努力の末に帝国で最強になった魔剣使い、皇女を護るために落ちこぼれクラスの教師になる ~魔剣学院の千の剣帝【サウザンド・ブレイバー】~

ぽてさら

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第一章 千の剣帝、ゼロクラスの教師となる

第25話 ハルトVS『影』 ①

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 暗殺者の凶刃が疾くハルトに襲い掛かり、同時に数匹のハウンドウルフがリーリアに向けて跳び掛かる。


「リーリア、死ぬなよ……っ!」
「ふんっ、貴方こそ!」


 そう言うと共にハルトとリーリアは敵のもとへ駆け出す。


『―――!』
「ふっ……!」


 ハルトは迫り来る暗殺者へ魔剣精シャルロットを勢い良くも端厳たんげんに抜剣。その振り抜かれた一刃は暗殺者の上半身を掬い上げるように切り裂くかと思われたが、緩やかに影を残してハルトの視界からは消えていた。

 次の瞬間、ハルトの背後斜め右から僅かな魔力の気配を察知。その方向へと鋭く踏み込みながら斬りつけると、一際甲高い金属音が鳴り響いた。

 ギャリギャリギャリィッッッ!!!と熾烈に火花が散る。


「へぇ、魔力隠すの上手いじゃん。それどこで習ったんだ?」
『ふん、我の存在を見破った癖に良く言う……っ!』
あのとき・・・・の殺気と同じだからかなぁっ!」


 刃がぶつかり合い両者の視線が交わる。暗殺者のその琥珀色の瞳には冷たい光が宿っていた。

 ハルトが言う”あのとき”というのはハルトがクリスティアらと同行中、ローリエと会話している最中のこと。
 この暗殺者が現在進行形で発している殺気とあのときの気配はとても酷似していた。

 魔剣使いで魔力に精通した卓越した玄人レベルにもなると、己の存在―――つまり『個』を完全に消失できるほど魔力を意のままに操ることが出来る。

 刃を交えるこの暗殺者は、おそらくその域に至っているのだろう。先程の攻撃の瞬間、気配と魔力の存在が極限にまで薄まったのがその証拠だ。


「……いいねぇ」
『―――――――――ッ!』
「うおっとぉ!」


 静かなれど激しい拮抗が続くかと思われたが、動き出したのは暗殺者。素早く刃を滑らせるとハルトの手首を掴み、前方向に引っ張りながらハルトの体勢を崩した。
 魔剣精シャルロットの長剣と比べて、暗殺者が持つ魔剣のリーチの短さを活かした体術。

ハルトは地面に転がりながらも上手く受け身をとりつつ立ち上がる。周囲を見渡すが、数匹のハウンドウルフと戦っているリーリア以外見当たらない。

 刹那、ハルトの頭上から殺意が降りかかる。見上げると、そこには二振りの魔剣を構えた暗殺者の姿。


「バレバレだっつの!!」
『―――』


 ハルトは白銀に煌めく刃を振り抜くが、空振り。またもや暗殺者の存在は消えていた。だがハルトが視線を前に向けると、そこには静かに暗殺者が佇んでいた。

 まさにその一刃一刃が必殺。正面切ってハルトと渡り合うのではなく、足音や気配を沈めて手数の多いナイフ形魔剣を武器に背後をとるその戦闘方法はやはり暗殺者らしい。

 暗殺者は作られた声音で声を紡ぐ。


『チッ、やはりこちらを認識しているのはまぐれではないようだな。……貴様、いったい何者だ?』
「ども、最強の魔剣使いでっす。てへ☆」
『……不山戯ふざけた男だ』


 ハルトがそう答えると、暗殺者の殺意の密度が一層濃くなる。それと同時に徐々に相手の内側で魔力の気配が高まっていることが分かった。

 二振りの魔剣を構えながらハルトを射抜く。


『―――次こそは本気で仕留めさせて貰おう』
「なぁ、素直に誰がお前に皇女暗殺の依頼を頼んだのか教えてくれない? そうすればこの場は見逃してやってもいいんだけど」
『笑止。我は影に身を捧げた身。依頼を完遂せずして身を引くなど有り得ぬわ』
「ふーん、そっかそっか。なら―――俺も本気でいかせて貰おうかな」
『…………!!??』


 突如暗殺者の耳元で囁かれたハルトの囁き。そこでようやく接近されていることに気が付いた暗殺者だったが既に時遅し。
 ハルトは仮面越しに暗殺者の顔面を片手で掴むと、闘技アリーナの壁に勢いよく突撃しながら衝撃を与えたのだった。

 そして、ピシリと亀裂が入ると壁は崩壊。顔を掴んだまま痛みに喘ぐ暗殺者を無視して、ハルトは崩れ落ちた瓦礫に足を掛けると何気なく語り掛けた。


『がは……ッ!?』
「よう、ちょっと向こうの方へ舞台を移そうぜ。ここじゃすぐに壊れちまう・・・・・


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