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24. 離宮へ。
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山奥にある川の畔から王都まで隣国の第二王子、レオーナ・ドゥ・スピーリトゥスさま御一行と一緒に同道した。
彼らは街道に出ると組み立て式の魔道馬車? を取り出した。そして素早く組み立てると何という事でしょう! 馬のいない馬車が出来上がった。いや、馬の姿をした人形、いや、馬だから馬形? 生きてないのはすぐわかるから張りぼて? だろうか、剥製とも違う良く出来た馬の偽物が付いている。一応、馬がひく形にはなっているからこれは馬車でいいのだろうか。
「すごい、これ何ですか?」
「我が国が誇る最新鋭の魔道車です」
「魔道車……この馬が牽くんですか?」
「馬は飾りですね。馬車だけが走っているとかなり驚かれるので馬を付けました。馬無しでも走れますよ」
「偽物の馬でもついているだけで、割と人は気にしない、というか気づかないものなんです。馬車だけで走っていると、必ずといっていいほど人が付いてきますし、取り囲まれます」
「でも、停まったら普通の馬車と違うってわかるのでは?」
「停まる時は収納しますので問題はないです」
「そうなんですか……」
収納は問題ないんだ、って思ったけどこの世界の常識がないから良く分からない。でも異世界だし何でもありなのかもしれない。
夜になると馬車のそばで野営をして、領都に着いた時は宿を取った。その宿は高級店で3階を貸し切ったのでノンビリと過ごす事が出来た。
アランも人目がないので王子たちと話をして楽しそうだ。やっぱり幽霊状態なので声を出すのは控えているみたいで、私達だけになるとお喋りになる。アランも早く普通の人にしてあげたいと思うけど、やっぱり存在レベルが上がらないといけないのかもしれない。
以前、王都からこの領都に来た時は慌ただしく逃げたので分からなかったけれど、ここは結構大きな街だった。
私達はちょっとだけレオーナ王子と一緒に観光をした。異世界の街並みは異国情緒にあふれていて、昔のヨーロッパの街並みを思わせる石造りの建物に賑やかな市場の様子は見ているだけでも面白かった。
宿で出る食事も普通の西洋料理というか、コッテリとしたソースのかかったお肉に蒸した野菜、スープもそれなりのお味だった。でも、これが続くと飽きるかもしれないと思う。
領都に入る時の身分証明書は私の持っている証明書ではなく、レオーナ王子が用意してくれた従者としての身分証を使った。つまり書類上、私は隣国の住人という事になる。これは有難い。
この国で作った身分証は魔力の登録がしてあるので偽造はできない。だから、もし、身分証で追っかけようとすれば、身柄を確保されてしまうかもしれない。
でも、隣国の身分証は魔力ではなく、個人特有の血液で登録するそうだ。魔力は双子だと同じ反応をしてしまう事があるらしい。以前は他の国でも身分証は魔力で作っていたけれど、庶民の中には魔力が微弱の為に登録しづらい人もいる、という欠点があったらしい。
「この国は色々と遅れているのですよ」
「他の国と比べるとね」
「それでも、割と大きな顔をしているのは聖女の存在があるから」
「この世界で聖女が存在するのはこの国だけだからね」
「聖獣はいないけど」
「聖獣?」
「そう、もう何百年も聖獣の存在は確認されていない。本来なら聖女の側に聖獣がいてこの世界全体を守護してくれるはずなんだけど」
「聖獣のいない聖女だと一つの国を守護するのが精いっぱい」
「他の国は聖女がいなくて大丈夫なんですか?」
「聖女ほどではなくても乙女たちが聖女の役目を請け負っているから」
「でも、流石に負担が大きくて大変なんだ」
「この国では聖獣の存在は表ざたになってない。なぜなら、聖獣が消えた原因はこの国にあると思われるから。長い時間をおいて、この国は聖獣の存在を消したんだ」
「聖獣が居なくても聖女がいれば自分たちの国だけは守れるからな」
「えーと」
「一応、タブーみたいになっているから人前ではこの話はなしで」
「あっ、はい」
何だか国と国で色々と複雑な事情があるらしい。けど、聞いてしまうと巻き込まれてしまうような気がするから聞かない事にしよう。
私たち私とアランは、世捨て人で無口の父と人里離れた山奥で暮らしていたが、父が亡くなったので旅に出た、という設定のままにしている。
とある村で少し働いていたけど、アランの存在は隠さなくてはいけなくて、でも、複数の人たちから花嫁候補にされて、夜這いされそうになったので、慌てて逃げてきた、という話はしている。
だので、この国の身分証明は念のため、使いたくないという私にレオーナ王子があっさりと隣国の身分証を発行してくれたのだ。その場でササッと手続きしてくれたのに驚くと、レオーナ王子にはそういう権限があり、精霊が付いている人間に悪い人は居ないという事で問題はないそうだ。
そうして恙無く短い旅は終わり、この国の王都そして王宮についてしまった。王都に入る時も、王宮に入る時もあっさりと入れてしまった。
隣国の離宮は王宮に繋がっていて、王宮の正門から少し離れたところに離宮の入り口があり、そこから馬車事入城する事が出来た。
一応、門を守る人はいるけど、この国の兵士の他に隣国の門番もいて、これ、どういう関係なんだろうと思いつつ、私達は王宮の一部となっている離宮の客人となった。
彼らは街道に出ると組み立て式の魔道馬車? を取り出した。そして素早く組み立てると何という事でしょう! 馬のいない馬車が出来上がった。いや、馬の姿をした人形、いや、馬だから馬形? 生きてないのはすぐわかるから張りぼて? だろうか、剥製とも違う良く出来た馬の偽物が付いている。一応、馬がひく形にはなっているからこれは馬車でいいのだろうか。
「すごい、これ何ですか?」
「我が国が誇る最新鋭の魔道車です」
「魔道車……この馬が牽くんですか?」
「馬は飾りですね。馬車だけが走っているとかなり驚かれるので馬を付けました。馬無しでも走れますよ」
「偽物の馬でもついているだけで、割と人は気にしない、というか気づかないものなんです。馬車だけで走っていると、必ずといっていいほど人が付いてきますし、取り囲まれます」
「でも、停まったら普通の馬車と違うってわかるのでは?」
「停まる時は収納しますので問題はないです」
「そうなんですか……」
収納は問題ないんだ、って思ったけどこの世界の常識がないから良く分からない。でも異世界だし何でもありなのかもしれない。
夜になると馬車のそばで野営をして、領都に着いた時は宿を取った。その宿は高級店で3階を貸し切ったのでノンビリと過ごす事が出来た。
アランも人目がないので王子たちと話をして楽しそうだ。やっぱり幽霊状態なので声を出すのは控えているみたいで、私達だけになるとお喋りになる。アランも早く普通の人にしてあげたいと思うけど、やっぱり存在レベルが上がらないといけないのかもしれない。
以前、王都からこの領都に来た時は慌ただしく逃げたので分からなかったけれど、ここは結構大きな街だった。
私達はちょっとだけレオーナ王子と一緒に観光をした。異世界の街並みは異国情緒にあふれていて、昔のヨーロッパの街並みを思わせる石造りの建物に賑やかな市場の様子は見ているだけでも面白かった。
宿で出る食事も普通の西洋料理というか、コッテリとしたソースのかかったお肉に蒸した野菜、スープもそれなりのお味だった。でも、これが続くと飽きるかもしれないと思う。
領都に入る時の身分証明書は私の持っている証明書ではなく、レオーナ王子が用意してくれた従者としての身分証を使った。つまり書類上、私は隣国の住人という事になる。これは有難い。
この国で作った身分証は魔力の登録がしてあるので偽造はできない。だから、もし、身分証で追っかけようとすれば、身柄を確保されてしまうかもしれない。
でも、隣国の身分証は魔力ではなく、個人特有の血液で登録するそうだ。魔力は双子だと同じ反応をしてしまう事があるらしい。以前は他の国でも身分証は魔力で作っていたけれど、庶民の中には魔力が微弱の為に登録しづらい人もいる、という欠点があったらしい。
「この国は色々と遅れているのですよ」
「他の国と比べるとね」
「それでも、割と大きな顔をしているのは聖女の存在があるから」
「この世界で聖女が存在するのはこの国だけだからね」
「聖獣はいないけど」
「聖獣?」
「そう、もう何百年も聖獣の存在は確認されていない。本来なら聖女の側に聖獣がいてこの世界全体を守護してくれるはずなんだけど」
「聖獣のいない聖女だと一つの国を守護するのが精いっぱい」
「他の国は聖女がいなくて大丈夫なんですか?」
「聖女ほどではなくても乙女たちが聖女の役目を請け負っているから」
「でも、流石に負担が大きくて大変なんだ」
「この国では聖獣の存在は表ざたになってない。なぜなら、聖獣が消えた原因はこの国にあると思われるから。長い時間をおいて、この国は聖獣の存在を消したんだ」
「聖獣が居なくても聖女がいれば自分たちの国だけは守れるからな」
「えーと」
「一応、タブーみたいになっているから人前ではこの話はなしで」
「あっ、はい」
何だか国と国で色々と複雑な事情があるらしい。けど、聞いてしまうと巻き込まれてしまうような気がするから聞かない事にしよう。
私たち私とアランは、世捨て人で無口の父と人里離れた山奥で暮らしていたが、父が亡くなったので旅に出た、という設定のままにしている。
とある村で少し働いていたけど、アランの存在は隠さなくてはいけなくて、でも、複数の人たちから花嫁候補にされて、夜這いされそうになったので、慌てて逃げてきた、という話はしている。
だので、この国の身分証明は念のため、使いたくないという私にレオーナ王子があっさりと隣国の身分証を発行してくれたのだ。その場でササッと手続きしてくれたのに驚くと、レオーナ王子にはそういう権限があり、精霊が付いている人間に悪い人は居ないという事で問題はないそうだ。
そうして恙無く短い旅は終わり、この国の王都そして王宮についてしまった。王都に入る時も、王宮に入る時もあっさりと入れてしまった。
隣国の離宮は王宮に繋がっていて、王宮の正門から少し離れたところに離宮の入り口があり、そこから馬車事入城する事が出来た。
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