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Ⅱ-157 ネフロス国1
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■ネフロス国 密林
魔法が使えず、飛べなくなった俺は初心を思い出してもっと保守的になることにした。
-慎重に、安全を確保するのを最優先!
まずは装備を整える必要があるが、着替えるにしてもキャンピングカーでは心もとない。シェルターでも良いのだが、外が見えないのと移動手段には出来ないのがネックだった。そこで、前から使ってみようと思っていた装甲戦闘車というものをストレージから取り出した。
取り出した自衛隊の装甲車は35㎜機関砲を備えたキャタピラで走るタイプのものだが、オートマで俺でも(多分)動かせるし車両後方に兵員を6名乗せることができる。天井が低く狭いが、着替えたり装備を用意するのには十分で、頑張ればシルバーも入ることが出来る。ネット情報では装甲に難があるようなことが書いてあり、戦車の徹甲弾を防ぐことは出来ないかもしれないが、この世界の石や剣ぐらいなら弾き返せるし、重量も30トン近くあるので密林の低木なら踏みつぶしながら進むことが可能だった。それに、見た目が格好良い。
日本語の手順書等を確認してから、ゆっくり走らせてみたが問題なく進んだり曲がったりは出来そうだった。サリナに砲手役を任せて、ミーシャは砲塔の上から顔を出して周囲を警戒してもらっている。俺は操縦席の上にある開口部から頭を出して立ったまま運転して、操縦の感覚を掴もうとしていた。10分も走れば運転が出来ることに満足して、機関砲も試してみたくなってきたので、装甲車を停止させて射撃訓練をすることにした。
「サリナ、とりあえず撃ってみろよ」
「どこを狙うの? 木ばっかりだよ?」
「適当に木を撃ってみろ、当たらなくていいから」
「うん、やってみる!」
35mm機関砲は17発の徹甲弾を装填するマガジンから給弾されるので、弾薬をセットしてから発射装置等の使い方を確認した。しばらく砲塔の回転と砲身を上下させる使い方をサリナと練習して、100メートルぐらい向こうにあった大き目の木を狙って機関砲を発射した。
-ドォッン! -ドォッン! -ドォッン!
35㎜機関砲は機関銃が大きくなったものだと思っていた俺は発射の轟音でビビりまくった。これは銃の延長線上にあるような武器では無かった。狙った木では無く、その向こうにあった木に命中したが、70㎝ぐらいの幹が弾けるように粉々になっていた。
「サリナ、これはあんまり使わないかもしれないな」
「そうなの? 上手くいかなかったかな?」
「いや、そうじゃないけどな。威力があり過ぎるんだよ」
「ふーん、そっか」
「でも、どこかで使えるかもしれないからな。使い方だけは覚えてくれ。それと砲塔を回せば、こっちの7.62mm機関銃も使えるからな。狙いをつけて撃つ練習をしておいてくれ」
「うん、わかった!」
素直なちびっ娘は驚くべき吸収力で砲塔の操作と銃の発射手順を覚えて行く。おそらく学習能力が極めて高いのだろう、受験勉強でも教えたら・・・俺より偏差値が高くなるかもしれない。
「おい、何かがここを囲んでいるぞ」
「敵か? また、亀なのか?」
「いや・・・、木の上に居るのは・・・猿? だが、何か道具を持っているな。早めに撃ち落とすか?」
「距離は近いのか? 何匹ぐらい居るんだ?」
「そうでもないな、あまり近寄って来ないから・・・200メートルぐらいは離れている。数は30ぐらいじゃないかな」
「そうか・・・、少し移動しながら様子を見ようか」
「わかった」
装甲戦闘車を神殿がある方向とは逆の北に向けて走らせている。サリナは練習のために砲身を回しながら、適当に機銃で森の中の木を掃射していた。超重量級の装甲戦闘車はキャタピラで木々をなぎ倒し、機銃で木を撃ち倒す・・・森林破壊だが、俺達が生きるための手段として許してもらおう。
サトル達を囲んでいた猿たちはサトル以上にビビッていた。最初は見た事の無い緑色の箱から出ている頭を四方から同時に殴りに行こうと思っていたが、大きな音とともに木が吹き飛ぶのを見て考えを改めた。木の上でキーキーと喚きながらヒステリックに相談し始めた。
-あれは無理だ! 近寄ると死ぬぞ!
-だが、“命令”に逆らえば、死ぬほどの痛みを味わうじゃないか!
-じゃあ、どうする? お前があの緑の箱に近づくか?
-・・・
-“命令”には逆らわない。だが、あの化け物には近寄らない。
-そんなことが出来るのか?
