29 / 69
27. 話し合い。
しおりを挟む
「玲ちゃん……」
「アラン」
私達は豪華な一室で頭を抱えていた。
「玲ちゃん……」
「アラード王子?」
「やだっ、俺、日本人だよ」
「そうね。でもその腕の黒子がねぇ」
「でも、年齢があわないよ。俺は二十歳の大学生だよ」
「そうなんだけど、ほら、どこからどう見ても金髪で青い目、白い肌で外国の王子様に見える。離宮に入るまで、というか祈りを捧げられるまでは茶髪だったよね」
「うん。俺、誰かに憑依した? その、アラード王子に……」
「うーん。祈りを捧げられて呪いがとけたとか? あっ、そういえば、その腕の黒子は前から在ったの?」
「……あった。小さい時から変わらない」
「その色は、金色だったの?」
「……金色だった。変わった黒子だねって昔から言われていたけど、だけど」
「アランって日本で生まれたんだよね。お母さんから。だとしたら」
「いや、」
「ん? 外国で生まれたの?」
「俺……、捨て子なんだ。家の前で泣いていたのを兄貴が拾ったんだ」
「ウソ!?」
「ホント。だから年齢さえあえば、ひょっとして異世界から日本に流されてきたのかなぁ、って思うけど」
「そうなんだ……」
私達は黙って冷たいアイスコーヒーを飲んだ。アランは砂糖とミルクをタップリと入れて。もうこれはカフェオレになっている。でも、私の髪の色も変わっているし、この世界の仕様だと考えれば。
「そういえば、玲ちゃんの髪も茶髪というよりは金髪になっているよ」
「ひ、日に当たって色が脱色?」
「玲ちゃんも本当はここの世界の人かも?」
「わ、私の親は日本人だけど、だけど、だけどそういえば、本家のお祖母さまが変な事を言っていたわ。本家の跡継ぎには伝えておかなくてはいけない事があるって」
「何?」
「今回、その話を詳しく聞くはずだったわ。本当はもっと前に聞くはずだったんだけど、お互いに都合がつかなくて、あの時も私が料理に追われていたから、指輪だけ貰って後で話を聞く事になっていたの」
「指輪?」
「そうなの。どうやって決めるのかはわからないんだけど、一族の中から跡継ぎの娘を決めるのよ。本家の長、つまり一族の長は必ず女性なの。本家の後を継ぐ娘は時折神隠しに合うって話があって、あっ、これって神隠しだわ! 眉唾モノだと思っていたし、おとぎ話の類かと思っていたけど、本当の話だとしたら」
「れ、玲ちゃん! それ、その神隠しにあった人達は帰ってきているの!?」
「神隠しにあって、神の世界でしばらく過ごして帰っているらしいわ」
「その神の世界ってこの異世界の事じゃない? つまり玲ちゃんの一族の女性が聖女としてこの異世界に時々呼び出されている」
「そうかもしれない。そうだとしたら話があうわ。でも、神隠しに会うのは本家の跡継ぎなのよ。どうして、シオリがきているのかしら?」
「異世界転移の時、そいつ、側にいたんじゃないか?」
「居たわ。ちょうど、シオリに突き飛ばされた時だもの。そうしたら、シオリは私に巻き込まれたって事?」
「神隠しって聖女召喚って事で、だから玲ちゃんは聖女」
「だけど、シオリは吹雪家とは他人というか、血のつながりはないのよ。吹雪家の人間が聖女として呼ばれるのなら何故、シオリが聖女なのかしら?」
「……うーん。たまたま?」
本当にそういえば、忘れていたけど、本家の跡継ぎは時折姿を消す事があるらしいとは噂程度に聞いた事があった。
実は私が跡継ぎになるという事は既に高校の時に話をされていて、もう養子縁組もすでに終わっている。ただ、一族に対しての正式なお披露目はまだされていなかった。跡継ぎになってしまうと縁談とかが大変なので、大学を卒業してからお披露目をする事になっていたのだ。
だから、何故お祖母さまがあの日に突然私を呼び出して指輪を渡したのかはわからない。ただ、チェーンもいただいてこの指輪は必ず身に付けておいてと言われた。
