オレ様傲慢王子は最強! ~王位継承権は低いが、精霊神が与えし最強の瞳を駆使して女を漁る~

ぽてさら

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第1章

第14話 『露見した未熟さ、変人は指摘する』

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 唇を曲げた彼奴の口から出た金額に、オレ様はいつもの事だと内心溜息を吐く。だが予想もしていなかったとんでもない額に、再び驚愕の声を上げた者がいた。

 さらにドロシーは積りに積った彼奴の変人具合に耐えきれなかったのか、ソファから立ち上がり指を指して怒鳴る。


「ねぇ貴方、いきなりローランドにそんな大金吹っ掛けるなんて大概にしなさいよ! 食費や宝石を含む貴金属の購入、定期的に開催されるパーティや屋敷の維持費とか、豪奢で金遣いが荒い有力貴族はともかく、王国で暮らす一般市民なら働かないでも数年は遊んで暮らせる金額じゃないの!? いくら私たちが貴方に情報を乞う立場でもこんな額、ぼったくりのようなものじゃない!! そもそも! 私は初めてだから良く知らないけど貴方は本当に『黄昏薬たそがれやく』について私たちが求める信頼出来る情報を持っているのかしら? 正直さっきから容姿、言動、行動からして胡散臭いわ。だいたいたかだか・・・・情報にそんな値段を付けるなんて貴方の常識を疑うけど―――」
「言いたいコトはそれだけですかァ?―――それと今、たかだかとおっしゃいましたか? 情報のコトをォ?」


 ハイドは若干首を横に傾げながらドロシーに問う。その瞳に宿るのは、先程よりも色濃く輝く妖しげな赤い光。
 一瞬だけ身体をびくつかせるドロシーだが、一旦出た言葉を戻しは出来ないと考えたのか「ええ、そうよ」とこいつらしからぬ強気さで負ける事無くその双眸で射抜く。

 ……はぁ、オレ様はこいつらの様子に動じることなくドロシーとハイドの会話を見遣るが、これだけは容易に分かる。

 彼奴は唇を曲げながらも、纏う雰囲気が変わった。つまりは、彼奴の琴線に触れたということ。


「ドロシー・メーティス。多くの特権階級の中でも特にイクシオン王国を支える有力家の内の一つでメーティス公爵家の長女。歳は十七歳。平民への偏見の目を持っておらず、誰ででも隔てなく接することができ、勝ち気だが負けず嫌いで一度決めた事は絶対に曲げない性格。イクシード王立学園では在学中、剣技はからっきしであったが、幼少期で既にメーティス家のみが扱えるという『火』属性戦略級魔法『火鳥絢爛かちょうけんらん』を習得していたこともあり魔法の実力は周囲の人間よりも群を抜いていた。しかし二年前、王立学園からの帰宅時に暗殺者ギルドの暗殺者に不意を突かれて誘拐される。そして『奴隷紋』を刻印され半年間は違法組織により魔力貯蓄に利用された。ローランドサマとその部下により無事救出されるが、そこで自分が記憶操作を受けない『特別体質』だということを知る。そして二人の利害が合致しメルトサンから剣術の指南を受け、王立学園でも首席で卒業。そして第三騎士団の配属と共に『黒影の騎士団』への加入に至る」
「ッ………!!」


 先程までのふざけた様子ではなく、真剣みを帯びた流暢な話し方で言葉を紡ぐハイド。一方のドロシーは初対面の筈である自分自身のことを言い当てられて……いや、既に|入手していた情報を聞いたことにより動揺、困惑していた。

 言っておくがオレ様は彼奴にはドロシーの事は伝えていないぞ。言う必要もないしな。


「他にも補足すると好きな食べ物は肉よりも魚、焼き菓子や果物といった甘味全般。嫌いな食べ物は苦い野菜。右肩には幼少期に転んで出来た傷跡があり、最近の悩みは毎日寝る前にミルクを飲んでも胸が小さい事。さらに性格の付随事項では実は乙女思考。好きになった相手ならばとことん追いかける―――とまぁ、こんな程度・・・・・でしょうか?」
「なんで、そんな個人情報まで……ッ! 私の名前も言ってないのにっ!」


 心底不快なモノを見るような瞳でドロシーは彼奴を見るが、当の本人はそんな視線を何処吹どこふかぜと気にせずにオレ様に顔を向けた。

 ……チッ、彼奴め。余計なことを言いたそうな表情だな、このクソが。


「ローランドサマ、おひとつゴ質問しても宜しいですかァ?」
「ハァ、なんだ」
「―――このヒト、本当にローランド様が認める部下なのですかァ?」
「………ッ!!!」


 口元をより深く曲げながら、ハイドは仮面の奥のねっとりとした視線をオレ様へ向ける。その紅い双眸にはドロシーに対する失望の色が宿っていた。

 ドロシーを見遣ると……ふむ、呆然と立ち尽くしているな。そりゃ信頼出来る情報を本当に持っているのかというこいつの質問に対し、ハイドが本人の正確な情報を以・・・・・・・・・・ってして証明した・・・・・・・・のだからな。無理も無い。