-“命令”は二人の男女を捕らえて来いと言う事だ。いつまでとは言われていない。
-なるほど・・・、どういう意味だ?
-我らは引き続きあの箱を見張って、チャンスがあればあいつらを襲いに行く。だが、チャンスが必ずあるとは限らないからな。ずーと、見張っていると言う事もあるだろう。
-おお! お前は頭が良いな! そうしよう、見張るだけだな!
-よし、そうしよう!
-そうしよう! チャンスを待とう!
猿人たちは木をゆっくりと移動しながら、言い訳を自分達で見つけた。サトル達の装甲戦闘車が見えるぎりぎりまで離れて、近づかずについて行く。強い相手とは戦わないと考えるだけの知恵があった。
「ミーシャ、どうだ? 猿は居なくなったか?」
10分ほど走ってからミーシャに状況を確認してみた。
「いや、かなり遠ざかったが、相変わらずこっちについて来ているな」
「そうか、あんまり殺したくないんだけどな。追い払った方が良さそうだな」
「サリナ、狙いをつけなくていいから主砲を周りの森の中に全弾撃ちこんでくれ」
「はーい♪」
主砲の発射音にビビる俺とは違ってサリナは新しいおもちゃをもらって嬉しかったようだ。砲塔を左から旋回させて、1発ずつ発射していく。35㎜弾が周囲の木々をなぎ倒していった。木の上にいた猿人たちは500メートル程離れた場所で囲んでいたが、それよりもさらに遠くの木が倒れて行くのを見てパニックに陥った。
-ムリ! 無理! 見張るのも無理!
-逃げよう! 逃げるしかないって!
キーキーと喚き始めたが、さっき見張ればよいと言った猿人だけは落ち着いていた。
-もっと離れればいいだろう、あれだけ煩いんだ。どれだけ離れても何処に居るかは判る。
-もっと? どのぐらい離れるんだ?
-音が聞えるが、こちらの姿が見えなくなるぐらいだ。
-そうか! そうしよう!
-そうだ!そうだ! もっと離れよう!
猿人たちは装甲車の姿が見えない1㎞ほどの距離を置いて、キャタビラが巻き起こす音だけを頼りについて行くことにした。
「まだ、いるみたいだが。随分と遠くに行ったぞ」
「じゃあ、放っておくことにしよう」
猿達がどういう生き物か判らないが、獣人に近い物だとしたら出来るだけ殺したくないと考えていた。せっかくドリーミアで獣人達の人権を確立しようとしたのに、ここで虐殺するのは違うような気がしたのだ。
「今度は上から追いついて来たぞ。音が聞えたのだろう」
上から・・・亀か・・・。主砲は対空射撃も出来るらしいが、練習不足で当たらない気がする。降りて重機関銃で狙うか・・・。
「何匹ぐらい来ている?」
「4、5匹だな。私が撃っても良いかな?」
「ん? ああ、もちろん」
どうやらミーシャも撃ちたくてうずうずしている感じだった。当然ミーシャ先生なら、あの程度の亀さんは軽く仕留めるだろう。
「良いのか!?だったらアレを貸してもらえないか?」
「アレって?」
「うん、これでも当たるとは思うが、高いところにいるからな、上に向いて撃つと、これでは威力が落ちると思うんだ」
先生は手にしている7.62㎜弾のアサルトライフルでは力不足だと仰っています。
「じゃあ、これかな?」
「そうだ! それだ! うん、こっちが良いな」
装甲戦闘車を停止させて50口径の対物ライフル-バレットを取り出してやると。砲塔から飛び出して嬉しそうに銃を抱えて地上へと降りた。膝をついて装甲車の側面に銃を預けて、後方から近づこうとしていた空飛ぶ亀へ狙いを定めた。
-パシュッーン!
-パシュッーン!
-パシュッーン!
-パシュッーン!
-パシュッーン!
いやはや、本当に狙ったのか? と思うぐらいの間隔で発射音が連続して、飛んでいた5匹の亀は乗せていた兵と一緒に地上へと落ちて行った。
「うん、やっぱりこの銃は良いな! 思った通りに弾が飛んでくれる」
「そう・・・なの?」
「ああ、普段使っているのも近い距離は良いが、1000メートルぐらいだと威力が足りないしな、風の影響をどうしても受ける。飛んでいる奴だと狙ったところに当たらないかもしれないからな」
「そう・・・、ところで亀は何処を狙って撃ったの?」
「どこ? それはもちろん頭しか狙わないだろ?」
「そう・・・」
1㎞先を上空に向けてピンポイントで命中させるって・・・、ミーシャにバレットを持たせておけば対空機銃もいらないような気がしてきた。
魔法が使えず、飛べなくなった俺は初心を思い出してもっと保守的になることにした。
-慎重に、安全を確保するのを最優先!
