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Ⅰ-27 ビッグゲーム
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■バーン南東の荒野
赤の獣爪団が縄張りとしている場所はほとんどが荒野だった。
木や岩は少ないが所々にブッシュがあって獣たちが隠れている。
アフリカのサバンナっぽい? 感じなのかもしれない。
俺は行ったことないけど。
4輪バギーを再度呼び出した俺はキャンピングカーから出てきたサリナに運転させることを思いついた。
俺が初めてで出来たんだから、こいつも教えれば出来るんじゃないか?
ダメモトでやらせたがあっさりマスターした。
と言うことで、今は右側の助手席に座っている。
ミーシャは後部座席に座って膝の上に弓を置いている。
サリナに運転させようと思ったのは魔獣を警戒してのことだ。
銃はいつでも撃てるほうが絶対に良い、ハンドルから銃に持ち替える間に死ぬかもしれないからな。
いつものアサルトライフルを斜めに抱えて前方を注視している。
今いる荒地は大きな起伏は少ないので30kmから40kmぐらいで走り続けている。
サリナは運転を楽しんでいるようだ、兄のことを忘れているのか時折笑顔を見せている。
しかし、こいつにはまだ隠し事が多いようだ。
魔法、魔法力、親に関することでダンマリがある。
兄と会えば色々教えてもらえるのか?
あるいは、兄に渡せばサヨナラか?
いずれにしても、兄が生きていればの話だ。
「サトル! あっち!」
サリナの顔を見ながら考え事をしている俺にサリナが指差した。
俺の座っている助手席の向こうに砂埃が上がっている。
100メートルぐらい向こうだが、何かがすごい勢いで走っている・・・サイ!?
「サリナ、逃げろ!左にハンドルを切って、できるだけスピードを出せ!」
サリナはいわれた通りにハンドルを切り、60kmぐらいまで加速した。
バギーは上下にバンバン揺れる、上体を捻って後ろを見るが、60kmなら爆走するサイでも引き離せそうだ。
「少し速度を落として良いよ」
俺は双眼鏡を取り出して、後ろのサイとの距離を測った。
400メートルぐらいは離れたところでサイがゆっくり歩き出している。
追いかけるのをあきらめたのだろう。
サリナに逃げるように言ったのは簡単な理由だ。
走ってくるサイは見るからにでかくて、手元のアサルトライフルに入っている5.56mm弾では倒せそうになかったからだ。
もちろん、あんな物にぶつけられたらバギーは引っ繰り返るだろうし。
銃を持った戦いでは襲われない安全な距離を保つことが最も重要だ・・・だから迷宮なんかには行きたくないんだけど。
「サリナ、一度バギーを止めて」
バギーから降りた俺は、もう一度双眼鏡で距離を測る。
-475m
チャレンジするには丁度いいかもしれない。
サイはゆっくりとこちらに歩いてきている。
「ミーシャさん、周りから他の獣が来ないか見といてください」
「承知した」
背中を美人エルフに任せることにして、ストレージからマットと12.7mm弾の対物ライフル-バレットM82を取り出した。
この銃は1kmを超えるような長距離で狙撃できる銃だが、俺にはそこまでの腕は無い。
だが、この距離であれば威力が凄まじいはずだ。
イヤーバフを耳につけて、伏射の姿勢でマットの上に腹ばいになる。
二脚にしたバレットに頬をつけて、スコープの中でサイを捜す・・・、見つけた!
十字線をターゲットの額に重ねてトリガーを絞る。
- ズッギューーーーゥン!
荒野に轟音が鳴り響いたが外れた。上へ抜けたようだ。
音でサイが怒った、こっちへ走り出して来た。
- 落ち着け俺。
もう一度、スコープ内の十字線をさっきより下へ重ねて・・・
- ズッギューーーーゥン!
よっしゃアー!
サイの頭部から血と肉片が飛び散って横倒しになった。
ど真ん中だ! 最高に気持ち良い!