 それに加えて、最後の言葉。ドロシーにとって初対面である彼奴に、全くの赤の他人であるハイドにそのことを疑われるのは酷く屈辱的だろう。現に何かを耐えるように小刻みに震えている。


「あまりお得意様であるローランド様の部下サマにはこのようなコトは言いたくないのですがァ、いくら魔法や身体能力が高くとも、王立学園を首席で卒業したとしても、情報を手札と認識出来ないようでは”未熟”だと言わざるを得ません。もしワタクスィが極東出身ならば、『おとといきやがれ、てやんでぃ!』と大声でつまみ出していたところでした。そもそも、価値を理解していないお嬢ちゃま・・・・・なのですから」
「バカにして……っ!」
アナタ・・・が先にしたんですヨォ? たかだか情報、と。それはすなわち情報屋として真実のみを取り扱う・・・・・・・・・このワタクスィの矜持を軽んじられたと同じコト。そしてその発言は―――そんな情報モノを求めにこちらへやって来たローランドサマを侮辱しているに等しいじゃァないですかァ♡」
「……ッ、ちがっ!………そんな、つもり、は………」


 声を絞り出して震えていたドロシーだが、顔を下へ俯けると力無くソファに座り込んだ。彼奴はそのまま唇を曲げながら言葉を続ける。


「良いコトを教えて差し上げましょう。情報とは『時価』なのです」
「……時価?」
「そのヒトが求める情報が正確なモノであればある程、その分だけ価値はグンと上昇します。なにせどんな事情があれ、そのヒトにとっては需要がありますからねェ。是非とも喉から手が出るほど情報が欲しいならばなおさらです」
「く……っ!」


 ドロシーに諭すようにその事を伝えた彼奴はオレ様に一瞬だけ顔を向けるが、直ぐに視線を戻した。

 ……おい貴様、何故オレ様を見た。真面目に話す貴様はキモいからこっち見んな。
 あとドロシー。彼奴の言葉が正論なのは理解したようだが、その表情と吐き捨てた言葉はなんだ。まるで物語で拘束された女騎士のようだぞ。もし将来そうなったときの練習か?
 見てて面白いから敢えて言わないが。


「今回ワタクスィが一千万オーザという大金を対価に求めたのはそれが理由です。先程の説明とは供給と需要の立場こそ逆ですが、ローランドサマ方は今回の件の詳細な情報が欲しい。ワタクスィはその対価に見合う上等なモノが欲しい。それがお金というだけです。 なんせ信頼第一、信用絶対の商売ですから。安心して下さい、こちらはいつも通り既にすべてを把握しており・・・・・・・・・・ますので・・、後はそちらが慎重に動いて下さればすぐに解決ですよ」
「そうか、ならば」
「ただ、そちらのおヒト・・・は一緒に同伴されるのは控えた方がよろしいかと。価値を見極められないというコトは、物事の判断を疎かに、状況を浅く・甘く捉えがちな『お荷物』になる可能性が高い。つまりは『、」
「―――これ以上オレ様の大事な配下をイジメてやるな、ハイド。貴様はただ、客であるオレ様達・・・・への役割を果たしていれば良い」


 オレ様と彼奴のが交わる。一瞬だけちりっ、とした鋭い雰囲気がこの場を支配するが、すぐさま霧散。

 ……ふん、こいつに何を言っても良いのはオレ様だけだ。あまり調子に乗るなよハイド。貴様はただ、情報屋として正確な情報をオレ様に差し出せば良いのだ。ただ傍観する・・・・・・愚物に成り下がった・・・・・・・・・貴様に、オレ様のモノへあれこれ口を出すのは許さんぞ。


「―――オォーーットォ! これはこれは失礼イタしましたローーーーッランドサマッ!! ワタクスィとしたコトが出過ぎたマネをしてしまいましたァ……申し訳ありませンねェ、ドロシーサン?」
「……っ、私もその……言い過ぎたわ。………ごめんなさい」
「ハイハイ♡ その誠意シカと受け取りましたともッ!……ローランドサマもそのお靴を舐めまショうか? お詫びです♡」
「いらん。貴様のそのきたねぇ顔面つらに蹴り込むぞ」
「んほォ、想像しただけで興奮しますゥ………ッ! さてさてさて、お話の続きですが」


 いつものふざけた調子を取り戻した彼奴は、床に這い蹲りながらビクビクと痙攣していたが、すぐさまケロッとしながら立ち直る。

 ふん、相変わらず掴み所の無い奴だ。まぁいい。さっさと言え、この変態。


「今回だけ特別にこの情報の金額は百万オーザにして差し上げましょう。いやいやいやお気になさらずにィ! これは先程の彼女へのお詫びと、色々知れたこと、それに将来の彼女に対する期待値を差し引いた、ワタクスィの少しばかりの気持ちですゥ!!」 


 彼奴は言葉を一旦きると、面白そうに唇を深く曲げて言葉を続けた。


「さてさてさて―――お仕事はなししましょうかァ♡」


 オレ様とドロシーはそう言い放ったハイドの言葉に耳を傾けてやるのだった。



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