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11. ベーコンエッグはケチャップで
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私とアランはこれまでの事を色々と話した。
焚火にあたりながら熱いコーヒーを飲むのは心が落ち着く。コーヒーが美味しい。アランの持っていたコーヒーはインスタントだけどね。
冷蔵庫にペットボトルのコーヒーはあるけど、あれはアイスだから、ホットコーヒーとはまた、別物だと思う。焚火があるからアイスコーヒーを温めても良いかもしれないけど。
「でも、このコーヒーも後、何回飲めるのかしら。飲んでしまえば無くなってしまうわね」
「あっ、それは大丈夫。一晩たてばまた、戻るんだ」
「えっ?」
「俺が持っているのはソロキャンプ用にレトルトとか、お昼に食べようと思っていたコンビニのお握りとかインスタント食品だけど、これ、食べても翌日には元の状態に戻っているんだ」
「えっ、と」
「ゴミも消えているし、燃料も元通りだし、ついでにバイクのガソリンも元通り。一応、走るとガソリンは減るけどさ」
「何だか」
「不思議だよな~」
「あの、私もそうなの」
「ん?」
「私の冷蔵庫の中身も食べられるけど、翌日には元の状態に戻っているのよ」
「えっ、それは俺と同じ、」
「そう、ただし、冷蔵庫の中身が全部、取り出せるわけではないけどね。レベルが1のせい、あっ、そういえば冷蔵庫のレベルが上がっていた」
「レベルが上がると何か変わる?」
「ちょっと、待ってて。見てみる」
そうして、冷蔵庫の中を確認してみると何という事でしょう。
チルド、お肉のおいてある場所が灰色から普通の色に変わっていた。お肉、ソーセージ、ベーコンが食べられる。
ベーコンエッグ、今迄普通に食べていた朝食メニューがこんなに有難く感じるなんて。
「アラン、明日の朝食はベーコンエッグが食べられるわ」
「ワォ、俺半熟、両面焼き! ケチャップで」
「奇遇ね。私も半熟両面やき。ケチャップ」
「どうして、パンに目玉焼きなのに醤油を垂らす人がいるのか俺には理解できない」
「そうよね。目玉焼きにお醤油を垂らすなら、ご飯にお味噌汁にするべきよ! ああ、だけど炊き立てのホカホカのご飯が食べたい。もうずっと炊き立てご飯から遠ざかっているの」
「俺! 米に飯盒、持っている。味噌汁も。それも料亭の味とかいうフリーズドライの奴、あれは美味い。ついでに食パンもあるよ。ただ、ハーフサイズだから、6枚切りの3枚しかないけど」
「充分よ。でも、明日の朝ごはん、どうしよう。パンにする? ご飯にする? ベーコンエッグは譲れないけど」
「悩むなぁ。なんて贅沢な悩みなんだ。俺、この世界に本当は居なくて夢でも見ているのかもと思っていたけど、もう開き直って異世界の食事を楽しむことにしよう」
「日本の食料だけどね」
「そういえば、この世界の食べ物は食べた事ない」
「偶然ね。私もないわ」
「ひょっとして、食べたら姿が見えるようになるかな。でも、この恰好とバイク持ちだと浮くよな」
「そうね。服装が違い過ぎるわ」
「じゃぁ、この世界の服を手に入れて、バイクを隠してから食べて見る」
「そうしましょう」
「でも、服を買うのにお金がいるよ」
「私が持っているわ。ギルドの銀行みたいな所に預けているから大丈夫よ」
「わぁ、有難い。本当に聖女様に会えて良かった」
「フフフッ、そうでしょう」
私達はベーコンエッグで気持ちが浮かれていた。私もやっと普通に話せる人に出会えてとても嬉しかったし、アランも嬉しそうだった。
「ところでさ、ここって街道沿いだけど割と大きな街に近いせいか、結構行き来きする連中が多いみたいなんだ」
「そうなの?」
「これまでは俺、幽霊状態だったから人にも見られずに済んだけど、玲ちゃん? はその、変な奴らに目を付けられているんじゃないか? あ、あの玲ちゃんって呼んでもいい?」
「玲ちゃん……何だか、可愛い呼びかけね。私も一応20歳の女性なんだけど」
「20歳!? ウソ! 見えない」
「えっ、そう? 若く見える?」
「16歳ぐらいかと思った」
「それはいくら何でも」
「いや、玲ちゃんってハーフ?」
「はっ? ええ!? この黒髪、黒目、日本人顔でまさかそんな事いわれるなんて」
「いや、玲ちゃん、茶髪だよね。顔つきは日本人といえば言えない事もないけど、凄く整った綺麗な顔してる」
「それはまぁ、眼鏡外せば美人とは言われていたけど……、茶髪はないでしょう。焚火のせいで色が違って見えるのかな。あっ、そういえば走るのに邪魔で眼鏡をはずしていたんだった。でも、良く見えてる。って事は視力が戻ったって事? あっ、鏡、どこにやったったけ?」
「ああ、ハイ。ここにあるよ」
そうして、鏡をみてビックリした。若い!
