異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?

初老の妄想

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Ⅱ-173 ご神体?

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■オーブの間

 3人と1匹で入ったオーブのは薄暗い空間だった。照明というか宝玉オーブ自体が放つ光によって部屋全体が見えているが、床も天井も壁もすべて黒い空間で自分の体が暗闇で浮いているような感じだった。

 宝玉オーブは綺麗に二重の円形を描いて浮いている。内側に7個の宝玉オーブが、そして外側に・・・24個の宝玉オーブがあるようだ。

宝玉オーブは全部で32個あるんだよな?ここには31個しかないが、残りの一つは何処だ?」
「私が持っておる。この世界ミッドランドに戻るために使ったのだ。指が無いから取り出せん、法衣のたもとに入っておる・・・」

 右の腕を軽く持ち上げて俺の方へ差し出されたたもとに手を入れて宝玉オーブを取り出した。大きさはハンドボールぐらいの大きさで片手で何とか掴めるギリギリのサイズだ。

「これが宝玉オーブか・・・」

 近くで見るとボルケーノ火山とそこにある神殿、そして神殿前の祭壇が映っている。一番近くにある宝玉オーブのそばに行ってみると、火山から出ている煙の量や神殿が無い等、手に持った宝玉オーブとは違うものが映っているのが判った。

「ドリーミアのい宝玉オーブはどれだ?」
「あれだ」

 神官長が指さし・・・、手で示したのは内側にある7つの宝玉オーブの一つだった。

「サリナ、その宝玉オーブを取って来てくれ」
「うん・・・、えい!」

 サリナは自分の頭よりも高い位置に浮いていた宝玉オーブへ飛び上がって両手で掴んだ。神官長がそちらを見ている間に俺は手に持っていたミッドランドの宝玉オーブをストレージに収納・・・何の問題も無く収納できた。

「この宝玉オーブがあればドリーミアに戻れるのか?どう使うんだ?」
「祭壇へ登って祈りを捧げるのだ」
「そうか、お前が祭壇のてっぺんで沈んで行ったのはその祈りを捧げた後だったんだな?その祭壇とこの部屋も繋がっているのか?」
「そうだ、ここから祭壇へ移動できる。だが、先に階段を登らねばならん。ご神体様がお待ちになっておられる」
「ご神体か・・・、いや、先にドリーミアへ戻る。ご神体はその後だな。シルバー、そいつを動かないように見張っておいてくれ」

 シルバーは法衣の裾を咥えたまましっぽを振ってYesの返事をくれた。それを見てから、俺は浮いている宝玉オーブの回収を始めた。近くにあるものから手あたり次第ストレージの中に入れて行く。

「き、貴様! 何をしている! 宝玉オーブをどうするつもりなのだ!」

 神官長は俺の方へ飛びかかろうとしたが、シルバーに引き戻されて尻もちをついた。

「なに、預かるだけだよ。一つずつ、どういう場所なのかを教えてもらいたいが、31か所もあると時間がかかるからな、ホームへ戻ってからだ。まずはドリーミアへこの神殿と祭壇を移動させてくれ、その後にご神体とやらへ会いに行こうか」
「き、貴様、ご神体から授かった神聖な宝玉オーブを・・・、よくも!」
「そんなに怒る必要は無いよ、俺の倉庫は誰にも触れない“神聖”な場所にあるからな、誰にも触れられない。こんなところにあるよりもはるかに安全だぞ」

 あながち嘘では無いはずだ。神から貰った俺のストレージは神聖不可侵、俺以外の誰にも触ることが出来ないのだ。

 ■ ボルケーノ火山 火口付近

 タロウは巨大な亀-ネフロス神との会話を続けていた。この場所はドリーミアでないと言うことで驚きはしたものの、嘘だとは思わなかった。

「ならば、お主の力でこのドリーミアのある場所が、いろんな世界に移動している・・・という事なのか?」

(細かい部分は異なるが、考え方はそれで良い。同じ場所だが異なる時の流れへ移動すると言うことは異なる場所に行くのと同じ意味だからな)

「そうか・・・、それでお前はどうして人の命を奪うのだ?」

(人の命を奪う?我はそのようなことはせぬよ。ただ、我に願いをかなえて欲しいものが“せい”を奪ってきておるだけだ。我の望みではない、お前たち“人”がそれを望んでおるのだろう?)

「ふむ、お主が望んでおるのではないと? だが、お主の力があるが故にネフロスの信者どもは大勢の人を殺しておるのが事実だ」

(そうだな。だが、それが“人”では無いのか? 我へ捧げるためだけでなくとも、“人”は殺しあう生き物なのだろう?何かを奪うためや殺しそのものを楽しむもの・・・、理由は様々だが、同族でこれほど殺しあう生き物は“人”以外にはおらぬ。我の星ではそのような生き物はおらぬよ。我の星では“せい”の数はもっと少なく、尊いものだ。それが同族であろうとなかろうと、“せい”を慈しむのだよ)

「ふん! “せい”を慈しむとは片腹痛い。ネフロス神としてあまたの命を奪っておいて、どの口がそれを言うか!」

(同じことを言わせるでない。“せい”を奪っておるのはお前たち“人”だ。我はそれを願うことも止めることもせぬ。ただ、“人”の願いを叶えてやっておるだけだよ)

 タロウは巨大な亀の言っていることも理解できたが、ネフロス教が多くの無関係な民をその目的のために死へと追いやったことを考えれば素直に受け入れることは出来なかった。

「だが、お前が聞いた人の願いとやらは、全てネフロス教の者からであろう。生きたいと願いながらも殺されていった者達の願いはどうなるのだ!?」

(ふむ・・・、確かにそうであるな。我は我の目の前に現れる者の願いを聞き遂げるだけであったからな。ならば、丁度良い。神殿にはお前の仲間が来ておる。その者達もここへ招いて、話しを聞こうでは無いか。“人”としての願いがなんであるかを我も知りたい)

「儂の仲間・・・、サトル殿達か!? どこにおるのだ? 招くとはどうやって?」

(案ずるでない。ここへの回廊を開けば神官長と一緒にここまで来るはずだ)

 タロウは頭の中でネフロス神と呼ばれる亀の声を聞きながら、背後の気配に振り返るとそこには新たな階段が見えていた。

 -この階段で神殿のサトル殿に? マリアンヌとサリナも一緒にいるのだろうか?
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