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小話2 私の世界(シオリ視点)
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「聖女様、どうぞこちらでお寛ぎください」
「聖女様、なんて美しい」
「このような方が来てくださって本当に良かった」
「これでこの国も安泰だ」
まさかの異世界転移、ウッソーと思ったら、私が聖女と言われた。
周りの連中がチヤホヤしてくれるのが気持ちいい。凄いイケメンの王子様が優しく手を取ってエスコートって言うのかしら、優しく微笑みながら豪華な部屋に連れて行ってくれた。紅茶と焼き菓子が出てきて座り心地の良いソファーに腰かけると、王子様がそっと隣に座った。
聖女召喚、まさかこんな事が起こるなんて。聖女様っていわれて本当にラッキーと思った。一緒に召喚されてきた玲は昔から気にくわない娘で、いい子ぶっているのが嫌いだった。いつも本ばかり読んでいて、それでいて成績は良いし何故か料理が美味い。悔しいけど妙に美味しい物を作るからそれだけは認めてあげてもいいけど。
昔からやたら比べられるのがホント嫌だった。
でも、大きくなってからは、素材は悪くないのに化粧も薄いし、眼鏡かけてるし服装もパッとしないから断然私のほうが、目立つようになった。
街で一緒に歩いていると必ず皆、私のほうを見るし、声をかけられるのも、私。
おかげで優越感に浸れるようになったのは楽しい。
子供のころからよく遊びに行ってあげてたのに、大きくなるにつれて留守がちになって、あまり一緒に遊べなくなった。母さんからもあまりお邪魔をしてはダメ! といわれるし、親戚なんだからいいと思うんだけど。
親戚なんだからちょっと気になった物を借りても良いと思うのに、割とケチだし、黙って借りてると返してとか言われるのはウザい。ずっと使わないなら私が使ってあげたほうが断然良いと思う。
なかなか会えなくなったからワザワザ大学まで行って、付き合わせようとすると私の姿を見て逃げようとするから、頭にくる。アンタは私の引き立て役なのに。
本家の集まりだと玲ばかり褒められるし、お祖母さまは冷の事を跡継ぎに考えているみたい。オカシイ。玲よりも私のほうがずっと華やかなのに。
本家の後を継ぐ娘には凄く綺麗なサファイアの指輪を貰えるんですって。小さい頃お祖母さまが指輪を付けているのを見て、ずっとアレが欲しいと思っていた。私が跡継ぎでもいいと思う。
何とかしたい、って思っていたら、まさかの異世界召喚。でも、こっちでは私が聖女だから圧倒的に上の立場、ってのは気持ちが良い。
ここんとこ王子様や色んな人に褒められて、アニメの中に出てくるような綺麗なドレスをきたり、宝飾品も沢山もらって、パーティーが続いていたから、すっかり忘れていたけど、そういえば玲を下女にしたんだった。
せっかくだから、玲に私の美しいドレス姿を自慢したい。下女になった玲が美しい私に見惚れて、みじめな気持ちになるなんて、ちょっとワクワクする。
それに、最近ここの料理に飽きてきた。やっぱり和食が食べたい。玲は料理の腕だけは確かだから何か作らせればいいか。では、さっそく、とベルを鳴らした。
「聖女様、お呼びでしょうか」
「ええ、玲を呼んでちょうだい」
「レイ? でございますか?」
「ええ、私と一緒に別の世界から来た下女よ」
「下女のレイ、でございますね」
「ええ、こちらへ呼んでちょうだい」
「はい。お待ちくださいませ」
そうして、しばらくして侍女長がやって来た。
「聖女様、レイはこの王宮にはおりません」
「ええ!? どういう事?」
「レイは、本人が望みましたので、市井にて一市民として暮らす事になりました」
「ええ! どうして! 私は下女にして、と言ったはずでしょ!」
「レイの手癖が悪いという事でしたので、そんな下女は王宮には置いておけない、という事になりました。しかし、それなりの金子は渡しておりますし、身分証も作らせましたので慎ましやかに過ごしているかと思われます」
「レイは和食が作れるのよ」
「ワショク? でございますか?」
「向こうの世界のご飯」
侍女長は首を傾げていたが私にはこの世界の材料で和食を作る説明はうまくできないし、第一、玲が説明して作ったほうが早い。
それに玲の舌は確かだからこの世界でもなんとかして和食を作れると思う。ああ、食べたいと思いだしたら本当に食べたくなってきた。もう、こっちの世界の料理は飽きてきた。何か、割と代わり映えのない味付けなんだよね。同じ西洋料理でも、玲だったら何か一工夫しそうだもの。
「とにかく、玲を探して連れてきて!」
「こちらに、でございますか?」
「ええ、そうよ。玲のご飯が食べたいの」
「……お食事でございますか」
「ええ、街にいるなら探して連れてきて。あれは料理の腕は確かなのよ。玲の作ったご飯が食べたいわ」
「か、畏まりました」
「早くね」
「は、はい」
まったく、用のある時にいないなんて役にたたない。けど、側にいて時折、呼び出して格の違いを見せつけるほうが楽しいし、玲の料理も食べられるのは良いよね。手癖が悪いと言ったのは失敗だったかもしれないけど、常に監視役を付けておくようにいえばいいし。
ホントは手癖、悪くないから問題も起きない。めでたし、めでたし。
あ~あ、早く和食が食べたい。全くどこで何してんのよ! 玲のばか!
