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Ⅰ-105 悲しい死人使い
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■リンネの小屋
目の前に居る血の気の無い顔をした女が外にいた死人を操っていた。ネクロマンサー?死人使い?ゾンビマスター?・・・何と呼ぶのかは判らないが人間以外の何かであることは間違いない。
「ハンスをどうするつもりだ?」
「そうさねぇ、此処で一緒に暮らしてもらおうと思ってたんだけどね」
「ハンスも死人にするつもりなのか?」
女は驚いたよう表情を浮かべた後に甲高い声で笑いだした。
「あんた、面白い事いうのね!?死人は墓に居る奴らだけで十分よ。あんたたちが酷いことしたから、手足は減っちゃったみたいだけど。土の中に戻ればある程度は元通りになるわよ。あの獣人はね、ここで私の話し相手になってもらおうと思ってたの!」
「話し相手? それなら砦の中に仲間たちが居るじゃないか?」
「はぁ!? あいつらは仲間じゃないわよ、あたしのお城に勝手に居候しているだけよ。まぁ、誰もいないとちょっと寂しいから・・・、誰かに居てほしかったんだけどね」
寂しい?こいつがリンネと言う黒い死人達の親玉では無かったのか?
「あんたが、黒い死人達の親玉のリンネなんだろ?」
「親玉? 確かに私がリンネだけど、私はあんな奴らの仲間じゃあ無いよ。あいつらが私の力を外に吹聴して利用しているだけだね。それに、ここに居る奴らは組織の枝葉だよ。組織の親玉は常に移動しているから、何処にいるかは此処のやつらでも知らないようだね」
「じゃあ、あんたはなんでこんなところに一人で・・・、それにあんたは人間じゃないんだろ?」
俺は核心に触れる質問をした。
「酷いことをいうもんだね・・・、確かに私は死人を操れる不死の女だけど・・・、心もあるし・・・、あんた達と同じ人間だよ!」
不死という時点で人間ではないと思うが、本人は人間のつもりのようだ。それに話していると、意外に普通の人間のような印象を受ける。俺もこの世界で頭が変になって来ているのかもしれない。
「それに、あたしは此処から離れられないんだよ。ここで眠っているみんなの傍からね。あたしが居なくなると、あの子たちはちゃんと動けなくなっちゃうから」
動けなくなる?死んでいるのに何が問題なんだろう?
「安らかな眠りにつかせてやれば良いんじゃないのか?」
「そうはならないんだよ。あの子たちは領主に惨殺された領民たちの怨念で動いてるんだから。私が居ないとあの子たちは見境なく人を襲うようになっちまうのさ」
「あんたはその領民たちとどんな関係なんだ?」
「私はその惨殺を止めようとして、領主に火あぶりで処刑された側室だよ。領主は、領民たちや城のみんなの前で、足元からあたしを火あぶりにしたんだ。苦しむ顔を長く見たいからってね・・・完全に狂ってたんだよ。だけど、あたしにはそれをやめさせる力がなかったのさ。火をつけられて足元から皮膚が焼けていく痛みの中で、私は闇の神に祈り続けたさ、『死にたくない、こいつを殺せる力をください。すべてを闇の神に捧げます』って、何度何度もね・・・、だけど結局死んじまったんだよ」
「あいつは、焼け焦げたあたしと槍で串刺しにした領民たちの死体を墓があった場所に捨てさせやがった。弔うことも土に埋めることもなくね・・・。だけど、何日かするとあたしは目が覚めたんだよ、冷たい土の上で・・・、不思議なことに体も元通りになっててね。周りの死体は、私が目覚めると一緒に起き上がって来たのさ。最初は怖くて、走って逃げだしたけど、何処までもついて来るし。私を囲んでも襲ってくることは無かった。だから、これは闇の神の力なんだって気が付いたのさ。私が生き返ったのも、闇の神ネフロスの力なんだろうってね」
領主に殺され、生き返って、死人使いになった・・・、ネフロス?この世界で初めて聞く名前だな。
