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22. 王子様のお願い。
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「玲ちゃん、お早う」
「お早う、アラン」
「ごめん、何だかぐっすり寝てしまった」
「うん。良く寝てたわね、気持ちよさそうだった」
「うーん。自分でも寝てる時、幽霊状態が突然解除されたらどうなんだろう、って内心思っていたのかもしれない。玲ちゃんの冷蔵庫にくっ付いていると何だか安心して、寝なくても平気なはずなのに寝てしまった。これって、この世界にきて初めてだよ。何だか気分が良い」
「良かったじゃない。やっぱり、睡眠は大事だと思う」
「確かにね」
私が冷蔵庫から色々取り出している時にアランが起きて、冷蔵庫に触りながら話しかけてきた。冷蔵庫結界でお話すると人に見えないし聞こえないのは良い事だと思う。
「玲ちゃん、一人で鉄板と焚火台を準備したんだ、ごめん」
「良いのよ、彼ら、王子様御一行は沢山食べそうだからパンも多めにしたの。有名店の高級食パンだから美味しいわよ。トーストの予定だけど、そのまま食べても美味しいわ」
「どこの店?」
「〇〇の〇〇店」
「わお! 俺、あそこのパンは好きなんだ」
「やっぱり高級食パン、色々食べ比べた?」
「うん。あんまり違いはないような気がするけど、でも、〇〇店のはちょっと一味違うような気がする」
「そうね、材料はそんなに変わらないと思うんだけど」
と話しているうちに王子様御一行がこちらにやって来た。私の姿が見えないせいか、キョロキョロと辺りを見回している。河原にテーブルと椅子があり、焚火台に火は起こしているし食材がテーブルに乗っているけど、誰も見えないって軽くホラーかもしれない。
「お、お早うございます」
「すみません。何処かにいらっしゃるんでしょうか」
「お早うございます」
「「お、おう!」」
その辺の空中に向かって王子様たちは話しかけていたけど、そちら側には居ないから。
横から私が突然卵のパックと牛乳の1リットル瓶を持って現れたので、王子様たちは驚いてのけぞっていた。
そうよね、何もない処からいきなり人が現れるとビックリするよね。すみません。
「お早うございます。ご一緒に朝食はいかがですか?」
「「お早うございます」」
「お早うございます。有り難うございます。こんなにお世話をかけて申し訳ないのですがお相伴させていただきたく」
「本当に、昨日は美味しいものを御馳走になりました。有り難うございます」
「実は私達も食料は持ち込んでおりまして、良ければ使っていただけたらと思ったのですが」
そういう王子様たちは籠にいっぱいのフルーツとやはり籠に持ったパンの山を持っていた。「こちらも国から持ってきた物なんですが、」と言って差し出してきたのは大きなハムとチーズの塊だった。
「すみません、実はアイテムボックスを持ってまして、そこに食料はタップリと入っているんです。ただ、魚はなかったので昨日は焼き魚のニオイに釣られてしまいました」
「それにしても、あの焼き魚は美味しかったですね」
「国でも焼き魚は食べたのですが、あんなに皮がパリッとして身がジューシーで塩味が程よくて、美味しいのは初めてでした」
「それにあのスープが独特で美味かったです」
うん。手放しで褒めてくれるのは嬉しいけど、断ったのに料理のお礼と言って金貨を頂いたのは……、貰い過ぎじゃないかと思う。貰い過ぎたような気がするので、朝食も御馳走しようとしているのだけど、チラチラとスープを見ているのは何と言って良いのやら。彼らが持ってきたチーズとハムは美味しそうだから有難くいただきますけどね。
朝食は両面を焼いたトーストの上に塊のチーズを炙って溶かしたのを付けて、ベーコンエッグを乗せて食べた。それにスープとサラダ。もちろん、ベーコンエッグにはケチャップをかける。
