105 / 343
Ⅰ-105 悲しい死人使い
しおりを挟む
■リンネの小屋
目の前に居る血の気の無い顔をした女が外にいた死人を操っていた。ネクロマンサー?死人使い?ゾンビマスター?・・・何と呼ぶのかは判らないが人間以外の何かであることは間違いない。
「ハンスをどうするつもりだ?」
「そうさねぇ、此処で一緒に暮らしてもらおうと思ってたんだけどね」
「ハンスも死人にするつもりなのか?」
女は驚いたよう表情を浮かべた後に甲高い声で笑いだした。
「あんた、面白い事いうのね!?死人は墓に居る奴らだけで十分よ。あんたたちが酷いことしたから、手足は減っちゃったみたいだけど。土の中に戻ればある程度は元通りになるわよ。あの獣人はね、ここで私の話し相手になってもらおうと思ってたの!」
「話し相手? それなら砦の中に仲間たちが居るじゃないか?」
「はぁ!? あいつらは仲間じゃないわよ、あたしのお城に勝手に居候しているだけよ。まぁ、誰もいないとちょっと寂しいから・・・、誰かに居てほしかったんだけどね」
寂しい?こいつがリンネと言う黒い死人達の親玉では無かったのか?
「あんたが、黒い死人達の親玉のリンネなんだろ?」
「親玉? 確かに私がリンネだけど、私はあんな奴らの仲間じゃあ無いよ。あいつらが私の力を外に吹聴して利用しているだけだね。それに、ここに居る奴らは組織の枝葉だよ。組織の親玉は常に移動しているから、何処にいるかは此処のやつらでも知らないようだね」
「じゃあ、あんたはなんでこんなところに一人で・・・、それにあんたは人間じゃないんだろ?」
俺は核心に触れる質問をした。
「酷いことをいうもんだね・・・、確かに私は死人を操れる不死の女だけど・・・、心もあるし・・・、あんた達と同じ人間だよ!」
不死という時点で人間ではないと思うが、本人は人間のつもりのようだ。それに話していると、意外に普通の人間のような印象を受ける。俺もこの世界で頭が変になって来ているのかもしれない。
「それに、あたしは此処から離れられないんだよ。ここで眠っているみんなの傍からね。あたしが居なくなると、あの子たちはちゃんと動けなくなっちゃうから」
動けなくなる?死んでいるのに何が問題なんだろう?
「安らかな眠りにつかせてやれば良いんじゃないのか?」
「そうはならないんだよ。あの子たちは領主に惨殺された領民たちの怨念で動いてるんだから。私が居ないとあの子たちは見境なく人を襲うようになっちまうのさ」
「あんたはその領民たちとどんな関係なんだ?」
「私はその惨殺を止めようとして、領主に火あぶりで処刑された側室だよ。領主は、領民たちや城のみんなの前で、足元からあたしを火あぶりにしたんだ。苦しむ顔を長く見たいからってね・・・完全に狂ってたんだよ。だけど、あたしにはそれをやめさせる力がなかったのさ。火をつけられて足元から皮膚が焼けていく痛みの中で、私は闇の神に祈り続けたさ、『死にたくない、こいつを殺せる力をください。すべてを闇の神に捧げます』って、何度何度もね・・・、だけど結局死んじまったんだよ」
「あいつは、焼け焦げたあたしと槍で串刺しにした領民たちの死体を墓があった場所に捨てさせやがった。弔うことも土に埋めることもなくね・・・。だけど、何日かするとあたしは目が覚めたんだよ、冷たい土の上で・・・、不思議なことに体も元通りになっててね。周りの死体は、私が目覚めると一緒に起き上がって来たのさ。最初は怖くて、走って逃げだしたけど、何処までもついて来るし。私を囲んでも襲ってくることは無かった。だから、これは闇の神の力なんだって気が付いたのさ。私が生き返ったのも、闇の神ネフロスの力なんだろうってね」
領主に殺され、生き返って、死人使いになった・・・、ネフロス?この世界で初めて聞く名前だな。
「それで、あんたがここからいなくなると、死人はどうして暴れだすんだ?」
「あたしにもわからないんだけど、あいつらと領主を殺した後に私は死人達の墓を作ったんだ。死人全員で自分達が入るための墓を掘っていくんだから、面白い光景だったけどね」
確かにゾンビが全員並んで自分の墓を掘っていたら・・・、ぞっとするな。
「その後は一人で王都に行ってしばらく暮らしてたんだけど、シリウスで死人が暴れているって噂を聞いて戻ってきたら。こいつらが墓から出て人を襲ってたのさ。だけど、私がここにいると、こいつらは墓の中に戻っていくんだよ」
躾は出来ているが飼い主が必要と・・・、しかし話を聞くとリンネはそんなに悪い人間では無かったのかもしれない。もっとも、この女のいう事が事実だとすればなのだが。
「信じられないような話だが、それが事実だとしても、ハンスは俺たちが連れて帰るぞ」
「ああ、好きにすればいいよ。ちょっと寂しいけど、前と変わらないしね。あんた達は砦のやつらは皆殺しにしたのかい?」
「いや、けがをした程度だろう」
「そうかい。じゃあ、これからは注意するんだね。あいつらは何処の国にも仲間がいるから、敵に回すと面倒なんだよ」
ハンスの奪還計画は思ったより簡単に解決しそうだ。それでも、サリナは治療魔法でハンスのけがを治していたが、まだ目を覚ましていなかった。
「ハンスが飲まされた薬だが、どのぐらいで目が覚めるんだ?」
「さぁ、明日には目が覚めると思うけどね。良かったら今晩は此処に泊まっていきなよ。ベッドは無いけど、床に敷皮ぐらいは敷いてやるよ」
死人使いの小屋に泊まるつもりもないが、意識のないハンスを載せて、照明のない夜道を走るのも危険だ。この近くの見つかり難いところで野営をすることしよう。
目の前に居る血の気の無い顔をした女が外にいた死人を操っていた。ネクロマンサー?死人使い?ゾンビマスター?・・・何と呼ぶのかは判らないが人間以外の何かであることは間違いない。
「ハンスをどうするつもりだ?」
「そうさねぇ、此処で一緒に暮らしてもらおうと思ってたんだけどね」
「ハンスも死人にするつもりなのか?」
女は驚いたよう表情を浮かべた後に甲高い声で笑いだした。
「あんた、面白い事いうのね!?死人は墓に居る奴らだけで十分よ。あんたたちが酷いことしたから、手足は減っちゃったみたいだけど。土の中に戻ればある程度は元通りになるわよ。あの獣人はね、ここで私の話し相手になってもらおうと思ってたの!」
「話し相手? それなら砦の中に仲間たちが居るじゃないか?」
「はぁ!? あいつらは仲間じゃないわよ、あたしのお城に勝手に居候しているだけよ。まぁ、誰もいないとちょっと寂しいから・・・、誰かに居てほしかったんだけどね」
寂しい?こいつがリンネと言う黒い死人達の親玉では無かったのか?
「あんたが、黒い死人達の親玉のリンネなんだろ?」
「親玉? 確かに私がリンネだけど、私はあんな奴らの仲間じゃあ無いよ。あいつらが私の力を外に吹聴して利用しているだけだね。それに、ここに居る奴らは組織の枝葉だよ。組織の親玉は常に移動しているから、何処にいるかは此処のやつらでも知らないようだね」
「じゃあ、あんたはなんでこんなところに一人で・・・、それにあんたは人間じゃないんだろ?」
俺は核心に触れる質問をした。
「酷いことをいうもんだね・・・、確かに私は死人を操れる不死の女だけど・・・、心もあるし・・・、あんた達と同じ人間だよ!」
不死という時点で人間ではないと思うが、本人は人間のつもりのようだ。それに話していると、意外に普通の人間のような印象を受ける。俺もこの世界で頭が変になって来ているのかもしれない。
「それに、あたしは此処から離れられないんだよ。ここで眠っているみんなの傍からね。あたしが居なくなると、あの子たちはちゃんと動けなくなっちゃうから」
動けなくなる?死んでいるのに何が問題なんだろう?
