冷女が聖女。

サラ

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31. 明るい朝

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「チュンチョン、チチチ、チュッ、チュッ、チチチ」

 小鳥の声がする。凄く近い。耳もとで聞こえるような気がする……、まだ目が覚めないけど、ウーンと無理やり目を開けると白い小鳥のドアップ!

「ハイハイ、マドレーヌね」
「ピッピ、チュンチュン」

 えっ、ちょっと待って! ここはどこ? アッ、離宮に泊ったんだった。目の前には首を傾げてチュンチュンとなく白い小鳥さん。どうやって入って来たのかしら。ひょっとして、換気のために窓が少し開いていた? 
 ともあれ、久しぶりの小鳥さんに会えたのは嬉しい事だし、びっくりしたので目が覚めた。この小鳥さん、やっぱり王宮が住処なのかしら。前、王宮から追い出された時は途中まで付いて来てたみたいだけど、やっぱり巣があるところからはあまり離れたくないものね。

「小鳥さん、あなたのお家はここなの?」
「ピ、ピピピ、ピー」
「そうなの、お水が欲しいのかしら? それともマドレーヌ? パンのほうが良い? 実は美味しいパンがあるのよ」
「ピ、ピピピ」
「うーん、いまいち、言葉が通じているのかいないのか。とりあえず着替えてしまおう」

 私は昨晩、侍女さんが用意してくれたデイドレスに着替えた。これまで着ていた庶民の服に比べると生地が滑らかで気持ちが良い。これ、かなり高いんじゃないかしら。
 一応、侍従という事にしているので男装したほうがいいかなとも思うんだけど、用意されていたのが、このドレスだったので来てみました。

 鏡に映る私の姿は金髪に青い目。目鼻立ちは変わらないけど、外国の人に見える。この国では最初から外国人だけどね。でも、地毛で金髪。凄くキラキラして綺麗な金髪。昨日までは茶髪だったのに、この変化はどういう事かしら。
 レナード王子が聖女は茶髪って言っていたから、聖女のせいで金髪になったわけではないし……。でも、相変わらず私のステータスには聖女ってなってたから、聖女なのは間違いない。聖女は聖女でも日本の聖女だったりして? まさかね。

 この姿ならシオリが見てもわからないかも。でも、日本だって髪は染められるし、カラーコンタクトもあるから、会わないに越したことはないか。
 そんな事を考えながら、小鳥さんにお水とマドレーヌの欠片を用意してから居間のソファーに座ろうとしたら、トントンとノックの音がしたかと思えばすぐに扉が開いた。「お早う」といいながらアランが入ってくる。

「アランったらノックをして直ぐに開けたらノックの意味がないじゃない」
「ごめん。でも、ほらここは居間だから。大丈夫かなって」
「まぁ、そうだけど」
「玲ちゃんとはずっと一緒だったから離れていると何だか寂しいよ」
「村では別々の部屋にいたじゃない」

「そうだけどさ、冷蔵庫の中にいた時は近くにいるなって安心してたから」
「そうね。アランとは空気のような距離感かも」
「俺、実際に空気みたいな存在だったよ」
「他人には見えなかったものね。でも、レナード王子は存在がレベル2でも何となくアランの事がわかっていたみたいじゃない。やっぱり、身内だからかしら」
「そう、なのかな……」
「ピピピ、ピピ」

 大人しくマドレーヌを食べていた小鳥さんが「そうだよ」と言わんばかりにさえずった。その声にアランが小鳥さんを見て

「えっ、なにこの鳥? なんだか凄く人慣れしてる? なんで、ここにいるの?」
「あー、この小鳥さん、私のお友達なの」
「友達?」
「ええ、ほら、ここの王宮で監禁されていた時、話し相手になってくれていたの」
「この鳥、しゃべれるのか!」
「うん。私が一方的に話しているだけなんだけど、ピピピって返事をしてくれるから、あの時は凄く慰められたの」

「ああ、ピピピね」
「そう、ピピピって可愛いのよ。でね、マドレーヌが好きなの」
「俺もマドレーヌ、好きだぞ」
「そ、そう良かったわ。アランもマドレーヌ食べる?」
「うん。食べる。で、この鳥の名前は何て言うんだ」
「名前、何かしら? わからないわ。小鳥さんって呼んでいたから」
「小鳥さんって、それは名前じゃないし」
「そういえば、そうね。じゃぁルナってどうかしら? ルナ!」

 何故か、頭の中にその名前が浮かんだので、私が白い小鳥さんにルナって呼びかけると、小鳥さんが光に包まれて輝いた。あっ、これアランと同じように名付けてしまったから、従者ならぬ、従鳥、じゃない、えーと、テイムした事になってペットになったという事かしら。

「おう、光った。何か、最近よく光るな。玲ちゃんの髪も光っているし」
「アランも昨日、光ったわ」
「玲ちゃん、ステータス、見てみれば? テイム、ルナって出ているんじゃない?」
「うーん。そうかも。私が名付けたら何かしら関わりができてしまうというならば、今度から気を付けないと」
「そうだよ。バカとか名付けたら、従者にバカって加わるし」
「もう、そんなわけないでしょ。ちょっと見てみるわね。ステータスオープン」

『玲。冷蔵庫(広義)と共に玲の祝福を持つ聖女』
 聖女  レベル2
 冷蔵庫 レベル5
 浄化  レベル3
 光魔法 レベル2
 水魔法 レベル3
 火魔法 レベル2
 従者  アラン(アラード・ドゥ・スピーリトゥス) レベル3 許可を得る事で冷蔵庫の恩恵を受けられる。
 聖鳥  ルナ レベル1

 聖鳥、聖鳥、って何かしら。聖獣が何とかって聞いた事があるような気がするけど、聖鳥って聖なる鳥って事で……。

「聖女のペットだから聖鳥としても、俺は聖従者じゃないんだ……」

 アラン、何だか負けたって雰囲気ですけど、聖従者なんて聞いた事もないし。それより聖なる鳥ってことが問題だと思う。
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