上 下
92 / 343

Ⅰ-92 未開地 その6

しおりを挟む
■未開地の山岳地帯

 ジュラシック的な映画の中ではラプトルは共鳴する音か何かで意思疎通をして、集団で獲物を狩ることになっていた。目の前の奴らがそれと同じかはわからないが、俺達を10頭では倒せないと判断しているのは間違いない。そして、その判断は正しいようで正しくない。目の前に30頭以上がチョロチョロしているから、後ろや横を合わせれば100頭近いはずだが、俺達3人相手では・・・

「サリナ、100メートルぐらいの炎を出しっぱなしにして、近づけないようにしてくれ」
「任せて♪ ふぁいあーー!!」

 荷台で重機関銃の横に立っているサリナはロッドから長い炎を放って横に振っていく、近づこうとする奴らは、炎に怯えて横にしか動けなくなった。その間に重機関銃の弾帯を交換して銃座に戻る。

「もういいぞ、後ろとミーシャのほうを頼む」
「はーい♪」

 サリナの炎が消えて、車の右側から近寄ろうとしているやつらを23mm機関銃の連射でなぎ払う。対空は苦手だが、横への掃射は得意にしている。銃座を約90度横回転させる間に轟音を響き渡らせて200発放つと、一気に20頭ぐらいが肉片となって飛び散って行く、細い立ち木も倒れていくがお構い無しだ。当たらなかった幸運な奴らは一斉に逃げ始めた。

 もう一度弾帯を付け替えて、車の後部へ銃口を向ける。

「ミーシャ、そっちもこれで倒すから、車の前をお願い!」
「承知した」

 今度はピックアップトラックの後方から左側に銃口を回転させて、肉片の数を増やしていく。そもそもが飛行機や装甲車クラスを破壊する兵器だ、1メートルのデスハンターには威力がありすぎるから、当たった瞬間に体が引き裂かれて肉片がはじけ飛んで行く。弾帯を撃ちつくして前を見ると、ミーシャも少なくなった奴らを確実にしとめていて、サリナの炎は既にお休み中だった。

 それでも、離れたところに何頭か残っているから、俺もアサルライフルに持ち替えて動きがあるヤツへ連射を繰り返していく。マガジンを4回ほど交換すると前方の掃討が終ったミーシャが参戦してくれて、あっという間に動く敵は居なくなった。

 -うん、俺達の完勝だな。

 デスハンターはティラノ系と違って集団で距離を狭めてから襲い掛かるので何とかなった。100頭が一斉に突っ込んでくれば流石に厳しかっただろう。その対策も無いことは無いが・・・、今日は使う必要が無かったと言うことだ。

「ミーシャはどうだった、何頭ぐらい倒したの?」
「50は行っていないだろう」
「そう・・・」

 俺の機銃掃射と同じぐらいを1発ずつしとめたのか・・・、中々追いつかない。ミーシャに銃を与えてからは圧倒的に討伐数で負けているはずだ。もう少し頑張らないと、アシとメシだけの倉庫係になってしまう。

「サリナも頑張ったよね!?」
「ああ、お前の炎は凄いよ、あれがあるから安心して俺の魔法が使えるからな」
「そうだよね!頑張ったもん♪ でも、サトルのその魔法はちょっとうるさいの!」

 確かにイヤーマフをつけていても、体に響くぐらいの音だからウルサイのは間違いない。

「仕方ないだろ、空を飛んでるヤツにはこのぐらい大きな音の魔法じゃないと届かないんだから」
「そっか、すごいよね!?あんな上を飛んでるところまで届くんだもん、サリナの魔法も届くようになるかな?」

-流石に、それは無理やろ!

