異世界へ全てを持っていく少年- 快適なモンスターハントのはずが、いつの間にか勇者に取り込まれそうな感じです。この先どうなるの?

初老の妄想

文字の大きさ
上 下
7 / 343

Ⅰ-7 売られる少女

しおりを挟む
■エドウィンの町

「売られるって言うのは、サリナちゃんが?」

「はい、今は兄の知り合いの家にいるんですけど、兄がその人達からお金を借りていて、でも、兄と連絡が取れなくなったから・・・。返済の代わりに私を奴隷商人に売るって昨日家で話しているのを聞いちゃったんです。だ、だから・・・」

-ワチャー、泣いちゃったよ。どうすんの俺。
-こういうのは俺の異世界には必要ないんだよな~。
-でも、無視する度胸も無い。

「で、俺について行きたいって言うけど、俺が奴隷商人より酷いことしたらどうするの?」

「そんな酷いことするんですか?」

-いや、しないけどね。
-男は信じちゃダメでしょ。

「それは、わからないだろ?」

「大丈夫だと思います」

-だから、下から見上げんなっちゅうのに。
-ま、良いか。なんかあっても俺のせいじゃないし。

「じゃぁ、狼のいるところで野宿でもいいなら、ついてきて良いよ」

「はい、守ってくれるんですよね?」

-いや、俺は一人でストレージに・・・とは言えんか。

二人で町を出る頃には外は既に暗闇になっていた。

俺はストレージからフラッシュライトを2本取り出し、1本を点けてやってからサリナに渡した。

「凄い!これは、何の魔法なんですか!?」

-何でも食いつくな。

「これはね、光の魔法道具。ここを押すとついたり消えたりする」

「ウワ! 本当だ! 私にも光魔法が使えた!」

-違うっちゅうねん。それは乾電池様の力や。

俺は普段は使わないが、一緒にいる不思議ちゃんに耐えかねて、子供の頃使っていた関西弁を使って心の中でも突っ込み出した。
何でも魔法だと思う不思議ちゃんだが、売られる少女が少し明るくなってくれたなら良いことだと思うことにする。
女子を喜ばせた経験なんてないけど、これが異世界効果なのか?

俺は昨日狼を狩った場所から1kmぐらい離れた場所まで二人で歩いていった。
手元の時計では19時20分だ。

ストレージからマット、テント、寝袋、ランタン等を取り出した。
先に寝られる場所を作っておくつもりだった。

サリナにも手伝わせて設営したが30分以上掛った。
腹が減ってきたのを無視して先に罠を仕掛けに行くことにした。
狼を生け捕りにしてサリナに試して欲しいことがあるからだ。

昨日のうちに調べていた『くくり罠』をテントの200メートル程風上に5つ仕掛けておく。
エサの生肉は1kgをわなの中心部に3つ置いておく。
この準備には小一時間掛った。

「今のは何をしたんですか?」

「狼を捕まえる罠を仕掛けた、とりあえずテントに入って待ってて」

「・・・やっぱり、酷いことを・・・」

サリナは唇をかみ締めながら俺を見上げた。

「何もしないって! そこから狼が来るのを待つだけ! お腹すいただろう、これ上げるからテントの中で食べて良いよ」

何が気に入るかわからなかったが、ビーフジャーキーとミネラルウオーターを出しておく。

「?」

そうか、どっちも開け方が判らないのか。
俺が自分のペットボトルを開けて飲んで見せた。
サリナはちょっとてこずったが自分で開けて、一人で飲めるようになった。

「これも魔法ですか!?」

-それも飲料メーカーさんの力ですわ。

ジャーキーを食べさせてやると気に入ったようだ、こんな美味しい干し肉は食べたことないと騒ぎ出した。
静かにするように諌めて、俺も水とジャーキーをかじりながら獲物を待つことにした。
予想よりも早い30分後に獲物が暗視装置の中に現れた。

2匹いたが、エサの周りをぐるぐる回っている。

-罠に気づいたのか?

-キャンッ! ウォーン、ウォゥッ!!

そう思ったとたんに一匹が罠に掛ってくれた。

「いくぞ、ところでサリナは動物の治療もできるよな?」

「はい、足をくじいた猫を治療したことがあります」

それなら良かった、だったら動物愛護団体に叱られることをしてもらおう。
しおりを挟む
感想 43

あなたにおすすめの小説

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

クラス召喚に巻き込まれてしまいました…… ~隣のクラスがクラス召喚されたけど俺は別のクラスなのでお呼びじゃないみたいです~

はなとすず
ファンタジー
俺は佐藤 響(さとう ひびき)だ。今年、高校一年になって高校生活を楽しんでいる。 俺が通う高校はクラスが4クラスある。俺はその中で2組だ。高校には仲のいい友達もいないしもしかしたらこのままボッチかもしれない……コミュニケーション能力ゼロだからな。 ある日の昼休み……高校で事は起こった。 俺はたまたま、隣のクラス…1組に行くと突然教室の床に白く光る模様が現れ、その場にいた1組の生徒とたまたま教室にいた俺は異世界に召喚されてしまった。 しかも、召喚した人のは1組だけで違うクラスの俺はお呼びじゃないらしい。だから俺は、一人で異世界を旅することにした。 ……この物語は一人旅を楽しむ俺の物語……のはずなんだけどなぁ……色々、トラブルに巻き込まれながら俺は異世界生活を謳歌します!

スキル【縫う】で無双します! 〜ハズレスキルと言われたけれど、努力で当たりにしてみます〜

藤花スイ
ファンタジー
コルドバ村のセネカは英雄に憧れるお転婆娘だ。 幼馴染と共に育ち、両親のように強くなることが夢だった。 けれど、十歳の時にセネカが授かったのは【縫う】という非戦闘系の地味なスキルだった。 一方、幼馴染のルキウスは破格のスキル【神聖魔法】を得て、王都の教会へと旅立つことに⋯⋯。 「お前、【縫う】なんていうハズレスキルなのに、まだ冒険者になるつもりなのか?」 失意の中で、心無い言葉が胸に突き刺さる。 だけど、セネカは挫けない。 自分を信じてひたすら努力を重ねる。 布や革はもちろん、いつしか何だって縫えるようになると信じて。 セネカは挫折を乗り越え、挑戦を続けながら仲間を増やしてゆく。 大切なものを守る強さを手に入れるために、ひたむきに走り続ける。 いつか幼馴染と冒険に出る日を心に描きながら⋯⋯。 「私のスキルは【縫う】。  ハズレだと言われたけれど、努力で当たりにしてきた」 これは、逆境を乗り越え、スキルを磨き続けた少女が英雄への道を切り拓く物語!

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...