は時折、姿を消すから、「ああ、やっぱり」って思っているかも。
シオリは? シオリは血のつながりはないし、巻き込まれたと思っている? まさか、シオリが聖女になって、私がオマケ扱いとは思いもしないだろうなぁ。本当にどうして、シオリが聖女なんだろう。私が聖女なのは間違いないんだけど。
この離宮は居心地が良くてノンビリさせてもらったけど、そろそろ身の振り方を考えなくてはいけないかしら。いずれ、日本に帰れるとは思うけど、どうやって帰るんだろう。聖女って存在するだけで良いみたいだけど、しばらくすれば自然と帰れる? その時、シオリも一緒に帰還してしまう?
そうしたらシオリが本当の聖女でしたって記憶に残って、私の存在はなかった事にされるのかなぁ。それもちょっと嫌かも。アランはこの世界の人間みたいだけど、私がいなくなったらアランのステータス、どうなるんだろう。
「ピピピ、ピピ」
そうだよね。ルナもいるんだった。ん? 何でいるの? 今は夜だけど。鳥目じゃないの? 元気に唐揚げをつついているけど、小鳥なのに肉食? それ、鶏肉だよ。
聖鳥、だから良いのかしら。
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