まずは装備を整える必要があるが、着替えるにしてもキャンピングカーでは心もとない。シェルターでも良いのだが、外が見えないのと移動手段には出来ないのがネックだった。そこで、前から使ってみようと思っていた装甲戦闘車というものをストレージから取り出した。
取り出した自衛隊の装甲車は35㎜機関砲を備えたキャタピラで走るタイプのものだが、オートマで俺でも(多分)動かせるし車両後方に兵員を6名乗せることができる。天井が低く狭いが、着替えたり装備を用意するのには十分で、頑張ればシルバーも入ることが出来る。ネット情報では装甲に難があるようなことが書いてあり、戦車の徹甲弾を防ぐことは出来ないかもしれないが、この世界の石や剣ぐらいなら弾き返せるし、重量も30トン近くあるので密林の低木なら踏みつぶしながら進むことが可能だった。それに、見た目が格好良い。
日本語の手順書等を確認してから、ゆっくり走らせてみたが問題なく進んだり曲がったりは出来そうだった。サリナに砲手役を任せて、ミーシャは砲塔の上から顔を出して周囲を警戒してもらっている。俺は操縦席の上にある開口部から頭を出して立ったまま運転して、操縦の感覚を掴もうとしていた。10分も走れば運転が出来ることに満足して、機関砲も試してみたくなってきたので、装甲車を停止させて射撃訓練をすることにした。
「サリナ、とりあえず撃ってみろよ」
「どこを狙うの? 木ばっかりだよ?」
「適当に木を撃ってみろ、当たらなくていいから」
「うん、やってみる!」
35mm機関砲は17発の徹甲弾を装填するマガジンから給弾されるので、弾薬をセットしてから発射装置等の使い方を確認した。しばらく砲塔の回転と砲身を上下させる使い方をサリナと練習して、100メートルぐらい向こうにあった大き目の木を狙って機関砲を発射した。
-ドォッン! -ドォッン! -ドォッン!
35㎜機関砲は機関銃が大きくなったものだと思っていた俺は発射の轟音でビビりまくった。これは銃の延長線上にあるような武器では無かった。狙った木では無く、その向こうにあった木に命中したが、70㎝ぐらいの幹が弾けるように粉々になっていた。
「サリナ、これはあんまり使わないかもしれないな」
「そうなの? 上手くいかなかったかな?」
「いや、そうじゃないけどな。威力があり過ぎるんだよ」
「ふーん、そっか」
「でも、どこかで使えるかもしれないからな。使い方だけは覚えてくれ。それと砲塔を回せば、こっちの7.62mm機関銃も使えるからな。狙いをつけて撃つ練習をしておいてくれ」
「うん、わかった!」
素直なちびっ娘は驚くべき吸収力で砲塔の操作と銃の発射手順を覚えて行く。おそらく学習能力が極めて高いのだろう、受験勉強でも教えたら・・・俺より偏差値が高くなるかもしれない。
「おい、何かがここを囲んでいるぞ」
「敵か? また、亀なのか?」
「いや・・・、木の上に居るのは・・・猿? だが、何か道具を持っているな。早めに撃ち落とすか?」
「距離は近いのか? 何匹ぐらい居るんだ?」
「そうでもないな、あまり近寄って来ないから・・・200メートルぐらいは離れている。数は30ぐらいじゃないかな」
「そうか・・・、少し移動しながら様子を見ようか」
「わかった」
装甲戦闘車を神殿がある方向とは逆の北に向けて走らせている。サリナは練習のために砲身を回しながら、適当に機銃で森の中の木を掃射していた。超重量級の装甲戦闘車はキャタピラで木々をなぎ倒し、機銃で木を撃ち倒す・・・森林破壊だが、俺達が生きるための手段として許してもらおう。
サトル達を囲んでいた猿たちはサトル以上にビビッていた。最初は見た事の無い緑色の箱から出ている頭を四方から同時に殴りに行こうと思っていたが、大きな音とともに木が吹き飛ぶのを見て考えを改めた。木の上でキーキーと喚きながらヒステリックに相談し始めた。
-あれは無理だ! 近寄ると死ぬぞ!
-だが、“命令”に逆らえば、死ぬほどの痛みを味わうじゃないか!
-じゃあ、どうする? お前があの緑の箱に近づくか?
-・・・
-“命令”には逆らわない。だが、あの化け物には近寄らない。
-そんなことが出来るのか?
