陰キャな僕とゆるふわ系天使とのいちゃあま共同作業! ~あれ、実は腹黒?な美少女がぐいぐい僕に構ってくる~

ぽてさら

文字の大きさ
上 下
47 / 98
第二幕 天使がぐいぐい来る日常

第46話 陰キャな僕は自覚する

しおりを挟む



(風花、さん………)


 僕はいつの間にか弁明の為に用意していた言葉を飲み込んでいた。不覚にも、風花さんに普段から抱く『カワイイ』という思いよりも、『美しさ』が目立ったからだ。

 こんな風花さんの側面を見たのは初めてかもしれない。同時に、姉の話を思い出す。


 ―――『……私が築き上げた努力なんて見ようともしないで』


 僕は少しだけ息を呑むが、瞳を彼女に見据える。そして勇気を出して言葉を紡ぐ。


「………うん、気になる。風花さんのこと、もっと知りたい」
「っ………へ、へぇー、ふぅーん、そっかぁー……!」


 不思議にもすらりと口から出た言葉は、不思議と僕の波打つ心を落ち着かせてくれた。
 見ると、風花さんは頬を染めながらゆるふわカールな髪の先端をくるくると指先で回していた。何度も先程の言葉を口にしながら足元に視線を向けている。


 …。

 ………。

 ………………。

 そして、想う・・


(……そういえば僕、いつの間にか『天使』として見てないなぁ)


 本当に今更だけど、クラスメイト含め学校中のみんなが風花さんのことを『天使』と呼ぶのが容姿、雰囲気、口調からくる比喩表現ということは有名だ。僕も出会った当初から知っていた。
 席が隣になった途端、話し掛けてきたから驚いたけど……それからというものの彼女が提案したシミュレーションを経て、交流を重ねて、色々な話をした。

 ―――一緒にいると、嬉しくて楽しい。

 ………うん、これは風花さんとの時間を経ていだいた、僕の嘘偽りの無い本音。人と関わることに臆病だった僕が、今まで誤魔化し続けていた感情。

 同時に胸がきゅっと苦しくなる。途端に心音しんおんが激しくなる。それは心が満たされた様な、どこか心地良い苦しさと鼓動。

 次第に心のどこかで燻ぶっていた熱が、じんわりと身体中に広がった。


(………あぁ、そっか)


 風花さんにしっかりと向き合おうと誓った割には、自分の心には向き合えていなかったのだからおかしな話だ。

 自分の不甲斐なさに小さく笑いながら、ゆっくりと心のふたを覗く。……そして、


 風花さんの心から笑った笑顔がとても素敵だということを知った。
 少しだけ口が悪いことを知った。
 何かを思い付く度に悪戯気いたずらっけに唇をにゅふりと曲げることを知った。
 キャラメルが好きなことを知った。
 可愛らしいだけじゃない、お茶目な部分もあることを知った。
 

 ―――表情や感情がとても豊かで、とても魅力的な女の子だって知ったんだ。


(僕は、風花さんに惹かれていたのか………)


 心の中にひらひらと舞う花びらは、これまでの風花さんとの思い出を鮮明に映し出す。

 どれもこれも僕にとっては色鮮やかで、とても大切な色。まるで表面が凸凹のキャンパスに塗り重ねられて少しづつ形になっていくみたいだ。

 ……あはは、僕は今どんな表情を浮かべているのだろう。爽やかな風が吹いたような、妙に心がすっきりとしていく気分だよ。


 その心の奥に潜んだ……いや、自覚した感情を風花さんに悟られたくなくて、僕は敢えて補足する。


「夏休み中に何をしていたのか、ね?」
「……ってぇ、そっちぃ!? ―――っ。あ、れぇ……?」
「ん、どうかした? 風花さん?」


 風花さんは「へぇーん、ほぉーん、ふにゅーん」と呟いていた顔をばっと上げて僕を見つめる。するとその途端、呆けたように言葉を洩らしながらきょとんとした表情になった。

 綺麗な唇を震わせながらゆっくりとひらく。


「―――あのときの、瞳と同じ……!」
「? よく分からないけど……さ、風花さん早く学校にいこっ! 急がないと間に合わなくなるよ!」
「えぇ、あぁうん……! ………んぅ、気のせいかなぁ?」


 最後に風花さんが何かを呟いた気がしたけど、顔を見られたくなかった僕は先に歩みを再開させていたので気が付かなかった。地面を踏みしめる足が、まるで羽のように軽い。

 僕はあることを思いながら視線を前を見据える。


(勘違いさせちゃったのはごめんね風花さん。……でも、風花さん自身のことを知りたいと言ったのは、僕の紛れも無い本心なんだ。正直、この気持ちはもう収まりそうにない。だけどそれ・・を直接伝えるのは、シミュレーションを提案した彼女の気持ちを汲み取ると難しい)


「………でも、それでも」


 ―――"少しずつ、僕たちの距離が縮まればいいな"って。


 今も、そしてこれからも思っているよ。




 そして、いずれ………!


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...