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Ⅰ-97 少女たちは?
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■シグマのギルド
目の前で3人の少女が泣いている。せっかく助けたのに悪人になった気分だった。いっそこのまま、走って逃げてやろうか? そんな風にも思っもみたが、後々まで俺自身が嫌な気分になるのは間違いない。
「そんなところで泣くなよ、そもそもサリナはなんで泣き出したんだ? お前が泣くから二人も泣いてるんだろ?」
「お、置いてい、いかれ・・・お、思い・・・して」
泣きながらではっきり聞き取れないが、自分が置いて行かれた時のことを思い出したようだ。困ったものだ。しかし・・・、こいつにここで面倒を見させるという手もあったな。
「じゃあ、サリナはこの町に残って二人の面倒を見るか? 預かっている魔法具は俺とミーシャでハンスのところに届けるからさ」
そうすれば、王都までミーシャと二人旅。そのほうが・・・
「そ、そ・・は、ダメ・・・い、一緒に・・・」
プランBもダメですか、じゃあ、仕方がない。厳しいだろうが、本人に選ばせよう。
「泣き止んで、俺と一緒に来るか。このまま3人でここにいるのか今すぐ決めろよ」
「・・・」
しばらく待っているとサリナはシャツの裾で涙を拭いながら立ち上がって俺を見つめた。
「サトルさんにお願いです。私とこの子たちを王都まで連れて行ってください。二人の面倒は私とお兄ちゃんが見ます」
意外なプランCが出てきた。目は赤いが唇をかみしめて、俺をまっすぐ見ている。話し方もちゃんとしようとしているのは、決意の表れ・・・なのか?
「本当にお前が責任をもって面倒を見るんだな?」
「はい、お金もあるし、魔法も使えるようになったので大丈夫です」
ふむ、確かに今のサリナなら王宮でも雇ってもらえるから、大丈夫かも知れないな。
「わかった、じゃあ、王都までエルとアナも連れて行っても良いよ。その代わり必ずお前が面倒をみるんだぞ。俺は一切関わり合いにならないからな。エルとアナもそれで良いのか?」
「サリナお姉ちゃんと行けるの?」
「そうよ、二人は私と王都に行こうね」
「うん!エルたちはサリナお姉ちゃんと一緒が良い!」
いつの間にか泣き止んでいたエルとアナも笑顔に変わった。チャーリーへのお願いを取り下げることになるが問題はない。倉庫のベッドは記念に置いて行ってやろう。
§
荒れ地の中で大型のピックアップトラックを走らせながら、王都に着いてからのことを考えていた。まずはハンスが行くと言っていたイースト商会に行って、サリナ達と魔法具を預けよう。しかし、ハンスがいなかった場合のプランBも想定しておく必要があるだろう。その場合は、どこかに家を借りてやって3人で暮らせるようにしてやればいい。家の借り方は知らないが、誰かが教えてくれるような気がする。幸いなことにお金は腐るほどある。サリナが働きたいなら、王宮への紹介状を渡してやるつもりだ。そこまでやれば、さすがにバイバイしても苦情は出ないはずだ・・・、俺の心の中もOK! シナリオは完璧だ。後は王都に向かって突き進むのみ!
■スモーク近郊の荒野
ピックアップトラックは快調に北へ進んで、スモークの町へ近いところで野営をすることにした。ここからなら明日の午前中には王都へ着くはずだ。4人の少女たちをキャンピングカーに放置してストレージに入ると、いつものように武器の整理を始めてみた。だが、ここしばらくは迷宮と恐竜のことばかり考えて武器を用意していたから、何を準備すればいいのかすぐには思いつかなかった。一昨日までは体が勝手に動いていたのに・・・
- 王都・・・、森の国・・・、大型の武器は要らないだろう。
考えた結果、対人関係が一番心配になってきたので、死なない程度の武器をたくさん用意して満足した。少し物足りない気もするが、魔獣が撃ちたいときは南へ狩りに行くことにしよう。
夕食はほどほどの料理にしておくことにする。決して意地悪等ではない、今までより少し質素だが、この世界基準ならご馳走だ。サリナを社会復帰させるためにスモークの町で食べることも考えたが、その選択肢は俺が嫌だった。エルとアナは黄色い卵に包まれたオムライスを見て目を輝かせている。サリナがスプーンで食べ方を教えてやって、ケチャップを卵の上に塗りたくった。獣人のハンスを兄として暮らしていたからなのか、エルやアナには本当の兄弟のように接している。これなら王都についても大丈夫のような気がする。そろそろ王都から先の予定もミーシャから聞いておいたほうが良いだろう。
「ミーシャは神の拳を森の国の王様に持って行くの?」
「ああ、そのつもりだ。先に森の国の都へ行って、見つけてきたものを見せる必要がある。だが、お前が言っていた使える者は其処には居ないのだ」
「使える人は何処にいるの?」
「エルフの里だ。そいつなら強い拳と風の神を使いこなせるはずなのだ」
「え!?じゃあ、その人もエルフなの?」
「もちろんそうだ」
強い拳のエルフ? 俺のエルフにはそんなのはいないが、それは現世の妄想世界か・・・
「エルフの里は都からどのぐらい離れているのかな?」
「そうだな、馬車で3日と歩いて半日だろうな」
「歩くところは俺の車では通れないの?」
「いや、小さいのなら大丈夫だろう。第2迷宮近くの森と同じような場所だ。生えている木はもっと大きいがな」
小さいの・・・バギーのことだな。バギーで行けるなら4時間ぐらいで行けるだろう。3日か4日もすればエルフがあふれる里へ行ける。やっと俺にもご褒美がもらえそうだ。
目の前で3人の少女が泣いている。せっかく助けたのに悪人になった気分だった。いっそこのまま、走って逃げてやろうか? そんな風にも思っもみたが、後々まで俺自身が嫌な気分になるのは間違いない。
「そんなところで泣くなよ、そもそもサリナはなんで泣き出したんだ? お前が泣くから二人も泣いてるんだろ?」
「お、置いてい、いかれ・・・お、思い・・・して」
泣きながらではっきり聞き取れないが、自分が置いて行かれた時のことを思い出したようだ。困ったものだ。しかし・・・、こいつにここで面倒を見させるという手もあったな。
「じゃあ、サリナはこの町に残って二人の面倒を見るか? 預かっている魔法具は俺とミーシャでハンスのところに届けるからさ」
そうすれば、王都までミーシャと二人旅。そのほうが・・・
「そ、そ・・は、ダメ・・・い、一緒に・・・」
プランBもダメですか、じゃあ、仕方がない。厳しいだろうが、本人に選ばせよう。
「泣き止んで、俺と一緒に来るか。このまま3人でここにいるのか今すぐ決めろよ」
「・・・」
しばらく待っているとサリナはシャツの裾で涙を拭いながら立ち上がって俺を見つめた。
「サトルさんにお願いです。私とこの子たちを王都まで連れて行ってください。二人の面倒は私とお兄ちゃんが見ます」
意外なプランCが出てきた。目は赤いが唇をかみしめて、俺をまっすぐ見ている。話し方もちゃんとしようとしているのは、決意の表れ・・・なのか?
