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6. やっとだけど、いまさら気づいた危機
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「ピピピ、ピピ」
「うーん、お早う。今日も元気だね」
「ピ、ピピピ」
可愛い小鳥の声で目が覚める。起きるとすぐ側にとまって鳴いているのも、もう慣れた。それにしても、野生の小鳥ってこんなに慣れるものかしら。
ササッと顔を洗ってタオルで顔を拭く。水は水魔法で手の平に出てくるので簡単だし、タオルは水で洗って冷蔵庫のフックにかけておけばいつの間にか乾いているから助かる。とはいえ、浄化で顔を綺麗にすれば特に問題はないけれどね。
この部屋は何もないので早寝早起きの習慣がついてしまった。暇をつぶすものも何もないし、凄く退屈。
朝ごはんはいつものサンドイッチとカフェオレで済ませ、小鳥さんにはマドレーヌと私の手の平から出したお水。スープ皿を綺麗に洗って冷たいお水を入れてあげると「チチチ」と喜んで飲んでいるので、其れを見ているだけで癒される。
それからラジオ体操を済ませてストレッチと軽い運動。といってもこの狭い部屋の中で大してする事はないので、足を高く上げて速足で部屋の中を歩き回るとか頭の中で音楽を流してそれに合わせてゆっくりと踊るとか。
筋トレとか動きの激しい踊りは夕方にしている。疲れると横になりたくなるから。スクワットも日本にいる時は滅多にしなかったけど、暇すぎて真面目にするようになった。
汗をかいても浄化で綺麗になるのは有難いと思う。私、この1週間で身体が引き締まって来たかもしれない。
ちょっと疲れたのでオレンジジュースを飲んで、冷蔵庫にマグカップをしまった。こまめに冷蔵庫にジュースをしまわないと、直ぐぬるくなってしまうから気を付けないと。
「コンコン」
ドアを叩く音とガチャと鍵を開ける音がして直ぐに扉が開いた。普通はノックして返事があってから「入っていいですか」と聞いて開けるものじゃない? もし着替えをしていたらどうするんですか? まぁ、着替えはないから着たきり雀だけど。
「お早うございます。お元気そうですね」
初めてみる年配のメイドさんと若いメイドさん、ごつい兵士が一人、入って来た。ご飯も寄こさずに、「お元気そう」ですって。普通なら倒れていますよ。
「貴女の処遇について話し合いが行われましたが、貴女は性格が冷たい女ですし、聖女様の慈悲があるとしても、手癖の悪い者を下女として雇う事は出来ません。ですので、貴女にはこの城を出てもらいます。聖女様の目にとまっても困りますから、王都からは追放しますが、離れた土地で暮らしたいというならばそれは構いません」
「はい」
「この中に旅に必要なモノは入っています。それとこれは一般的な旅人の服です。貴女の場合、大丈夫だとは思いますが、一応、男物の服装にしています。今、着ている服はそのまま持っていっても構いませんが、置いていってもいいですよ」
「はい」
「念のためですが、聖女様がご自分のアクセサリーを貴女が盗っているかもしれない、と言われていましたので持っている物を全て出していただけますか」
「はい」
そうして、年配のメイドさんは側に置いていた割烹着のポケットや、Tシャツの縫い代まで確認していった。これじゃあ、もし服の内側とかに大事な物を縫い込んでいても見つかってしまう。早いうちに青い宝石の付いた指輪をアイテムボックスに隠しておいて良かった。
旅の必需品は一応説明を聞いてからリュックタイプのズタ袋に仕舞い、Tシャツとジーパン、割烹着は別のズタ袋に押し込んだ。
「それとこれは当座、暮らしていけるだけの金銭になります」
と言いながら年配のメイドさんは巾着タイプの袋を二つ、出してきた。テーブルの上に巾着からお金を出すと金種の説明をしてくれた。一般的な庶民なら2年は暮らせる金額だそうだ。
「一応、王都の冒険者ギルドで冒険者登録をして下さい。そこで身分証も発行されますし、お金も預ける事が出来ます。それから、王家の手配した馬車で離れた領都まで送ります。その後は貴女と聖女様は何の関係もなくなります」
「はい」
「まったく、聖女様の温情がなければ放って置いても良いのですが、聖女様に感謝してこれからは心を入れ替えて過ごすように」
年配のメイドさんは冷たく私に言い放すと、若いメイドさんに
「貴女は一応、彼女について領都まで行きなさい。せっかくですから領都で2日ほど過ごしていいですよ」
「はい。畏まりました」
という事でやっと私は軟禁生活から解放された。そして、そのままメイドさんと兵士に連れられて冒険者ギルドに行き、登録をした。
お金は心配だったので、日本円にして1万円くらいを手元に置いておいた。メイドさんには金貨3枚くらいは持っておいたほうが良いと言われたけれど、そうしたら彼女に取られてしまいそうな気がしたから、断った。
チッと小さく舌打ちしたのはどうしてでしょうね。こわっ。
そういえば、私は聖女らしいけど、攻撃手段は何もないからこの世界での身を守る方法は何もない。冷蔵庫、浄化、光魔法、水魔法、火魔法があるけど皆レベル1だし、火魔法は室内で蝋燭ほどの火しか試してない。
……ひょっとして、私、襲われたら一巻の終わりじゃない?
「うーん、お早う。今日も元気だね」
「ピ、ピピピ」
可愛い小鳥の声で目が覚める。起きるとすぐ側にとまって鳴いているのも、もう慣れた。それにしても、野生の小鳥ってこんなに慣れるものかしら。
ササッと顔を洗ってタオルで顔を拭く。水は水魔法で手の平に出てくるので簡単だし、タオルは水で洗って冷蔵庫のフックにかけておけばいつの間にか乾いているから助かる。とはいえ、浄化で顔を綺麗にすれば特に問題はないけれどね。
この部屋は何もないので早寝早起きの習慣がついてしまった。暇をつぶすものも何もないし、凄く退屈。
朝ごはんはいつものサンドイッチとカフェオレで済ませ、小鳥さんにはマドレーヌと私の手の平から出したお水。スープ皿を綺麗に洗って冷たいお水を入れてあげると「チチチ」と喜んで飲んでいるので、其れを見ているだけで癒される。
それからラジオ体操を済ませてストレッチと軽い運動。といってもこの狭い部屋の中で大してする事はないので、足を高く上げて速足で部屋の中を歩き回るとか頭の中で音楽を流してそれに合わせてゆっくりと踊るとか。
筋トレとか動きの激しい踊りは夕方にしている。疲れると横になりたくなるから。スクワットも日本にいる時は滅多にしなかったけど、暇すぎて真面目にするようになった。
汗をかいても浄化で綺麗になるのは有難いと思う。私、この1週間で身体が引き締まって来たかもしれない。
ちょっと疲れたのでオレンジジュースを飲んで、冷蔵庫にマグカップをしまった。こまめに冷蔵庫にジュースをしまわないと、直ぐぬるくなってしまうから気を付けないと。
「コンコン」
ドアを叩く音とガチャと鍵を開ける音がして直ぐに扉が開いた。普通はノックして返事があってから「入っていいですか」と聞いて開けるものじゃない? もし着替えをしていたらどうするんですか? まぁ、着替えはないから着たきり雀だけど。
「お早うございます。お元気そうですね」
初めてみる年配のメイドさんと若いメイドさん、ごつい兵士が一人、入って来た。ご飯も寄こさずに、「お元気そう」ですって。普通なら倒れていますよ。
「貴女の処遇について話し合いが行われましたが、貴女は性格が冷たい女ですし、聖女様の慈悲があるとしても、手癖の悪い者を下女として雇う事は出来ません。ですので、貴女にはこの城を出てもらいます。聖女様の目にとまっても困りますから、王都からは追放しますが、離れた土地で暮らしたいというならばそれは構いません」
「はい」
「この中に旅に必要なモノは入っています。それとこれは一般的な旅人の服です。貴女の場合、大丈夫だとは思いますが、一応、男物の服装にしています。今、着ている服はそのまま持っていっても構いませんが、置いていってもいいですよ」
「はい」
「念のためですが、聖女様がご自分のアクセサリーを貴女が盗っているかもしれない、と言われていましたので持っている物を全て出していただけますか」
「はい」
そうして、年配のメイドさんは側に置いていた割烹着のポケットや、Tシャツの縫い代まで確認していった。これじゃあ、もし服の内側とかに大事な物を縫い込んでいても見つかってしまう。早いうちに青い宝石の付いた指輪をアイテムボックスに隠しておいて良かった。
旅の必需品は一応説明を聞いてからリュックタイプのズタ袋に仕舞い、Tシャツとジーパン、割烹着は別のズタ袋に押し込んだ。
「それとこれは当座、暮らしていけるだけの金銭になります」
と言いながら年配のメイドさんは巾着タイプの袋を二つ、出してきた。テーブルの上に巾着からお金を出すと金種の説明をしてくれた。一般的な庶民なら2年は暮らせる金額だそうだ。
「一応、王都の冒険者ギルドで冒険者登録をして下さい。そこで身分証も発行されますし、お金も預ける事が出来ます。それから、王家の手配した馬車で離れた領都まで送ります。その後は貴女と聖女様は何の関係もなくなります」
「はい」
「まったく、聖女様の温情がなければ放って置いても良いのですが、聖女様に感謝してこれからは心を入れ替えて過ごすように」
年配のメイドさんは冷たく私に言い放すと、若いメイドさんに
「貴女は一応、彼女について領都まで行きなさい。せっかくですから領都で2日ほど過ごしていいですよ」
「はい。畏まりました」
という事でやっと私は軟禁生活から解放された。そして、そのままメイドさんと兵士に連れられて冒険者ギルドに行き、登録をした。
お金は心配だったので、日本円にして1万円くらいを手元に置いておいた。メイドさんには金貨3枚くらいは持っておいたほうが良いと言われたけれど、そうしたら彼女に取られてしまいそうな気がしたから、断った。
チッと小さく舌打ちしたのはどうしてでしょうね。こわっ。
そういえば、私は聖女らしいけど、攻撃手段は何もないからこの世界での身を守る方法は何もない。冷蔵庫、浄化、光魔法、水魔法、火魔法があるけど皆レベル1だし、火魔法は室内で蝋燭ほどの火しか試してない。
……ひょっとして、私、襲われたら一巻の終わりじゃない?
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