初めて大型ライフルで大物をしとめてご機嫌でマットから立ち上がり、銃をストレージに戻した。
「じゃあ、また東に向かって走ろうか」
「ちょっと待て。あのライナーはそのままにしていくのか?」
「ライナーって、今撃ったやつですか?」
「そうだ、おそらくクレイジーライナーだろう」
「置いて行くと、まずいんですか?」
「別にまずくは無いが・・・、お前は本当に何も知らないのだな。あいつの角は高く売れる。金貨100枚以上は絶対するはずだ、倒したヤツは何とかして持って帰るだろう」
- 金貨100枚・・・1000万円近いのかな?
「懸賞金とは別に角だけが売れるんですか?」
「そうだ、あの角は熱を下げる秘薬の元になる。他の魔獣の牙なども高く売れる物が多いのだが・・・今まで倒した魔獣から持って帰っては無いのか?」
「え、ええ、興味が無かったので」
「そ、そうなのか。お前は金には興味が無いのか?」
「そう言うわけでもないんですが、食べる物とか服は幾らでも出せるので」
「・・・ならば、あの角をライナーから切り離してやるから、売れた額の2割、いや1割でいいから私に報酬としてもらえないだろうか?」
- そうかミーシャさんはお金に余裕が無いんだったな。
「いいですよ、半額をミーシャさんの取り分にしてもらって。それとパーティー登録はしていませんが、今回倒した魔獣の懸賞金も三人で山分けにしましょう」
「なんだと?ありえない話だが、本当にそれで良いのか!?」
「ええ、問題ありませんよ。ところで、角って簡単に外せるんですか?」
「いや、少しは時間が必要だな。1時間ぐらいだろうか?」
「それは、ちょっと時間が掛かりすぎますね、ここでキャンプしてもいいけど・・、できれば夜までに迷宮の側にへ行きたいんですよ」
「・・・そうか、ならば仕方ないな。もったいないが今回はあきらめよう」
ミーシャは心底残念そうな顔をした。
「いえいえ、とりあえず私がライナーを預かっときますから、都合の良い時に角を取り外しましょう」
「?」
ストレージなら大きい物も預かり放題だ。
赤の獣爪団が縄張りとしている場所はほとんどが荒野だった。
木や岩は少ないが所々にブッシュがあって獣たちが隠れている。
アフリカのサバンナっぽい? 感じなのかもしれない。
俺は行ったことないけど。
4輪バギーを再度呼び出した俺はキャンピングカーから出てきたサリナに運転させることを思いついた。
俺が初めてで出来たんだから、こいつも教えれば出来るんじゃないか?
ダメモトでやらせたがあっさりマスターした。
と言うことで、今は右側の助手席に座っている。
ミーシャは後部座席に座って膝の上に弓を置いている。
サリナに運転させようと思ったのは魔獣を警戒してのことだ。
銃はいつでも撃てるほうが絶対に良い、ハンドルから銃に持ち替える間に死ぬかもしれないからな。
いつものアサルトライフルを斜めに抱えて前方を注視している。
今いる荒地は大きな起伏は少ないので30kmから40kmぐらいで走り続けている。
サリナは運転を楽しんでいるようだ、兄のことを忘れているのか時折笑顔を見せている。
しかし、こいつにはまだ隠し事が多いようだ。
魔法、魔法力、親に関することでダンマリがある。
兄と会えば色々教えてもらえるのか?
あるいは、兄に渡せばサヨナラか?
いずれにしても、兄が生きていればの話だ。
「サトル! あっち!」
サリナの顔を見ながら考え事をしている俺にサリナが指差した。
俺の座っている助手席の向こうに砂埃が上がっている。
100メートルぐらい向こうだが、何かがすごい勢いで走っている・・・サイ!?
