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Ⅰ-23 涙のサリナ
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■バーンの宿屋
俺は泣き続けるサリナに理由を聞いたが、まともに返事が出来ずに俺の足へしがみつきながら地面にうずくまった。
まずい、非常に嫌な展開だ。
しかし、振り払うことも出来ないし・・・
目の前には夢に見たエルフが・・・
「お前の連れ合いは一体どうしたのだ?」
「いや、僕にもわからなくて」
サリナを連れて食事は無理だし、でもエルフが・・・
-がんばれ俺!
「あの、こいつを連れて宿に行きたいんですが、良かったら宿まで一緒に来てくれませんか? その後で食事をご馳走しますので」
「ふん、別にそれでも構わんが、宿は取ってあるのか?」
「いえ、良い宿をご存知ですか?」
「いや、・・・宿にはあまり泊まってないからな」
-ん? ひょっとしてあんまりお金が無い?だから俺の誘いもあっさりと?
「じゃあ、一緒の宿にしませんか?宿代も私がご用意しますので」
「良いのか!? ・・・だが、何か変なことを企んでいるのでは・・・」
「いえいえ、部屋はこの娘と同じ部屋でも良いし、空いていれば別の部屋でもご希望で・・・、そういえばまだお名前を聞いていませんでした。僕はサトルです」
「私はミーシャだ。泊まったことは無いが、宿が何処にあるかは知っている。良ければ案内するぞ」
「お願いします」
-俺は頑張った! 褒めてやろう。
■バーンの宿屋
ミーシャが案内した宿屋は一部屋2ベッドで一泊銀貨1枚だった。
他に部屋は空いていなかったが、ミーシャは嫌がるそぶりも見せずに三人で一部屋に泊まることへ同意した。
宿のオッサンは意味深な笑みを浮かべていたが・・・
二階にある通りに面した部屋はレイジーの町よりも綺麗だった。
作り付けのテーブルも大きくて、壁に服を掛けるフックもついている。
俺は引きずるように連れてきたサリナをベッドに座らせて肩を抱いてやった。
まだ、大粒の涙をこぼしている。
-兄貴に何かあったのか・・・
落ち着かせるためにザックの中からコーラを出して渡してやる。
全然口にしないのでペットボトルの口を開けてからもう一度渡した。
「少し飲んだほうが良いよ、落ち着くから」
-グスッ、-グスン
鼻をすすりながらようやくコーラに口をつけた。
「で、何があったの」
「・・・に・・ちゃんが・・・ない・・って」
「お兄ちゃんがどうかしたの?」
「・・・迷宮に行ったまま、も、戻って来ない」
-迷宮? ダンジョン的なやつか?
「いつ、迷宮に行ったの?」
「に、二週間ぐらい前って・・・、団の人が・・・」
-それはマズイと言うか、生きてないんじゃ・・・
「迷宮はパーティーで行ったんじゃないの?全員戻って来てないの?」
「・・・」
サリナは黙って首を横に振った。
「一人で行ったの?」
「ち、違う、パーティーで二人だけお、置き去りにぃ、 ゥワアァーーン!」
又、俺の胸にすがり付いて泣き出した。
しかし、置き去りは酷いな・・・
「こいつの兄は戦士では無いのだな?」
黙って聞いていたミーシャが話に入ってきた。
「ええ、魔法士のはずです」
「じゃあ、逃げるときに道具にされたのだろう」
「道具?」
「ああ、勝てない魔獣が出てくると、弱いやつをエサにして逃げてくる。強いパーティーほどそう言う奴らが多いはずだ」
-エグイなぁ。絶対入るのやめとこう。
-しかし、サリナの兄貴はもう手遅れだろう。
「サリナ、せっかくここまで来たのに残念だったな・・・」
「お兄ちゃんは生きてるもん!!」
サリナは突然俺の胸から離れて叫んだ。
「でも、迷宮で2週間だろ・・・」
「絶対生きてるの!死んだらサリナには判るから・・・、でも早く助けに行かないと・・・旅団の人にお願いしたら、・・・もう死んでるって・・・笑われて・・・」
-鬼畜野郎だな、関係ない俺でも腹が立つ!
「サトルさん!!」
「ん?何?」
「お兄ちゃんを助けに行こう!」
-いや、『行こう』って、百歩譲って『行ってください』ちゃうんか?
「それは無理なんじゃないかな?」
「サトルさんなら大丈夫!! 絶対大丈夫!! 私が守ってあげる!!」
-ちゃうちゃう、『守ってもらう』の間違いやろ?
「迷宮は二人や三人ではたどり着くことさえ出来ないだろう」
「やっぱり危険なんですか?ミーシャさんは行ったことはあるんですか?」
「いや、私も無い。だが、行ったことのあるヤツと話をしたことがある。赤い旅団の縄張りにある迷宮はここから馬車で3日だ。途中に町も無いから野営が必要になるし、夜は交替で見張りも必要になる。旅団なら荷物運び含めて20名以上で行く場所だ」
「ほら、サリナ、やっぱり無理なんだって」
「でも、馬車で3日ならサトルさんなら3時間で着くし!、食べ物も沢山持ってるし!-ムグゥ――――!-」
「サリナちゃん、ちょっと黙ろうかな~。そういえば、ミーシャさんそろそろお腹すいたでしょう? こいつは置いて外に食事に行きませんか」
俺はサリナの口を塞いで、ミーシャに笑顔をむけた。
「・・・いや、3日が3時間? 食事より先にそっちを聞かせてもらえないだろうか?」
ミーシャが食いついたか・・・
はぁぁ、何でこうなるのかな、俺の異世界にヒーローとか勇者は要らないのに・・・
俺は泣き続けるサリナに理由を聞いたが、まともに返事が出来ずに俺の足へしがみつきながら地面にうずくまった。
まずい、非常に嫌な展開だ。
しかし、振り払うことも出来ないし・・・
目の前には夢に見たエルフが・・・
「お前の連れ合いは一体どうしたのだ?」
「いや、僕にもわからなくて」
サリナを連れて食事は無理だし、でもエルフが・・・
-がんばれ俺!