「安らかな眠りにつかせてやれば良いんじゃないのか?」
「そうはならないんだよ。あの子たちは領主に惨殺された領民たちの怨念で動いてるんだから。私が居ないとあの子たちは見境なく人を襲うようになっちまうのさ」
「あんたはその領民たちとどんな関係なんだ?」
「私はその惨殺を止めようとして、領主に火あぶりで処刑された側室だよ。領主は、領民たちや城のみんなの前で、足元からあたしを火あぶりにしたんだ。苦しむ顔を長く見たいからってね・・・完全に狂ってたんだよ。だけど、あたしにはそれをやめさせる力がなかったのさ。火をつけられて足元から皮膚が焼けていく痛みの中で、私は闇の神に祈り続けたさ、『死にたくない、こいつを殺せる力をください。すべてを闇の神に捧げます』って、何度何度もね・・・、だけど結局死んじまったんだよ」
「あいつは、焼け焦げたあたしと槍で串刺しにした領民たちの死体を墓があった場所に捨てさせやがった。弔うことも土に埋めることもなくね・・・。だけど、何日かするとあたしは目が覚めたんだよ、冷たい土の上で・・・、不思議なことに体も元通りになっててね。周りの死体は、私が目覚めると一緒に起き上がって来たのさ。最初は怖くて、走って逃げだしたけど、何処までもついて来るし。私を囲んでも襲ってくることは無かった。だから、これは闇の神の力なんだって気が付いたのさ。私が生き返ったのも、闇の神ネフロスの力なんだろうってね」
領主に殺され、生き返って、死人使いになった・・・、ネフロス?この世界で初めて聞く名前だな。
「それで、あんたがここからいなくなると、死人はどうして暴れだすんだ?」
「あたしにもわからないんだけど、あいつらと領主を殺した後に私は死人達の墓を作ったんだ。死人全員で自分達が入るための墓を掘っていくんだから、面白い光景だったけどね」
確かにゾンビが全員並んで自分の墓を掘っていたら・・・、ぞっとするな。
「その後は一人で王都に行ってしばらく暮らしてたんだけど、シリウスで死人が暴れているって噂を聞いて戻ってきたら。こいつらが墓から出て人を襲ってたのさ。だけど、私がここにいると、こいつらは墓の中に戻っていくんだよ」
躾は出来ているが飼い主が必要と・・・、しかし話を聞くとリンネはそんなに悪い人間では無かったのかもしれない。もっとも、この女のいう事が事実だとすればなのだが。
「信じられないような話だが、それが事実だとしても、ハンスは俺たちが連れて帰るぞ」
「ああ、好きにすればいいよ。ちょっと寂しいけど、前と変わらないしね。あんた達は砦のやつらは皆殺しにしたのかい?」
「いや、けがをした程度だろう」
「そうかい。じゃあ、これからは注意するんだね。あいつらは何処の国にも仲間がいるから、敵に回すと面倒なんだよ」
ハンスの奪還計画は思ったより簡単に解決しそうだ。それでも、サリナは治療魔法でハンスのけがを治していたが、まだ目を覚ましていなかった。
「ハンスが飲まされた薬だが、どのぐらいで目が覚めるんだ?」
「さぁ、明日には目が覚めると思うけどね。良かったら今晩は此処に泊まっていきなよ。ベッドは無いけど、床に敷皮ぐらいは敷いてやるよ」
死人使いの小屋に泊まるつもりもないが、意識のないハンスを載せて、照明のない夜道を走るのも危険だ。この近くの見つかり難いところで野営をすることしよう。
0
お気に入りに追加
908
あなたにおすすめの小説
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!
酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。
スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ
個人差はあるが5〜8歳で開花する。
そのスキルによって今後の人生が決まる。
しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。
世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。
カイアスもスキルは開花しなかった。
しかし、それは気付いていないだけだった。
遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!!
それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!
ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる