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第一章 千の剣帝、ゼロクラスの教師となる
第13話 決着
しおりを挟む「ふんっ、くっ……! はぁっ!!」
「ふっ、ほっ、よっと……!」
それからは魔剣同士の激しい打ち合いが続いた。リーリアが熾烈な剣撃を仕掛けている一方、ハルトは飄々とした態度でそれを難なく受け流す。
切り結ぶことにより鳴り響く金属音。辺りに飛び散る火花。
訓練とはいえ、そんな激しい剣戟を繰り広げているハルトとリーリアの姿に、いつの間にかクリスティアやリーゼ含める周囲の生徒らは釘付けになっていた。
「やっぱっ、こうやって遊ぶのは楽しいよなぁ!!」
「ふっ……! わたくしはっ、ん……ッ! 全っ然楽しくありませんわァ……ッ!! いい加減に大人しく斬られなさいなぁッ!!」
「やだぴょーん。―――つーかお前、なんでそんな実力持ってんのにわざわざクリスに喧嘩売ってんの? かまってちゃん?」
「黙りなさい! 貴方には関係ありませんわぁ!! ―――『突風の衝撃斬』ッ!!」
リーリアはハルトの一瞬の隙を突き、飛び退きながら剣技能を発動。超至近距離で風を纏った斬撃がハルトに襲い掛かるも、ハルトは先程と同様に真正面から切り裂いた。そのまま彼女の放った斬撃は霧散する。
そして着地。ハルトと十分な距離を取った彼女は、疲労の所為か肩で息をしていた。
男女による筋肉やスタミナの違いはあれど、全身に魔力を流して筋肉の補強を行なっているので普通の魔剣使い相手ならばそこまで筋力の差は無い。現に、リーリアも少女でありながら剣技の研鑽を重ねて剣技練度80パーセント以上にまで到達、これまで様々な屈強な魔剣使いの男子生徒を余裕で打ち負かしてきた。
だが、今回は相手が悪かった。
リーリアの剣技や剣技能の速度も相当な精度とスピードなのだが、ハルトの対応力はそれを上回る。
「はぁ、はぁ……ッ!! また、わたくしの剣技能を……ッ!」
「はっはっはぁ! まだまだ精進が足りんぞチミィ!! ―――と、冗談はさておき……、そろそろ終わりにすっか」
「~~~ッ!! 先程からずっと上から目線でヘラヘラと……ッ!! 調子にぃ、乗るなぁ―――ッッ!!」
これまでのハルトへの鬱憤が爆発したリーリアは、残りの力を振り絞って攻撃を仕掛ける。きっと無意識なのだろう。奇しくもこのときの彼女の移動スピードは、これまでのどの彼女よりも速かった。
だらんと剣先を下に向けてゆったりと構えていたハルトは思わず口角が上がる。
(へぇ、この短い間で成長したのか。……凄いな)
魔力による断続的な脚力の底上げ。着地点での瞬間的な爆発力がカギになる移動方法なのだが、リーリアは拙いながらもそれをやってのけた。
―――ならば、
「少しだけ、本気出すか―――」
「はぁぁぁぁッッッ!!!」
鬼気迫る表情で吠えるリーリアを見据えると、そっと瞳を閉じるハルト。余計な力を抜き、自然体でいながらも神経を研ぎ澄ます。
やがて、彼は目を開いた。
「―――『瞬貫千閃』」
それは一瞬だった。ハルトが剣技能を呟いたと誰もがそう認識した時には、もう既に彼はリーリアの背後で剣を収めていた。
クリスティアとリーゼ含めた周囲の生徒や、動きを止めたリーリアは驚愕、そして困惑した表情になる。
だが次の瞬間、驚くべき現象が起こった。
「い、いったいなにが……!? ―――」
「ほうほう、赤か……。最近の子どもの下着ってませてんだなー」
「―――。きゃぁぁぁぁぁッッ!!!!」
リーリアが背後を振り向いた瞬間、今まで彼女が来ていた制服がはらりと破れ落ちたのだ。その光景に思わずリーリアは一瞬だけ頭が真っ白になるも、状況を理解すると叫び声を上げながら両手で身体を搔き抱く。
彼女はクリスティアと同年代の少女にしてはとても魅惑的でグラマラスな身体つきをしている。シミひとつない真っ白な肌と、谷間が出来るほどの大きな胸、綺麗にくびれた腰のラインといった女性的な部分が、レース生地の刺激的な紅い下着によってハッキリと強調されていた。
「ななな何故ですの!? 何故制服が破れ落ちたんですの!?」
「ごめ、俺の剣技能に魔力込め過ぎて、勢いで制服全部破れちった☆」
つまりはこういうことだ。ハルトは尋常ではない速度で移動し、思わず魔力を込め過ぎて百を超える―――千の剣捌きでリーリアを制服を切り裂いた。
にわかには信じられないことだが、現在のこの状況が事実だということを物語っている。
から元気な明るさで乗り切ろうとしたハルトだったが、年頃の少女を下着姿にしてしまったことに対してほんの少しだけ罪悪感が残る。すぐさまフォローする為に口を開いた。
「あー……、で、でも安心してくれ! その下着、リーリアにすごく似合ってる! 可愛いし綺麗だぞ!!」
「~~~~~ッッ!!! このっ、ヘンタイ教師ぃ~~~!!」
ハルトにより煽情的なワインレッドの下着姿に剥かれたリーリア。先程までの高飛車な様子とは違い、威厳も何もないその姿に集団の女子は同情的な視線を、男子はスケベな視線を向けていた。
彼女は叫び声を上げると、続けて甲高い声でこう言い放った。
「お、覚えてなさいですわぁっっっ!!!」
『お、お待ちくださいリーリア様~~~!!』
頬を羞恥に染めたリーリアは、そのまま集団の生徒を引き連れて闘技アリーナを去っていった。
「あ、あはは……。げ、元気出して下さい……!」
「私はあの高飛車令嬢があんな目に遭って清々しました。ありがとうございます」
「あ、うん。…………なんか、ごめん」
二人に励まされたり感謝を言われたり気を使われるするも、ハルトの心に残ったのは大の大人が生徒相手に調子に乗ったという大人げなさ。
何とも気まずい空気の中、訓練(?)は終了したのだった。
「―――――――――チッ」
何者かによるその小さな舌打ちは、空気に溶けて静かに消えた。
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