「あの、こいつを連れて宿に行きたいんですが、良かったら宿まで一緒に来てくれませんか? その後で食事をご馳走しますので」
「ふん、別にそれでも構わんが、宿は取ってあるのか?」
「いえ、良い宿をご存知ですか?」
「いや、・・・宿にはあまり泊まってないからな」
-ん? ひょっとしてあんまりお金が無い?だから俺の誘いもあっさりと?
「じゃあ、一緒の宿にしませんか?宿代も私がご用意しますので」
「良いのか!? ・・・だが、何か変なことを企んでいるのでは・・・」
「いえいえ、部屋はこの娘と同じ部屋でも良いし、空いていれば別の部屋でもご希望で・・・、そういえばまだお名前を聞いていませんでした。僕はサトルです」
「私はミーシャだ。泊まったことは無いが、宿が何処にあるかは知っている。良ければ案内するぞ」
「お願いします」
-俺は頑張った! 褒めてやろう。
■バーンの宿屋
ミーシャが案内した宿屋は一部屋2ベッドで一泊銀貨1枚だった。
他に部屋は空いていなかったが、ミーシャは嫌がるそぶりも見せずに三人で一部屋に泊まることへ同意した。
宿のオッサンは意味深な笑みを浮かべていたが・・・
二階にある通りに面した部屋はレイジーの町よりも綺麗だった。
作り付けのテーブルも大きくて、壁に服を掛けるフックもついている。
俺は引きずるように連れてきたサリナをベッドに座らせて肩を抱いてやった。
まだ、大粒の涙をこぼしている。
-兄貴に何かあったのか・・・
落ち着かせるためにザックの中からコーラを出して渡してやる。
全然口にしないのでペットボトルの口を開けてからもう一度渡した。
「少し飲んだほうが良いよ、落ち着くから」
-グスッ、-グスン
鼻をすすりながらようやくコーラに口をつけた。
「で、何があったの」
「・・・に・・ちゃんが・・・ない・・って」
「お兄ちゃんがどうかしたの?」
「・・・迷宮に行ったまま、も、戻って来ない」
-迷宮? ダンジョン的なやつか?
「いつ、迷宮に行ったの?」
「に、二週間ぐらい前って・・・、団の人が・・・」
-それはマズイと言うか、生きてないんじゃ・・・
「迷宮はパーティーで行ったんじゃないの?全員戻って来てないの?」
「・・・」
サリナは黙って首を横に振った。
「一人で行ったの?」
「ち、違う、パーティーで二人だけお、置き去りにぃ、 ゥワアァーーン!」
又、俺の胸にすがり付いて泣き出した。
しかし、置き去りは酷いな・・・
「こいつの兄は戦士では無いのだな?」
黙って聞いていたミーシャが話に入ってきた。
「ええ、魔法士のはずです」
「じゃあ、逃げるときに道具にされたのだろう」
「道具?」
「ああ、勝てない魔獣が出てくると、弱いやつをエサにして逃げてくる。強いパーティーほどそう言う奴らが多いはずだ」
-エグイなぁ。絶対入るのやめとこう。
-しかし、サリナの兄貴はもう手遅れだろう。
「サリナ、せっかくここまで来たのに残念だったな・・・」
「お兄ちゃんは生きてるもん!!」
サリナは突然俺の胸から離れて叫んだ。
「でも、迷宮で2週間だろ・・・」
「絶対生きてるの!死んだらサリナには判るから・・・、でも早く助けに行かないと・・・旅団の人にお願いしたら、・・・もう死んでるって・・・笑われて・・・」
-鬼畜野郎だな、関係ない俺でも腹が立つ!
「サトルさん!!」
「ん?何?」
「お兄ちゃんを助けに行こう!」
-いや、『行こう』って、百歩譲って『行ってください』ちゃうんか?
「それは無理なんじゃないかな?」
「サトルさんなら大丈夫!! 絶対大丈夫!! 私が守ってあげる!!」
-ちゃうちゃう、『守ってもらう』の間違いやろ?
「迷宮は二人や三人ではたどり着くことさえ出来ないだろう」
「やっぱり危険なんですか?ミーシャさんは行ったことはあるんですか?」
「いや、私も無い。だが、行ったことのあるヤツと話をしたことがある。赤い旅団の縄張りにある迷宮はここから馬車で3日だ。途中に町も無いから野営が必要になるし、夜は交替で見張りも必要になる。旅団なら荷物運び含めて20名以上で行く場所だ」
「ほら、サリナ、やっぱり無理なんだって」
「でも、馬車で3日ならサトルさんなら3時間で着くし!、食べ物も沢山持ってるし!-ムグゥ――――!-」
「サリナちゃん、ちょっと黙ろうかな~。そういえば、ミーシャさんそろそろお腹すいたでしょう? こいつは置いて外に食事に行きませんか」
俺はサリナの口を塞いで、ミーシャに笑顔をむけた。
「・・・いや、3日が3時間? 食事より先にそっちを聞かせてもらえないだろうか?」
ミーシャが食いついたか・・・
はぁぁ、何でこうなるのかな、俺の異世界にヒーローとか勇者は要らないのに・・・
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