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Ⅰ-117 サリナの決断
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■エルフの里
ドワーフの長老は何も言わずに微笑んでいるだけだったので、ミーシャを見ると挨拶は終わったようだ。二人で集会所の外に出ると、取り囲んでいた沢山の人垣の中から、綺麗なエルフ女子がミーシャの元に走り寄って来た。ミーシャに面立ちが似ているが、もう少し背が低かった。
-超タイプ! ミーシャ亡き後は・・・
「おかえり、ミーシャ。早く帰って来れたんだね。無事で何よりだよ」
「ああ、ここに居るサトルのおかげだ。サトル、私の母であるハルだ」
-母!?
なるほど、エルフは長命だからか・・・、見た目はどちらが姉でもおかしくないぐらいにしか見えない。でも、100歳超えてるかもしれないんだな。
「サトル殿ですか、ミーシャが世話になったのですね、私からも礼を言います」
「こんにちは、サトルです。こちらこそ、ミーシャにはお世話になっています」
俺を見て微笑んでくれたミーシャのママは、どう見ても子供を産んだようには見えない。金髪のさらさらヘアーの下で、白い肌がつやつやと輝いている。にっこりと笑顔を向けてドギマギさせる破壊力はミーシャ以上かもしれない。
「それで、今夜の食事はどうしようかね?狭いけど、家で食べていくかい?」
「いや、長老はここでサトルの歓迎会をすると言っていた」
-歓迎会!? 聞いてないよ~!
「俺は、そう言うのは苦手だから、もっと少人数で・・・」
「すまないが、少しだけでも良いから付き合ってくれ、皆がお前と話をするのを楽しみにしてるのだ」
「そうか・・・、わかったよ」
俺はそんなに話し上手では無いし、大勢の人が居ると緊張する。異世界デビューでサリナやミーシャとは普通に話すようにかなり努力したが、現世では圧倒的なインドア派、はっきり言ってコミュ障に近い方だった。
それでも、見渡す限りにエルフ女子が溢れている。ここはもう一度頑張るしかないな!
■黒い死人達のアジト
ホリスは壁にもたれて、倉庫の床を拭いておくように命令しながら、獲物を追い込む方法を考えていた。
死人祭りで生き残れたのは三人だったが、まともに立てるのは二人だけだった。立てない一人も結局始末することになった。全く無意味なばか騒ぎだ、死体の後始末だけでも面倒になる。どうせ殺すならもっと処分しやすいところでやれば良いものを・・・。だが、生きている二人には早めに情報を引き出した方が良いだろう、兄貴の気が変わればすぐに首が飛ぶ。
「おい、その獣人をなんで捕まえたんだ?最初から売るつもりだったのか?」
片腕を無くして、何とか生き残れた男が床に座って荒い息を吐いている。
「違います、俺達の事を探してるって、シリウスの町で聞きつけたんで、見張ってました」
「俺達を? 何を探ってたんだ?」
「それは判りません。しびれ薬を撃った後に、頭を殴ったんですが、やりすぎたみたいで起きませんでした」
「後から来た三人は何て言ってたんだ?」
「ハンスと言う獣人を知らないかと・・・」
「ハーフエルフと小さい娘、もう一人はどんな奴だったんだ?」
「背はそんなに高くないですが、俺達にはめた腕輪を何処からか出してきて、動けなくしました」
-あの腕輪は見たことがない、軽くて丈夫な材料で作られていた。
「そいつは、魔法も剣も使わなかったのか?」
「はい、剣は持っていませんでした」
-剣士でも、魔法士でも無い。荷物運びか?
「お前らは上に上がって、そいつらの情報を紙に書いてもらえ、全ての支部に回状を回すんだ。まずは、ハンスと言う獣人を探して捕まえる。他の奴らを見つけるまでは絶対に殺すなよ。それから名前の判らないハーフエルフも探すようにな。捕らえたやつには金貨100枚の報奨を出してやる。回状にはそれも書いておけよ」
「わかりました」
片腕の男が血まみれの布に包まれた傷口を押さえながら、上の階に上がって行くのをホリスは黙って見送った。金貨100枚は奮発しすぎたかもしれないが、俺達を探っていたのが気になる。砦のやつらも強くは無いが、子供にやられるほど弱くは無い。あいつ等の言う通りだとすれば敵は手ごわいはずだ。
危険な相手は全力でつぶす、それが俺達のやり方だ。
■イースタンの屋敷
お兄ちゃんは馬に乗って行っちゃたけど、本当に大丈夫かなぁ?迷宮の時もこの前の砦の時もサトルが居なければ、死んじゃってたかもしれないのに・・・。
「リンネ、風の国に行ったら、どうやって黒い死人の人たちを探すの?」
「そうだねぇ、ああいう奴らが集まる場所に行くのさ」
「どこに集まるの?」
「そりゃあ、普通の奴らが行かない飲み屋、売春宿、賭場なんかだね」
「お兄ちゃんもそこに行ったのかな?」
「どうだろうね。あたしが口出しする話じゃないから、何も言わなかったけど、あんたの兄貴は堅物だから、行っちゃうかもね」
「そしたら、また、捕まっちゃうのかな!?」
「そうかもね」
今度捕まったら、本当に死んじゃうかもしれない。それに、サトルがものすごく怒ると思う・・・
「ねぇ、リンネ。私たちも先に風の国へ行こうよ。お兄ちゃんだけだと心配だもん」
「あんたはここで待っておくよう、兄貴からさっき言われただろう?」
「でも、言うこと聞いてもお兄ちゃんが捕まったら意味ないでしょ?」
「確かにねぇ、でも、どうやって行くんだい。荷馬車だと追いつかないだろう?金があれば仕立て馬車で行けるけど、イースタンは協力しないと思うよ」
「お金は大丈夫! じゃあ、リンネも一緒に行ってくれる?」
「いいだろう、ここに居ても退屈そうだしね、付き合ってあげるよ」
私の魔法も強くなったからきっと大丈夫。お兄ちゃんを私が助けられるぐらい強くなれば、サトルも一緒に連れて行ってくれるかもしれない。
うん、私ならきっと出来る! サリナも頑張る!
ドワーフの長老は何も言わずに微笑んでいるだけだったので、ミーシャを見ると挨拶は終わったようだ。二人で集会所の外に出ると、取り囲んでいた沢山の人垣の中から、綺麗なエルフ女子がミーシャの元に走り寄って来た。ミーシャに面立ちが似ているが、もう少し背が低かった。
-超タイプ! ミーシャ亡き後は・・・
「おかえり、ミーシャ。早く帰って来れたんだね。無事で何よりだよ」
「ああ、ここに居るサトルのおかげだ。サトル、私の母であるハルだ」
-母!?
なるほど、エルフは長命だからか・・・、見た目はどちらが姉でもおかしくないぐらいにしか見えない。でも、100歳超えてるかもしれないんだな。
「サトル殿ですか、ミーシャが世話になったのですね、私からも礼を言います」
「こんにちは、サトルです。こちらこそ、ミーシャにはお世話になっています」
俺を見て微笑んでくれたミーシャのママは、どう見ても子供を産んだようには見えない。金髪のさらさらヘアーの下で、白い肌がつやつやと輝いている。にっこりと笑顔を向けてドギマギさせる破壊力はミーシャ以上かもしれない。
「それで、今夜の食事はどうしようかね?狭いけど、家で食べていくかい?」
「いや、長老はここでサトルの歓迎会をすると言っていた」
-歓迎会!? 聞いてないよ~!
「俺は、そう言うのは苦手だから、もっと少人数で・・・」
「すまないが、少しだけでも良いから付き合ってくれ、皆がお前と話をするのを楽しみにしてるのだ」
「そうか・・・、わかったよ」
俺はそんなに話し上手では無いし、大勢の人が居ると緊張する。異世界デビューでサリナやミーシャとは普通に話すようにかなり努力したが、現世では圧倒的なインドア派、はっきり言ってコミュ障に近い方だった。
それでも、見渡す限りにエルフ女子が溢れている。ここはもう一度頑張るしかないな!