「それで、あんたがここからいなくなると、死人はどうして暴れだすんだ?」
「あたしにもわからないんだけど、あいつらと領主を殺した後に私は死人達の墓を作ったんだ。死人全員で自分達が入るための墓を掘っていくんだから、面白い光景だったけどね」
確かにゾンビが全員並んで自分の墓を掘っていたら・・・、ぞっとするな。
「その後は一人で王都に行ってしばらく暮らしてたんだけど、シリウスで死人が暴れているって噂を聞いて戻ってきたら。こいつらが墓から出て人を襲ってたのさ。だけど、私がここにいると、こいつらは墓の中に戻っていくんだよ」
躾は出来ているが飼い主が必要と・・・、しかし話を聞くとリンネはそんなに悪い人間では無かったのかもしれない。もっとも、この女のいう事が事実だとすればなのだが。
「信じられないような話だが、それが事実だとしても、ハンスは俺たちが連れて帰るぞ」
「ああ、好きにすればいいよ。ちょっと寂しいけど、前と変わらないしね。あんた達は砦のやつらは皆殺しにしたのかい?」
「いや、けがをした程度だろう」
「そうかい。じゃあ、これからは注意するんだね。あいつらは何処の国にも仲間がいるから、敵に回すと面倒なんだよ」
ハンスの奪還計画は思ったより簡単に解決しそうだ。それでも、サリナは治療魔法でハンスのけがを治していたが、まだ目を覚ましていなかった。
「ハンスが飲まされた薬だが、どのぐらいで目が覚めるんだ?」
「さぁ、明日には目が覚めると思うけどね。良かったら今晩は此処に泊まっていきなよ。ベッドは無いけど、床に敷皮ぐらいは敷いてやるよ」
死人使いの小屋に泊まるつもりもないが、意識のないハンスを載せて、照明のない夜道を走るのも危険だ。この近くの見つかり難いところで野営をすることしよう。
目の前に居る血の気の無い顔をした女が外にいた死人を操っていた。ネクロマンサー?死人使い?ゾンビマスター?・・・何と呼ぶのかは判らないが人間以外の何かであることは間違いない。
「ハンスをどうするつもりだ?」
「そうさねぇ、此処で一緒に暮らしてもらおうと思ってたんだけどね」
「ハンスも死人にするつもりなのか?」
女は驚いたよう表情を浮かべた後に甲高い声で笑いだした。
「あんた、面白い事いうのね!?死人は墓に居る奴らだけで十分よ。あんたたちが酷いことしたから、手足は減っちゃったみたいだけど。土の中に戻ればある程度は元通りになるわよ。あの獣人はね、ここで私の話し相手になってもらおうと思ってたの!」
「話し相手? それなら砦の中に仲間たちが居るじゃないか?」
「はぁ!? あいつらは仲間じゃないわよ、あたしのお城に勝手に居候しているだけよ。まぁ、誰もいないとちょっと寂しいから・・・、誰かに居てほしかったんだけどね」
寂しい?こいつがリンネと言う黒い死人達の親玉では無かったのか?
「あんたが、黒い死人達の親玉のリンネなんだろ?」
「親玉? 確かに私がリンネだけど、私はあんな奴らの仲間じゃあ無いよ。あいつらが私の力を外に吹聴して利用しているだけだね。それに、ここに居る奴らは組織の枝葉だよ。組織の親玉は常に移動しているから、何処にいるかは此処のやつらでも知らないようだね」
「じゃあ、あんたはなんでこんなところに一人で・・・、それにあんたは人間じゃないんだろ?」
俺は核心に触れる質問をした。
「酷いことをいうもんだね・・・、確かに私は死人を操れる不死の女だけど・・・、心もあるし・・・、あんた達と同じ人間だよ!」
不死という時点で人間ではないと思うが、本人は人間のつもりのようだ。それに話していると、意外に普通の人間のような印象を受ける。俺もこの世界で頭が変になって来ているのかもしれない。
「それに、あたしは此処から離れられないんだよ。ここで眠っているみんなの傍からね。あたしが居なくなると、あの子たちはちゃんと動けなくなっちゃうから」
動けなくなる?死んでいるのに何が問題なんだろう?