「聖女様、なんて美しい」
「このような方が来てくださって本当に良かった」
「これでこの国も安泰だ」
まさかの異世界転移、ウッソーと思ったら、私が聖女と言われた。
周りの連中がチヤホヤしてくれるのが気持ちいい。凄いイケメンの王子様が優しく手を取ってエスコートって言うのかしら、優しく微笑みながら豪華な部屋に連れて行ってくれた。紅茶と焼き菓子が出てきて座り心地の良いソファーに腰かけると、王子様がそっと隣に座った。
聖女召喚、まさかこんな事が起こるなんて。聖女様っていわれて本当にラッキーと思った。一緒に召喚されてきた玲は昔から気にくわない娘で、いい子ぶっているのが嫌いだった。いつも本ばかり読んでいて、それでいて成績は良いし何故か料理が美味い。悔しいけど妙に美味しい物を作るからそれだけは認めてあげてもいいけど。
昔からやたら比べられるのがホント嫌だった。
でも、大きくなってからは、素材は悪くないのに化粧も薄いし、眼鏡かけてるし服装もパッとしないから断然私のほうが、目立つようになった。
街で一緒に歩いていると必ず皆、私のほうを見るし、声をかけられるのも、私。
おかげで優越感に浸れるようになったのは楽しい。
子供のころからよく遊びに行ってあげてたのに、大きくなるにつれて留守がちになって、あまり一緒に遊べなくなった。母さんからもあまりお邪魔をしてはダメ! といわれるし、親戚なんだからいいと思うんだけど。
親戚なんだからちょっと気になった物を借りても良いと思うのに、割とケチだし、黙って借りてると返してとか言われるのはウザい。ずっと使わないなら私が使ってあげたほうが断然良いと思う。
なかなか会えなくなったからワザワザ大学まで行って、付き合わせようとすると私の姿を見て逃げようとするから、頭にくる。アンタは私の引き立て役なのに。
本家の集まりだと玲ばかり褒められるし、お祖母さまは冷の事を跡継ぎに考えているみたい。オカシイ。玲よりも私のほうがずっと華やかなのに。
本家の後を継ぐ娘には凄く綺麗なサファイアの指輪を貰えるんですって。小さい頃お祖母さまが指輪を付けているのを見て、ずっとアレが欲しいと思っていた。私が跡継ぎでもいいと思う。
何とかしたい、って思っていたら、まさかの異世界召喚。でも、こっちでは私が聖女だから圧倒的に上の立場、ってのは気持ちが良い。
ここんとこ王子様や色んな人に褒められて、アニメの中に出てくるような綺麗なドレスをきたり、宝飾品も沢山もらって、パーティーが続いていたから、すっかり忘れていたけど、そういえば玲を下女にしたんだった。
せっかくだから、玲に私の美しいドレス姿を自慢したい。下女になった玲が美しい私に見惚れて、みじめな気持ちになるなんて、ちょっとワクワクする。
それに、最近ここの料理に飽きてきた。やっぱり和食が食べたい。玲は料理の腕だけは確かだから何か作らせればいいか。では、さっそく、とベルを鳴らした。
「聖女様、お呼びでしょうか」
「ええ、玲を呼んでちょうだい」
「レイ? でございますか?」
「ええ、私と一緒に別の世界から来た下女よ」
「下女のレイ、でございますね」
「ええ、こちらへ呼んでちょうだい」
「はい。お待ちくださいませ」
そうして、しばらくして侍女長がやって来た。
「聖女様、レイはこの王宮にはおりません」
「ええ!? どういう事?」
「レイは、本人が望みましたので、市井にて一市民として暮らす事になりました」
「ええ! どうして! 私は下女にして、と言ったはずでしょ!」
「レイの手癖が悪いという事でしたので、そんな下女は王宮には置いておけない、という事になりました。しかし、それなりの金子は渡しておりますし、身分証も作らせましたので慎ましやかに過ごしているかと思われます」
「レイは和食が作れるのよ」
「ワショク? でございますか?」
「向こうの世界のご飯」
侍女長は首を傾げていたが私にはこの世界の材料で和食を作る説明はうまくできないし、第一、玲が説明して作ったほうが早い。
それに玲の舌は確かだからこの世界でもなんとかして和食を作れると思う。ああ、食べたいと思いだしたら本当に食べたくなってきた。もう、こっちの世界の料理は飽きてきた。何か、割と代わり映えのない味付けなんだよね。同じ西洋料理でも、玲だったら何か一工夫しそうだもの。
「とにかく、玲を探して連れてきて!」
「こちらに、でございますか?」
「ええ、そうよ。玲のご飯が食べたいの」
「……お食事でございますか」
「ええ、街にいるなら探して連れてきて。あれは料理の腕は確かなのよ。玲の作ったご飯が食べたいわ」
「か、畏まりました」
「早くね」
「は、はい」
まったく、用のある時にいないなんて役にたたない。けど、側にいて時折、呼び出して格の違いを見せつけるほうが楽しいし、玲の料理も食べられるのは良いよね。手癖が悪いと言ったのは失敗だったかもしれないけど、常に監視役を付けておくようにいえばいいし。
ホントは手癖、悪くないから問題も起きない。めでたし、めでたし。
あ~あ、早く和食が食べたい。全くどこで何してんのよ! 玲のばか!
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