-“命令”は二人の男女を捕らえて来いと言う事だ。いつまでとは言われていない。
-なるほど・・・、どういう意味だ?
-我らは引き続きあの箱を見張って、チャンスがあればあいつらを襲いに行く。だが、チャンスが必ずあるとは限らないからな。ずーと、見張っていると言う事もあるだろう。
-おお! お前は頭が良いな! そうしよう、見張るだけだな!
-よし、そうしよう!
-そうしよう! チャンスを待とう!
猿人たちは木をゆっくりと移動しながら、言い訳を自分達で見つけた。サトル達の装甲戦闘車が見えるぎりぎりまで離れて、近づかずについて行く。強い相手とは戦わないと考えるだけの知恵があった。
「ミーシャ、どうだ? 猿は居なくなったか?」
10分ほど走ってからミーシャに状況を確認してみた。
「いや、かなり遠ざかったが、相変わらずこっちについて来ているな」
「そうか、あんまり殺したくないんだけどな。追い払った方が良さそうだな」
「サリナ、狙いをつけなくていいから主砲を周りの森の中に全弾撃ちこんでくれ」
「はーい♪」
主砲の発射音にビビる俺とは違ってサリナは新しいおもちゃをもらって嬉しかったようだ。砲塔を左から旋回させて、1発ずつ発射していく。35㎜弾が周囲の木々をなぎ倒していった。木の上にいた猿人たちは500メートル程離れた場所で囲んでいたが、それよりもさらに遠くの木が倒れて行くのを見てパニックに陥った。
-ムリ! 無理! 見張るのも無理!
-逃げよう! 逃げるしかないって!
キーキーと喚き始めたが、さっき見張ればよいと言った猿人だけは落ち着いていた。
-もっと離れればいいだろう、あれだけ煩いんだ。どれだけ離れても何処に居るかは判る。
-もっと? どのぐらい離れるんだ?
-音が聞えるが、こちらの姿が見えなくなるぐらいだ。
-そうか! そうしよう!
-そうだ!そうだ! もっと離れよう!
猿人たちは装甲車の姿が見えない1㎞ほどの距離を置いて、キャタビラが巻き起こす音だけを頼りについて行くことにした。
「まだ、いるみたいだが。随分と遠くに行ったぞ」
「じゃあ、放っておくことにしよう」
猿達がどういう生き物か判らないが、獣人に近い物だとしたら出来るだけ殺したくないと考えていた。せっかくドリーミアで獣人達の人権を確立しようとしたのに、ここで虐殺するのは違うような気がしたのだ。
「今度は上から追いついて来たぞ。音が聞えたのだろう」
上から・・・亀か・・・。主砲は対空射撃も出来るらしいが、練習不足で当たらない気がする。降りて重機関銃で狙うか・・・。
「何匹ぐらい来ている?」
「4、5匹だな。私が撃っても良いかな?」
「ん? ああ、もちろん」
どうやらミーシャも撃ちたくてうずうずしている感じだった。当然ミーシャ先生なら、あの程度の亀さんは軽く仕留めるだろう。
「良いのか!?だったらアレを貸してもらえないか?」
「アレって?」
「うん、これでも当たるとは思うが、高いところにいるからな、上に向いて撃つと、これでは威力が落ちると思うんだ」
先生は手にしている7.62㎜弾のアサルトライフルでは力不足だと仰っています。
「じゃあ、これかな?」
「そうだ! それだ! うん、こっちが良いな」
装甲戦闘車を停止させて50口径の対物ライフル-バレットを取り出してやると。砲塔から飛び出して嬉しそうに銃を抱えて地上へと降りた。膝をついて装甲車の側面に銃を預けて、後方から近づこうとしていた空飛ぶ亀へ狙いを定めた。
-パシュッーン!
-パシュッーン!
-パシュッーン!
-パシュッーン!
-パシュッーン!
いやはや、本当に狙ったのか? と思うぐらいの間隔で発射音が連続して、飛んでいた5匹の亀は乗せていた兵と一緒に地上へと落ちて行った。
「うん、やっぱりこの銃は良いな! 思った通りに弾が飛んでくれる」
「そう・・・なの?」
「ああ、普段使っているのも近い距離は良いが、1000メートルぐらいだと威力が足りないしな、風の影響をどうしても受ける。飛んでいる奴だと狙ったところに当たらないかもしれないからな」
「そう・・・、ところで亀は何処を狙って撃ったの?」
「どこ? それはもちろん頭しか狙わないだろ?」
「そう・・・」
1㎞先を上空に向けてピンポイントで命中させるって・・・、ミーシャにバレットを持たせておけば対空機銃もいらないような気がしてきた。
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