オレ様傲慢王子は最強! ~王位継承権は低いが、精霊神が与えし最強の瞳を駆使して女を漁る~

ぽてさら

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第1章

第10話 『公爵令嬢の抵抗』

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 後日、シルヴィアの話してくれた情報を元に行動する為、さっそくオレ様は再び騎士団本部へと来ていた。
 以前は午後からの訪問になってしまったが、現在は太陽が真上に傾きつつある時間帯。丁度この時間ならば修練場にて第三騎士団の者共が鍛錬や演習を行なっている筈だ。各騎士団は時間ごとに訓練・演習時間が決められているからな。時には騎士団同士で連携し合同演習もしたりする。


 ………あぁ、言っていなかったな。我がイクシオン王国には第一騎士団から第五騎士団までの五つの騎士団が存在する。騎士団というと大分仰々しくなるが、云わば番号を付けられた『役割を持つ部隊』に過ぎないのが各騎士団の現状だ。

 何せ現在我が王国の騎士団員には優秀な人材が多いからな。………オレ様が幼い頃は現在よりも人員が少なく、第一部隊から第五部隊という名称で構成された一つの『王国騎士団』だったのだぞ?

 オレ様が昔、各部隊の人員の増強を提案したらすぐさま了承しさらに"部隊"よりも"騎士団"という名称に変更した方が士気も上がるだろうと謎解釈をしたクソ親父の提案だ。本当にワケがわからん。
 因みに各騎士団を統合した新正式名称は『王国聖騎士団ユナイト・オブ・レギオン』。………大変認めるのは癪だが、クソ親父のネーミングセンスだけは気に入っている。クソが。

 各部隊の名称や役割はまた今度教えてやる。我慢しろ。


 さて、第三騎士団の訓練ローテーション時間帯である修練場に再び足を踏み入れた訳だが………む、オレ様に無様に敗北したあの凡愚な道化の姿が見えんな。代わりに第三騎士団副団長(表)であるメルトが第三騎士団員に剣術の指導しているのがわかる。
 うむ、多対一の場合を想定とした訓練か。ドロシーも他の者に混じって研鑽に励んでいるようでなによりだ。


「………! みなさん訓練を中断して下さい。これから十分の休憩に入りますので各自身体を休めて下さい」


 オレ様の気配察知能力が抜群に高いメルトは修練場に来た瞬間から意識をこちらに向けていた。真っ先にオレ様に気が付いた点に関しては流石オレ様のメルトとしか言いようがないな。偉いぞ。

 凛とした声で指導していた騎士団員に休憩する旨を伝えると、そいつらは次々と崩れ落ちた。
 ………待て、およそ人間の重量が倒れたとは思えない音が地面に響いたんだがお前一体こいつらに何をして訓練させた?


「ローランド様、今日は格好良いですね。本日はいかがしまし………はっ、もしや私に会いたくてこちらに来たんですか?」
「半分正解だが、メルトの癖に調子に乗るな馬鹿者。あと今日も、だ」
「失礼、わざとです」


 水色の髪をポニーテールに纏めながら涼しげな表情でニッコリと口を曲げるメルト。背後には軽鎧を脱いだドロシーもついてきたが………む、何故不機嫌そうな顔なのだ? 

 ふん、まぁ良い。それにしてもオレ様がここに来た用件など分かりきっているだろうに………貴様はオレ様との言葉遊びが大好きだからな。王子として部下の軽口に付き合うのもまた一興だ。
 しかし、念のために聞いておこう。この馬鹿。


「メルト。おおよそ予想は付くが、貴様あいつらの軽鎧に何を仕込んだ?」
「んー? 何ってただの十、二十、三十キロから選べる鉄板ですよ。剣の素振りや少し走るだけでも適度な筋力負荷が掛かり、筋力増強にはぴったりな鍛錬法なので今回させています。もちろん、私も副団長の立場として見本にならなくてはいけないので、最高重度の五十キロの物を身に付けてますよ」
「………そうか」


