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20. アランと冷蔵庫。
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筆談中
《どうする?》
《アランはどうしたいの?》
《俺、精霊と思われているみたいだから、そのまま隣の国について行って人に戻れても暮らせそうだし王子について行っても良いかな》
《そうね。私もこの国はあんまり合わないみたいだし、隣の国に行きたい》
《では、明日王子について行くと言おう》
これで、これからの方針は決まった。そして、私達の事をどこまで話すかは王子様たちの人となりがわかってからにしよう、という事になった。
私達はアランの持っていた筆記具で筆談をしている。アランの持ち物も一晩過ぎると元に戻るので、消耗を気にせず使い放題である。いつまでも、ボールペンのインクが切れないというのは地味に助かる。文房具はやはり、日本のものが便利だから。
それにしても、アランの声が彼らに聞こえるようになったので静かな山の中では話し声が筒抜けになってしまう。アランの存在のレベルが上がると、他の人達にもアランの声が聞こえる?
えっ、ひょっとして、もう既に他の人にも声が聞こえるようになってしまっているのかしら。
それは、気を付けなくては。と思った時、ピロローン♪ と音楽が聞こえてきた。これは私の冷蔵庫のレベルが上がった音。この音が聞こえるのは冷蔵庫のレベルが上がった時だけで、魔法のレベルが上がってもレベルアップの音は聞こえない。何故なんだろう?
《冷蔵庫レベルが上がったわ。ひょっとしてアランもレベルが上がっている?》
《えっ、そうかな。ちょっと見てみる》
「ステータスオープン!」
そうして出したアランのステータスは
『アラン。聖女と共にある存在』レベル2
存在 レベル2
キャンプ レベル2
浄化 レベル4
そして、私もそっと心でステータスと唱えた。
『玲。冷蔵庫(広義)と共に玲の祝福を持つ聖女』
聖女 レベル2
冷蔵庫 レベル5
浄化 レベル2
光魔法 レベル2
水魔法 レベル2
火魔法 レベル2
(従者 アラン レベル2)→隠蔽中。許可を得る事で冷蔵庫の恩恵を受けられる。
遂に聖女のレベルが上がった。だけど、アランが冷蔵庫の恩恵を受けられるってどういう事?
「ちょっと、待って。アラン、声を小さくして」
アランが筆談するのを忘れているので声を押さえつつ
「ステータスオープン」
小さな声で唱えると私のステータスが出て来た。アランが思わず「レベルが上がっているじゃないか」というので、口に指を当ててシーッと言えば慌てて周囲を見回した。
《もう! アラン!!》
《ごめん、つい》
《私の冷蔵庫のレベルが上がったせいか、アランが聖女と共にある存在なのかもしれないけど、アラン、冷蔵庫の恩恵が受けられるみたい。許可制だけど》
「ん?」
アランが首を傾げた。
私はそのまま冷蔵庫を出すと、アランに向かって口の中で「許可します」と言ってアランの手を取った。
「わぁーウソ!」
「もう、アラン」
「あっ、ごめん」
アランが驚いた声を上げて冷蔵庫を眺めている。これまで見えなかった冷蔵庫がアランにも見えるようになったようだ。これもアランが私の従者だからかもしれない。言わないけど。
驚きの顔で冷蔵庫を眺めていたアランが急いで
《触ってもいい?》
と紙に書いたので頷くと、恐る恐る冷蔵庫に触っていた。
ピロン♪ と音が聞こえ頭の中に『アラン、冷蔵庫に収納中』と出た。触るだけで収納? ひょっとして、冷蔵庫に触れる事で見えない異次元に取り込まれているという事だろうか。
「アラン、冷蔵庫を開ける事が出来る?」
「えっ、開けて良いの?」
私達は小声で話をしているけど、多分この冷蔵庫に触れていると異次元空間にいる事になるから、私達の声は外には漏れない。だって
(従者 アラン レベル2)→隠蔽中。許可を得て冷蔵庫に収納中。
となっているから。
「開けるよ」
小声で呟いたアランは
「うわーっ、凄い、久しぶりの冷蔵庫だ。卵に牛乳、ジュースにチキンにいつものサンドイッチ、チキンにオードブルにプリンとケーキもある」
声が大きくなっている。アランが冷蔵庫を開けたまま、上から下まで物色しているので、その間にベッドにつけておいた紐をアランの腰についているウエストポーチに結び付けた。
「ん? あれ? 何、やっているの玲ちゃん?」
「アランが冷蔵庫から手を離したら、この空間から弾かれるかもしれないからくっ付けたの」
「ああ、そうか。僕の姿も外からは認識できないようになる、というか元から幽霊状態だった」
「この冷蔵庫に引っ付いていると声も聞こえないと思うよ」
「ホント? それなら、この後人間に戻っても隠れられるという事? それは嬉しい」
「もう一つのベッドを冷凍庫の横に付けて、そこに寝たら良いんじゃない?」
「あっ、そうか。でも、玲ちゃんが居ないと、この冷蔵庫の側には居られないか」
「試してみるね」
そうして、私は冷蔵庫空間から一人だけ出てみた。思った通りそこには何も見えなかった。ステータスを出してみてもアランは冷蔵庫に収納中になっていたから、私が居なくても大丈夫みたい。冷蔵庫に触っていたら、だけど。
これまで、私は冷蔵庫に付けっぱなしにしているベッドで休むけど、アランは日本から持参の寝袋に寝ていた。アランが修理したもう一つのベッドで寝ると、ベッドだけポツンと見えてしまうので使えなかったのだ。冷蔵庫に引っ付けると、アランにも見えなくなるし。
だからアランはキャンプマットを敷いてテントを張って寝袋で寝ていたけど、一軒家にいる時より何となく嬉しそうに見えたのはキャンプ自体が好きなのかもしれない。
私は本当のお外にベッドを置いて寝ているので、もの凄く開放感はあった。でも、外にベッドだけ置いて寝ているのは人に見えないからいいけど、なんだかな、とは思う。
ちなみに雨が降っても雨は見えるけど濡れない。次元が違うからだろうけど、雨粒は見えるので何となく居心地は悪い。
でも、今夜はアランに露天ベッドで寝てもらおう。星を眺めながら寝るのもいいものだし。
《どうする?》
《アランはどうしたいの?》
《俺、精霊と思われているみたいだから、そのまま隣の国について行って人に戻れても暮らせそうだし王子について行っても良いかな》
《そうね。私もこの国はあんまり合わないみたいだし、隣の国に行きたい》
《では、明日王子について行くと言おう》
これで、これからの方針は決まった。そして、私達の事をどこまで話すかは王子様たちの人となりがわかってからにしよう、という事になった。
私達はアランの持っていた筆記具で筆談をしている。アランの持ち物も一晩過ぎると元に戻るので、消耗を気にせず使い放題である。いつまでも、ボールペンのインクが切れないというのは地味に助かる。文房具はやはり、日本のものが便利だから。
それにしても、アランの声が彼らに聞こえるようになったので静かな山の中では話し声が筒抜けになってしまう。アランの存在のレベルが上がると、他の人達にもアランの声が聞こえる?
えっ、ひょっとして、もう既に他の人にも声が聞こえるようになってしまっているのかしら。
それは、気を付けなくては。と思った時、ピロローン♪ と音楽が聞こえてきた。これは私の冷蔵庫のレベルが上がった音。この音が聞こえるのは冷蔵庫のレベルが上がった時だけで、魔法のレベルが上がってもレベルアップの音は聞こえない。何故なんだろう?
《冷蔵庫レベルが上がったわ。ひょっとしてアランもレベルが上がっている?》
《えっ、そうかな。ちょっと見てみる》
「ステータスオープン!」
そうして出したアランのステータスは
『アラン。聖女と共にある存在』レベル2
存在 レベル2
キャンプ レベル2
浄化 レベル4
そして、私もそっと心でステータスと唱えた。
『玲。冷蔵庫(広義)と共に玲の祝福を持つ聖女』
聖女 レベル2
冷蔵庫 レベル5
浄化 レベル2
光魔法 レベル2
水魔法 レベル2
火魔法 レベル2
(従者 アラン レベル2)→隠蔽中。許可を得る事で冷蔵庫の恩恵を受けられる。
遂に聖女のレベルが上がった。だけど、アランが冷蔵庫の恩恵を受けられるってどういう事?
