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10. 少年はアランになった。
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「あの、元気出して。マドレーヌでもいかが?」
疲れた時には甘い物がいいし、少年にそっとマドレーヌを差し出すと彼は黙って受け取り、一口かじると
「美味い、美味しいよ~。こんな時なのにお菓子が美味しい」
「よ、良かったね」
「うん、うん。落ち込んでいても美味しい物はわかる」
「他にもあるよ。冷蔵庫の中には色んな食べ物があるから。チキンの丸焼きもあるの」
「チキンの丸焼き? クリスマスの?」
「そう、クリスマスのチキン。これ、この燃えているコンロの上で温めたら美味しいんじゃないかな。サンドイッチも温めたらいいかもしれない」
冷蔵庫からサンドイッチとチキンを取り出すと少年は「ワオッ!」と歓声を上げた。
「背後霊の冷蔵庫から食べ物が取り出せるのか。凄いな。サンドイッチはそのまま食べたい。けど、チキンはこのフライパンに切り分けてのせたら熱いのが食べられる」
「じゃぁ、これ。丸ごとチキン」
「わぁ! チキンの丸焼きだ!」
チキンの丸焼きを見た少年は落ち込んでいたのがウソのようにテンションを上げた。
そうして、私達は遅ればせながら彼の焚火台の上にコンロを乗せてそこでチキンを焼き、もう一つのコンロでお湯を沸かしてインスタントのスープを飲んだ。
手まり寿司を見た少年は「ウソ!」と呟きながら口に入れ、「お寿司がたべられるなんて、何て幸せな」と笑った。
笑顔になれて良かった。手まり寿司とコーンスープはちょっと合わないような気もするけど、クリスマスは和洋折衷だから良い、としよう。
フライパンの上にアルミホイルを敷いて切り分けたチキンを焼いた。熱い食べ物が美味しい。二人でお腹いっぱい食べて満足した。食後のコーヒーを飲みながら
「こんな事を言うのは悪いかもしれないけど、貴方がキャンパーでキャンプ用品と一緒にこの世界に飛ばされて来てくれて有難いわ」
「俺こそ、君が冷蔵庫と共に此処にいて、俺に気づいてくれて嬉しいよ」
「私達、会うべきして会ったのかもしれないわね」
「本当に、そう思うよ」
ピロローン♪ 突然、音楽が聞こえてきた。
「な、何かしら?」
「何? どうかした?」
「今、ピロローンって音楽が聞こえたの、聞こえなかった?」
「いや、何も」
「まさか、レベルが上がった?!」
「レベル?」
「ほら、ステータスがあるでしょ。それのレベルが私、全部レベル1だったから、そろそろ上がったのかもしれない」
「そういえば言ってたな。ステータスってよくゲームとかで出てくるステータス?」
「そう、そのステータス」
「それ、俺にも見える?」
「さぁ? わからないわ。でも、ちょっと待ってね。ステータスオープン」
すると、私のステータスが空中に浮かんだ。前にステータスと言った時よりも明るく輝いている。夜だからネオン付きなのかしら。
『玲。冷蔵庫(広義)と共に玲の祝福を持つ聖女』
聖女 レベル1
冷蔵庫 レベル2
浄化 レベル2
光魔法 レベル1
水魔法 レベル2
火魔法 レベル1
「うそ! 冷蔵庫と共に、だって!? 冷蔵庫のレベルが2で他にも魔法が使えるんだ! いいなあ、魔法。魔法が使えるなんて」
少年の目にもこのステータスははっきりと見えたようだ。ステータスオープン、と言ったせいかもしれない。それでも、聖女のレベルが1なのは他のレベルが上がらないと2になれない? それとも、何か条件があるのかしら。
「うん。冷蔵庫とか浄化とか水魔法は結構使ったせいでレベルが上がったのかもしれない。火魔法と光魔法は殆ど、使ってなかったから」
「お、俺もステータス、あるかな」
「どうだろう。でもステータスで名前がでてくるといいね」
