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Ⅰ-86 お誘い
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■バーン組合長室
他の旅団とグラハムが出て行った部屋でサリナとミーシャを座らせて、ランディのご相談とやらを聞くことにした。
「サトル殿、先日はこの町まで護衛をしていただいて、ありがとうございました。町に到着した時にちゃんとお礼を言うべきでしたが、大変失礼いたしました」
「いえ、報酬を貰っていますから、問題ないですよ」
「その後も、大活躍のご様子で・・・、他の旅団は良い顔をしていないようですが、まあ有名税みたいな物ですから、そちらは気にされなくても良いでしょう。今後は赤の旅団も正面から喧嘩を吹っかけることは無いと思いますので」
「昨日の夜の件は、調査するんですか?」
「ええ、私は代官ですから約束は必ず守りますよ。ですが、調べてもわからないことも多いですからね」
ランディはサトルを見て、にやりと笑った。調べる気は全然無いようだ。
「それで、サトル殿とお仲間へご相談したかったのは、皆さんの今後のご予定についてです。このままバーンで魔獣を狩り続けるおつもりなのでしょうか?」
「それはまだ決めていませんが、当面はそうするつもりです」
「そうですか、既に魔獣の報奨金だけでも一生遊んで暮らせるだけの金貨が手に入ったのでは無いですか?」
「どうでしょう?お金は多くても不自由はしませんから」
「確かにそうですね、ですが幾ら皆さんがお強いと言っても、不死身と言うわけでは無いですから、もう少し安全なお仕事に興味が無いかと・・・。サトル殿は王宮で仕官されませんか?」
「王宮? 具体的には何をさせたいんですか?」
「王宮魔術師としてご活躍いただきたいと思っています。報酬はご希望の額をお約束いたしますし、住居も快適なものを王都にご用意いたします」
-王都?王宮魔術師?
「そもそも、王宮魔術師とは何をする仕事なのでしょうか?」
「役割は主に三つあります。一つ目は王命により特別な魔獣等を討伐する。二つ目は王宮魔術師の育成、最後は・・・戦争になった場合の近衛兵としての役割です」
-なるほど、魔法で戦えという事か面白く無さそうだな。
「ありがたいお話ですが、私には興味が無いですね。この国の人間ではありませんから、この国のために戦うことも出来ませんので」
「では、賓客待遇で王都にご滞在いただくと言うのはいかがでしょうか?魔獣討伐はサトル殿が興味のあるものだけで結構ですし、魔術師の育成もお時間のあるときだけで結構です。報酬は成功報酬とさせていただきますが、衣食住は賓客として不自由させません」
ふん、戦争はしなくて良いのか、王宮の賓客・・・王女様とダンスとか?しかし、こちらの要望にあわせて条件を変えてくると言うことは、もっと良い条件が引き出せる可能性は高いかもな。
「少し考えさせてください、しばらくは未開地で見たことの無い魔獣を討伐したいと思っていますから」
「ええ、ゆっくりお考えください。何かご希望があれば検討しますから、遠慮なく仰ってください。役場の方にはいつお越しいただいても結構ですので」
やはり、ランディは何とか俺達を取り込みたいようだ。行くことさえOKすれば、何でも希望がかなう気もするが、残念ながら欲しいものを全て持っているから特に望みがない。俺をヘッドハンティングするのは難しいのだ。
§
ランディの話を考えながら、バーンの東の荒野をクロカン4WDで南に向かっていた。運転はもちろんエースドライバーのサリナだ。既に俺よりも運転が上手いと思う、アクセルワークが違うのだろう、起伏のあるところでも自然と加即減速をして滑らかに車を走らせている。
サリナとミーシャにはそれぞれ目的があるから王宮入りをすることは無いはずだ。しかし、二人と離れた後の俺にはすることが無いから、ランディの話も有りかなと考え始めていた。
この世界に来た時には、どうやって他の人間と係わり合いを持たずに暮らしていくかを中心に考えていたが、サリナやミーシャと長く過ごして迷宮攻略をしている内に、俺自身が大きく変化していることに気づいている。やはり、誰かと一緒に居てその人たちに役立つと言うのは重要なことなのだろう。高校生だった現世では人に役立つことをしたこともないし、自分がやったことで周りが喜んだり感謝したりすることは無かったから、ストレージに物だけあれば幸せになれると思っていた。
しかし、それは違ったようだ。まだ2ヶ月ほどの異世界生活だが、現世の17年以上の重みを感じている。だから、二人と別れた後は一人で暮らしていくのが少し寂しく感じていて、王宮に行って何かの役に立つのも有りかも・・・、そんな風に考えていたのだ。
いずれにせよ、その判断は未開地の迷宮攻略で無事に帰って来られればの話だ。未開地はこの東の荒地を南に行った森の先に広がっているが、ジュラシック的な要素が強まるのは確実だ、デスハンター、翼竜、大型恐竜・・・他にも居るだろう。いままでよりも格段に強い相手だから、距離と武器をしっかり選択していかないと命に関わる。だが、こちらも戦力は日々レベルアップしている。ミーシャは無敵のスナイパーだし、サリナも恐ろしい魔法使いになっている。
俺は・・・? 俺もそれなりに頑張っているから、きっと大丈夫!