「ちょっと、待って。アラン、声を小さくして」
アランが筆談するのを忘れているので声を押さえつつ
「ステータスオープン」
小さな声で唱えると私のステータスが出て来た。アランが思わず「レベルが上がっているじゃないか」というので、口に指を当ててシーッと言えば慌てて周囲を見回した。
《もう! アラン!!》
《ごめん、つい》
《私の冷蔵庫のレベルが上がったせいか、アランが聖女と共にある存在なのかもしれないけど、アラン、冷蔵庫の恩恵が受けられるみたい。許可制だけど》
「ん?」
アランが首を傾げた。
私はそのまま冷蔵庫を出すと、アランに向かって口の中で「許可します」と言ってアランの手を取った。
「わぁーウソ!」
「もう、アラン」
「あっ、ごめん」
アランが驚いた声を上げて冷蔵庫を眺めている。これまで見えなかった冷蔵庫がアランにも見えるようになったようだ。これもアランが私の従者だからかもしれない。言わないけど。
驚きの顔で冷蔵庫を眺めていたアランが急いで
《触ってもいい?》
と紙に書いたので頷くと、恐る恐る冷蔵庫に触っていた。
ピロン♪ と音が聞こえ頭の中に『アラン、冷蔵庫に収納中』と出た。触るだけで収納? ひょっとして、冷蔵庫に触れる事で見えない異次元に取り込まれているという事だろうか。
「アラン、冷蔵庫を開ける事が出来る?」
「えっ、開けて良いの?」
私達は小声で話をしているけど、多分この冷蔵庫に触れていると異次元空間にいる事になるから、私達の声は外には漏れない。だって
(従者 アラン レベル2)→隠蔽中。許可を得て冷蔵庫に収納中。
となっているから。
「開けるよ」
小声で呟いたアランは
「うわーっ、凄い、久しぶりの冷蔵庫だ。卵に牛乳、ジュースにチキンにいつものサンドイッチ、チキンにオードブルにプリンとケーキもある」
声が大きくなっている。アランが冷蔵庫を開けたまま、上から下まで物色しているので、その間にベッドにつけておいた紐をアランの腰についているウエストポーチに結び付けた。
「ん? あれ? 何、やっているの玲ちゃん?」
「アランが冷蔵庫から手を離したら、この空間から弾かれるかもしれないからくっ付けたの」
「ああ、そうか。僕の姿も外からは認識できないようになる、というか元から幽霊状態だった」
「この冷蔵庫に引っ付いていると声も聞こえないと思うよ」
「ホント? それなら、この後人間に戻っても隠れられるという事? それは嬉しい」
「もう一つのベッドを冷凍庫の横に付けて、そこに寝たら良いんじゃない?」
「あっ、そうか。でも、玲ちゃんが居ないと、この冷蔵庫の側には居られないか」
「試してみるね」
そうして、私は冷蔵庫空間から一人だけ出てみた。思った通りそこには何も見えなかった。ステータスを出してみてもアランは冷蔵庫に収納中になっていたから、私が居なくても大丈夫みたい。冷蔵庫に触っていたら、だけど。
これまで、私は冷蔵庫に付けっぱなしにしているベッドで休むけど、アランは日本から持参の寝袋に寝ていた。アランが修理したもう一つのベッドで寝ると、ベッドだけポツンと見えてしまうので使えなかったのだ。冷蔵庫に引っ付けると、アランにも見えなくなるし。
だからアランはキャンプマットを敷いてテントを張って寝袋で寝ていたけど、一軒家にいる時より何となく嬉しそうに見えたのはキャンプ自体が好きなのかもしれない。
私は本当のお外にベッドを置いて寝ているので、もの凄く開放感はあった。でも、外にベッドだけ置いて寝ているのは人に見えないからいいけど、なんだかな、とは思う。
ちなみに雨が降っても雨は見えるけど濡れない。次元が違うからだろうけど、雨粒は見えるので何となく居心地は悪い。
でも、今夜はアランに露天ベッドで寝てもらおう。星を眺めながら寝るのもいいものだし。
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