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19. 王子様のお誘い。
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「いやー、美味い」
「申し訳ないです。我々にまで、ご馳走していただいて」
「こんなに美味しい物は生まれて初めて食べた。このご飯っていうのがスープに良く合う。スープの中に入っている山菜は知っているが、野菜や肉はこれまで食べたことがない」
「いや、本当に王宮の食事はそれなりに美味しいと思っておりましたが、これは未知の味です。精霊様の加護でしょうか」
「ああ、そうか。精霊様が関わっているから不思議な事が起こるんだな。精霊様の祝福があるせいで見たことのない食物が与えられる」
「はい。確かにそうなんでしょう。有難い事です」
隣国の第二王子とそのお付きの方々は嬉しそうにご飯を食べている。最初、彼らには焚火のまわりに刺してある焼き魚とその傍にあるテーブルに椅子、テーブルの上のお皿、そして、私の姿しか見えず、不思議に思ったそうだ。
今はテーブルを囲んで、彼らは立ったまま、私とアランは椅子に座ってご飯を食べている。
最初、この世界のお皿や串、テーブルに椅子は彼らにも見えるのに、飯盒や中のご飯、向こうの世界の鍋は見えなかった。でも、お皿に注ぐと彼らにも鍋の中身が見えるようになり、初めて見るご飯もスプーンですくって食べる事が出来た。
日本の食事はとても美味しいようで、とても嬉しそうにお代わりするので直ぐに用意した食事は無くなってしまった。
ちなみに串に刺した焼き魚は一人1匹ずつ食べ、残った1匹はアランが食べた。
彼らが物足りなそうな顔をしているので、冷蔵庫からサンドイッチの盛り合わせを出してあげると、かなりの量があるのにあっという間に食べつくしてしまった。
「美味しい、美味しい」と涙ぐみながら食べているので、マドレーヌも追加で山盛り出してあげると、それもアッという間に食べてしまった。男の人の食欲って、どうなっているのだろう。
椅子に座ったアランは王子様御一行には見えないけど、ご飯や魚、鍋の中身が消えていくのを見て、精霊様がお食事されている、と感激していた。隣国ではたまに精霊様が現れて奇跡を起こす事があるので、不思議な事が起きても精霊様のする事だからと皆、納得するらしい。
「もっとも、精霊様の顕現は滅多にないおとぎ話レベルの話ではありますが」
「我が王家では時折みられる事として、決して精霊様を蔑ろにしないように、と伝わっている」
「しかし、本当に精霊様にお目にかかる日がくるとは、有難い事です」
どうしよう。アランが精霊様になってしまった。ステータスをみたら降臨した精霊、とかなっていたりして、まさかね。
でも、異世界からこちらの世界に来たら幽霊状態になってしまった、なんて説明をするより、精霊と思われているほうが良いかもしれない。
それに、ひょっとしてこれまでの精霊もアランのように異世界から迷い込んできた人かもしれない。精霊から徐々に人に変わっていったというおとぎ話もあるみたいだし。
「ところで、どうして隣国の王子様がこんな所にいるのですか?」
「いやー、実は我々はお忍びでこの国に来ているんです」
「そうしたら、ちょうど酷暑に当たってしまって困っていたら、昔迷い込んだ山の中に涼しい滝があると彼が言うものですから」
「はい。この滝は凄く涼しいし、酷暑の間だけでもここで過ごしたらいいんじゃないかと」
「他の国でも酷暑の時期は一緒じゃないのか?」
アランの問いに
「酷暑があるのはこの国だけですよ」
「えっ?」
「凄く昔はこの国にも酷暑はなかったのですが、ねぇ」
「ええ、昔はなかったのです」
「聖女がこの国に存在するようになってから酷暑が始まったわけです」
「元々、聖女は」
「レオナルド様! この国の人は知らない事ですから」
「そうだな」
うーん。気になる。聖女と酷暑と関係があるのだろうか? アランも気になっているみたい。
「で、結局、どういう事?」
「それは、はっきりとした原因はわからないのですが、聖女がこの国に存在を始めた時から酷暑が始まっていますから……」
「聖女のせいで酷暑がおこっているって事?」
「いや、我らの国に聖女が居た時はそんな事は起こらなかったので……」
「ん? 今は聖女がいない?」
「聖女の代わりに5人の蒼の乙女が結界を支えています」
「結界?」
「今、この国には結界はありません。聖女が存在する事で結界がなくても強い瘴気が入ってきませんから。今、この国の守護の乙女が果たして力を残しているのかどうかはわかりませんけど」
「フーン、色々あるんだな」
「ええ、まぁ。精霊様はレインさんとずっと一緒に居るんですか?」
「まぁ、しばらく前から一緒だな」
「もし、わが国にいらっしゃるんでしたら、王家として何かお役にたてるかと思いますが」
「王家として?」
「ええ、失礼ながらレインさんはまだ少女ですから、後ろ盾があったほうが良いと思います。何かやりたい事がありましたら、お手伝いしましょう」
これは、むやみに隣国に行くよりは、良いかもしれない。この世界の事は一応、アランが調べて勉強したけど、良く分からない事もあるし、頼っても良いのかな、とアランを見ると難しい顔をしていた。
でも、私はどこからどう見ても少女だし、アランは幽霊状態だし、精霊と誤解されているけど、彼らと一緒のほうが良いのかもしれない。だって、この人達強そうだし。