ひょっとして、突然異世界召喚されてしまった時にあの指輪が何か役割があるのかもしれない。宝石ではなく魔石だし。
「これからどうしようか? 玲ちゃん、この国というかこの国の王族とか義理の従妹、むかつくだろう?」
「そうね。冷蔵庫がなければ死んでいたかもしれないし。会いたくないし、聖女としてこの国のお役にたちたいとは思わないわ。そういう意味では隣国に行くのはいいかもしれない。でもレナード王子が聖女に用があるというのは何かしら?」
「なんだろう? 聖女に会って確認したい事があるって言ってたけど。頼みたいではなく、確認したいって何かあるのかな? この国と他の国とは微妙な関係みたいだけど、どうなっているんだろう」
「本当にね」
「聖女で良ければここにもいるけど」
「何をしたいのかわからないうちは聖女って打ち明けるのはちょっと、怖いわ」
「確かに。それにしてもこれから俺はどうしたらいいんだろう? 精霊? ってことになっているけど俺は精霊なのか?」
「ステータスを見てみたらどうかしら?」
「ああー。そうだった。でも、ちょっとみるのが怖いかも」
「精霊ってなっているかもしれないから? 光っていたものね」
「玲ちゃんこそ聖女のレベル、上がっているんじゃないか」
「そうね。ではまずは私から見てみるわね。ステータスオープン」
『玲。冷蔵庫(広義)と共に玲の祝福を持つ聖女』
聖女 レベル2
冷蔵庫 レベル5
浄化 レベル3
光魔法 レベル2
水魔法 レベル3
火魔法 レベル2
従者 アラン(アラード・ドゥ・スピーリトゥス) レベル2 許可を得る事で冷蔵庫の恩恵を受けられる。
「えっ?! 俺、玲ちゃんの従者なの?」
ああっ、しまった。見られてしまった。隠蔽するのを忘れてステータスをオープンするなんて。
なんと誤魔化そうかしら?
「アラン」
私達は豪華な一室で頭を抱えていた。
「玲ちゃん……」
「アラード王子?」
「やだっ、俺、日本人だよ」
「そうね。でもその腕の黒子がねぇ」
「でも、年齢があわないよ。俺は二十歳の大学生だよ」
「そうなんだけど、ほら、どこからどう見ても金髪で青い目、白い肌で外国の王子様に見える。離宮に入るまで、というか祈りを捧げられるまでは茶髪だったよね」
「うん。俺、誰かに憑依した? その、アラード王子に……」
「うーん。祈りを捧げられて呪いがとけたとか? あっ、そういえば、その腕の黒子は前から在ったの?」
「……あった。小さい時から変わらない」
「その色は、金色だったの?」
「……金色だった。変わった黒子だねって昔から言われていたけど、だけど」
「アランって日本で生まれたんだよね。お母さんから。だとしたら」
「いや、」
「ん? 外国で生まれたの?」
「俺……、捨て子なんだ。家の前で泣いていたのを兄貴が拾ったんだ」
「ウソ!?」
「ホント。だから年齢さえあえば、ひょっとして異世界から日本に流されてきたのかなぁ、って思うけど」
「そうなんだ……」
私達は黙って冷たいアイスコーヒーを飲んだ。アランは砂糖とミルクをタップリと入れて。もうこれはカフェオレになっている。でも、私の髪の色も変わっているし、この世界の仕様だと考えれば。
「そういえば、玲ちゃんの髪も茶髪というよりは金髪になっているよ」
「ひ、日に当たって色が脱色?」
「玲ちゃんも本当はここの世界の人かも?」
「わ、私の親は日本人だけど、だけど、だけどそういえば、本家のお祖母さまが変な事を言っていたわ。本家の跡継ぎには伝えておかなくてはいけない事があるって」
「何?」
「今回、その話を詳しく聞くはずだったわ。本当はもっと前に聞くはずだったんだけど、お互いに都合がつかなくて、あの時も私が料理に追われていたから、指輪だけ貰って後で話を聞く事になっていたの」
