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28. 存在感
しおりを挟む「えーと、その、ごめんなさいね」
「あっ、いや……、なにが?」
「あの、私がアランの名前をつけたでしょ。そうしたら名付けしたと思われたみたいで、誰がそう判断したのかわからないけど従者ってステータスに出てきてしまったの」
「じゃぁ、俺はずっと前から玲ちゃんの従者だったのか。でも、名前がないと不便だし、聖女の従者だから精霊になれた?」
「どうかしら? 精霊かどうかはまだわからないわね。それと従者だから冷蔵庫に触れるようになったみたい。でも、何だか言いづらくて。日本じゃ、従者なんてないし、嫌がられるかもしれないって思って」
「いや、そうか。結果的に良かったのかも。聖女の従者なんて、何かファンタジーっぽいし」
「気にならない?」
「呼び名だけだし、別にいいかな」
「良かった。じゃぁ、アランのステータス、どうなっているのか見てみる?」
「そうだな、よし。覚悟を決めて。ステータスオープン!」
『アラン(アラード・ドゥ・スピーリトゥス)。聖女と共にある存在』レベル3
存在 レベル5→ ▽ 顕現中
キャンプ レベル3
浄化 レベル4
「見た?」
「見たわ」
「俺、顕現中だって」
「それより名前がアラード・ドゥ・スピーリトゥスってカッコ付きで出て来たわ」
「俺、アラード・ドゥ・スピーリトゥスなのかな? それとも、アラード王子って認識、されたからそうなっているのか、ああっ、もうどっちなんだよ!」
「この謎のシステムがよくわからないわね。せめて、お祖母さまの話を聞けていれば、少しは見当がついたかもしれないけど」
「玲ちゃんが名付けたからアランになったのは間違いない。アラードのほうはカッコだから……」
「あの、ほらレナード王子に会った時になんとなく懐かしいような気とかした?」
「いや、よくわかんない。レナードは最初から距離が近くて、精霊様と言いつつ凄く親しげだったし、弟と言っている時も泣いているから俺、もうどうしたらいいのか分からなくて」
「そうよね。ちょっと引いてしまうほどだったわ。それだけ弟が大切だったのね」
色々と驚きはあったけど、美丈夫なレナード王子がポロポロ涙を流しているのはビックリした。何があっても泣かない人のように見えたから。
「あのね。私が聖女である事とステータスの事は内緒にして、異世界召喚された事は話してもいいんじゃないかと思うの」
「だって、玲ちゃん、いいの?」
「私がシオリの事を知っているって事は遅かれ早かれバレてしまうと思うの。それに、アランが日本で育ったって事は言っておいたほうが良いわ。私達の付け焼刃な常識だと、この世界の常識に合わない事もこれから出てくると思う」
「つい、日本ではとか言ってしまいそうだし」
「うん。それはあるかもしれない」
アランのステータスは出っ放しだけど、顕現中の横にある▽マークが気になる。これ下にズラズラっと出てくるんじゃないかしら。
「ねぇ、アラン。そういえばアランって呼び名のままで良い?」
「良いよ。もう俺、自分の事アランだと思っているから。今更名前変えたら、レベル1とかにダウンするかもしれないし」
「それは嫌ね。それより▽マークが気になるのだけど」
「それは俺も思っていた。これ、ステータスボード? 触れるのか?」
「触ってみて」
アランが恐る恐る、ステータウボードの▽マークに触ると
存在 レベル5→ ▽ 顕現中
とあった下にズラズラとレベル1、レベル2、レベル3、レベル4、レベル5、とレベルを選べるように選択肢が出て来た。
「レベルが選べる」
「レベルによって存在感が変わるんじゃない?」
「という事はレベルを変えると隠密行動し放題って事か」
「でもついこの間までレベル2だったわ」
という事はレベル2になったら、レナード王子たち以外には声も聞こえない、という事かしら。レベル1ならレナード王子にさえ存在を認識されない?
「この存在のレベル3とか4とかはどうなんだろう?」
「私、最初からアランが見えているから私ではアランがどういう風に見えるのかわからないわ。明日、レナード王子に検証するのを手伝ってもらったらどうかしら」
「そうだね。そうしよう。ところで玲ちゃん、俺、アイスが食べたい。アイスの中にチョコレートがグルングルンしてるやつ」
「ふふっ、しょうがないわね。コーラも飲む?」
「うん」
冷たいコーラとチョコアイスの組み合わせはお腹を冷やし過ぎてしまうけど、たまにはいいと思う。だって、この世界には冷房がないから、部屋は微妙に暑い。
「そういえばさ、応接室はここより涼しくなかった?」
「そうよね。そういえばここの部屋と温度が違うかも」
私達がアイスを食べているとコンコンとノックの音がした。
ドアの所まで行って
「どうぞ」と返事をすると、レナード王子が入って来た。
「おや、この部屋は風をいれてないのか? ん? 何を食べて?」
「アイスだけど食べる?」
「ああ、頂こう」
レナード王子は全然遠慮しなかった。アイスを食べ、「これは美味いな」と喜び、コーラを飲んで「うっ!」と呻いた。
どうやらこの世界にコーラはないらしい。
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