「ああ、うん。ス、ステータスオープン。ステータスオープン! ステータスオープン! なんでだよ! ステータスオープン」
「あ、あのひょっとして、名前が確認できないから、かもしれない」
「俺の名前、名前、何だろう!」
「仮の名前を付けたら良いかもしれない。例えば、エドガーとかアランとか」
「それって、」
「見た目はアランって感じだけど」
「もうそれでいいや」
「じゃぁ、アラン」
私が少年にアランと呼びかけたとたんに私の身体から光が溢れ、アランの身体を包んだ。これ、何か、マズイんじゃない? 名づけてしまったとか。少年と二人で顔を見合わせて、彼は恐る恐る「ステータスオープン」と呟いた。途端に現れる光輝くステータスボード。
『アラン。聖女と共にある存在』
存在 レベル1
キャンプ レベル1
浄化 レベル1
「「えっ?」」
「俺、存在のレベルが1なんだ。存在って何? 魔法は? 魔法がない」
「浄化があるわ。あれも魔法のようなものよ。それに存在レベルが上がると、人に姿が見えるようになるかも」
「そうか、幽霊から脱却できるかもしれないんだ」
「そうよ。キャンプのレベルも上がると良い事があるかもしれないし」
「そうだな。うん、何とかなりそうな気がしてきた。ありがとう。聖女と共にある存在だから、これからも一緒に居てくれる?」
「もちろんよ。よろしくね」
「よし、頑張ろう」
「そうね。頑張りましょう」
という事で色々検証してみた結果、私が冷蔵庫に触っている間は姿が消えて、冷蔵庫から手を離すとまた見えるようになる事がわかった。私が手を離しても冷蔵庫に向き合っている間は私の姿だけが見えるらしい。
内緒だけど、ステータスを一旦消して、改めて心の中でステータスと唱えると、
『玲。冷蔵庫(広義)と共に玲の祝福を持つ聖女』
聖女 レベル1
冷蔵庫 レベル2
浄化 レベル2
光魔法 レベル1
水魔法 レベル2
火魔法 レベル1
従者 アラン
と出た。ステータスはオープンと言わなければ人には見えないらしい。ごめんね、アランを従者にしてしまった。
でも、本人に知らせなければ問題はない、よね。
疲れた時には甘い物がいいし、少年にそっとマドレーヌを差し出すと彼は黙って受け取り、一口かじると
「美味い、美味しいよ~。こんな時なのにお菓子が美味しい」
「よ、良かったね」
「うん、うん。落ち込んでいても美味しい物はわかる」
「他にもあるよ。冷蔵庫の中には色んな食べ物があるから。チキンの丸焼きもあるの」
「チキンの丸焼き? クリスマスの?」
「そう、クリスマスのチキン。これ、この燃えているコンロの上で温めたら美味しいんじゃないかな。サンドイッチも温めたらいいかもしれない」
冷蔵庫からサンドイッチとチキンを取り出すと少年は「ワオッ!」と歓声を上げた。
「背後霊の冷蔵庫から食べ物が取り出せるのか。凄いな。サンドイッチはそのまま食べたい。けど、チキンはこのフライパンに切り分けてのせたら熱いのが食べられる」
「じゃぁ、これ。丸ごとチキン」
「わぁ! チキンの丸焼きだ!」
チキンの丸焼きを見た少年は落ち込んでいたのがウソのようにテンションを上げた。
そうして、私達は遅ればせながら彼の焚火台の上にコンロを乗せてそこでチキンを焼き、もう一つのコンロでお湯を沸かしてインスタントのスープを飲んだ。
手まり寿司を見た少年は「ウソ!」と呟きながら口に入れ、「お寿司がたべられるなんて、何て幸せな」と笑った。
笑顔になれて良かった。手まり寿司とコーンスープはちょっと合わないような気もするけど、クリスマスは和洋折衷だから良い、としよう。
フライパンの上にアルミホイルを敷いて切り分けたチキンを焼いた。熱い食べ物が美味しい。二人でお腹いっぱい食べて満足した。食後のコーヒーを飲みながら
「こんな事を言うのは悪いかもしれないけど、貴方がキャンパーでキャンプ用品と一緒にこの世界に飛ばされて来てくれて有難いわ」
「俺こそ、君が冷蔵庫と共に此処にいて、俺に気づいてくれて嬉しいよ」
「私達、会うべきして会ったのかもしれないわね」
「本当に、そう思うよ」
ピロローン♪ 突然、音楽が聞こえてきた。
「な、何かしら?」
「何? どうかした?」
「今、ピロローンって音楽が聞こえたの、聞こえなかった?」
「いや、何も」
「まさか、レベルが上がった?!」
「レベル?」
「ほら、ステータスがあるでしょ。それのレベルが私、全部レベル1だったから、そろそろ上がったのかもしれない」
「そういえば言ってたな。ステータスってよくゲームとかで出てくるステータス?」
「そう、そのステータス」
「それ、俺にも見える?」
「さぁ? わからないわ。でも、ちょっと待ってね。ステータスオープン」
すると、私のステータスが空中に浮かんだ。前にステータスと言った時よりも明るく輝いている。夜だからネオン付きなのかしら。
『玲。冷蔵庫(広義)と共に玲の祝福を持つ聖女』
聖女 レベル1
冷蔵庫 レベル2
浄化 レベル2
光魔法 レベル1
水魔法 レベル2
火魔法 レベル1
「うそ! 冷蔵庫と共に、だって!? 冷蔵庫のレベルが2で他にも魔法が使えるんだ! いいなあ、魔法。魔法が使えるなんて」
少年の目にもこのステータスははっきりと見えたようだ。ステータスオープン、と言ったせいかもしれない。それでも、聖女のレベルが1なのは他のレベルが上がらないと2になれない? それとも、何か条件があるのかしら。
「うん。冷蔵庫とか浄化とか水魔法は結構使ったせいでレベルが上がったのかもしれない。火魔法と光魔法は殆ど、使ってなかったから」
「お、俺もステータス、あるかな」
「どうだろう。でもステータスで名前がでてくるといいね」
「ああ、うん。ス、ステータスオープン。ステータスオープン! ステータスオープン! なんでだよ! ステータスオープン」
「あ、あのひょっとして、名前が確認できないから、かもしれない」
「俺の名前、名前、何だろう!」
「仮の名前を付けたら良いかもしれない。例えば、エドガーとかアランとか」
「それって、」
「見た目はアランって感じだけど」
「もうそれでいいや」
「じゃぁ、アラン」
私が少年にアランと呼びかけたとたんに私の身体から光が溢れ、アランの身体を包んだ。これ、何か、マズイんじゃない? 名づけてしまったとか。少年と二人で顔を見合わせて、彼は恐る恐る「ステータスオープン」と呟いた。途端に現れる光輝くステータスボード。
『アラン。聖女と共にある存在』
存在 レベル1
キャンプ レベル1
浄化 レベル1
「「えっ?」」
「俺、存在のレベルが1なんだ。存在って何? 魔法は? 魔法がない」
「浄化があるわ。あれも魔法のようなものよ。それに存在レベルが上がると、人に姿が見えるようになるかも」
「そうか、幽霊から脱却できるかもしれないんだ」
「そうよ。キャンプのレベルも上がると良い事があるかもしれないし」
「そうだな。うん、何とかなりそうな気がしてきた。ありがとう。聖女と共にある存在だから、これからも一緒に居てくれる?」
「もちろんよ。よろしくね」
「よし、頑張ろう」
「そうね。頑張りましょう」
という事で色々検証してみた結果、私が冷蔵庫に触っている間は姿が消えて、冷蔵庫から手を離すとまた見えるようになる事がわかった。私が手を離しても冷蔵庫に向き合っている間は私の姿だけが見えるらしい。
内緒だけど、ステータスを一旦消して、改めて心の中でステータスと唱えると、
『玲。冷蔵庫(広義)と共に玲の祝福を持つ聖女』
聖女 レベル1
冷蔵庫 レベル2
浄化 レベル2
光魔法 レベル1
水魔法 レベル2
火魔法 レベル1
従者 アラン
と出た。ステータスはオープンと言わなければ人には見えないらしい。ごめんね、アランを従者にしてしまった。
でも、本人に知らせなければ問題はない、よね。
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