クラスで人気の完璧美少女が殺意増し増しで怖い件。そしていつしかデレデレになる

ぽてさら

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ジャンケン③ 天照ちゃんの天の声

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「うわ………っと、あー、やっぱり身動き取れないや」


 視界が切り替わるとグラウンドの真ん中にロープで縛られていた。力を入れても全くほどける気配がない事から聖梨華の女神の力であることが自然と分かる。
 そして、自分が持つ『回避』の特性を持っていたとしても自分の力では抜け出せない事も。


「多分、この特性は自分の意志が重要なんだよね。『回避』しないでこの現状を受け入れたからこそ、もう身動きは取れない」
『その通りです。流石は『回避』の勇者、理解力が優れていますね』


 自分の『回避』の特性についてまた新たな発見をした瞬間であった。これは案外自分の命を狙う聖梨華にもチャンスがあるのかもしれない。なにせ『回避』するという意思を消失させることで自分を殺すことが出来るのだから。
 まぁ小梅や美雪が生きている限り死ぬつもりは毛頭ないけれど―――、


「………………………」
『………………………』
「………あのぅ、どちら様でしょうか?」
『はい、こうして話すのはこれが初めてですね。『回避』の勇者、如月暮人。今回審判役をせーちゃんから頼まれました、この日本を管理する女神、天照です。『天照ちゃん』と気軽に呼んで下さいね。どうぞよろしくお願い致します』
「あ、ど、どうも。よろしくお願いします。って、せーちゃん?」


 清涼さを含んだ凛とした声が辺りに響き渡る。きょろきょろと視線を彷徨わせるも姿は見えない。自らを『天照』と言っていたことから本当に聖梨華の言う通り審判役をしているのだろうが、まさか話しかけられるとは思っていなかった暮人。

 気になる言葉も聞こえた。………せーちゃん?


『あののことです。セリカだからせーちゃん』
「あぁ聖梨華さんの事ですか。でも天照さ………天照ちゃん。彼女から聞いていた印象とはずいぶん違いますね。雰囲気が結構フレンドリー」
『はい。こういう話し方ですが、せーちゃんとも付き合いが長いですから』


 さん付けしようとしたらなんかとてつもない圧を感じた。
 天照ちゃんのことを神友かみともと呼んでおり神女子会にも参加する仲。交わした言葉は少ないが、彼女の言葉の端々からも聖梨華のことを案ずる想いが伝わる。


『如月暮人。こう言ってはあまりにも身勝手である事を自覚していますが、せーちゃんを悪く思わないで下さい』
「え………?」
『あの娘は本来殺生を好む性格ではありません。天界でせーちゃんを小さい頃から見守ってきた私だから言えますが、やりたくないことでも使命だからと割り切る部分があります。………それこそ非情に、です。せーちゃんも天界で色々ありましたから』


 天照ちゃんは本当に聖梨華の事を大切に思っているのだろう。暮人自身彼女に幼い時期があったなんて知らなかったが、天照ちゃんの言葉に思わず力が抜けた。


『しかし―――』
「わかってます」
『え………………?』
「昔の聖梨華さんのことは良く知りません。でも、他人を思いやれる優しい女の子だって事はこれまでの生活の中で良く理解してますから」


 例え異世界に転生させる為に命を狙っているとしても、ね。


「でも、命が狙われそうになったらこれからも『回避』し続けますよ? なんといっても勇者、ですからね」
『………うふふっ、はい。これからもせーちゃんとのハラハラドキドキ生活を楽しんで下さい』


 一拍間を空けると、


『………聞かせて貰えませんか? これまでのせーちゃんのこと。普段の、高校生活のこと』
「はい、わかりました」


 そうして、俺は聖梨華と出会った頃から話し始めた。



◇◆◇


 二人の出会いは突然だった。


「あ、小梅ちゃんみーっけ、です!」
「むっ、無駄乳おっぱい魔人」
「なんか単語が増えてる!? ま、まぁ? 私ぐらいのナイスバディだと嫉妬しちゃってもおかしくありませんが………」
「下垂れ、型崩れ、干しぶどう」
「あっこれ純粋な悪口だった!? ふ、ふふっ………どうやら女神としての尊厳を見せ付けないといけない時が来たようですねぇ………!」
「くっ、なに………このオーラは………!」


 住宅街のど真ん中でばったり出会った二人。不敵な笑みを浮かべながら妙な威圧を出す聖梨華に小梅は思わずたじろぐが、それに構わず聖梨華が言葉を発した。


「―――取引、しませんか?」


 それは、兄と結婚したいほど大好きなブラコンである小梅にとって悪魔のささやきに等しかった。



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