顔は確かに私の顔だけど、肌が綺麗。髪が茶色の艶々した色になっている。後ろでくくって一つにしていた髪をほどいて目の前に持ってくると、確かに綺麗な栗色だった。いつの間に。
領都であの宿屋のトイレに鏡があって、その時チラリと見た時は確かに黒髪だった。それが、領都を出て走っているうちに黒が抜けて茶髪になった? 年齢を振り落として若くなった?
「俺とお揃いだね」
「な、何が?」
「若返って、この世界仕様の外人もどきになったじゃないか」
「外人もどき……」
「おかげで悪辣なメイドにも見つからなくて済むんじゃないか?」
「それはそうね」
「でも、念のためにここから離れておいたほうが良いと思う」
「そうね」
と言う事で一旦、朝食は棚上げにして私達はここから逃走する事にした。でも、いつの間にか変装? というか見かけが変わっていたのはどうしてなんだろう。
焚火にあたりながら熱いコーヒーを飲むのは心が落ち着く。コーヒーが美味しい。アランの持っていたコーヒーはインスタントだけどね。
冷蔵庫にペットボトルのコーヒーはあるけど、あれはアイスだから、ホットコーヒーとはまた、別物だと思う。焚火があるからアイスコーヒーを温めても良いかもしれないけど。
「でも、このコーヒーも後、何回飲めるのかしら。飲んでしまえば無くなってしまうわね」
「あっ、それは大丈夫。一晩たてばまた、戻るんだ」
「えっ?」
「俺が持っているのはソロキャンプ用にレトルトとか、お昼に食べようと思っていたコンビニのお握りとかインスタント食品だけど、これ、食べても翌日には元の状態に戻っているんだ」
「えっ、と」
「ゴミも消えているし、燃料も元通りだし、ついでにバイクのガソリンも元通り。一応、走るとガソリンは減るけどさ」
「何だか」
「不思議だよな~」
「あの、私もそうなの」
「ん?」
「私の冷蔵庫の中身も食べられるけど、翌日には元の状態に戻っているのよ」
「えっ、それは俺と同じ、」
「そう、ただし、冷蔵庫の中身が全部、取り出せるわけではないけどね。レベルが1のせい、あっ、そういえば冷蔵庫のレベルが上がっていた」
「レベルが上がると何か変わる?」
「ちょっと、待ってて。見てみる」
そうして、冷蔵庫の中を確認してみると何という事でしょう。
チルド、お肉のおいてある場所が灰色から普通の色に変わっていた。お肉、ソーセージ、ベーコンが食べられる。
ベーコンエッグ、今迄普通に食べていた朝食メニューがこんなに有難く感じるなんて。
「アラン、明日の朝食はベーコンエッグが食べられるわ」
「ワォ、俺半熟、両面焼き! ケチャップで」
「奇遇ね。私も半熟両面やき。ケチャップ」
「どうして、パンに目玉焼きなのに醤油を垂らす人がいるのか俺には理解できない」
「そうよね。目玉焼きにお醤油を垂らすなら、ご飯にお味噌汁にするべきよ! ああ、だけど炊き立てのホカホカのご飯が食べたい。もうずっと炊き立てご飯から遠ざかっているの」
「俺! 米に飯盒、持っている。味噌汁も。それも料亭の味とかいうフリーズドライの奴、あれは美味い。ついでに食パンもあるよ。ただ、ハーフサイズだから、6枚切りの3枚しかないけど」