なんだか、サリナのようになって来たかもしれない。
他の旅団とグラハムが出て行った部屋でサリナとミーシャを座らせて、ランディのご相談とやらを聞くことにした。
「サトル殿、先日はこの町まで護衛をしていただいて、ありがとうございました。町に到着した時にちゃんとお礼を言うべきでしたが、大変失礼いたしました」
「いえ、報酬を貰っていますから、問題ないですよ」
「その後も、大活躍のご様子で・・・、他の旅団は良い顔をしていないようですが、まあ有名税みたいな物ですから、そちらは気にされなくても良いでしょう。今後は赤の旅団も正面から喧嘩を吹っかけることは無いと思いますので」
「昨日の夜の件は、調査するんですか?」
「ええ、私は代官ですから約束は必ず守りますよ。ですが、調べてもわからないことも多いですからね」
ランディはサトルを見て、にやりと笑った。調べる気は全然無いようだ。
「それで、サトル殿とお仲間へご相談したかったのは、皆さんの今後のご予定についてです。このままバーンで魔獣を狩り続けるおつもりなのでしょうか?」
「それはまだ決めていませんが、当面はそうするつもりです」
「そうですか、既に魔獣の報奨金だけでも一生遊んで暮らせるだけの金貨が手に入ったのでは無いですか?」
「どうでしょう?お金は多くても不自由はしませんから」
「確かにそうですね、ですが幾ら皆さんがお強いと言っても、不死身と言うわけでは無いですから、もう少し安全なお仕事に興味が無いかと・・・。サトル殿は王宮で仕官されませんか?」
「王宮? 具体的には何をさせたいんですか?」
「王宮魔術師としてご活躍いただきたいと思っています。報酬はご希望の額をお約束いたしますし、住居も快適なものを王都にご用意いたします」
-王都?王宮魔術師?
「そもそも、王宮魔術師とは何をする仕事なのでしょうか?」
「役割は主に三つあります。一つ目は王命により特別な魔獣等を討伐する。二つ目は王宮魔術師の育成、最後は・・・戦争になった場合の近衛兵としての役割です」
-なるほど、魔法で戦えという事か面白く無さそうだな。
「ありがたいお話ですが、私には興味が無いですね。この国の人間ではありませんから、この国のために戦うことも出来ませんので」
「では、賓客待遇で王都にご滞在いただくと言うのはいかがでしょうか?魔獣討伐はサトル殿が興味のあるものだけで結構ですし、魔術師の育成もお時間のあるときだけで結構です。報酬は成功報酬とさせていただきますが、衣食住は賓客として不自由させません」
ふん、戦争はしなくて良いのか、王宮の賓客・・・王女様とダンスとか?しかし、こちらの要望にあわせて条件を変えてくると言うことは、もっと良い条件が引き出せる可能性は高いかもな。
「少し考えさせてください、しばらくは未開地で見たことの無い魔獣を討伐したいと思っていますから」
「ええ、ゆっくりお考えください。何かご希望があれば検討しますから、遠慮なく仰ってください。役場の方にはいつお越しいただいても結構ですので」
やはり、ランディは何とか俺達を取り込みたいようだ。行くことさえOKすれば、何でも希望がかなう気もするが、残念ながら欲しいものを全て持っているから特に望みがない。俺をヘッドハンティングするのは難しいのだ。
§
ランディの話を考えながら、バーンの東の荒野をクロカン4WDで南に向かっていた。運転はもちろんエースドライバーのサリナだ。既に俺よりも運転が上手いと思う、アクセルワークが違うのだろう、起伏のあるところでも自然と加即減速をして滑らかに車を走らせている。
サリナとミーシャにはそれぞれ目的があるから王宮入りをすることは無いはずだ。しかし、二人と離れた後の俺にはすることが無いから、ランディの話も有りかなと考え始めていた。
この世界に来た時には、どうやって他の人間と係わり合いを持たずに暮らしていくかを中心に考えていたが、サリナやミーシャと長く過ごして迷宮攻略をしている内に、俺自身が大きく変化していることに気づいている。やはり、誰かと一緒に居てその人たちに役立つと言うのは重要なことなのだろう。高校生だった現世では人に役立つことをしたこともないし、自分がやったことで周りが喜んだり感謝したりすることは無かったから、ストレージに物だけあれば幸せになれると思っていた。
しかし、それは違ったようだ。まだ2ヶ月ほどの異世界生活だが、現世の17年以上の重みを感じている。だから、二人と別れた後は一人で暮らしていくのが少し寂しく感じていて、王宮に行って何かの役に立つのも有りかも・・・、そんな風に考えていたのだ。
いずれにせよ、その判断は未開地の迷宮攻略で無事に帰って来られればの話だ。未開地はこの東の荒地を南に行った森の先に広がっているが、ジュラシック的な要素が強まるのは確実だ、デスハンター、翼竜、大型恐竜・・・他にも居るだろう。いままでよりも格段に強い相手だから、距離と武器をしっかり選択していかないと命に関わる。だが、こちらも戦力は日々レベルアップしている。ミーシャは無敵のスナイパーだし、サリナも恐ろしい魔法使いになっている。
俺は・・・? 俺もそれなりに頑張っているから、きっと大丈夫!
なんだか、サリナのようになって来たかもしれない。
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