王子様のお誘い、受けたほうが良いかもしれない。
「申し訳ないです。我々にまで、ご馳走していただいて」
「こんなに美味しい物は生まれて初めて食べた。このご飯っていうのがスープに良く合う。スープの中に入っている山菜は知っているが、野菜や肉はこれまで食べたことがない」
「いや、本当に王宮の食事はそれなりに美味しいと思っておりましたが、これは未知の味です。精霊様の加護でしょうか」
「ああ、そうか。精霊様が関わっているから不思議な事が起こるんだな。精霊様の祝福があるせいで見たことのない食物が与えられる」
「はい。確かにそうなんでしょう。有難い事です」
隣国の第二王子とそのお付きの方々は嬉しそうにご飯を食べている。最初、彼らには焚火のまわりに刺してある焼き魚とその傍にあるテーブルに椅子、テーブルの上のお皿、そして、私の姿しか見えず、不思議に思ったそうだ。
今はテーブルを囲んで、彼らは立ったまま、私とアランは椅子に座ってご飯を食べている。
最初、この世界のお皿や串、テーブルに椅子は彼らにも見えるのに、飯盒や中のご飯、向こうの世界の鍋は見えなかった。でも、お皿に注ぐと彼らにも鍋の中身が見えるようになり、初めて見るご飯もスプーンですくって食べる事が出来た。
日本の食事はとても美味しいようで、とても嬉しそうにお代わりするので直ぐに用意した食事は無くなってしまった。
ちなみに串に刺した焼き魚は一人1匹ずつ食べ、残った1匹はアランが食べた。
彼らが物足りなそうな顔をしているので、冷蔵庫からサンドイッチの盛り合わせを出してあげると、かなりの量があるのにあっという間に食べつくしてしまった。
「美味しい、美味しい」と涙ぐみながら食べているので、マドレーヌも追加で山盛り出してあげると、それもアッという間に食べてしまった。男の人の食欲って、どうなっているのだろう。
椅子に座ったアランは王子様御一行には見えないけど、ご飯や魚、鍋の中身が消えていくのを見て、精霊様がお食事されている、と感激していた。隣国ではたまに精霊様が現れて奇跡を起こす事があるので、不思議な事が起きても精霊様のする事だからと皆、納得するらしい。
「もっとも、精霊様の顕現は滅多にないおとぎ話レベルの話ではありますが」
「我が王家では時折みられる事として、決して精霊様を蔑ろにしないように、と伝わっている」
「しかし、本当に精霊様にお目にかかる日がくるとは、有難い事です」
どうしよう。アランが精霊様になってしまった。ステータスをみたら降臨した精霊、とかなっていたりして、まさかね。
でも、異世界からこちらの世界に来たら幽霊状態になってしまった、なんて説明をするより、精霊と思われているほうが良いかもしれない。
それに、ひょっとしてこれまでの精霊もアランのように異世界から迷い込んできた人かもしれない。精霊から徐々に人に変わっていったというおとぎ話もあるみたいだし。
「ところで、どうして隣国の王子様がこんな所にいるのですか?」
「いやー、実は我々はお忍びでこの国に来ているんです」
「そうしたら、ちょうど酷暑に当たってしまって困っていたら、昔迷い込んだ山の中に涼しい滝があると彼が言うものですから」
「はい。この滝は凄く涼しいし、酷暑の間だけでもここで過ごしたらいいんじゃないかと」
「他の国でも酷暑の時期は一緒じゃないのか?」
アランの問いに
「酷暑があるのはこの国だけですよ」
「えっ?」
「凄く昔はこの国にも酷暑はなかったのですが、ねぇ」
「ええ、昔はなかったのです」
「聖女がこの国に存在するようになってから酷暑が始まったわけです」
「元々、聖女は」
「レオナルド様! この国の人は知らない事ですから」
「そうだな」
うーん。気になる。聖女と酷暑と関係があるのだろうか? アランも気になっているみたい。
「で、結局、どういう事?」
「それは、はっきりとした原因はわからないのですが、聖女がこの国に存在を始めた時から酷暑が始まっていますから……」
「聖女のせいで酷暑がおこっているって事?」
「いや、我らの国に聖女が居た時はそんな事は起こらなかったので……」
「ん? 今は聖女がいない?」
「聖女の代わりに5人の蒼の乙女が結界を支えています」
「結界?」
「今、この国には結界はありません。聖女が存在する事で結界がなくても強い瘴気が入ってきませんから。今、この国の守護の乙女が果たして力を残しているのかどうかはわかりませんけど」
「フーン、色々あるんだな」
「ええ、まぁ。精霊様はレインさんとずっと一緒に居るんですか?」
「まぁ、しばらく前から一緒だな」
「もし、わが国にいらっしゃるんでしたら、王家として何かお役にたてるかと思いますが」
「王家として?」
「ええ、失礼ながらレインさんはまだ少女ですから、後ろ盾があったほうが良いと思います。何かやりたい事がありましたら、お手伝いしましょう」
これは、むやみに隣国に行くよりは、良いかもしれない。この世界の事は一応、アランが調べて勉強したけど、良く分からない事もあるし、頼っても良いのかな、とアランを見ると難しい顔をしていた。
でも、私はどこからどう見ても少女だし、アランは幽霊状態だし、精霊と誤解されているけど、彼らと一緒のほうが良いのかもしれない。だって、この人達強そうだし。
王子様のお誘い、受けたほうが良いかもしれない。
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