17 / 96
5歳児の夕食と記憶力
しおりを挟む
■リーブル宮殿 ダイニングルーム
広い。
何故こんなに広い部屋にしたんだろうか?
昔の皇帝は子沢山だったから、必要だったのか?
目の前には20メートルぐらいの真っ白なテーブルクロスが伸びている。
椅子には俺一人。
後ろで親友二人も食事中だが、話はしない。
給仕係も部屋にいるが、口を利いてはいけないしきたりだ。
静かだ・・・
うしろで肉を噛む音がはっきり聞こえる。
昔は、パパンとママンと食べていたことがある。
短い期間ではあったが、会話もあった気がする。
ママンが病気になり、パパンも病気になってから1年近く一人で食べている。
誰も教えてくれないが、やはり「寂しい」という感情なのだと思う。
そもそも頭の中のヤツが教えてくれるだけで、俺には満足な教育係がついていない。
皇太子は見て覚えることになっているからだ。
教育係がよからぬ方へ導くかも知れんと言うことだろう。
俺は記憶のあるときにはすでに、謁見の間で先王と一緒に報告や議案を聞いていた。
文字や言葉がわからないが、頭のなかでは解説するヤツがいた。
ヤツが言うにはこの国に明るい未来は無いそうだ。
カクメイか戦争かあるいはその両方により、いずれ滅ぶと言い切る。
国が滅ぶと言われても気にならないかったが、お前が死ぬといわれては、何となく嫌な気がする。
「死ぬ」と言うこともはっきりとはわからんが、死んでいくやつらを見るとあまり喜ばしいことではないのだろう。
と言うわけで、死にたくない=国を滅ぼさせない。
そのために、5歳なりに頑張ることにしている。
今日の夕食も贅沢なものなのだろう。
民は麦不足で、パンも満足に食べられないと各地の領主から報告が上がっている。
目の前には、何種類ものパンが皿に乗っている。
肉も順番に何種類も出てくる。
気に入ったものを少しだけ食べる。
残ったものは処分するのであろう。
セツヤクとかシッソケンヤクというものとは程遠いようだ。
カクメイだと言う声が聞こえる。
しかし、どうしろと言うのだ?
俺は出されたものを食っているだけだ。
少し出すものを減らしてもらうか?
いや、その程度では民の腹は膨れないだろう・・・
頭のヤツも万能ではない。
なんでも答えを持っているわけでは無い様だ。
うむ。やはり白玉の仲間を増やすべきだ。
宮殿内には俺の悩みを相談できるやつが少なすぎる。
ハンスも優秀だが、あまり自分の考えを言わない。
馬鹿大臣どもは使い物にならない。
よし、明日から白玉の仲間と俺の友達を増やすことにする。
でも、どうやって?
■リーブル宮殿 皇帝執務室
今日もハンスのやつは無理の無い範囲で国事を行えと言う。
やっと昨日の夕食から食事が取れるようになったと言うのに。
だが、やつの言う「無理の無い範囲」というのは「倒れるまで」と同意に思える。
今も机の上には、過去見たことも無い量が積み上げられている。
長丁場なので、ソファーに横になって聞くことにする。
午前中に聞いた100ほどの案件は全てハンスに任せた。
ほとんどが麦・金・人が足りないと言う報告だった。
ただ、今年の収穫は昨年並みで飢饉の心配は無いようだ。
北の帝国も今のところおとなしく、攻勢は無い。
秋の収穫後に仕掛けてくるのだろう。
「陛下、即位式の日取りですが、来月の第二の週に執り行います。」
「そうか、好きにしろ。」
「まず、第一日目に・・・」
「待て、即位式は一日ではないのか?」
「式典自体は一日で終了しますが、アメリア連邦各国の王、領主の謁見が続きますので全て終わるのは5日後となります。それぞれの夜に晩餐会も催されます。」
はぁ、どれだけ面倒なんだ。
「謁見はもう少しまとめて、一日、いや、せめて二日で終わるようには出来んのか?」
「いえ、これでも大幅に短縮しております。先王のときはほぼ一ヶ月続きましたので。」
一ヶ月も、何すんの?
「それから、式典の前までに、各国・各領主の来歴などにお目通しいただき、基本的な部分は覚えていただくようにお願いいたします。」
いやいや、5歳の記憶力を過信しすぎですよ!
絶対無理だって、ハンス!!
広い。
何故こんなに広い部屋にしたんだろうか?
昔の皇帝は子沢山だったから、必要だったのか?
目の前には20メートルぐらいの真っ白なテーブルクロスが伸びている。
椅子には俺一人。
後ろで親友二人も食事中だが、話はしない。
給仕係も部屋にいるが、口を利いてはいけないしきたりだ。
静かだ・・・
うしろで肉を噛む音がはっきり聞こえる。
昔は、パパンとママンと食べていたことがある。
短い期間ではあったが、会話もあった気がする。
ママンが病気になり、パパンも病気になってから1年近く一人で食べている。
誰も教えてくれないが、やはり「寂しい」という感情なのだと思う。
そもそも頭の中のヤツが教えてくれるだけで、俺には満足な教育係がついていない。
皇太子は見て覚えることになっているからだ。
教育係がよからぬ方へ導くかも知れんと言うことだろう。
俺は記憶のあるときにはすでに、謁見の間で先王と一緒に報告や議案を聞いていた。
文字や言葉がわからないが、頭のなかでは解説するヤツがいた。
ヤツが言うにはこの国に明るい未来は無いそうだ。
カクメイか戦争かあるいはその両方により、いずれ滅ぶと言い切る。
国が滅ぶと言われても気にならないかったが、お前が死ぬといわれては、何となく嫌な気がする。
「死ぬ」と言うこともはっきりとはわからんが、死んでいくやつらを見るとあまり喜ばしいことではないのだろう。
と言うわけで、死にたくない=国を滅ぼさせない。
そのために、5歳なりに頑張ることにしている。
今日の夕食も贅沢なものなのだろう。
民は麦不足で、パンも満足に食べられないと各地の領主から報告が上がっている。
目の前には、何種類ものパンが皿に乗っている。
肉も順番に何種類も出てくる。
気に入ったものを少しだけ食べる。
残ったものは処分するのであろう。
セツヤクとかシッソケンヤクというものとは程遠いようだ。
カクメイだと言う声が聞こえる。
しかし、どうしろと言うのだ?
俺は出されたものを食っているだけだ。
少し出すものを減らしてもらうか?
いや、その程度では民の腹は膨れないだろう・・・
頭のヤツも万能ではない。
なんでも答えを持っているわけでは無い様だ。
うむ。やはり白玉の仲間を増やすべきだ。
宮殿内には俺の悩みを相談できるやつが少なすぎる。
ハンスも優秀だが、あまり自分の考えを言わない。
馬鹿大臣どもは使い物にならない。
よし、明日から白玉の仲間と俺の友達を増やすことにする。
でも、どうやって?
■リーブル宮殿 皇帝執務室
今日もハンスのやつは無理の無い範囲で国事を行えと言う。
やっと昨日の夕食から食事が取れるようになったと言うのに。
だが、やつの言う「無理の無い範囲」というのは「倒れるまで」と同意に思える。
今も机の上には、過去見たことも無い量が積み上げられている。
長丁場なので、ソファーに横になって聞くことにする。
午前中に聞いた100ほどの案件は全てハンスに任せた。
ほとんどが麦・金・人が足りないと言う報告だった。
ただ、今年の収穫は昨年並みで飢饉の心配は無いようだ。
北の帝国も今のところおとなしく、攻勢は無い。
秋の収穫後に仕掛けてくるのだろう。
「陛下、即位式の日取りですが、来月の第二の週に執り行います。」
「そうか、好きにしろ。」
「まず、第一日目に・・・」
「待て、即位式は一日ではないのか?」
「式典自体は一日で終了しますが、アメリア連邦各国の王、領主の謁見が続きますので全て終わるのは5日後となります。それぞれの夜に晩餐会も催されます。」
はぁ、どれだけ面倒なんだ。
「謁見はもう少しまとめて、一日、いや、せめて二日で終わるようには出来んのか?」
「いえ、これでも大幅に短縮しております。先王のときはほぼ一ヶ月続きましたので。」
一ヶ月も、何すんの?
「それから、式典の前までに、各国・各領主の来歴などにお目通しいただき、基本的な部分は覚えていただくようにお願いいたします。」
いやいや、5歳の記憶力を過信しすぎですよ!
絶対無理だって、ハンス!!
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
怠惰の神の使徒となり、異世界でのんびりする。筈がなんでこんなに忙しいの?異世界と日本で怠惰の魔法を使って駆け巡る。
七転び早起き
ファンタジー
オタク気質な高校生、中里春馬。高二で引きこもりとなった僕はとあるネトゲを始めた。
それは『ゴッズタイムキリング』。
『神々の暇潰し』と名付けられたネトゲに僕は興味を持ちのめり込んだ。そしてある特定条件を満たした僕は本当に異世界に来てしまった。
僕が崇める神は『怠惰の神』。
攻撃魔法が使えない僕は、弱体化と身を守る事に特化した魔法を駆使して異世界で生きていく。のんびりするために。
あれ?日本に戻る事も出来るのね。
[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました
mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。
ーーーーーーーーーーーーー
エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。
そんなところにある老人が助け舟を出す。
そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。
努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。
エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。
転移少女の侵略譚!〜弱小国家の皇帝になったのでほのぼの内政しようと思っていたら隣国達が(悪い意味で)放っておいてくれないので全部滅ぼす〜
くずは
ファンタジー
暗い部屋でパソコンを立ち上げる少女が1人。
彼女の名前は山内桜(やまうち さくら)。
食べる事と旅行が好きな普通の高校一年生、16歳。
そんな彼女に今ハマっているゲームがあった。そのゲームの名は「シヴィライゼーション」。様々な種族や魔法のある異世界で石器時代から文明を作り、発展させていくゲームだ。
ある日、彼女はいつものようにゲームを始めようとして……その世界に吸い込まれてしまった。
平和主義者の彼女は楽しく内政しようとするが、魔族や侵略国家などが世界中で戦争を起こす非常に治安の悪い世界だった。桜は仲間達と楽しく旅をしながらそんな邪魔な敵を倒していったらいつのまにか世界最大国家になってしまっていた!!
ーーー毎日投稿しています!
絶対完結はさせるので安心してご覧頂けますーーー
評価、感想、ブックマークなどをして頂けると元気100倍になるので気に入ったらして頂けると幸いです。
勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。
飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。
隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。
だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。
そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。
【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる