冷女が聖女。

サラ

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4. 魔法

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 冷蔵庫と一緒にトートバッグも透明になるという事は、ここに大切なモノをしまっておくと良いかもしれない。そう考えて、バッグに触ると目の前にリストが浮かんだ。

「えっ、なにこれ?」

 カーディガン×1、手袋×1、スマートフォン×1、財布×1、ポーチ×1、タオルハンカチ×1、ハンカチ×1、ティッシュ×1、除菌ティッシュ×1、フルーツのど飴×1袋

 整然と一列に並んだリストはトートバッグのなかに入っていたもので……、ちょっとびっくりした。よく異世界ものでみるアイテムボックスのような、まさかね。
 バッグを手に取り中を見ると中は暗黒だった。

 ええ、本当に真っ暗で底が見えないような感じ。相変わらずリストは空中に浮かんでいる。試しに目の前に浮かぶリストの中のハンカチに触ってみると、〇と×が出て来たので〇に触るとバッグの中にハンカチが浮かび上がってきて、ビビった。

 ハンカチを取り出すとリストからハンカチが消えた。トートバッグにハンカチを入れてみると、暗闇に飲み込まれるように消えていく。そして、リストの一番最後にハンカチ×1と出て来た。
 これは、どの程度の容量があるのかは分からないけど、かなり便利かもしれない。

 あっ、そういえばお祖母様から頂いた青い宝石の付いた指輪、これは大切なものだからと渡されたんだけど、此処にしまっておくといいかもしれない。
 この指輪は本家を継ぐ娘が頂くもので代々、当主が跡継ぎに渡している大切な指輪だけど、何故か昨日、ご挨拶に行った時に渡されたんだよね。

 指輪だけど、普段はチェーンに通してネックレスにして、特にシオリには見られないように、と念を押されたんだった。この指輪の宝石はサファイアではないけれど、とても珍しい石だから他人には見せないようにと言われたんだけど、ひょっとして、この世界の人にも良いモノに見えるかもしれない。
 そう考えると、誰にも知られないうちに隠せるのは良かったかもしれない。シオリに知られたら自分のモノだといいそうだし。ホント、昨日は見つからなくて良かった。

 という事で外したチェーン付きの指輪をトートバッグに入れると、『大切な想いが詰まった魔石』の指輪とチェーン×1と出て来た。
 あの指輪、大切な想いが詰まっていたんだ……。代々伝わって来たし、想いがこめられてきたのかもしれない。

 魔石って事は隕石か何かで、偶々綺麗な青い石だからご先祖様が拾ったのかしら。宝石じゃないなら石としての価値はないのかもね。でも、せっかく受け継いだのだから大切にしなくっちゃ。石を繋ぐためにも何とか帰れたらいいんだけど……。

 さて、異世界といえば剣と魔法の世界。魔法が使えるって嬉しい。でも、魔法ってMPとか使うんじゃなかったかしら。ステータスにそういう表記が一切ないんだけど。調子に乗って魔法を使っていたら突然倒れたりするかもしれないし、そういう知識が全くないのも困る。
 しかもレベル1だし。

 でも、とりあえず、聖女といえば浄化よね。どうすばいいんだろう。
 両手を眺めて「手の平が綺麗になーれ~。浄化」といってみたら、手の平がフワンと優しい光に包まれて何だかスッキリした。多分綺麗になったんだと思う。ちょっと汚してみれば良く分かったかもしれない。

 水魔法ってどうするんだろう? 洗面所といってもタンクみたいなのが上についていて、そこから管みたいなのが降りてきて蛇口に繋がっているけど、コックを動かしても水は出てこなかった。説明もなかったし、ひょっとして上のタンクに水が入ってないのかも。

 トイレは洋式便座みたいに座って用を足すみたいだけど、開けてみるとボットンタイプだった。でも、臭いがないという事はかなり深い穴なのかもしれない。
 この部屋、水がでないと生きていくのにとても不便だと思う。幸い、冷蔵庫にお水のペットボトルがあるし、水魔法、あっと、

「この手の平に水よ、出てこい。ウオーター」

 呪文を唱えてみました。ちょっと恥ずかしいけど誰も見てないし。すると、何という事でしょう。手の平にお水がコンコンと湧き出てきた。慌てて

「お水、ストップ」

 と言うと水は止まった。手の中にお水を残して。そのままお水を飲んで見ると美味しかった。
 例えて言うと山の中の源泉から汲んで飲んだような、ヒンヤリとした美味しいお水だった。よし、取り合えずの水と食料確保。浄化を使えば清潔さも保たれるし、何とかしばらくは過ごせそう。
 他の魔法は

「ろうそくのような火、指先から少しだけ出てきて。ファイアー」
「ファイアー、ストップ」

 本当にろうそくのような火が出て来た。これが火魔法なのね。何だか感激。後は光魔法。

「蛍光灯のような光、これぐらいの大きさで現れて。ライト」

 両手で囲んだ大きさの光のかたまりが蛍光灯のような明るさで現れた。手の上に。

「そのまま空中に浮かんで、そうね、ここの位置に来て」

 と私が指さした場所にその光のかたまりはスーッと移動した。楽しい。ついに私も魔法使い。アイテムボックスも手に入れたし、魔法も使える。これはこの先も何とかなるかもしれない。冷蔵庫もある事だし。

 でも、私、聖女みたいだけど……、どうしよう。シオリとは離れていたいし、このお城の人は冷たいし、聖女の事は内緒にしてサッサと出ていったほうがいいかもしれない。

 この国だって、聖女は一人いれば充分だよね。
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