異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?

初老の妄想

文字の大きさ
上 下
55 / 343

Ⅰ-55 二つ目のロッドで

しおりを挟む
■第3迷宮 北の荒野

迷宮中心部からの脱出に大きな障害はなかった。
もちろん、何匹かの魔獣が出てきたが全てミーシャ様がやっつけてくれた。
炎のライオンも1匹出てきたが、サリナ様が水で消してくれた。
安全だったが俺にとっては正直物足りなさが残る迷宮攻略となった。

それでも魔法具の回収は無事に終ったので、安全な北に向かって10kmほど移動した。
場所は昨日野営したところに近いはずだ。
早めに野営地までたどり着いたので、周囲に地雷と投光器を沢山セットしてから外で焼肉をすることにした。
大き目のバーベキューコンロ、炭、テーブル、椅子をストレージから呼び出してサリナと一緒に並べた。
食材も肉だけでなく、魚介類と野菜、きのこ等をふんだんに用意する。
荒野に太陽が沈み世界がオレンジ色になった頃に、ちょうど炭に火が入ったので肉を焼き始めた。
食欲をそそる音と匂いが荒野に広がっていく、既に三人ともコンロの上から目を離さない。

「どんどん焼いていくから、自分で・・・」

俺が話し終わる前にサリナはトングで肉を挟んでいた。

「少し赤いぐらいが美味しいの♪」

ミーシャとハンスもサリナに続いた。
念のため4人分のご飯も用意してやる。
サリナとミーシャは持ち方を教えた箸を使って、肉と白飯が上手に食べられるようになっていた。

「サトル殿。いつも美味いですが、この焼き方で食べる肉は更に美味いですね」

「お兄ちゃん、外の焼肉は世界一って言ったでしょ♪」

確かに高品質で余分な油が落ちていった肉は美味かった。
エビやカニも用意してやると3人とも少し食べていたがやはり肉が良いようだ。
肉以外をもっと焼けとは言わずに、既に自分達でどんどん肉を焼いていく。
肉ならロースやカルビだけでなくホルモンも気に入ったようだ。ミソ味のホルモンと白飯をハンスはフォークでかき込むように食べていた。
焼肉の皿で言うと50人前ぐらいがあっという間に消えていった。

「ところで、今日見つけた水のロッドですけど、水が出るロッドなんですか?」

食べるピッチが落ち着いたタイミングで今日の戦利品についてハンスに尋ねた。

「ええ、水が出せるはずです、勇者様は雨を降らせることも出来たそうです」

-雨! もはや、御伽噺や!

しかし、雨は水だから出せても不思議は無いのか?

「それでも、水では攻撃できないんじゃないですかね?」

「その通りですが、今日のように火をまとった魔獣が居るとすれば、強い水が出せると役立つと思います。それに、もっと色々できるはずなのですが詳しいことは判りません」

「勇者は使い方を伝えていないのですか?」

「はい、敢えてそのようになされたようです。魔法も魔法具も自ら考えて使うものにしか使えないと」

-嫌がらせなのか? 鍛えようとしているのか?

「それと、ロッドには風の石も付いているんですよね?風の魔法ってどんな魔法なんですか?」

「風を出すことの出来る魔法ですが、私も使えませんので・・・」

風を出せる石が両方のロッドについている・・・そうか!

「サリナ、炎のロッドを持ってるか?」

「うん、持ってるよ」

「じゃあ、そのロッドで風の神様に風が出るようにお祈りして見ろ」

「ウィン様に? どんな風かな?」

「そうだな、あそこの岩にぶつかるような強い風を出してみろ」

50メートルは離れた岩を指してサリナにムチャ振りした。

「うん、わかったけど、強い風かぁ・・・」

首をかしげながらも椅子から立ち上がって、ロッドを岩の方に向けて目を瞑った。

サリナが目を開いた瞬間にロッドから風がほとばしったのがわかった。
地面の砂を巻き上げて岩に風がぶつかった。

「おぉ、風の魔法も使えるようになったか!」

「うん♪ また大魔法士に近づいた!」

ハンスは驚き、サリナは喜んでいるが・・・これでは全然足りない。
風の強さは人間がよろめく程度の強さだろう。
もっと強い風がでるのか?
だが、炎のロッドなのだから・・・、 なんだ、一緒に出せば良いだけじゃないか!

