27 / 69
25. アランが大変。
しおりを挟む
遂に着いてしまった。
離宮に入り魔道車から降りると、直ぐに使用人の人々が並ぶ通路を通り、大きな玄関をくぐって離宮内部に案内される。そこには離宮で働く人々が詰めかけていた。レナード様は皆から慕われているのだろうか、居心地が良い温かい空気に迎えられた。
礼節はきちんとしているのだけど、フレンドリーというかアットホームな雰囲気が私達を包んでくれる。レナード王子様御一行のみならず、私達に対してもとても感じが良くて驚いてしまった。
前、この国の王宮に突然召喚されてしまった時の威圧的で冷たい雰囲気とは全然違う。働いている人もとても暖かい。
「レナード様、ようこそ。お待ちしておりました」
「こちらの方は初めましてですね。新しいお付きの方ですか?」
「いや、彼らは客人だ。とりあえず彼女は侍従という事にしているが」
「彼ら? ですか」
「彼ではなく彼女? 彼女が侍従? 侍女ではなく?」
「そう、美少年にみえるだろう?」
「……、何かご事情があるのですね」
「ああ、それと、見えないが精霊様も彼女と共にいらしている。それと彼女たちは事情があって侍従という形で我が国に来てもらおう、と思っている」
「「精霊様!」」
「精霊様がこちらにいらっしゃるのですか」
「ああ、姿は見えないがここに確かにいらっしゃる。我々は精霊様としばらく過ごし、そして、こちらへ来ていただいた」
どよめく隣国の人々に対し、レナード王子は胸を張った。そして、アランに向かって恭しい態度で
「アラン様、ようこそブルーバード国の離宮へ。歓迎いたします」ときれいなお辞儀をした
「なんと有難い事だ」
「精霊様に来ていただけるなんて」
「生きているうちに精霊様にお目にかかれるなんて」
そうして、彼らはアランのほうを見た。いえ、見えてないはずなんだけどレナード王子が私の横にいるアランのほうにお辞儀をしたものだから私の横に向かって手を合わせて拝んでくれた。
離宮のエントランスにはレナード王子の為に人々が集まっていて、その沢山の人たちが一斉にアランに向かって拝むものだから私は隣に立っているだけで、何だか居たたまれない気持ちになってしまった。アランに至っては困った顔でちょっと上を向いている。
そうして、皆が拝んでいると突然、ピカーッとアランが光輝いた。見えないはずのアランの姿が段々と輪郭を現し、具現化してしまった。というより、透明化、幽霊化が解けた。アランがビックリしてるけど、私も驚いた。
「おお、精霊様が降臨してくださった」
「なんと神々しいお姿だ」
「美しい光だ」
「ありがたや、ありがたや」
人々がどよめく、
「あ、アラン、姿が見える!」
「ああ、本当だ。皆が俺を見てる」
「アラン様、アラン様、お姿が」
「レナード様に似ている」
「えっ、本当だわ。並べて見るとよく似てる。まるで兄弟みたい」
レナード王子をみると口を開けたままアランを凝視している。
王子さまなのに、その口を閉じて!
