冷女が聖女。

サラ

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27. 話し合い。

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「玲ちゃん……」
「アラン」

 私達は豪華な一室で頭を抱えていた。

「玲ちゃん……」
「アラード王子?」
「やだっ、俺、日本人だよ」
「そうね。でもその腕の黒子がねぇ」
「でも、年齢があわないよ。俺は二十歳の大学生だよ」
「そうなんだけど、ほら、どこからどう見ても金髪で青い目、白い肌で外国の王子様に見える。離宮に入るまで、というか祈りを捧げられるまでは茶髪だったよね」

「うん。俺、誰かに憑依した? その、アラード王子に……」
「うーん。祈りを捧げられて呪いがとけたとか? あっ、そういえば、その腕の黒子は前から在ったの?」
「……あった。小さい時から変わらない」
「その色は、金色だったの?」
「……金色だった。変わった黒子だねって昔から言われていたけど、だけど」
「アランって日本で生まれたんだよね。お母さんから。だとしたら」

「いや、」
「ん? 外国で生まれたの?」
「俺……、捨て子なんだ。家の前で泣いていたのを兄貴が拾ったんだ」
「ウソ!?」
「ホント。だから年齢さえあえば、ひょっとして異世界から日本に流されてきたのかなぁ、って思うけど」
「そうなんだ……」

 私達は黙って冷たいアイスコーヒーを飲んだ。アランは砂糖とミルクをタップリと入れて。もうこれはカフェオレになっている。でも、私の髪の色も変わっているし、この世界の仕様だと考えれば。

「そういえば、玲ちゃんの髪も茶髪というよりは金髪になっているよ」
「ひ、日に当たって色が脱色?」
「玲ちゃんも本当はここの世界の人かも?」
「わ、私の親は日本人だけど、だけど、だけどそういえば、本家のお祖母さまが変な事を言っていたわ。本家の跡継ぎには伝えておかなくてはいけない事があるって」

「何?」
「今回、その話を詳しく聞くはずだったわ。本当はもっと前に聞くはずだったんだけど、お互いに都合がつかなくて、あの時も私が料理に追われていたから、指輪だけ貰って後で話を聞く事になっていたの」
「指輪?」
「そうなの。どうやって決めるのかはわからないんだけど、一族の中から跡継ぎの娘を決めるのよ。本家の長、つまり一族の長は必ず女性なの。本家の後を継ぐ娘は時折神隠しに合うって話があって、あっ、これって神隠しだわ! 眉唾モノだと思っていたし、おとぎ話の類かと思っていたけど、本当の話だとしたら」

「れ、玲ちゃん! それ、その神隠しにあった人達は帰ってきているの!?」
「神隠しにあって、神の世界でしばらく過ごして帰っているらしいわ」
「その神の世界ってこの異世界の事じゃない? つまり玲ちゃんの一族の女性が聖女としてこの異世界に時々呼び出されている」
「そうかもしれない。そうだとしたら話があうわ。でも、神隠しに会うのは本家の跡継ぎなのよ。どうして、シオリがきているのかしら?」

「異世界転移の時、そいつ、側にいたんじゃないか?」
「居たわ。ちょうど、シオリに突き飛ばされた時だもの。そうしたら、シオリは私に巻き込まれたって事?」
「神隠しって聖女召喚って事で、だから玲ちゃんは聖女」
「だけど、シオリは吹雪家とは他人というか、血のつながりはないのよ。吹雪家の人間が聖女として呼ばれるのなら何故、シオリが聖女なのかしら?」
「……うーん。たまたま?」

 本当にそういえば、忘れていたけど、本家の跡継ぎは時折姿を消す事があるらしいとは噂程度に聞いた事があった。
 実は私が跡継ぎになるという事は既に高校の時に話をされていて、もう養子縁組もすでに終わっている。ただ、一族に対しての正式なお披露目はまだされていなかった。跡継ぎになってしまうと縁談とかが大変なので、大学を卒業してからお披露目をする事になっていたのだ。

 だから、何故お祖母さまがあの日に突然私を呼び出して指輪を渡したのかはわからない。ただ、チェーンもいただいてこの指輪は必ず身に付けておいてと言われた。
 ひょっとして、突然異世界召喚されてしまった時にあの指輪が何か役割があるのかもしれない。宝石ではなく魔石だし。

「これからどうしようか? 玲ちゃん、この国というかこの国の王族とか義理の従妹、むかつくだろう?」
「そうね。冷蔵庫がなければ死んでいたかもしれないし。会いたくないし、聖女としてこの国のお役にたちたいとは思わないわ。そういう意味では隣国に行くのはいいかもしれない。でもレナード王子が聖女に用があるというのは何かしら?」
「なんだろう? 聖女に会って確認したい事があるって言ってたけど。頼みたいではなく、確認したいって何かあるのかな? この国と他の国とは微妙な関係みたいだけど、どうなっているんだろう」
「本当にね」

「聖女で良ければここにもいるけど」
「何をしたいのかわからないうちは聖女って打ち明けるのはちょっと、怖いわ」
「確かに。それにしてもこれから俺はどうしたらいいんだろう? 精霊? ってことになっているけど俺は精霊なのか?」
「ステータスを見てみたらどうかしら?」
「ああー。そうだった。でも、ちょっとみるのが怖いかも」
「精霊ってなっているかもしれないから? 光っていたものね」
「玲ちゃんこそ聖女のレベル、上がっているんじゃないか」
「そうね。ではまずは私から見てみるわね。ステータスオープン」

『玲。冷蔵庫(広義)と共に玲の祝福を持つ聖女』

 聖女  レベル2
 冷蔵庫 レベル5
 浄化  レベル3
 光魔法 レベル2
 水魔法 レベル3
 火魔法 レベル2
 従者  アラン(アラード・ドゥ・スピーリトゥス) レベル2 許可を得る事で冷蔵庫の恩恵を受けられる。

「えっ?! 俺、玲ちゃんの従者なの?」

 ああっ、しまった。見られてしまった。隠蔽するのを忘れてステータスをオープンするなんて。
 なんと誤魔化そうかしら?
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