オレ様傲慢王子は最強! ~王位継承権は低いが、精霊神が与えし最強の瞳を駆使して女を漁る~

ぽてさら

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第1章

第27話 『まだ見ぬ未来へ』

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「シノア、紅茶のおかわりをくれ」
「かしこまりました、ローランド様」


 ―――あれから数日が経過。現在オレ様は邸宅の庭でメイド姿のシノアが淹れる紅茶を優雅に飲んでいた。うむ、相変わらずの落ち着く味だ。

 
 ドロシーの『火鳥絢爛』で魔物化した違法薬物店の店主の男を灰も残さずに燃やし尽くした後、オレ様達は人目につかぬように帰還した。

 その後の顛末を思い返しながら説明してやろう。ありがたく思え。


 まずドロシーを監禁していた違法薬物店だが、店自体を残す事はせずに取り壊しとなる方針が決まる。住民による騎士団への通報で第一騎士団の連中が駆けつけ内部を調査、見事『黄昏草』『黄昏薬』精製・使用が判明されたからだ。
 しかもそれらの違法薬物を精製・保管する他、ドロシーを監禁していたあの地下室はどうやら無断王国に断りも無しに拡張工事をしていたらしい。

 ……馬鹿が、店はあいつらの物だとしても土地は王国所有だというのに。

 やがてその違法薬物店の話はまたたに『王国都市オータル』のみならず王国中へと流布。残った店だが建物に価値はほぼないとして取り壊し、現在更地にしている真っ最中だ。勿論の事、地下室にあった薬物や素材は全て魔法で燃やし尽くし廃棄処分。

 そして店主の家族や従業員は無事全員捕縛。中には取り乱して逃げ出す者もいたが、強制的に連行したそうだ。
 奴らの『黄昏薬』を使用した罪は大きい。だが店主であるビスケに唆され、極めて恣意的な目的により意図的にではなく服用してしまったとして『王国都市』にある医療施設で経過治療中だ。
 加えて責任能力や認識力の低下により善悪の区別がつかない為、温情措置である情状酌量が認められるそう。

 残った母娘は歯止めが利かなくなった父の凶行を止める事が出来ずに、虚ろながら今でも涙を流しながら懺悔しているらしい。


 後味が悪いが、ひとまずこの案件は収束したと考えても良いだろう。

 ……チッ、違法薬物などやはり毒にしかならない劇物だ。後にも先にも不幸しか残さねぇ。




 椅子に座っているオレ様はテーブルの上を見つめる。そこには複数の『精霊の雫』が存在していた。


「ローランド様、その『精霊の雫』は違法薬物店の地下室にあった物ですよね?」
「あぁ、その通りだ。ドロシーを救出する際にいくつか持ち出してきた戦利品だ」
「―――何かに利用するので?」
「………いいや、何もしないさ」


 自らの紅茶の入ったカップをテーブルに置きながらそう訊ねるシノアに、オレ様は穏やかな口調で答える。

 テーブルに載っている物以外の、つまり地下室の『精霊の雫』は全てオレ様の『真実の瞳』の権能で処分した。貴重且つ利用されやすい代物だからな。
 オレ様以外の手には渡らないようにした。

 ……こいつらも十分苦しんだろうからな。せめて精霊神の力が込められた、この『精霊眼エレメンタル・アイ』で消し去ってやった。
 さぞオレ様に感謝している事だろう。
 

 シノアは何かこの『精霊の雫』に用途があると思いオレ様にそう聞いてきたのだろうが、それは勘繰り過ぎだ。
 精々オレ様の部屋のオブジェにしてオレ様の為に価値を見出してやろうと思った程度だよ。

 そう考えていると、こちらへ騎士団の制服姿の美少女二人が歩いてくるのが見えた。


「お邪魔しまーすっ! 来てあげたわよっ!」
「久しぶりですローランド様、シノアさん。約束通り今日は休日だったので来ちゃいました」
「あぁ、よく来たな。さっさと座れ」
「ふふ、いつも言ってますが、私の事など呼び捨てで結構ですのに。……お二人とも同じものでよろしいですか?」
「えぇ!」
「はい」


 庭にやって来たドロシーとメルトは、オレ様が促してやると椅子に座る。
敬称で呼ばれる事に今でも慣れていないシノアなのだが、その表情を柔らかくするとやって来た二人を持て成す準備をする為に邸宅へと引っ込んだ。

 ……さて、こいつらと顔を合わせるのは数日ぶりだ。間を空けて邸宅のオレ様の元へ来るように約束していたが、その間に様々な対処に追われていただろうからな。


「騎士団内部でも色々騒がしかったようだが、特に問題ないか?」
「はい。この一件が明るみになり騎士団総出でギルドから選出された冒険者協力のもと、改めて『黄昏草』の有無を確認する為に王国中の各薬剤店への実地調査や輸入ルート、群生地の確認を行ないました。結果、特に問題はありませんでした」
「しかも帰ってきたらきたらで薬物に関する大量の書類確認に追われるし、碌に睡眠もとれてないわよ……おかげで肌もボロボロよ」
「そうか、ご苦労であった。今日はゆっくりしていけ」


 オレ様は言葉を口にしながら騎士団の制服姿の二人を見遣る。
表面上は元気そうなのだが、うっすらと目の下に隈が出来ているな。睡眠不足、しかも食事も疎かにしているな?

 今日はみなと一緒にある場所・・・・へオレ様が連れて行こうと考えていたが……ふん、仕方ない。今度オレ様だけで行くか。

 後でゆっくりと二人を寝かせてやろう。

 オレ様は再度確認するようにして訊く。


「メルト、ドロシー。貴様らはあれから体調に問題ないか? オレ様が消し去ったとはいえメルトは『呪い』を受け、ドロシーは黄昏薬を打たれたんだ。何か異常があれば言え、オレ様が視てやる」
「はい、ローランド様のおかげでこの通り元気です」
「? 別にこれといって目立ったことはないけど。……なによ、今日はやけに優しいじゃない? 何か変なモノでも食べた?」
「―――ほう。せっかくオレ様が珍しく気遣っているというのになんだ貴様。もしやいつも以上にオレ様から口汚く罵られ物のように激しく扱われる方が好みか? ドロシーがお望みならそうしてやるが」
「………………え、遠慮しておくわっ」


 おい待てなんだその間は。何故少しだけ逡巡したように頬を赤く染めて顔を逸らした。………はぁ。

 まぁ良い。この前にも説明したと思うが、オレ様は極力こいつらに対してはこの『真実の瞳』の権能は使わないようにしている。
 魔力を無駄にしたくはないし、何よりオレ様を信頼してくれるこいつらにこの権能を使うのはいかに傲慢、自分勝手と自負するとて、オレ様の矜持が許さない。
 オレ様が念のために体調を訊いたのはまずその理由が一つ。

 そしてもう一つの最大の理由が、ドロシーの中にある・・・・・・・・・精霊の力・・・・が身体に影響を及ぼしていないかを確かめる為だ。

 そもそもオレ様がドロシーの中にある妙な力に気が付いたのは『深層領域』に潜ったとき。確かにドロシーの物ではない魔力以外の違和感を感じたのだが、そのときはドロシーの精神状態が不安定だったのでオレ様も上手く把握出来なかった。

 だがオレ様が精霊の力と確信したのは、ドロシーが魔物と化している男を冒している何かを読み取り、その後あの大柄な外套の人物の『惹き合う』という言葉を訊いてからだ。

 そして何よりも決定的だったのは、ドロシーが戦略級火属性魔法である『火鳥絢爛』を放った際に精霊の力が混じっていた事。

 だからこそ体調の変化を訊いたのだが、まだドロシーは自らの内にある精霊の力を知覚していないようだな。
 ドロシーにはその事を伝えていないが、今はその必要はないだろうと考える。

 ま、余計な心配をいだかせるより、オレ様が出来るだけこいつの側にいれば安全だろう。


「………ふん」


 オレ様は内心溜息を吐く。そして視線をテーブルの上に置いている『精霊の雫』へと向けた。

 ……刻一刻と迫る魔神復活の時、それを目的とする謎の組織『千夜教団』。
 先日の戦いの際に、魔神復活の運命を防ぐ為にオレ様が望んでいた情報を手に入れたのは喜ぶべき事だ。だが同時に、奴らとの明確な力の差がはっきりとわかってしまった。

 フィリマと呼ばれていたダークエルフの女の力は未知数だが、気を張って対処すれば難なく下せるだろう。だが、あの外套を被った大柄な人物の実力だけはまるで底が見えない。
 あの一瞬の攻防。オレ様の全力のうち半分の力とはいえ放った蹴りを優に受けきったのだ。恐らくまだ本当の実力を隠しているに違いない。

 そして、”見逃された”。オレ様たちを自分らの脅威に値しないと判断し、わざと見逃したのだ。
 その事実は変わらない。

 ―――もっと、対抗出来るような力を手に入れる必要がある。

 そうオレ様が考えていると、訝しげに見ていたドロシーが待ちきれないといった様子で声をあげる。


「ねぇ、さっきから黙ってどうしたのよっ」
「………いや、『黄昏薬』の副作用がまだ残っているのかと思ったが杞憂だったと思ってな。心配して損をした」
「ア、アンタねぇ……まぁいいわ。っ………あ、あのね、ローランドこそ、そ、その……大丈夫、なの?」
「……ん、何の事だ?」
「いえっ……その、アンタにとって私に心配されることじゃないと思うんだけど………今日はなんだか、どこか無理をしてるように見えて、さ」
「――――――」


 オレ様は思わず目を僅かに見開いてドロシーを見た。そしてそれは隣にいたメルトも同様。


「もしかして、あの戦いからずっとかしら? すっごく、思い悩んでるように感じたの」
「………貴様」
「わ、私の勘違いだったら謝るわっ。でも、もしそうだったのだとしたら。その―――これから、私たちにもアンタが抱えているモノ、理解したいし、少しでも背負わせて欲しいのっ! じゃないと、寂しいから、さ……」


 ドロシーはその瞳に訴えかけるような光を宿してオレ様にそう伝える。決して逸らす事の無い覚悟の籠った眼差しがオレ様の揺れる瞳を捉えた。

 ……そうだったな。オレ様は使えるモノはなんだって使う主義の人間だったな。
こいつらはオレ様のモノだと言いつつ、使うよりも優先的にいつからかオレ様の庇護下として守らなければいけないと認識していた事に気付いた。

 それは、とても愚かな傲慢さだ。それを分からせてくれたドロシーには―――いや、みなまで言うまい。


「……く、くくくっ、貴様の得意且つ必殺魔法が『とり』の癖に生意気な。―――だが、まぁそうだな。精々押し潰されないように励めよ?」
「え、えぇ、わかったわ! ……って焼き鳥!? それってもしかしなくとも『火鳥絢爛』のことよね!?」
「はいはーい、私は押し潰されるまでローランド様からの想いと愛を背負いたいです!」
「お待たせ致しました。紅茶と先程焼きあがったばかりのパンプキンパイをお持ちしましたのでお食べ下さい」


 ふん、重いと喚いてもどかしてやらんからな。ひぃひぃ泣いても力づくで引っ張ってやる。―――覚悟しろ?


 そう思いながら、オレ様はまだ見ぬ未来へと思い切り唇を曲げた。



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