上 下
21 / 343

Ⅰ-21 バーンのギルド

しおりを挟む
■バーンの町

シグマからバーンの間は馬車の中に乗ってきた。
残念ながら狩りの成果は無い。
銃を持ち替えるのが面倒だったので、ショットガンとサブマシンガンで追い払うだけにしたからだ。
散弾を浴びると流石に逃げて行ってくれるが、虎相手では致命傷になら無いようだ。
サブマシンガンの4.6mm弾も頭部に当たれば倒せるがクリーンヒットは難しい。
それでもバンバン撃てたので個人的には満足した。

馬車の中にいたランディとサリナにもイヤーマフを付けさせたが、音、匂い、飛び散る薬きょうで俺が銃を使い出すと二人とも硬直していた。
それでも、サリナは懸命に床に散らばる薬きょうを拾い集めてザックに入れてくれた。

そして今、目の前にバーンの町が見えている。
バーンは見るからにデカイ町だった。

今までの町の10倍、いや20倍ぐらいあるかもしれない。
この町にも3階建て相当の城壁があり堀で囲まれている。
つり橋の外側に兵士小屋があって、そこで入市税等を徴収しているようだ。
ここの兵士も全員獣人だが、エドウィンで見た獣人と種類もサイズも違う。
身長は2メートルを超えている。
種類はバラバラだ、モフモフ系じゃないのもいる。
爬虫類系? トカゲ系? 毛が無くてうろこで顔が覆われて、口が尖っている。
モフモフ系も猿っぽいのじゃなくて、狼? 犬? に近い顔立ちが多い。

これは確かに普通の人間が戦士になっても勝てないだろう。
リッグスの魔法剣みたいな武術を覚えないと素手で殺されそうだ。
極力近づかないようにしたい。

馬車に乗ったまま町へ入った俺達はそのまま町役場の前まで進んだ。
馬車から降りた俺達を、正確にはランディを大勢のオッサン達が取り囲み役場の中へ連れて行った。
ランディは俺に礼を言っていたようだが、俺は軽く頷くだけで別れた。

「助かったぜ、しかしお前の・・・魔法道具? すごいな! 離れた相手を倒せるなら凄い魔法だぞ!」

「そうですね、ですけど出来るだけ内緒にして置いてください」

「そうなのか? 判った。命の恩人のいう事だから約束しよう。それで、お前達はこれからどうするんだ?」

「とりあえずギルドに行って、情報を集めるつもりです。ランディさんはどうするんですか?」

「俺もギルドに行くつもりだ、一緒に行くか?」

「ええ、お願いします」

一緒に行けば何かと教えてもらえることがあるだろう。
俺は護衛料として金貨5枚をリッグスから受け取ってギルドへ向かった。


■バーンのギルド

想像通りギルドの建物もでかかった、隣にある教会もでかかったが、ギルドは中に入ると途中の柱で向こうの壁が見えない大きさのホールになっている。
両側の壁にカウンターがあって食事が出されていて、巨大ショッピングモールのフードコートのようだ。

しかし、ここには役所のようなカウンターが無い・・・
1階のホールで他にも気づいたことがあった。

集団が色分けされている。
集まっている奴らが3つの色に分かれているのだ、赤、白、緑。
いずれかの色が着いたバンダナのような物を頭や肩、首に巻いている。
これがチーム制なのだろう。
そして色に応じて獣人の種類が固まっているようだ。
いわゆる普通の人はここでは少数派のようだ、各チームにパラパラいるが比率では1割ぐらいだ。

俺はいやな予感がした。
この手のチーム制なら縄張り争いや諍いがあるだろう。
巻き込まれたくない、そのためには目立たないようにしなければ。

「上の階に行けば、倒した魔獣の懸賞金がもらえるぜ、それとこの辺りの仕事や求人も張ってあるから見に行くといい。おれは、知り合いがいるはずだからちょっと探してくる。また機会があったら助けてくれ、助かったぜ。又な」

「こちらこそ、又よろしくお願いします」

まずは情報収集からだ。
サリナを連れて二階に上がった。
二階に役所のようなカウンターはあったが、他の町と違って衝立があるセパレートな受付になっている。
お姉さんが何人か座っているが木の格子の向こう側に顔がある。
行った事は無いが刑務所の面会室みたいな感じ?

一番タイプのほっそりした美人を目指して声を掛けた。

「換金と教えて欲しいことがいくつかあるんですけど、良いですか」

「どうぞ、お座りください」

美人はそっけなかった。

「まずは、これを・・・」

既に橙色に変った組合員証をお姉さんに見せた。

「これは・・・お一人でこれだけを?」

ちょっと驚いている。

「いえ、仲間もいますよ」

「ですが、パーティー登録をされていませんよね?」

-パーティー登録? ここに来て初めて聞くな。

「・・・、ええ登録はまだです。何か問題が?」

「問題? いえ・・問題では無いですが懸賞を分配する時にトラブルになるのではと」

-???

「えーっと、具体的にはどうすればパーティー登録できるんでしたっけ?」

「ひょっとして初心者の?・・・、でもこの数は・・・」

お姉さんは実績と俺の知識にギャップがありすぎて、処理が追いついていない。
どうやらパーティー登録というのも基本知識のようだ。

「では、最初からご説明します。パーティーはリーダーがギルドにメンバー名と懸賞の配分を登録します。そうすると懸賞はあらかじめ決められた通りの受け取りになりますので、後で懸賞金をめぐる争いがおこらないようになります」

「誰でもリーダーになれるのですか?」

「パーティーに所属して居ない人だったら、どなたでもリーダーになれます。それから、このギルドではパーティー単位で登録できる『旅団』というのもあります。旅団に登録すると会費が必要になっていきますが、旅団単位で獲得した懸賞の配分も事前に決められた通りに支払われます」

「旅団の会費って幾らぐらいなんですか?」

「それは旅団独自に決めることができるので、旅団と人によっても違うようですがギルドは直接関与していません」

「その旅団って言うのは、やっぱり3つですか?」

「はい、1階で色分けをご覧になったのですね。現在ある旅団は『赤の獣爪団じゅうそうだん』、「白の刃牙団ばきだん」そして、『緑の堅鱗団けんろうだん』です」

「なんで、バーンにはこんな旅団があるんですか?」

「それは・・・、出来るだけ諍いを減らそうとギルドマスターが縄張りを整理されたからです。以前も獣人ごとの集まりはありましたが、無秩序に魔獣退治を行っていたので揉め事が絶えませんでした。マスターは三つのチームにエリアを与える代わりに旅団ごとに統制を取るように交渉されたのです」

-暴力団の抗争を縄張りで整理した? ヤクザ映画の世界か?
-新入りが狩りをするためには・・・

「じゃあ、ここで魔獣討伐をするにはどこかの旅団に入らないと駄目なんでしょうか?」

「駄目と言うわけではありませんが、旅団以外が入って良い場所はこの町の周りと、誰も行かない未開地のいずれかですから」

「未開地? それはどこなんでしょうか?」

「・・・駄目ですよ! 旅団単位で行ってもたどり着けないぐらいの魔獣が出てきますから!旅団に入って居ない人が行けば絶対生きて帰ってこれません!」

-意外と心配してくれているのか。

「いえいえ、間違って行かないようにしないといけないでしょ」

「それはそうですねぇ。この辺りの地図はお持ちでは無いのですか?」

「持ってないです、どこで買えるのでしょうか?」

「ギルドでテリトリーを示した地図を売っています。それと魔獣の解説書もお持ちでは無いのですか?」

「ええ、どちらも持っていません。両方売って下さい」

「よくそれで、ここまで・・・。地図は銀貨5枚で、魔獣解説書は金貨1枚とどちらも高額ですけどよろしいですか?」

「ええ、お願いします」

-既に金貨40枚近くを持っているから何の問題も無い。
-日本円なら、金貨1枚が10万円、銀貨が1万円ぐらいだろう。

俺は美人のお姉さんから地図と魔獣解説書をゲットした。
地図は丈夫な紙で新聞紙を開いたぐらいの大きさだ、魔獣解説書は同じ丈夫な紙が5cmぐらい重ねられたものが紐で縛ってあるだけだった。

持ち歩くのは不自由だからどちらも写真で取り込んでスマホかタブレットで見るようにしよう。

それよりも問題は旅団だ。
入る必要があるのか?
損得を良く考えなければ・・・
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

おおぅ、神よ……ここからってマジですか?

夢限
ファンタジー
 俺こと高良雄星は39歳の一見すると普通の日本人だったが、実際は違った。  人見知りやトラウマなどが原因で、友人も恋人もいない、孤独だった。  そんな俺は、突如病に倒れ死亡。  次に気が付いたときそこには神様がいた。  どうやら、異世界転生ができるらしい。  よーし、今度こそまっとうに生きてやるぞー。  ……なんて、思っていた時が、ありました。  なんで、奴隷スタートなんだよ。  最底辺過ぎる。  そんな俺の新たな人生が始まったわけだが、問題があった。  それは、新たな俺には名前がない。  そこで、知っている人に聞きに行ったり、復讐したり。  それから、旅に出て生涯の友と出会い、恩を返したりと。  まぁ、いろいろやってみようと思う。  これは、そんな俺の新たな人生の物語だ。

とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

1枚の金貨から変わる俺の異世界生活。26個の神の奇跡は俺をチート野郎にしてくれるはず‼

ベルピー
ファンタジー
この世界は5歳で全ての住民が神より神の祝福を得られる。そんな中、カインが授かった祝福は『アルファベット』という見た事も聞いた事もない祝福だった。 祝福を授かった時に現れる光は前代未聞の虹色⁉周りから多いに期待されるが、期待とは裏腹に、どんな祝福かもわからないまま、5年間を何事もなく過ごした。 10歳で冒険者になった時には、『無能の祝福』と呼ばれるようになった。 『無能の祝福』、『最低な能力値』、『最低な成長率』・・・ そんな中、カインは腐る事なく日々冒険者としてできる事を毎日こなしていた。 『おつかいクエスト』、『街の清掃』、『薬草採取』、『荷物持ち』、カインのできる内容は日銭を稼ぐだけで精一杯だったが、そんな時に1枚の金貨を手に入れたカインはそこから人生が変わった。 教会で1枚の金貨を寄付した事が始まりだった。前世の記憶を取り戻したカインは、神の奇跡を手に入れる為にお金を稼ぐ。お金を稼ぐ。お金を稼ぐ。 『戦闘民族君』、『未来の猫ロボット君』、『美少女戦士君』、『天空の城ラ君』、『風の谷君』などなど、様々な神の奇跡を手に入れる為、カインの冒険が始まった。

処理中です...