「指輪?」
「そうなの。どうやって決めるのかはわからないんだけど、一族の中から跡継ぎの娘を決めるのよ。本家の長、つまり一族の長は必ず女性なの。本家の後を継ぐ娘は時折神隠しに合うって話があって、あっ、これって神隠しだわ! 眉唾モノだと思っていたし、おとぎ話の類かと思っていたけど、本当の話だとしたら」
「れ、玲ちゃん! それ、その神隠しにあった人達は帰ってきているの!?」
「神隠しにあって、神の世界でしばらく過ごして帰っているらしいわ」
「その神の世界ってこの異世界の事じゃない? つまり玲ちゃんの一族の女性が聖女としてこの異世界に時々呼び出されている」
「そうかもしれない。そうだとしたら話があうわ。でも、神隠しに会うのは本家の跡継ぎなのよ。どうして、シオリがきているのかしら?」
「異世界転移の時、そいつ、側にいたんじゃないか?」
「居たわ。ちょうど、シオリに突き飛ばされた時だもの。そうしたら、シオリは私に巻き込まれたって事?」
「神隠しって聖女召喚って事で、だから玲ちゃんは聖女」
「だけど、シオリは吹雪家とは他人というか、血のつながりはないのよ。吹雪家の人間が聖女として呼ばれるのなら何故、シオリが聖女なのかしら?」
「……うーん。たまたま?」
本当にそういえば、忘れていたけど、本家の跡継ぎは時折姿を消す事があるらしいとは噂程度に聞いた事があった。
実は私が跡継ぎになるという事は既に高校の時に話をされていて、もう養子縁組もすでに終わっている。ただ、一族に対しての正式なお披露目はまだされていなかった。跡継ぎになってしまうと縁談とかが大変なので、大学を卒業してからお披露目をする事になっていたのだ。
だから、何故お祖母さまがあの日に突然私を呼び出して指輪を渡したのかはわからない。ただ、チェーンもいただいてこの指輪は必ず身に付けておいてと言われた。
ひょっとして、突然異世界召喚されてしまった時にあの指輪が何か役割があるのかもしれない。宝石ではなく魔石だし。
「これからどうしようか? 玲ちゃん、この国というかこの国の王族とか義理の従妹、むかつくだろう?」
「そうね。冷蔵庫がなければ死んでいたかもしれないし。会いたくないし、聖女としてこの国のお役にたちたいとは思わないわ。そういう意味では隣国に行くのはいいかもしれない。でもレナード王子が聖女に用があるというのは何かしら?」
「なんだろう? 聖女に会って確認したい事があるって言ってたけど。頼みたいではなく、確認したいって何かあるのかな? この国と他の国とは微妙な関係みたいだけど、どうなっているんだろう」
「本当にね」
「聖女で良ければここにもいるけど」
「何をしたいのかわからないうちは聖女って打ち明けるのはちょっと、怖いわ」
「確かに。それにしてもこれから俺はどうしたらいいんだろう? 精霊? ってことになっているけど俺は精霊なのか?」
「ステータスを見てみたらどうかしら?」
「ああー。そうだった。でも、ちょっとみるのが怖いかも」
「精霊ってなっているかもしれないから? 光っていたものね」
「玲ちゃんこそ聖女のレベル、上がっているんじゃないか」
「そうね。ではまずは私から見てみるわね。ステータスオープン」
『玲。冷蔵庫(広義)と共に玲の祝福を持つ聖女』
聖女 レベル2
冷蔵庫 レベル5
浄化 レベル3
光魔法 レベル2
水魔法 レベル3
火魔法 レベル2
従者 アラン(アラード・ドゥ・スピーリトゥス) レベル2 許可を得る事で冷蔵庫の恩恵を受けられる。
「えっ?! 俺、玲ちゃんの従者なの?」
ああっ、しまった。見られてしまった。隠蔽するのを忘れてステータスをオープンするなんて。
なんと誤魔化そうかしら?
6
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる