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Ⅰ-18 初めての同衾
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■レイジーの宿
リッグスの魔法剣は明日の朝見せてもらうことになった。
この世界の夜はほとんど照明がないからしかたないだろう。
ライトぐらい出せるが手の内は出来るだけ晒さないようにしたい。
ギルドホールから真っ直ぐ宿に戻って来た。
部屋に入ると微妙な緊張感を俺もサリナも持っているが・・・、まずは夕食だ。
ギルドホールでも焼き鳥や良く判らない炒め物が並んでいたが、全く手をつけなかった。
酒を・・・、この世界では水を飲まないようだ、気の抜けたビール-おそらくエール-のようなものを出されたが、舐めてみたものの全く美味くなかった。
と言うことで、今日の夕食はピザにした。
フライドポテト、サラダ、から揚げもつけてみる。
サリナに飲み物の希望聞くと『黒いの』と言ったので500mlのコーラを出してやると嬉しそうに半分ぐらい飲んだ。
「サトルさん、この黄色いのは匂いがしますけど何の匂いですか?」
「それはチーズの匂いだね、牛の乳を加工したものだよ」
「???」
「食べれば判るよ」
切り目から手で取り外して食べる見本を見せた。
サリナは直ぐに真似をして、口の周りにチーズをつけたまま半分ぐらいで食いちぎった。
現世の女子には無い豪快な食いっぷりだ。
「・・・美味しいです! 初めて食べる味ですけど、柔らかいのに凄い!」
ピザも気に入ってくれたようだ。
食べている時はいつも喜んでいて、本当に可愛らしい。
俺はウェットティッシュを渡してやり、口の周りを拭くように言った。
「この紙は何で濡れているのですか?」
-そこからかよ!
「濡れてる方が汚れをとりやすいだろ」
「・・・! なるほど!」
「ところで、リッグスの治療だけど、本当に凄かったね」
「はい! サトルさんのおかげです。これでもうバカにされなくて済みます!」
-バカにされてたのか?
「やっぱり、千切れた手ぐらいならくっつけられるの?」
「はい! 絶対大丈夫です! 足でも大丈夫です!」
足と手の違いはわからないが、本人には手応えがあったようだ。
「そもそも、魔法は誰に教えてもらうの?」
「魔法は・・・、親とか教会とか、後は・・・」
「サリナは誰に教わったの、お母さん?」
「・・・」
-言いたくないのか、そういえばお母さんは居ないって・・・
「炎の魔法はどうやったら使えるようになるんだろう」
「それが・・・おかしいんです!」
「何が?」
「私ぐらいの魔法力があれば絶対にもっと使えるはずなんです!」
-何の根拠があるかも判らないが、魔法力には絶対の自信があるようだな。
「じゃあ、サリナに教えてくれる人を探さないといけないね」
「そうなんですけど・・・」
「お兄さんは教えてくれないの?」
「・・・」
-どうも、隠し事が多いな。
「言いたくないなら別に良いよ、今夜は長いし、ベッドでゆっくり聞かせてもらうからね」
「・・・、優しくしてください」
ひょっとすると今夜はマジで・・・
夕食を終えた俺はごみを片付けてストレージでシャワーを浴びた。
今日は全身を念入りに洗って、髪を乾かした後に使ったことの無いコロンを振りかけてみた。
サリナにはストレージに入る前に、少し消えるけど心配しないようにと念押しもしてある。
全ての用意が整った俺は、シルクのパジャマに着替えて宿の部屋へ戻った。
今夜は初体験を・・・、しないことに決めていた。
シャワーを浴びながら考えたが面倒くさそうだ。
もちろん相手が15歳のちびっ娘と言うこともあるけど・・・
サリナはベッドの上で枕を抱えて座っていた。
俺が戻ると安心したようで肩の力が抜けていく。
-俺の『酷いこと』よりも一人が嫌なのか?
俺は部屋のランプを消して真っ暗にしてからサリナのベッドで横になった。
サリナの太ももを枕にしてだ。
俺の頭が乗った時はビクっとしていたが、その後はじっとしている。
見上げるとサリナの顔が・・・見えずに大きな胸を下から見上げることになった。
そのまま話しかける。
「サリナは家族のことを話したくないのかな?」
「そう言う訳では無いです・・・」
「お母さんは小さいころに亡くなったの?」
「・・・生きていると思います」
「そうなの!? 今は何処にいるのかな?」
「火の国にいるはずです」
-魔法が強い国?だったか。離婚でもしたのか?
「お父さんはどうしてるの?」
「わかりません。・・・お兄ちゃんは教えてくれませんでした」
-今度は俺が???だな。
「お兄ちゃんとサリナはエドウィンで生まれたの?」
「私たちは・・・火の国の生まれです」
-で、お母さんだけが火の国にまだいると・・・
「そうか、じゃあ、いつか火の国に行きたいのかな?」
「それは・・・、お兄ちゃんが絶対ダメだって」
-これ以上聞くにはお兄ちゃん同伴じゃないと無理だな。
「ふーん、判った。そろそろ寝ようか? 本当に一緒に寝るのが良いの? 俺は向こうのベッドでも良いよ」
「・・・一緒がいいです。でも、優しく・・・」
「先に行っとくけど、何もしないからね。後で『根性なし』とか言わないでよ」
「?」
俺は隣のベッドから枕を取ってきてから、掛け布団をめくり上げて中に入った。
手を引っ張って布団の中に入れて添い寝させる。
サリナの頭が俺の右上腕二頭筋と脇の辺りに収まった。
人生で初めて経験する『腕枕』というやつだ。
シャンプーの匂いと吐息から伝わる体温が俺の鼻腔をくすぐる。
お互いの心臓の音が感じられる。
少し身を硬くしているがサリナは頭を俺の腕に乗せて・・・寝てる!?
-マジっすか?
身を硬くしていると思ったのは勘違いだった、スヤスヤと寝息を立てる子供が拳を握っているだけだ・・・、さすがに寝つき良すぎだろう!!
俺だけなのか?
緊張していたのは?
リッグスの魔法剣は明日の朝見せてもらうことになった。
この世界の夜はほとんど照明がないからしかたないだろう。
ライトぐらい出せるが手の内は出来るだけ晒さないようにしたい。
ギルドホールから真っ直ぐ宿に戻って来た。
部屋に入ると微妙な緊張感を俺もサリナも持っているが・・・、まずは夕食だ。
ギルドホールでも焼き鳥や良く判らない炒め物が並んでいたが、全く手をつけなかった。
酒を・・・、この世界では水を飲まないようだ、気の抜けたビール-おそらくエール-のようなものを出されたが、舐めてみたものの全く美味くなかった。
と言うことで、今日の夕食はピザにした。
フライドポテト、サラダ、から揚げもつけてみる。
サリナに飲み物の希望聞くと『黒いの』と言ったので500mlのコーラを出してやると嬉しそうに半分ぐらい飲んだ。
「サトルさん、この黄色いのは匂いがしますけど何の匂いですか?」
「それはチーズの匂いだね、牛の乳を加工したものだよ」
「???」
「食べれば判るよ」
切り目から手で取り外して食べる見本を見せた。
サリナは直ぐに真似をして、口の周りにチーズをつけたまま半分ぐらいで食いちぎった。
現世の女子には無い豪快な食いっぷりだ。
「・・・美味しいです! 初めて食べる味ですけど、柔らかいのに凄い!」
ピザも気に入ってくれたようだ。
食べている時はいつも喜んでいて、本当に可愛らしい。
俺はウェットティッシュを渡してやり、口の周りを拭くように言った。
「この紙は何で濡れているのですか?」
-そこからかよ!
「濡れてる方が汚れをとりやすいだろ」
「・・・! なるほど!」
「ところで、リッグスの治療だけど、本当に凄かったね」
「はい! サトルさんのおかげです。これでもうバカにされなくて済みます!」
-バカにされてたのか?
「やっぱり、千切れた手ぐらいならくっつけられるの?」
「はい! 絶対大丈夫です! 足でも大丈夫です!」
足と手の違いはわからないが、本人には手応えがあったようだ。
「そもそも、魔法は誰に教えてもらうの?」
「魔法は・・・、親とか教会とか、後は・・・」
「サリナは誰に教わったの、お母さん?」
「・・・」
-言いたくないのか、そういえばお母さんは居ないって・・・
「炎の魔法はどうやったら使えるようになるんだろう」
「それが・・・おかしいんです!」
「何が?」
「私ぐらいの魔法力があれば絶対にもっと使えるはずなんです!」
-何の根拠があるかも判らないが、魔法力には絶対の自信があるようだな。
「じゃあ、サリナに教えてくれる人を探さないといけないね」
「そうなんですけど・・・」
「お兄さんは教えてくれないの?」
「・・・」
-どうも、隠し事が多いな。
「言いたくないなら別に良いよ、今夜は長いし、ベッドでゆっくり聞かせてもらうからね」
「・・・、優しくしてください」
ひょっとすると今夜はマジで・・・
夕食を終えた俺はごみを片付けてストレージでシャワーを浴びた。
今日は全身を念入りに洗って、髪を乾かした後に使ったことの無いコロンを振りかけてみた。
サリナにはストレージに入る前に、少し消えるけど心配しないようにと念押しもしてある。
全ての用意が整った俺は、シルクのパジャマに着替えて宿の部屋へ戻った。
今夜は初体験を・・・、しないことに決めていた。
シャワーを浴びながら考えたが面倒くさそうだ。
もちろん相手が15歳のちびっ娘と言うこともあるけど・・・
サリナはベッドの上で枕を抱えて座っていた。
俺が戻ると安心したようで肩の力が抜けていく。
-俺の『酷いこと』よりも一人が嫌なのか?
俺は部屋のランプを消して真っ暗にしてからサリナのベッドで横になった。
サリナの太ももを枕にしてだ。
俺の頭が乗った時はビクっとしていたが、その後はじっとしている。
見上げるとサリナの顔が・・・見えずに大きな胸を下から見上げることになった。
そのまま話しかける。
「サリナは家族のことを話したくないのかな?」
「そう言う訳では無いです・・・」
「お母さんは小さいころに亡くなったの?」
「・・・生きていると思います」
「そうなの!? 今は何処にいるのかな?」
「火の国にいるはずです」
-魔法が強い国?だったか。離婚でもしたのか?
「お父さんはどうしてるの?」
「わかりません。・・・お兄ちゃんは教えてくれませんでした」
-今度は俺が???だな。
「お兄ちゃんとサリナはエドウィンで生まれたの?」
「私たちは・・・火の国の生まれです」
-で、お母さんだけが火の国にまだいると・・・
「そうか、じゃあ、いつか火の国に行きたいのかな?」
「それは・・・、お兄ちゃんが絶対ダメだって」
-これ以上聞くにはお兄ちゃん同伴じゃないと無理だな。
「ふーん、判った。そろそろ寝ようか? 本当に一緒に寝るのが良いの? 俺は向こうのベッドでも良いよ」
「・・・一緒がいいです。でも、優しく・・・」
「先に行っとくけど、何もしないからね。後で『根性なし』とか言わないでよ」
「?」
俺は隣のベッドから枕を取ってきてから、掛け布団をめくり上げて中に入った。
手を引っ張って布団の中に入れて添い寝させる。
サリナの頭が俺の右上腕二頭筋と脇の辺りに収まった。
人生で初めて経験する『腕枕』というやつだ。
シャンプーの匂いと吐息から伝わる体温が俺の鼻腔をくすぐる。
お互いの心臓の音が感じられる。
少し身を硬くしているがサリナは頭を俺の腕に乗せて・・・寝てる!?
-マジっすか?
身を硬くしていると思ったのは勘違いだった、スヤスヤと寝息を立てる子供が拳を握っているだけだ・・・、さすがに寝つき良すぎだろう!!
俺だけなのか?
緊張していたのは?
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