努力の末に帝国で最強になった魔剣使い、皇女を護るために落ちこぼれクラスの教師になる ~魔剣学院の千の剣帝【サウザンド・ブレイバー】~

ぽてさら

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第一章 千の剣帝、ゼロクラスの教師となる

第17話 旧神時代【エルダー】

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 現在、闘技アリーナの中心にはゼロクラスの少女たちと教師であるハルト、エイミーが立っていた。本来ゼロクラスの教室内で授業を行う予定だったが、エイミーにハルト本人が闘技アリーナで授業を行うことを伝えると目を丸くして驚愕。

 ハルトが行なう鍛錬、実戦形式の授業に興味を持ったエイミーも付いてきた次第である。

 ミヤビ、カナエ、ローリエ、クリスティアは動きやすいように機能的な青色の学院生スポーツウェアを着用している。その腰回りにはベルトが装着されており、そこには魔剣が収められていた。


「よーしお前ら集まったな。……ありゃ、ティーゼは?」
「はい……。あのあとすぐに彼女を誘ったのですが、その……」
「『本を読んでいた方が知識が増えるし効率的。あの人に教わることが自分の為になるとは思わない』って無碍も無く断られたわ」
「……ハルト先生」
「うぐっ……! ま、まぁ鍛錬を受けたくないならしょうがねぇか! よ、よーし、それじゃあハルト先生による楽しい鍛錬、はっじっまっるよー!」
「露骨に教師としての責任から目を逸らしたわね……」


 エイミーからは責めるような視線が刺さり、ミヤビからは小さな声でのツッコミが入るが、だらだらと冷や汗を流しながら聞こえないフリをするハルト。ティーゼの不参加は授業を真面目にしないハルトへの不信感から生まれた結果だったからだ。

 これ以上自分で墓穴を掘るわけにはいかない。

 ハルトは気を取り直して周りを見渡すと口を開いた。


「まず魔剣に関する説明をしようか。そもそも魔剣っつーのは、旧神時代エルダーの神が神力を込めて鍛造した一振りの神剣しんけんを、人族が扱えるように別の剣と魔獣の素材を組み合わせて神力を調整チューニングしたことにより生まれたのが魔剣の最初だ」


 悪神アスタロトが生み出した魔獣の脅威に対抗する為、鍛冶神ヘパイーストスが地上に住まう神々の神力を結集させて造り出したのが【原初げんしょ神剣しんけん】だった。

 しかしソレを人間が扱うにはその力は強大過ぎた。結果、神力を【原初の神剣】から他に用意していた五振りの剣に分け与えつつ魔獣の素材を用いることで、剣内部に宿る神力の均衡を保ったのだ。


「それが【原初げんしょ神剣しんけん】と、神力が込められた五振りの魔剣【神魔五星剣じんまごせいけん】。そして神々により選定された上限測定装置アーツゲージが極めて高い五人の人族に後者の魔剣を授け、結果的にアスタロトを封印した。やがて力を使い果たした神々が天上へと還り、残った人族の鍛冶師が試行錯誤を重ねて魔獣の素材を使用することで魔獣を屠る魔剣の歴史が刻まれ始めた……。ま、ここまでは魔剣使いなら誰でも知っている有名な神話だ」
「ハ、ハルト先生、質問良いでしょうか?」
「ん、なんだクリス?」
「確かにその神話は教科書にも、それこそレーヴァテイン帝国の聖堂に保管されている聖書にも伝えられているのですが……本当なのですか?」


 クリスティアはこてんと首を傾げるとそのように訊ねた。

 聖書の一部の情報は帝国に住む一般市民に一部抜粋という形で制限開示されている。

 過去に旧神時代エルダーの言語であるニル語をマスターしていたクリスティアは一度だけ本物の中身を見たことがあった。残念ながら大部分のページが風化、加えて文字がところどころ掠れていて判明している内容以上の詳細な内容を把握することは出来なかったが、それは自分の知る神話の真偽を確かめたいという知的探求心故の行動だった。

 もしかしたらハルトなら神話のことを知っているかもしれないと思いクリスティアは訊ねたのだが、彼は一拍間を空けたのち静かに首を振った。


「……さぁな。流石にそれは俺でもわかんねぇ。―――ま、それこそ”神のみぞ知る”ってヤツだな」
「そう、ですか……」
「―――さ、話の続きだ。だからこそ魔剣は魔獣を倒すのに有効なんだよ。もちろんただの鉄剣でも魔獣を倒すことも出来るが、倒しやすさで言えば魔獣の素材を使っている魔剣の方が段違いに上だ。ま、旧神時代エルダーの神が遺した力や技術をなんとか後世に残そうとした人族の努力の結晶とも言えるな」
「そういえば、魔剣の属性や能力を引き出す剣技能スキルっていう概念を生み出したのも人間よね」
「そうだな。ただ魔剣で斬り裂くよりも剣技能スキルを使用することで一層魔獣を倒しやすくなった。そこで、だ」


 ハルトが人差し指を立てると、クリスティアたちを見回した。ニッと口角を上げるとやがて口を開く。


「―――お前らには、たった一つだけ剣技能スキルを極めて貰う!!」



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