異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?

初老の妄想

文字の大きさ
上 下
195 / 343

Ⅱ-34 野戦 6

しおりを挟む
■森の国 西の砦 近郊の森

 この国とは違うところ? 何かとんでもない事を言い始めたレントンの言う場所は違う国?あるいは違う世界・・・、まさか俺が居た地球のような異世界を差しているのだろうか?

「違うところと言うのは具体的に何処なんだ? そこがどんな場所か知っているのか?」
「それは知らない。だが、この国では見た事の無い物をたまに首領の使いが持ってくるが、それは洞窟の向こうから持って来ていると・・・、お前が持って来ているものとは全然違うが、お前が持って来ているのも、この国とは違うところからなのだろう?」
「俺の事はどうでも良いんだよ。見た事の無い物っていうのは具体的に何だったんだ?」

 レントンの言う見た事が無い物が俺の銃のように圧倒的な武力を持つものなら、今まで以上に注意が必要だ。

「俺が見せてもらったのは、方角を指し示す道具と見たことも無い大きさの白い紙に書かれたこの国の地図、それに遠くが見える筒だ。森の国とエルフの砦を攻撃する前に見せてもらったんだ。それに、燃える砂を大量に渡された」

 燃える砂? 火薬か何かだろうか? それ以外はコンパス、地図、望遠鏡? そのぐらいなら態勢に影響ないが、他に危険な物が無い保証も無いな。

「首領はそれを使ってお前に指示をしたのか?具体的に何を指示したんだ?」
「それは・・・」
「どうした? いまさら、何を隠すことがあるんだ?」

 レントンはミーシャの方をちらりと見てから話し始めた。

「西の砦を攻略した後は、傭兵は本隊から離れてエルフの里を襲えと言われていた。エルフを根絶やしにしろと・・・。風上で燃える砂を大量に使って森を焼き払いながら、風下に逃げてきたエルフを皆殺し・・・」
「何!? なんで、お前達がエルフを襲う必要があるんだ?」
「エルフは長寿の民・・・生の象徴、死を崇拝するネフロスの教えとは対立する存在だと・・・、そういう風に聞いた」

 さっぱりわからん。自分達が死の神を崇拝するからと言って長寿の種族を排除する?

「その指示は結局どうなったんだ? お前を捕らえたから、立ち消えになったのか?」
「それは、将軍に聞いてもらった方が良いだろう」
「将軍? そうか、お前は戦の間は暗闇の中だったからな。将軍、レントンが言っていたことをお前は知っていたのか?」
「・・・、詳しいこと判らんが、砦攻略の後は本隊だけがクラウスに向かって、傭兵がエルフの里に向かう事にしていた。だが、わが王からはエルフは捕らえるようにと命を受けている。むろん、抵抗するものはその限りでは無かったが、いずれにせよ、この戦況ではそれどころでは無くなった」
「燃える砂はどうなったんだ?」
「食料などと一緒に後続部隊が運んでいたはずだが、兵站の馬車はお前達がどこかへやったんだろう」

 何処かへ? サリナの方を見ると目をそらしたから、風の魔法で吹き飛ばしたのだろう。まあ、褒めてやるところだが調子に乗るから一旦放置だな。
 だが、エルフを排除しようとしたのはネフロス-黒い死人達の考えという事は間違いないようだ。しかし、やはり長寿と言うだけでエルフを殲滅しようとするのだろうか?他に何か理由があるのでは?

「ミーシャ、エルフは黒い死人達に恨みを買ったり、過去に諍いを起こしたことがあるのか?」
「いや、私が知っている範囲では無いな。だが、われらの一族と敵対する種族が古から居るとは聞いている。ひょっとするとそれと関係があるかもしれないが、詳しいことは長老しか判らないな」

 敵地する種族? 一体何だろう? せっかく戦が終わったと言うのに、なんだか全然安心できない。だが、今まで以上にネフロスと黒い死人達への警戒が必要なのは間違いない。レントンからいろいろ聞けたが、核心部分は謎のままだ。やはり、ゲルドの持っている情報が必要だ。だが、話せるようになったとして、こいつは素直に情報を提供するだろうか?

 俺は小さめの檻に入れたゲルドの頭部を見つめた。ゲルドも気が付いたようで、口まで土に埋まった状態で目線だけを俺に合わせてきた。

「どうだ? そろそろ話せるようになったか?」

 俺はそう言って、檻を持ち上げて頭部の修復状態を確認するために中の土を地面に落とした。驚いたことに、あごの下あたりで切れていた首が伸びて、鎖骨ぐらいまでの胴体が作られていた。

「凄いな! やはり、土で再生できるんだな!?そろそろ、話せるんじゃないか?」
「お前はいったい何者なのだ?」

 ゲルドは表情を変えずに濁った声で俺に質問を返してきた。

「おお! もう、話せるんだな? 俺は通りすがりの者なんだけど、火の国の王とかお前達黒い死人達が悪いことをするのを見逃せなくてね。ついつい、成り行きで戦う事になったんだよ。それで、お前はゲルド-ショーイの両親を殺した奴で間違いないんだよな?ネフロスの司祭でもある?」
「そうだ、その通りだ。ショーイの両親については、残念には思っている。だが、信じる神が違う故に仕方が無かったのだよ」

 ゲルドは淡々と話している。今のところ何かを隠す必要もないと考えているようだ。ショーイは黙っていられずに頭部の入った檻の前に乗り出してきた。

「仕方がない!? お前は俺の父と教会で一緒にいたんだろ? アシーネ神を信じていたんじゃないのか?」
「それは、勇者の情報を得るために教会に入っていただけだ。私はお前の父親が生まれる前からネフロスの神に身を捧げている」
「なぜ、勇者の情報を得る必要があったんだ?それに、俺の両親をなぜ殺す必要があったんだ?」
「それは・・・」

「気をつけろ!何かが来るぞ!」

 突然、ミーシャが叫んで森の上に向けてアサルトライフルを構えた。俺は屈みこみながら同じようにホルスターに入れていたサブマシンガンを上空に向けて、ミーシャの銃口が狙っている方向を見た。

 最初は黒い点にしか見えなかったそれはみるみる大きくなって、俺達のいる場所を暗い影が多い始めた。

 -雲? 雷雲?  いや、何かが・・・

 晴れていたはずの空に突然黒い雲が沸き起こり、雲からは稲光と共に何かが出て来ようとしていた。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

社畜の俺の部屋にダンジョンの入り口が現れた!? ダンジョン配信で稼ぐのでブラック企業は辞めさせていただきます

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)

田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ? コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。 (あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw) 台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。 読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。 (カクヨムにも投稿しております)

ギフト争奪戦に乗り遅れたら、ラストワン賞で最強スキルを手に入れた

みももも
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたイツキは異空間でギフトの争奪戦に巻き込まれてしまう。 争奪戦に積極的に参加できなかったイツキは最後に残された余り物の最弱ギフトを選ぶことになってしまうが、イツキがギフトを手にしたその瞬間、イツキ一人が残された異空間に謎のファンファーレが鳴り響く。 イツキが手にしたのは誰にも選ばれることのなかった最弱ギフト。 そしてそれと、もう一つ……。

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

処理中です...