「安らかな眠りにつかせてやれば良いんじゃないのか?」
「そうはならないんだよ。あの子たちは領主に惨殺された領民たちの怨念で動いてるんだから。私が居ないとあの子たちは見境なく人を襲うようになっちまうのさ」
「あんたはその領民たちとどんな関係なんだ?」
「私はその惨殺を止めようとして、領主に火あぶりで処刑された側室だよ。領主は、領民たちや城のみんなの前で、足元からあたしを火あぶりにしたんだ。苦しむ顔を長く見たいからってね・・・完全に狂ってたんだよ。だけど、あたしにはそれをやめさせる力がなかったのさ。火をつけられて足元から皮膚が焼けていく痛みの中で、私は闇の神に祈り続けたさ、『死にたくない、こいつを殺せる力をください。すべてを闇の神に捧げます』って、何度何度もね・・・、だけど結局死んじまったんだよ」
「あいつは、焼け焦げたあたしと槍で串刺しにした領民たちの死体を墓があった場所に捨てさせやがった。弔うことも土に埋めることもなくね・・・。だけど、何日かするとあたしは目が覚めたんだよ、冷たい土の上で・・・、不思議なことに体も元通りになっててね。周りの死体は、私が目覚めると一緒に起き上がって来たのさ。最初は怖くて、走って逃げだしたけど、何処までもついて来るし。私を囲んでも襲ってくることは無かった。だから、これは闇の神の力なんだって気が付いたのさ。私が生き返ったのも、闇の神ネフロスの力なんだろうってね」
領主に殺され、生き返って、死人使いになった・・・、ネフロス?この世界で初めて聞く名前だな。
「それで、あんたがここからいなくなると、死人はどうして暴れだすんだ?」
「あたしにもわからないんだけど、あいつらと領主を殺した後に私は死人達の墓を作ったんだ。死人全員で自分達が入るための墓を掘っていくんだから、面白い光景だったけどね」
確かにゾンビが全員並んで自分の墓を掘っていたら・・・、ぞっとするな。
「その後は一人で王都に行ってしばらく暮らしてたんだけど、シリウスで死人が暴れているって噂を聞いて戻ってきたら。こいつらが墓から出て人を襲ってたのさ。だけど、私がここにいると、こいつらは墓の中に戻っていくんだよ」
躾は出来ているが飼い主が必要と・・・、しかし話を聞くとリンネはそんなに悪い人間では無かったのかもしれない。もっとも、この女のいう事が事実だとすればなのだが。
「信じられないような話だが、それが事実だとしても、ハンスは俺たちが連れて帰るぞ」
「ああ、好きにすればいいよ。ちょっと寂しいけど、前と変わらないしね。あんた達は砦のやつらは皆殺しにしたのかい?」
「いや、けがをした程度だろう」
「そうかい。じゃあ、これからは注意するんだね。あいつらは何処の国にも仲間がいるから、敵に回すと面倒なんだよ」
ハンスの奪還計画は思ったより簡単に解決しそうだ。それでも、サリナは治療魔法でハンスのけがを治していたが、まだ目を覚ましていなかった。
「ハンスが飲まされた薬だが、どのぐらいで目が覚めるんだ?」
「さぁ、明日には目が覚めると思うけどね。良かったら今晩は此処に泊まっていきなよ。ベッドは無いけど、床に敷皮ぐらいは敷いてやるよ」
死人使いの小屋に泊まるつもりもないが、意識のないハンスを載せて、照明のない夜道を走るのも危険だ。この近くの見つかり難いところで野営をすることしよう。
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