私は食パン一つで充分だったけど王子様たちはそれぞれ、5枚ずつ食べた。ちなみにアランは2枚。
スープも沢山あったのに無くなってしまったし、男の人の食欲って凄いと思う。
ケチャップを気に入った王子様には是非にこれを売ってくれと言われてしまった。本当に日本のモノは美味しすぎると思う。
怒涛の朝食が終わって、ゆっくりとコーヒータイム。王子様たちも持参のマイカップでコーヒーを飲んでいる。
「さて、私達はこの酷暑が終わったら王都へ向かうのですが、是非レインさんと精霊のアラン様には一緒に同道していただくようお願いしたいと思います」
「王都!?」
「お忍びじゃなかったのか?」
「お忍びです。私達は聖女に会わなくてはいけないのです」
「聖女に?」
「はい。これは王室の秘密事項になってしまうので理由は言えないのですが、今代の聖女にあってどうしても確認しなくてはならない事があります」
今代の聖女! ここにもいるけど。どうしよう、なんで隣国の王子様が聖女に会いたいのだろう? まさか誘拐? ついて行ったら、聖女に何するつもりか判明するから良いかもしれない。でも、シオリに会うのは嫌だなぁ。
「聖女に会って確認するだけですから、聖女の意志を尊重しますよ」
「聖女の意志?」
「今代の聖女が召喚されてから、青の聖跡が反応しているのです」
「聖跡?」
「ええ、何かしら、不可解な事が起こっているのは間違いないので……」
「召喚された聖女が聖女である事は間違いないのか?」
アランがボソッと聞いてきた。それは私も聞きたい。
「召喚された聖女が聖女である事は間違いないです。これもわが国の秘密事項になってしまいますが、それは確認が取れています」
「そうなんだ……」
今更、王都に逆戻りは嫌だ。優しくない王宮の人たちにも会いたくない。けど、この王子様がどうして、聖女が聖女で間違いない、とか聖女に確認したい事が、とかいうのは物凄く気になる。
だって、私も聖女だし。
「お早う、アラン」
「ごめん、何だかぐっすり寝てしまった」
「うん。良く寝てたわね、気持ちよさそうだった」
「うーん。自分でも寝てる時、幽霊状態が突然解除されたらどうなんだろう、って内心思っていたのかもしれない。玲ちゃんの冷蔵庫にくっ付いていると何だか安心して、寝なくても平気なはずなのに寝てしまった。これって、この世界にきて初めてだよ。何だか気分が良い」
「良かったじゃない。やっぱり、睡眠は大事だと思う」
「確かにね」
私が冷蔵庫から色々取り出している時にアランが起きて、冷蔵庫に触りながら話しかけてきた。冷蔵庫結界でお話すると人に見えないし聞こえないのは良い事だと思う。
「玲ちゃん、一人で鉄板と焚火台を準備したんだ、ごめん」
「良いのよ、彼ら、王子様御一行は沢山食べそうだからパンも多めにしたの。有名店の高級食パンだから美味しいわよ。トーストの予定だけど、そのまま食べても美味しいわ」
「どこの店?」
「〇〇の〇〇店」
「わお! 俺、あそこのパンは好きなんだ」
「やっぱり高級食パン、色々食べ比べた?」
「うん。あんまり違いはないような気がするけど、でも、〇〇店のはちょっと一味違うような気がする」
「そうね、材料はそんなに変わらないと思うんだけど」
と話しているうちに王子様御一行がこちらにやって来た。私の姿が見えないせいか、キョロキョロと辺りを見回している。河原にテーブルと椅子があり、焚火台に火は起こしているし食材がテーブルに乗っているけど、誰も見えないって軽くホラーかもしれない。
「お、お早うございます」
「すみません。何処かにいらっしゃるんでしょうか」
「お早うございます」
「「お、おう!」」
その辺の空中に向かって王子様たちは話しかけていたけど、そちら側には居ないから。
横から私が突然卵のパックと牛乳の1リットル瓶を持って現れたので、王子様たちは驚いてのけぞっていた。
そうよね、何もない処からいきなり人が現れるとビックリするよね。すみません。
「お早うございます。ご一緒に朝食はいかがですか?」
「「お早うございます」」
「お早うございます。有り難うございます。こんなにお世話をかけて申し訳ないのですがお相伴させていただきたく」
「本当に、昨日は美味しいものを御馳走になりました。有り難うございます」
「実は私達も食料は持ち込んでおりまして、良ければ使っていただけたらと思ったのですが」
そういう王子様たちは籠にいっぱいのフルーツとやはり籠に持ったパンの山を持っていた。「こちらも国から持ってきた物なんですが、」と言って差し出してきたのは大きなハムとチーズの塊だった。
「すみません、実はアイテムボックスを持ってまして、そこに食料はタップリと入っているんです。ただ、魚はなかったので昨日は焼き魚のニオイに釣られてしまいました」
「それにしても、あの焼き魚は美味しかったですね」
「国でも焼き魚は食べたのですが、あんなに皮がパリッとして身がジューシーで塩味が程よくて、美味しいのは初めてでした」
「それにあのスープが独特で美味かったです」
うん。手放しで褒めてくれるのは嬉しいけど、断ったのに料理のお礼と言って金貨を頂いたのは……、貰い過ぎじゃないかと思う。貰い過ぎたような気がするので、朝食も御馳走しようとしているのだけど、チラチラとスープを見ているのは何と言って良いのやら。彼らが持ってきたチーズとハムは美味しそうだから有難くいただきますけどね。
朝食は両面を焼いたトーストの上に塊のチーズを炙って溶かしたのを付けて、ベーコンエッグを乗せて食べた。それにスープとサラダ。もちろん、ベーコンエッグにはケチャップをかける。
私は食パン一つで充分だったけど王子様たちはそれぞれ、5枚ずつ食べた。ちなみにアランは2枚。
スープも沢山あったのに無くなってしまったし、男の人の食欲って凄いと思う。
ケチャップを気に入った王子様には是非にこれを売ってくれと言われてしまった。本当に日本のモノは美味しすぎると思う。
怒涛の朝食が終わって、ゆっくりとコーヒータイム。王子様たちも持参のマイカップでコーヒーを飲んでいる。
「さて、私達はこの酷暑が終わったら王都へ向かうのですが、是非レインさんと精霊のアラン様には一緒に同道していただくようお願いしたいと思います」
「王都!?」
「お忍びじゃなかったのか?」
「お忍びです。私達は聖女に会わなくてはいけないのです」
「聖女に?」
「はい。これは王室の秘密事項になってしまうので理由は言えないのですが、今代の聖女にあってどうしても確認しなくてはならない事があります」
今代の聖女! ここにもいるけど。どうしよう、なんで隣国の王子様が聖女に会いたいのだろう? まさか誘拐? ついて行ったら、聖女に何するつもりか判明するから良いかもしれない。でも、シオリに会うのは嫌だなぁ。
「聖女に会って確認するだけですから、聖女の意志を尊重しますよ」
「聖女の意志?」
「今代の聖女が召喚されてから、青の聖跡が反応しているのです」
「聖跡?」
「ええ、何かしら、不可解な事が起こっているのは間違いないので……」
「召喚された聖女が聖女である事は間違いないのか?」
アランがボソッと聞いてきた。それは私も聞きたい。
「召喚された聖女が聖女である事は間違いないです。これもわが国の秘密事項になってしまいますが、それは確認が取れています」
「そうなんだ……」
今更、王都に逆戻りは嫌だ。優しくない王宮の人たちにも会いたくない。けど、この王子様がどうして、聖女が聖女で間違いない、とか聖女に確認したい事が、とかいうのは物凄く気になる。
だって、私も聖女だし。
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