「充分よ。でも、明日の朝ごはん、どうしよう。パンにする? ご飯にする? ベーコンエッグは譲れないけど」
「悩むなぁ。なんて贅沢な悩みなんだ。俺、この世界に本当は居なくて夢でも見ているのかもと思っていたけど、もう開き直って異世界の食事を楽しむことにしよう」
「日本の食料だけどね」
「そういえば、この世界の食べ物は食べた事ない」
「偶然ね。私もないわ」
「ひょっとして、食べたら姿が見えるようになるかな。でも、この恰好とバイク持ちだと浮くよな」
「そうね。服装が違い過ぎるわ」
「じゃぁ、この世界の服を手に入れて、バイクを隠してから食べて見る」
「そうしましょう」
「でも、服を買うのにお金がいるよ」
「私が持っているわ。ギルドの銀行みたいな所に預けているから大丈夫よ」
「わぁ、有難い。本当に聖女様に会えて良かった」
「フフフッ、そうでしょう」
私達はベーコンエッグで気持ちが浮かれていた。私もやっと普通に話せる人に出会えてとても嬉しかったし、アランも嬉しそうだった。
「ところでさ、ここって街道沿いだけど割と大きな街に近いせいか、結構行き来きする連中が多いみたいなんだ」
「そうなの?」
「これまでは俺、幽霊状態だったから人にも見られずに済んだけど、玲ちゃん? はその、変な奴らに目を付けられているんじゃないか? あ、あの玲ちゃんって呼んでもいい?」
「玲ちゃん……何だか、可愛い呼びかけね。私も一応20歳の女性なんだけど」
「20歳!? ウソ! 見えない」
「えっ、そう? 若く見える?」
「16歳ぐらいかと思った」
「それはいくら何でも」
「いや、玲ちゃんってハーフ?」
「はっ? ええ!? この黒髪、黒目、日本人顔でまさかそんな事いわれるなんて」
「いや、玲ちゃん、茶髪だよね。顔つきは日本人といえば言えない事もないけど、凄く整った綺麗な顔してる」
「それはまぁ、眼鏡外せば美人とは言われていたけど……、茶髪はないでしょう。焚火のせいで色が違って見えるのかな。あっ、そういえば走るのに邪魔で眼鏡をはずしていたんだった。でも、良く見えてる。って事は視力が戻ったって事? あっ、鏡、どこにやったったけ?」
「ああ、ハイ。ここにあるよ」
そうして、鏡をみてビックリした。若い!
顔は確かに私の顔だけど、肌が綺麗。髪が茶色の艶々した色になっている。後ろでくくって一つにしていた髪をほどいて目の前に持ってくると、確かに綺麗な栗色だった。いつの間に。
領都であの宿屋のトイレに鏡があって、その時チラリと見た時は確かに黒髪だった。それが、領都を出て走っているうちに黒が抜けて茶髪になった? 年齢を振り落として若くなった?
「俺とお揃いだね」
「な、何が?」
「若返って、この世界仕様の外人もどきになったじゃないか」
「外人もどき……」
「おかげで悪辣なメイドにも見つからなくて済むんじゃないか?」
「それはそうね」
「でも、念のためにここから離れておいたほうが良いと思う」
「そうね」
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