 ふむ、まぁこいつらへのメルトの鍛錬方法に言いたいことが無い訳ではないが、実際この方法は有用だからな。第三騎士団の戦闘能力や機動力が上がるならば、王国を守る騎士としてこの程度の苦境は乗り越えて貰わなければいけないだろう。
 ………汗だくになりながら休憩しているあいつらの姿に称賛を送ってやる。喜べ貴様ら、お前らはいま非力な凡人を辞める為の壁にぶち当たっているぞ。乗り越えて一歩先を行く者へ成長するかどうか見物だな。


 あと敢えてここでは言わないがメルト―――貴様、オレ様と自分の鍛錬方法を基準に考えてあいつらを鍛えるなよ。人間、追い込まれた過度な負荷は簡単に払拭出来る訳ではない。ストレスで精神にまで届いて病んでしまったらどうくれる。オレ様はともかく、もし辞表を出す者がいて吹聴され騎士団の信用問題や世間のイメージ低下に繋がったらどうしてくれる。


「今度仕置きをたっぷりしてやるから覚悟しろ」
「………はい! いつでもどうぞ!」


 星を撒き散らしながら瞳を爛々とさせて喜ぶんじゃねぇよ。チッ、この脳筋ド変態野郎が。


シノアから・・・・・聞いている・・・・・だろうが、午後からアイツ・・・のところへ行く。問題ないな?」
「勿論です………と申し上げたいところですが、ローランド様。私たちの寮に侵入したシノアさんが帰られた後に思いついたのですが、今回は経験を積む意味合いを兼ねてドロシーを同行させてみたら如何でしょうか」
「ドロシーか、ふむ」
「………………………」


 未だオレ様の顔を見ようともせず視線を逸らしたままのドロシー。
おい、その方角には何の変哲も無い木々しかないぞ。オレ様が貴様を見ているというのに顔を合わせようとしないなど、鳥頭の癖に随分と生意気だな。
 しかし、確かにあの場所にドロシーを連れて行ったことは無いな。まぁ今後も利用する機会が増えるだろうからドロシーでも構わないか。


「そうだな、良い機会だろう。ドロシー、午後からオレ様と一緒にある場所へ行くぞ」
「………わかった」
「………おい不敬だぞ。良い加減オレ様に顔を向けろ。何を不機嫌に―――」
「―――触らないでっ!!」


 ぱしんっ、とオレ様の方へ顔を向かせようとドロシーの顎を持ち上げようとしたら手で弾かれた。思いがけない反応に思わず驚愕するが、ドロシーの反応を見る限り自分でも意図しない反射的な行動だったのだろう。
 震えるように僅かに掠れた声を洩らすと、目を彷徨わせる。


「っ、ぁ………ご、め………ッ、………行くからっ」
「おいドロシー! ………一体どうしたというのだ」
「ふふふ、これまでローランド様の為に私自ら戦闘技術を叩き込んできたとしても、彼女はいま多感なお年頃ですから。いくら公爵令嬢とて、夢見る乙女ならば自分だけを見ていて欲しいモノです」

 ドロシーは狼狽えたようにして走り去ると、メルトがどこか達観したようにその方向を見つめて呟いた。
 どういう意味だ。あとドロシーも貴様も大して歳は変わらんだろうに、何を先輩風吹かしてるんだ。お前のポニテを力いっぱい引っ張ってやろうか。………喜ぶだろうから逆効果か。


「いつもの集合場所は私がドロシーに伝えますので、そちらでローランド様は待っていて下さい。行くと言った以上、必ず約束は守る子ですから」
「………はぁ、わかった」


 メルトはあいつが不機嫌な理由を知っているみたいだな。『視て』も良いのだが、お前らに対しては極力『権能』は使いたくはない。
 心から信頼し、愛し、オレ様の背中を預けられる貴様らには特にな。


「では頼んだぞ」
「はい、ローランド様♡」


 アイツの反応は気になるが、ドロシーとの集合時間まで街を散策するとしよう。



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