他の皆も離宮の皆さんはどよめきつつも拝んでいるけど、レナード王子様御一行は何だか、違う驚きでアランの事を見ているみたいだった。
その後、多分執事だと思われる人に促されて応接室に連れて行かれた。
「どうぞこちらへ今お茶をご用意します。何かお好みはございますか?」
「いえ、特には。でもミルクティーでお願いします」
「畏まりました。精霊様、アラン様とお呼びしたほうがいいのでしょうか? 何かお好みはございますか?」
「あ、ああ。何でもかまわない」
「……はい。畏まりました」
多分執事さん、精霊様も飲んだり食べたりするんだろうか、とか一瞬考えたんだと思う。精霊だから花の蜜とか思ったのかもしれない。運ばれてきたお茶には沢山の種類の蜂蜜が用意されていた。
「それは蜂蜜ですか?」
という私の言葉にこれはサンラク地区のこういった特色のある蜜で、こちらの蜜の特徴はすっきりとした味わいが特徴のミルリィの花の蜜でございます、etc.と蜂蜜の説明をアランに向かってしていたから彼なりに精霊に気を使ってくれたのかもしれない。
「それで、祈りの力により精霊様の姿が具現化したわけだが……」
「しかし、そのお顔は……」
「並べて見ると凄くよく似ているというか、精霊様、お顔に王家の特徴をお持ちですよね」
「王家の特徴!?」
「ええ、そのうえ、ちょっと失礼」
しばらく呆けた顔で応接室まで付いて来て、それから何か考え込んでいたレナード王子は突然立ち上がると、アランの側に近寄り、着ていた服の袖をまくり上げた。
「ええっ?」
アランの二の腕には三角形に並んだ金の黒子があった。珍しい。というか黒子は普通黒か茶色だと思うけど、アランの黒子は金色だった。ちょうどアランの金髪のように。
えっ? アランって茶髪だったよね? いつのまに金髪になったんだろう?
「ああ、やはり、この位置だ。まちがいない。生まれて直ぐに確認して何度も触った覚えがある」
「本当に?!」
「良かった! 嬉しい! どうしよう。大切な、消えてしまった弟が精霊になって帰ってきた」
「「弟?!」」
レナード王子は泣いていた。
アラン……異世界の王子様だったらしい。日本人じゃなかったの?
ええ?! 本当に? どうなっているの?
離宮に入り魔道車から降りると、直ぐに使用人の人々が並ぶ通路を通り、大きな玄関をくぐって離宮内部に案内される。そこには離宮で働く人々が詰めかけていた。レナード様は皆から慕われているのだろうか、居心地が良い温かい空気に迎えられた。
礼節はきちんとしているのだけど、フレンドリーというかアットホームな雰囲気が私達を包んでくれる。レナード王子様御一行のみならず、私達に対してもとても感じが良くて驚いてしまった。
前、この国の王宮に突然召喚されてしまった時の威圧的で冷たい雰囲気とは全然違う。働いている人もとても暖かい。
「レナード様、ようこそ。お待ちしておりました」
「こちらの方は初めましてですね。新しいお付きの方ですか?」
「いや、彼らは客人だ。とりあえず彼女は侍従という事にしているが」
「彼ら? ですか」
「彼ではなく彼女? 彼女が侍従? 侍女ではなく?」
「そう、美少年にみえるだろう?」
「……、何かご事情があるのですね」
「ああ、それと、見えないが精霊様も彼女と共にいらしている。それと彼女たちは事情があって侍従という形で我が国に来てもらおう、と思っている」
「「精霊様!」」
「精霊様がこちらにいらっしゃるのですか」
「ああ、姿は見えないがここに確かにいらっしゃる。我々は精霊様としばらく過ごし、そして、こちらへ来ていただいた」
どよめく隣国の人々に対し、レナード王子は胸を張った。そして、アランに向かって恭しい態度で
「アラン様、ようこそブルーバード国の離宮へ。歓迎いたします」ときれいなお辞儀をした
「なんと有難い事だ」
「精霊様に来ていただけるなんて」
「生きているうちに精霊様にお目にかかれるなんて」
そうして、彼らはアランのほうを見た。いえ、見えてないはずなんだけどレナード王子が私の横にいるアランのほうにお辞儀をしたものだから私の横に向かって手を合わせて拝んでくれた。
離宮のエントランスにはレナード王子の為に人々が集まっていて、その沢山の人たちが一斉にアランに向かって拝むものだから私は隣に立っているだけで、何だか居たたまれない気持ちになってしまった。アランに至っては困った顔でちょっと上を向いている。
そうして、皆が拝んでいると突然、ピカーッとアランが光輝いた。見えないはずのアランの姿が段々と輪郭を現し、具現化してしまった。というより、透明化、幽霊化が解けた。アランがビックリしてるけど、私も驚いた。
「おお、精霊様が降臨してくださった」
「なんと神々しいお姿だ」
「美しい光だ」
「ありがたや、ありがたや」
人々がどよめく、
「あ、アラン、姿が見える!」
「ああ、本当だ。皆が俺を見てる」
「アラン様、アラン様、お姿が」
「レナード様に似ている」
「えっ、本当だわ。並べて見るとよく似てる。まるで兄弟みたい」
レナード王子をみると口を開けたままアランを凝視している。
王子さまなのに、その口を閉じて!
他の皆も離宮の皆さんはどよめきつつも拝んでいるけど、レナード王子様御一行は何だか、違う驚きでアランの事を見ているみたいだった。
その後、多分執事だと思われる人に促されて応接室に連れて行かれた。
「どうぞこちらへ今お茶をご用意します。何かお好みはございますか?」
「いえ、特には。でもミルクティーでお願いします」
「畏まりました。精霊様、アラン様とお呼びしたほうがいいのでしょうか? 何かお好みはございますか?」
「あ、ああ。何でもかまわない」
「……はい。畏まりました」
多分執事さん、精霊様も飲んだり食べたりするんだろうか、とか一瞬考えたんだと思う。精霊だから花の蜜とか思ったのかもしれない。運ばれてきたお茶には沢山の種類の蜂蜜が用意されていた。
「それは蜂蜜ですか?」
という私の言葉にこれはサンラク地区のこういった特色のある蜜で、こちらの蜜の特徴はすっきりとした味わいが特徴のミルリィの花の蜜でございます、etc.と蜂蜜の説明をアランに向かってしていたから彼なりに精霊に気を使ってくれたのかもしれない。
「それで、祈りの力により精霊様の姿が具現化したわけだが……」
「しかし、そのお顔は……」
「並べて見ると凄くよく似ているというか、精霊様、お顔に王家の特徴をお持ちですよね」
「王家の特徴!?」
「ええ、そのうえ、ちょっと失礼」
しばらく呆けた顔で応接室まで付いて来て、それから何か考え込んでいたレナード王子は突然立ち上がると、アランの側に近寄り、着ていた服の袖をまくり上げた。
「ええっ?」
アランの二の腕には三角形に並んだ金の黒子があった。珍しい。というか黒子は普通黒か茶色だと思うけど、アランの黒子は金色だった。ちょうどアランの金髪のように。
えっ? アランって茶髪だったよね? いつのまに金髪になったんだろう?
「ああ、やはり、この位置だ。まちがいない。生まれて直ぐに確認して何度も触った覚えがある」
「本当に?!」
「良かった! 嬉しい! どうしよう。大切な、消えてしまった弟が精霊になって帰ってきた」
「「弟?!」」
レナード王子は泣いていた。
アラン……異世界の王子様だったらしい。日本人じゃなかったの?
ええ?! 本当に? どうなっているの?
6
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完)聖女様は頑張らない
青空一夏
ファンタジー
私は大聖女様だった。歴史上最強の聖女だった私はそのあまりに強すぎる力から、悪魔? 魔女?と疑われ追放された。
それも命を救ってやったカール王太子の命令により追放されたのだ。あの恩知らずめ! 侯爵令嬢の色香に負けやがって。本物の聖女より偽物美女の侯爵令嬢を選びやがった。
私は逃亡中に足をすべらせ死んだ? と思ったら聖女認定の最初の日に巻き戻っていた!!
もう全力でこの国の為になんか働くもんか!
異世界ゆるふわ設定ご都合主義ファンタジー。よくあるパターンの聖女もの。ラブコメ要素ありです。楽しく笑えるお話です。(多分😅)
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】慈愛の聖女様は、告げました。
BBやっこ
ファンタジー
1.契約を自分勝手に曲げた王子の誓いは、どうなるのでしょう?
2.非道を働いた者たちへ告げる聖女の言葉は?
3.私は誓い、祈りましょう。
ずっと修行を教えを受けたままに、慈愛を持って。
しかし。、誰のためのものなのでしょう?戸惑いも悲しみも成長の糧に。
後に、慈愛の聖女と言われる少女の羽化の時。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
召喚聖女に嫌われた召喚娘
ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。
どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる