オレ様傲慢王子は最強! ~王位継承権は低いが、精霊神が与えし最強の瞳を駆使して女を漁る~

ぽてさら

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第1章

第17話 『ドロシー・メーティスは絶望する』

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 私は騎士団寮に戻ってからも、どのようにすればローランド様の役に立てるのかをずっと考えていた。
 そして私はふと、ある考えを思い付く。


―――私が決行日前に違法薬物店へ行って、地下にあるという『精霊の雫』と『黄昏薬』が完全に結びついている証拠を事前に手に入れることが出来れば、ローランド様も動きやすくなるんじゃないかしら。



「―――って、考えたのがいけなかったのよね………。今振り返ってみると明らかに愚策だし、現にこうして捕まってるし………はぁ」


 私は深く溜息を吐きながら回想を終えた。

 私の意識や体の感覚はもう既にはっきりとしていた。今把握出来る事として、私は現在両手が鎖に繋がれていて、魔法が発動出来ない状態。何度か力を入れてみたけどとても頑丈。多分、この鎖には魔法が使用出来ないような仕組みが施されているんだと思う。

 そして私が今いる場所は、おそらく『黄昏薬』や他の薬を調合する場所である地下室……の隣の部屋かしら? 暗闇の中でどれだけ手足を動かしても、地下室に所狭しと大量に並んでいた調合薬や素材にぶつかった気配が無い。そのときに感じた空気が薄い感覚がこの場所でも同様に感じるのでやっぱり場所が違うのでしょうね。まぁ、暗いから全く分からないのだけれど。それにずっと水漏れしているのか、ずっと水滴の音が等間隔で聞こえてくる。



 どれ程の時間が流れたのだろうか。冷たい石床が身体中の熱を奪っていく。暗闇の中に潜む孤独が私を蝕み、じわじわと侵食していく。

 先程から響く雫の滴る音が、なんだかとても煩わしい。まるで身勝手な行動をした私を責め立てているみたい。


「でも、なんとかここから脱出する方法を何とか考えないと……。ふぬぅ………っ!」
「おや、目を覚ましたのですね? お客様」


 私はローランド様に迷惑を掛けないように、必死に抜け出す方法を考えながら束縛する鎖を力いっぱい外そうと踏ん張っていると、ガチャリ、と扉が開かれた音がした。明かりが差し込んで思わず目を細める。
 そこから現れたのは、この違法薬物店の店主である片眼鏡を掛けた笑顔を浮かべる中年の男と、黒いフードで身体全体を隠した謎の人物。

 彼らは足元や周囲を白い光が光源の魔道具で照らしながら私に近づいてくると、静かに見下ろしてくる。
 よくよく店主の男を見てみると、彼の手元には私が地下室で確認した『精霊の雫』入りの『黄昏薬』の瓶や何かが入っている籠が抱えられていた。心なしか瓶の青い液体の中に漂う粒上の光が妖しく輝いている。

 元は優しげな表情をしていたのだろう。だが今では頬がこけておりその瞳は狂気さが見え隠れしている。そんな雰囲気にゾクリとした悪寒が走りつつも、私は気丈に言葉を放つ。

 ……少しでも会話をして、情報を引き出さなきゃ。


「貴方、こんなことしてタダで済むと思ってるの……!? 王国で禁止されている薬物に手を出す上にこんな幼気いたいけな少女を監禁するだなんて、家族が訊いたら泣くわよ?」
「いえいえ、ご心配なさらずに。今では私の愛する家族も従業員もみんなコレのとりこ。―――きっと私のこの行動も理解してくれますよ」
「………っ!」


 私はそのとき、一瞬だけ彼の言う言葉が理解出来なかった。
 だが『黄昏薬』の入った瓶を愛おしげに見つめる男のその瞳を見て理解した。完璧に、理解してしまった。

 手遅れだ。この男は『黄昏薬』の中毒性に、依存性に呑み込まれている。きっと私がどんな言葉を言ったところで彼には届かないだろう。
 元々知識やローランド様、あのハイドの話で違法薬物の危険性は分かっていたつもりだった。それでも、目の前にいる男の様子を見る限り私の認識が甘かったという事実を認めざるを得ない。

 ―――まるで、『黄昏薬』という快楽に群がる奴隷のようだわ。


『……おい、さっさとしろ』
「あぁ、そうでしたね―――さて、お嬢さん」


 今まで口を閉じていたフードの人物が急かすように店主に何かを促す。徹底的に秘匿したいのだろう、声帯を変える変声機を使っているので性別が判別出来ない。少しだけ見えた手先は、全体に包帯が巻かれているのかグルグル巻きだ。

 ……おそらく、この人物が私を背後から不意打ちした正体ね。気配がまったく分からなかったことから、相当な手練れ。

 いったい何者なのだろうかと私が睨んだところで、私と視線を合わせる為にしゃがんだ店主が平淡な口調で衝撃の言葉を放った。


「大変心苦しいのですが―――貴方には実験台になって貰います」
「………は? 何を言って―――ま、まさかっ……!?」


 私は店主が手に持つ物へ視線を向ける。それは『黄昏薬』と、籠の中に入った注射器。

 ………まって、待って待って待って待って待ってっ!!


「これは通常の『黄昏薬』とは違い、質の良い『精霊の雫』を大量に含んだ……いわば劇薬でして。本来の『黄昏薬』の副作用や中毒性は薄まっているのですが、なにぶん『精霊の雫』は我々人間にとっては効能や本当の価値含め未知なる部分が多い。とはいえ、折角の金蔓かねづるの方々に使うのは危険性を無視できないので勿体無い。なので私も試せなかったのですが………この御方がおっしゃっ・・・・・・・・・・た通り・・・貴方が現れた」
「い、いや……っ、やめなさい……っ! これ以上、私に近づかないでっ………!!」


 話している最中でも淡々と手際良く注射器に『黄昏薬』を準備している姿に、私はとてつもない恐怖を抱く。表情が歪む。もはや話している内容など頭の中に入ってこない。

 やだ、やだやだやだっ。いやだぁ……っ! あんな薬物に染まるのなんて絶対にいやっ!!


『……チッ、私が身体を押さえている間にさっさとしろ』
「申し訳ありません……さぁ、これから経過をじっくりと観察しましょうかぁ」


 私は抵抗を剥き出しにして言葉を吐き出しながら必死に手足を動かすが、フードの人物がわたしの身体が動かないよう力強く押さえてきた。

 店主の男が手に持つ注射器を私の腕に近づけると―――、



「ぐっ、ぁ、あぁぁぁぁあぁあぁあぁぁぁぁっっっ!!!!」



 異物が、無慈悲に私のナカに流れ込んだ。



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