「本当にお前が責任をもって面倒を見るんだな?」
「はい、お金もあるし、魔法も使えるようになったので大丈夫です」
ふむ、確かに今のサリナなら王宮でも雇ってもらえるから、大丈夫かも知れないな。
「わかった、じゃあ、王都までエルとアナも連れて行っても良いよ。その代わり必ずお前が面倒をみるんだぞ。俺は一切関わり合いにならないからな。エルとアナもそれで良いのか?」
「サリナお姉ちゃんと行けるの?」
「そうよ、二人は私と王都に行こうね」
「うん!エルたちはサリナお姉ちゃんと一緒が良い!」
いつの間にか泣き止んでいたエルとアナも笑顔に変わった。チャーリーへのお願いを取り下げることになるが問題はない。倉庫のベッドは記念に置いて行ってやろう。
§
荒れ地の中で大型のピックアップトラックを走らせながら、王都に着いてからのことを考えていた。まずはハンスが行くと言っていたイースト商会に行って、サリナ達と魔法具を預けよう。しかし、ハンスがいなかった場合のプランBも想定しておく必要があるだろう。その場合は、どこかに家を借りてやって3人で暮らせるようにしてやればいい。家の借り方は知らないが、誰かが教えてくれるような気がする。幸いなことにお金は腐るほどある。サリナが働きたいなら、王宮への紹介状を渡してやるつもりだ。そこまでやれば、さすがにバイバイしても苦情は出ないはずだ・・・、俺の心の中もOK! シナリオは完璧だ。後は王都に向かって突き進むのみ!
■スモーク近郊の荒野
ピックアップトラックは快調に北へ進んで、スモークの町へ近いところで野営をすることにした。ここからなら明日の午前中には王都へ着くはずだ。4人の少女たちをキャンピングカーに放置してストレージに入ると、いつものように武器の整理を始めてみた。だが、ここしばらくは迷宮と恐竜のことばかり考えて武器を用意していたから、何を準備すればいいのかすぐには思いつかなかった。一昨日までは体が勝手に動いていたのに・・・
- 王都・・・、森の国・・・、大型の武器は要らないだろう。
考えた結果、対人関係が一番心配になってきたので、死なない程度の武器をたくさん用意して満足した。少し物足りない気もするが、魔獣が撃ちたいときは南へ狩りに行くことにしよう。
夕食はほどほどの料理にしておくことにする。決して意地悪等ではない、今までより少し質素だが、この世界基準ならご馳走だ。サリナを社会復帰させるためにスモークの町で食べることも考えたが、その選択肢は俺が嫌だった。エルとアナは黄色い卵に包まれたオムライスを見て目を輝かせている。サリナがスプーンで食べ方を教えてやって、ケチャップを卵の上に塗りたくった。獣人のハンスを兄として暮らしていたからなのか、エルやアナには本当の兄弟のように接している。これなら王都についても大丈夫のような気がする。そろそろ王都から先の予定もミーシャから聞いておいたほうが良いだろう。
「ミーシャは神の拳を森の国の王様に持って行くの?」
「ああ、そのつもりだ。先に森の国の都へ行って、見つけてきたものを見せる必要がある。だが、お前が言っていた使える者は其処には居ないのだ」
「使える人は何処にいるの?」
「エルフの里だ。そいつなら強い拳と風の神を使いこなせるはずなのだ」
「え!?じゃあ、その人もエルフなの?」
「もちろんそうだ」
強い拳のエルフ? 俺のエルフにはそんなのはいないが、それは現世の妄想世界か・・・
「エルフの里は都からどのぐらい離れているのかな?」
「そうだな、馬車で3日と歩いて半日だろうな」
「歩くところは俺の車では通れないの?」
「いや、小さいのなら大丈夫だろう。第2迷宮近くの森と同じような場所だ。生えている木はもっと大きいがな」
小さいの・・・バギーのことだな。バギーで行けるなら4時間ぐらいで行けるだろう。3日か4日もすればエルフがあふれる里へ行ける。やっと俺にもご褒美がもらえそうだ。
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