「サリナ、逃げろ!左にハンドルを切って、できるだけスピードを出せ!」
サリナはいわれた通りにハンドルを切り、60kmぐらいまで加速した。
バギーは上下にバンバン揺れる、上体を捻って後ろを見るが、60kmなら爆走するサイでも引き離せそうだ。
「少し速度を落として良いよ」
俺は双眼鏡を取り出して、後ろのサイとの距離を測った。
400メートルぐらいは離れたところでサイがゆっくり歩き出している。
追いかけるのをあきらめたのだろう。
サリナに逃げるように言ったのは簡単な理由だ。
走ってくるサイは見るからにでかくて、手元のアサルトライフルに入っている5.56mm弾では倒せそうになかったからだ。
もちろん、あんな物にぶつけられたらバギーは引っ繰り返るだろうし。
銃を持った戦いでは襲われない安全な距離を保つことが最も重要だ・・・だから迷宮なんかには行きたくないんだけど。
「サリナ、一度バギーを止めて」
バギーから降りた俺は、もう一度双眼鏡で距離を測る。
-475m
チャレンジするには丁度いいかもしれない。
サイはゆっくりとこちらに歩いてきている。
「ミーシャさん、周りから他の獣が来ないか見といてください」
「承知した」
背中を美人エルフに任せることにして、ストレージからマットと12.7mm弾の対物ライフル-バレットM82を取り出した。
この銃は1kmを超えるような長距離で狙撃できる銃だが、俺にはそこまでの腕は無い。
だが、この距離であれば威力が凄まじいはずだ。
イヤーバフを耳につけて、伏射の姿勢でマットの上に腹ばいになる。
二脚にしたバレットに頬をつけて、スコープの中でサイを捜す・・・、見つけた!
十字線をターゲットの額に重ねてトリガーを絞る。
- ズッギューーーーゥン!
荒野に轟音が鳴り響いたが外れた。上へ抜けたようだ。
音でサイが怒った、こっちへ走り出して来た。
- 落ち着け俺。
もう一度、スコープ内の十字線をさっきより下へ重ねて・・・
- ズッギューーーーゥン!
よっしゃアー!
サイの頭部から血と肉片が飛び散って横倒しになった。
ど真ん中だ! 最高に気持ち良い!
初めて大型ライフルで大物をしとめてご機嫌でマットから立ち上がり、銃をストレージに戻した。
「じゃあ、また東に向かって走ろうか」
「ちょっと待て。あのライナーはそのままにしていくのか?」
「ライナーって、今撃ったやつですか?」
「そうだ、おそらくクレイジーライナーだろう」
「置いて行くと、まずいんですか?」
「別にまずくは無いが・・・、お前は本当に何も知らないのだな。あいつの角は高く売れる。金貨100枚以上は絶対するはずだ、倒したヤツは何とかして持って帰るだろう」
- 金貨100枚・・・1000万円近いのかな?
「懸賞金とは別に角だけが売れるんですか?」
「そうだ、あの角は熱を下げる秘薬の元になる。他の魔獣の牙なども高く売れる物が多いのだが・・・今まで倒した魔獣から持って帰っては無いのか?」
「え、ええ、興味が無かったので」
「そ、そうなのか。お前は金には興味が無いのか?」
「そう言うわけでもないんですが、食べる物とか服は幾らでも出せるので」
「・・・ならば、あの角をライナーから切り離してやるから、売れた額の2割、いや1割でいいから私に報酬としてもらえないだろうか?」
- そうかミーシャさんはお金に余裕が無いんだったな。
「いいですよ、半額をミーシャさんの取り分にしてもらって。それとパーティー登録はしていませんが、今回倒した魔獣の懸賞金も三人で山分けにしましょう」
「なんだと?ありえない話だが、本当にそれで良いのか!?」
「ええ、問題ありませんよ。ところで、角って簡単に外せるんですか?」
「いや、少しは時間が必要だな。1時間ぐらいだろうか?」
「それは、ちょっと時間が掛かりすぎますね、ここでキャンプしてもいいけど・・、できれば夜までに迷宮の側にへ行きたいんですよ」
「・・・そうか、ならば仕方ないな。もったいないが今回はあきらめよう」
ミーシャは心底残念そうな顔をした。
「いえいえ、とりあえず私がライナーを預かっときますから、都合の良い時に角を取り外しましょう」
「?」
ストレージなら大きい物も預かり放題だ。
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