「今度は、炎と風とを一緒に出してみろよ」

「一緒に? それは無理だよ、神様が違うのに!」

「そうなのか? ・・・だったら二人の神様にお願いしてみろよ、『グレン様、ウィン様、炎の風を出してください』ってさ」

「二人に? お兄ちゃん良いのかな? 神様は怒ったりしないの?」

「サリナ、サトル殿の言われた通りにやってみるのだ、それが自ら考えると言うことなのだろう」

「わかった!」

サリナはさっきと同じようにロッドを構えて、何かをつぶやきながら目を瞑っている。

「「ワァッ!!」」

俺達は大声を上げた!

サリナが目を開いた瞬間にロッドから炎が岩に向かってほとばしっていた!
紅蓮の炎が50メートル先の岩まで一気に伸びてぶつかった!

「サリナ! 凄いぞ!」

「お兄ちゃん、そうだよね!? やっぱりサリナは凄いよね!」

-アカン、余計なことを教えたかも!

ハンスは感動し、サリナはピョンピョン飛び跳ねて喜んでいる。
だが、俺は後悔していた。
ロッドの使い方に興味があったからやらせてみたが、このロッドは十分に危険な武器だ。
敵が持っているとしたら、かなり危ないだろう。
タンクの要らない火炎放射器があれば現代でも近接戦闘ではかなり強いはずだ。
50メートルが射程県内なら尚更だ・・・、いや、もっと遠くまで届くのかもしれないが・・・

「サトルも褒めてよ! サトルのおかげであんなに炎が飛んだのに!!」

「あぁ、すごいな。ビックリしすぎたよ」

「やっぱり凄い!? ヤッター!!」

いかんな、好奇心が猫を殺すってヤツが諺であったけど・・・
今はそんな気分っす。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

【改訂版アップ】10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~

ばいむ
ファンタジー
10日間の異世界旅行~帰れなくなった二人の異世界冒険譚~ 大筋は変わっていませんが、内容を見直したバージョンを追加でアップしています。単なる自己満足の書き直しですのでオリジナルを読んでいる人は見直さなくてもよいかと思います。主な変更点は以下の通りです。 話数を半分以下に統合。このため1話辺りの文字数が倍増しています。 説明口調から対話形式を増加。 伏線を考えていたが使用しなかった内容について削除。(龍、人種など) 別視点内容の追加。 剣と魔法の世界であるライハンドリア・・・。魔獣と言われるモンスターがおり、剣と魔法でそれを倒す冒険者と言われる人達がいる世界。 高校の休み時間に突然その世界に行くことになってしまった。この世界での生活は10日間と言われ、混乱しながらも楽しむことにしたが、なぜか戻ることができなかった。 特殊な能力を授かるわけでもなく、生きるための力をつけるには自ら鍛錬しなければならなかった。魔獣を狩り、いろいろな遺跡を訪ね、いろいろな人と出会った。何度か死にそうになったこともあったが、多くの人に助けられながらも少しずつ成長し、なんとか生き抜いた。 冒険をともにするのは同じく異世界に転移してきた女性・ジェニファー。彼女と出会い、ともに生き抜き、そして別れることとなった。 2021/06/27 無事に完結しました。 2021/09/10 後日談の追加を開始 2022/02/18 後日談完結しました。 2025/03/23 自己満足の改訂版をアップしました。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった

Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。 *ちょっとネタばれ 水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!! *11月にHOTランキング一位獲得しました。 *なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。 *パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

処理中です...