オレ様傲慢王子は最強! ~王位継承権は低いが、精霊神が与えし最強の瞳を駆使して女を漁る~

ぽてさら

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第1章

第22話 『クソ王子の求める見返り、それすなわち……』

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 意識が現実へと引き戻される。オレ様が周囲を見渡すと薄暗くジメジメとした地下室の光景。どうやら無事に戻ってきたようだ。
 ドロシーを見遣ると壁側に縮こまりながらぐったりとしていた。「うぅん……」とやがて小さな声をあげると、うっすらと目蓋まぶたける。

 ……ふん、オレ様よりも遅く目覚めるなど部下としての自覚が足らんぞ。まぁ、今回ばかりは許してやっても良いか。

 オレ様は唇を曲げる。


「こ、こは………っ、……そうだっ、ローランドはっ………!」
「手間を掛けさせやがって、この鳥女」
「ろーらんど……っ、ローランドぉ………っ!! ―――へぶっ!?」
「臭い、汚い、近寄るな」
「今が旬の乙女にそれは酷くない!?」


 ドロシーが笑みを浮かべてオレ様に抱き着こうとしたので、片手でコイツの頬をがっちりホールド。くっきりとした目をこれでもかと剥きながら真顔になったオレ様に口答えをするドロシーだが、勢いが弱い。どうやらまだ本調子ではなく、体に力が入らないようだ。

 ……いや今の貴様のどこが乙女だ。自分の状況をよく考えろ。オレ様の目には髪はボサボサ、頬はこけて涙や鼻水やよだれで顔がぐちゃぐちゃに見えるぞ。それに防臭加工が施されている『黒影の騎士団』の装束を着ているとはいえ、僅かな貴様の体臭も残る。甘さが混じった独特な匂い。まったく、淑女の風上にも置けん酷さだ。

 やはり自称旬の乙女、自身の身なりが気になるのか涙目になりながらオレ様から一旦距離を取る。くんくん、と腕を交互に鼻に近づけるが、「確かに……」と力無く声を洩らしてがっくりと項垂うなだれた。


「そんな事よりも、体調は問題ないか?」
「そんなことなの!?……って、あ、そういえばしっかりと話せているし、虚脱感も何もない……?」
「ふん、貴様を拘束していた紅い鎖を消したと同時に『黄昏薬』の成分を全て消し去ったんだ。そのおかげで副作用も消えているだろう? ずっとあがたたえ、感謝しろ」
「いつの間に………うん、ありがと」


 いつもならば噛み付く筈なのだが、深くは訊かずにはにかむようにして素直に感謝を口にするドロシー。まだ本調子ではないとはいえ彼女自身が蝕まれた『黄昏薬』の効果と副作用が消失しているのはドロシーが一番良く分かっているのだろう。その事実がオレ様の言葉が正しいという事を証明している。

 ……よし、さっさとメルトの元へ行かなければな。魔力を辿るが……うむ、街中か。


「さて、まだ事態は山積みだ。オレ様は至急メルトの元へ………ッ!!」
「っ!? ロ、ローランドッ……! 大丈夫なのっ!?」
「ふぅ……あぁ、問題ない……と言いたいが、少々魔力を消費しすぎたようだ……」
「そ、それってもしかして、私を助けるときに……っ! ごめんなさい……」


 オレ様は思わず顔をしかめながら壁に寄り掛かる。ズキズキと鈍い痛みが頭に襲い掛かるが、それは魔力と瞳の権能を使い過ぎた結果。オレ様のこの姿を初めて見たドロシーはオレ様の身体を支えながらとても心配そうな表情を浮かべる。
 やがてその原因に思い至った彼女は、揺れる瞳を伏せながらしゅんとした。

 ………チッ、そんな顔すんじゃねぇよ。オレ様がしたいからやった事だ。気に病む必要などない。


「謝るな。……はぁ、魔力吸収が出来れば、回復するのだが……」
「そ、それなら私の魔力をっ……!」
「貴様は貴様で体力を消耗しているだろう。その上魔力など吸収したら―――」


 そこまで口に出たオレ様だが、ある考えが頭をぎりその勢いがぴたりと止まる。無言でオレ様の側にいたドロシーへ視線を向けると、上目遣いで見つめる彼女と視線が交わった。
 オレ様のこの行動に不思議に思ったドロシーは小首を傾げる。


 ……おい待て、そもそもオレ様がこのような状態におちいっているのは、ドロシーこいつが無暗にオレ様に相談なく乗り込んだのが原因なんだよなぁ。本来の決行日は明日あす。今日は明日の為に英気を養う日―――つまりは『魔力を無駄に使わず自然に限界まで貯蓄する日』だったのだが、こいつの所為せいで万全ではない状態でここへ来てしまった。

 あぁ、そう考えたらムカついてきたな。魔力を消費してドロシーを救った事は後悔していないが―――オレ様を振り回した分、なにか見返りがあっても良いよなぁ?


「いや、前言撤回だ。おいドロシー、貴様オレ様の役に立ちたいんだったよなぁ?」
「え、えぇ……確かにそれはそうだけど―――きゃっ!」
「なら―――貴様の魔力、残り半分ほどオレ様に寄越せ」
「ふぇ、ちょ、まっ……んぅーーー!!? んーーーーー!!!!」


 オレ様はドロシーの腰をグイッと引き寄せると、その小さな顎に手を添えてキスをする。あまりにも突然の出来事に、そのつぶらな瞳を見開きながら驚きを見せる様子のドロシー。どうしたら良いのか分からないように両手が空中を彷徨さまようが、オレ様の手でドロシーの手を絡ませて捕まえた。
 そうして魔力を少しずつ吸収する。

 魔力吸収の行為は、対象の女にオレ様の身体の一部でも接触していれば問題は無い。吸収具合もオレ様の方で調整出来るので、別に唇である必要はないのだが……こいつが迷惑をかけた分どうしようがオレ様の勝手・・だからなぁ。 光栄に思えよ?


「ぷはぁ……っ! いきなり何すんのよぉ……っ、」
「ふん、芳醇とまではいかないが甘酸っぱいな。貴様らしい味だ。―――もっと上げるぞ」
「……っ、ちょっ、まってぇ……っ」
「うるせぇ」
「~~~ッ! んむぅ……っ、ちゅぱ……っ、れぁ……んぅ……ぁむっ、ふぅ………っ」


 そう言って強引に壁に押さえつけながらオレ様はドロシーのくちびるむさぼる。始めは少しだけ抵抗を見せたが、しばらく堪能しているとその力も弱まり、顔を紅潮させながらその両目をとろんとさせるドロシー。やがて彼女はもじもじと両膝を擦り合わせながらぴくぴくと身体を震わせた。

 ……よし、ドロシーの魔力半分とは言わないが、後に控えている戦闘を考えるとこのくらいで問題ないだろう。……やはり貴様は良いな。ころころ変わる内その媚びた表情は、充分に可愛かわいがり甲斐がいがある。

 しばらくそうしていただろうか。満足したオレ様はドロシーから唇をゆっくりと離す。その瞬間、オレ様たちの間に透明な糸が出来るが、次第にそれは淡く消えていった。
 深い呼吸をし合うオレ様とドロシーはそれに構わず互いに見つめ合う。


「魔力を吸収したが……身体の調子はどうだ?」
「はぁ、はぁ……しゅご、かったぁ……!」


 魔力を吸収したオレ様はドロシーの体調の変化が無いかを訊くが、当の本人は赤らめた顔をとろけさせながらうわそらで返答する。

 ………………チッ。


「しっかりしろ馬鹿鳥」
「はぁん!! ~~~ッ、いったぁ!? にゃにしゅんのよぉ!!」
「いつまでも馬鹿づらさらしてほうけているからだ」
「し、仕方にゃいでしょ!? い、いきにゃり……キ、キ、キ、キスッ、してきたんだかりゃ………ッ! ………初めてにゃのに、ああんにゃにっ、激しく……っ」


 オレ様がドロシーの額にデコピンをかますと、痛みに悶えるかのようにうずくまりながら舌足らずな口調でわめく。オレ様を見上げるその両目の端には涙が浮かんでいた。

 ……ほう、ほうほうほう。


「ふぅん、そうか初めてだったのか。―――なかなかに良かったぞ、貴様の味は」
「~~~っ! こ、このクソ王子ぃ……ッ! ひゃぁ………!」


 ぺろり、とオレ様は見せつけるように自分の上唇を舐める。羞恥に悶えるかのようにしてしゃがみながらオレ様を睨み付けるドロシーだが、その様子に構わずオレ様は彼女を抱きかかえた。

 その初心うぶな反応は非常にオレ様好みなのだが、言っただろう? 事態は山積みだ、と。


「さて、この方が早いな。こんな地下室ところからさっさと抜け出して、今度こそメルトの元へ向かうとするか」
「や、やだ離してぇ! だってそ、その……臭い、んでしょ………?」
「………………く、くくくっ!」


 抵抗するように言葉を言い放つが、すぐにドロシーはオレ様の腕の中で丸まった子猫のように大人しくしながらおずおずと視線を向ける。
 オレ様とした事が、彼女の言葉に一瞬だけ間を空けてから笑ってしまった。

 くくくっ、魔力吸収とはいえ、互いの身体を密着させながらキスまでしたというのに、今更いまさらそんな事をオレ様が気にするとでも思っていたのか。
 ……本当に、本当に貴様という奴はカワイイなぁ。思わずまた食べたいと思ってしまったではないか。


「あぁ、そうだな。その通りだ―――よし行くか」
「!! やっぱりぃ!! 遅くても自分で歩くぅ! おーろーしーてーっっ!!!」



 おい、ジタバタさせんなミス・バードヘッド。オレ様の俊敏で華麗な移動の際に舌を噛んでも知らんぞ? ……くくくくっ。



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