「ああ、頑張ればいつか届くようになるよ。また練習しよう」
「うん、もっと頑張る!」

 素直で良い娘だ、だが、頑張って届いたちゃったらどうしよう?高度300メートルまで届く火炎放射器・・・、サリナとは引き続き仲良くしておくことにしよう。

 §

 厄介な空の翼竜を事前に排除できたおかげで、ようやくピックアップトラックは山地の谷になっている部分へ到着した。地図では山地の中に迷宮の印が付いているが、見える範囲には高い塔等は無い。あたりは、低木と岩場が混在する山すそで、南には車でこれ以上進めそうに無い。

「サリナ、車を左に回して、ゆっくり進んでくれ」
「はーい♪」

 念のため、車を転回させた場所に発炎筒を投げて目印にしておく。車はゆっくりと山地を右に見ながら進んで行くが、1km程進んでも何も見つけられなかった。ここはミーシャ先生の超人的能力を頼るべきか・・・、いや、理由無く確信を持てるサリナだな。

「サリナ、次の迷宮は何処にあると思う?」
「どうして、この先にあるんでしょ?」
「え!? お前はこの先にあるのを知っているのか?」
「変なの、サトルがこっちって言ったのに・・・」

 確かにそうか、こいつは言われた通りに進んでいるだけだな。やはり、先生に・・・

「あそこでは無いのか?」

- はい、来ました!

 俺はミーシャが指差した右前方を見るが、木が沢山生えている場所と大きな岩しか見えない。

「え、何処のこと?」
「あの岩だ、周りの土や岩と種類が違うだろうが」
「・・・」

-スンマセン、全く違いがわかりません。

「そうだね、確かに色がチョット違うかな。サリナ、あの岩の側まで進んだら車を止めてくれ」
「わかった!」

 判ったような振りをして、もう一度岩を見るが周りとの違いは全然判らない。かなり大きな岩であるのは間違いない、高さは5メートルを超えていると思う。山裾が崖のようになっている場所に埋まるような形で・・・、なるほど入り口を塞いでいると言うことか!

 サリナが車を止めると、荷台からミーシャと飛び降りて、周囲を警戒しながら岩の方に3人で進んで行く。傾斜がかなりきつくなった不安定な足場を、手も使いながら岩のある場所まで登って行った。

 近くまで来ると、ミーシャの言っていたことがようやくわかった。この岩は、迷宮を作っている土壁と同じような物できている。土というと柔らかいイメージだが、コンクリート並みの固さがある。表面は凸凹して足元にくずれた小さな岩が沢山あるから、天然の岩のように見えたが、これも先の勇者達が作ったものかもしれない。大きさが5メートル四方はあるだろう、半分が斜面にめり込んでいるようになっている。

 しかし、見えてない部分が地面に埋まっているから、もっと大きな塊なのかもしれない。こんな大きな物で塞いであると、この世界の人間ならどうやって動かすのだろうか?ピラミッド的な人海戦術か、あるいは魔法か・・・。魔法ならどうする?サリナの魔法でもこの岩は砕けないだろう。100回ぐらいやれば何とかなるかもしれないが・・・。うかつに砕くと中にお宝があれば一緒に吹っ飛ぶかもしれないし・・・。

 よし!一晩考えて明日の朝どうするか決めよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

1枚の金貨から変わる俺の異世界生活。26個の神の奇跡は俺をチート野郎にしてくれるはず‼

ベルピー
ファンタジー
この世界は5歳で全ての住民が神より神の祝福を得られる。そんな中、カインが授かった祝福は『アルファベット』という見た事も聞いた事もない祝福だった。 祝福を授かった時に現れる光は前代未聞の虹色⁉周りから多いに期待されるが、期待とは裏腹に、どんな祝福かもわからないまま、5年間を何事もなく過ごした。 10歳で冒険者になった時には、『無能の祝福』と呼ばれるようになった。 『無能の祝福』、『最低な能力値』、『最低な成長率』・・・ そんな中、カインは腐る事なく日々冒険者としてできる事を毎日こなしていた。 『おつかいクエスト』、『街の清掃』、『薬草採取』、『荷物持ち』、カインのできる内容は日銭を稼ぐだけで精一杯だったが、そんな時に1枚の金貨を手に入れたカインはそこから人生が変わった。 教会で1枚の金貨を寄付した事が始まりだった。前世の記憶を取り戻したカインは、神の奇跡を手に入れる為にお金を稼ぐ。お金を稼ぐ。お金を稼ぐ。 『戦闘民族君』、『未来の猫ロボット君』、『美少女戦士君』、『天空の城ラ君』、『風の谷君』などなど、様々な神の奇跡を手に入れる為、カインの冒険が始まった。

処理中です...