■黒い死人達のアジト
ホリスは壁にもたれて、倉庫の床を拭いておくように命令しながら、獲物を追い込む方法を考えていた。
死人祭りで生き残れたのは三人だったが、まともに立てるのは二人だけだった。立てない一人も結局始末することになった。全く無意味なばか騒ぎだ、死体の後始末だけでも面倒になる。どうせ殺すならもっと処分しやすいところでやれば良いものを・・・。だが、生きている二人には早めに情報を引き出した方が良いだろう、兄貴の気が変わればすぐに首が飛ぶ。
「おい、その獣人をなんで捕まえたんだ?最初から売るつもりだったのか?」
片腕を無くして、何とか生き残れた男が床に座って荒い息を吐いている。
「違います、俺達の事を探してるって、シリウスの町で聞きつけたんで、見張ってました」
「俺達を? 何を探ってたんだ?」
「それは判りません。しびれ薬を撃った後に、頭を殴ったんですが、やりすぎたみたいで起きませんでした」
「後から来た三人は何て言ってたんだ?」
「ハンスと言う獣人を知らないかと・・・」
「ハーフエルフと小さい娘、もう一人はどんな奴だったんだ?」
「背はそんなに高くないですが、俺達にはめた腕輪を何処からか出してきて、動けなくしました」
-あの腕輪は見たことがない、軽くて丈夫な材料で作られていた。
「そいつは、魔法も剣も使わなかったのか?」
「はい、剣は持っていませんでした」
-剣士でも、魔法士でも無い。荷物運びか?
「お前らは上に上がって、そいつらの情報を紙に書いてもらえ、全ての支部に回状を回すんだ。まずは、ハンスと言う獣人を探して捕まえる。他の奴らを見つけるまでは絶対に殺すなよ。それから名前の判らないハーフエルフも探すようにな。捕らえたやつには金貨100枚の報奨を出してやる。回状にはそれも書いておけよ」
「わかりました」
片腕の男が血まみれの布に包まれた傷口を押さえながら、上の階に上がって行くのをホリスは黙って見送った。金貨100枚は奮発しすぎたかもしれないが、俺達を探っていたのが気になる。砦のやつらも強くは無いが、子供にやられるほど弱くは無い。あいつ等の言う通りだとすれば敵は手ごわいはずだ。
危険な相手は全力でつぶす、それが俺達のやり方だ。
■イースタンの屋敷
お兄ちゃんは馬に乗って行っちゃたけど、本当に大丈夫かなぁ?迷宮の時もこの前の砦の時もサトルが居なければ、死んじゃってたかもしれないのに・・・。
「リンネ、風の国に行ったら、どうやって黒い死人の人たちを探すの?」
「そうだねぇ、ああいう奴らが集まる場所に行くのさ」
「どこに集まるの?」
「そりゃあ、普通の奴らが行かない飲み屋、売春宿、賭場なんかだね」
「お兄ちゃんもそこに行ったのかな?」
「どうだろうね。あたしが口出しする話じゃないから、何も言わなかったけど、あんたの兄貴は堅物だから、行っちゃうかもね」
「そしたら、また、捕まっちゃうのかな!?」
「そうかもね」
今度捕まったら、本当に死んじゃうかもしれない。それに、サトルがものすごく怒ると思う・・・
「ねぇ、リンネ。私たちも先に風の国へ行こうよ。お兄ちゃんだけだと心配だもん」
「あんたはここで待っておくよう、兄貴からさっき言われただろう?」
「でも、言うこと聞いてもお兄ちゃんが捕まったら意味ないでしょ?」
「確かにねぇ、でも、どうやって行くんだい。荷馬車だと追いつかないだろう?金があれば仕立て馬車で行けるけど、イースタンは協力しないと思うよ」
「お金は大丈夫! じゃあ、リンネも一緒に行ってくれる?」
「いいだろう、ここに居ても退屈そうだしね、付き合ってあげるよ」
私の魔法も強くなったからきっと大丈夫。お兄ちゃんを私が助けられるぐらい強くなれば、サトルも一緒に連れて行ってくれるかもしれない。
うん、私ならきっと出来る! サリナも頑張る!
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