オレ様傲慢王子は最強! ~王位継承権は低いが、精霊神が与えし最強の瞳を駆使して女を漁る~

ぽてさら

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第1章

第5話 『オレ様傲慢クソ王子の実力』

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 すっかりクソ親父の戯言に時間を食ったが、オレ様は改めて第二の目的である騎士団の修練場へと向かっていた。
 午後になってしまったが、恐らくはまだ訓練中だろう。

 一階のクソ長い廊下を歩きながら角を曲がると、王宮の近くに隣接されている騎士団本部の敷地に足を踏み入れる。
 そして修練場へ続く入口から中に入った瞬間、オレ様はその異様な光景に眉を顰めた。


「………どういう状況だ?」


 オレ様の目前に広がっているのは、騎士団に配属されたばかりである魔法学園期待のメーティス公爵家の才女『ドロシー•メーティス』と、第三騎士団長でもあり王国に古くから仕える由緒あるグラディウス公爵家の若き団長『ブラン•グラディウス』が距離をとって向き合っている場面だった。

 周囲には第三騎士団の面々がその様子をそわそわと興味ありげに見つめているが………まさかドロシーの実力を確かめる為とでも言うんじゃねぇだろうな。

 というかメルトは何してやがるんだ。審判の真似事をしてねぇでさっさと止めろよ。

 ………あいつ、もしやオレ様が入り口に立っていることを知りながらも続行しようとしてるな? オレ様からの視線に敏感な癖に一度も視線をこっちに向けようとしねぇ。それどころか笑いを堪えてやがる。

 ………良いだろう。



「おい、今から何が始まるのだ?」
「あぁ、これから指導という名目の団長のいびり―――ってぇ!ローランド様!?」


 反応が小物っぽいぞモブ顔の貴様。周りにいた騎士団員たちもこの男の反応で一斉にオレ様を見てきたではないか。鬱陶しい。

 有象無象どもが道を開けたので、対峙している二人の元へ歩み寄る。

 オレ様に最初に話しかけてきたのは肩まである茶髪を後ろへ掻き上げたブランだった。


「ロー………!」
「これはこれは、王位継承第十位のローランド様ではありませんか。仮にも王族で在ろう御方がこのようなむさ苦しい所へどのような用事ですかな?」
「何、我が国の"つるぎ"たる第三騎士団の訓練風景をこの目で確かめてみたかっただけだ」


 相変わらず白々しい態度だ。表面上では笑みを浮かべているが、この『瞳』を使わずとも態度から嫌悪感が滲み出ているのがわかるぞ。

 ………あとメルト、会話を遮られたからといって後ろでコイツに涼しい顔で殺意を込めるのは止めろ。気がつかない内にブランの後頭部が禿げていたらどうする。

 まぁどうでも良いが。


「それで、何故入団したばかりの彼女と対峙しているのだ? 理由を言え」
「理由、ですか。まぁ大したことではないのですが、貴族として到底無視出来ない戯言を言い放って来たものですからね。団長として急遽こうして教育的指導をしてあげようと考えた次第です」
「ほう、戯言か………。そこの女・・・・、何を申した?」


 敢えて他人のフリをしたが、ドロシーには外ではオレ様と会っても知らないフリをしろと話している。
 ………頬を紅潮させながら主張するように睨みつけるなよミス•バードヘッド、いや鳥女。怪しまれるだろうが。


「だってローランドッ………様。いくら名家であるグラディウス公爵家の子息だとしても、国の発展の一部を担う平民を守るべき貴族が平民を軽んじる発言は納得出来ません! ましてや使い潰しの効く道具など………!」
「事実でしょう。平民などいくらでも代わりはいるではありませんか。我々のように選ばれた貴族や王族の為に身を犠牲にしない下々に価値など皆無、碌に最低限の義務も果たせていないのに権利を主張するなど考えるだけでも反吐が出ますよ」


 ふむ、考え方の違い、か。

 ドロシーは公爵家での教育や学園内で身分の隔てを排した友人に恵まれたおかげか、『貴族と平民は支え合うモノ』という基本概念が深く根付いている。
 それに対しブランは根っからの『貴族至上主義』。王族と貴族を第一に考え行動し、平民の事など道端に生えているぺんぺん草程度にしか思わない典型的なパターンだろう。


「成る程、一理ある」
「なっ―――」
「しかし、オレ様の母は平民なのだが?」


 くくくっ、ドロシー。そうハトが豆鉄砲に撃たれたような愛らしい表情をするな。

 オレ様は誰よりも高貴で尊いが、オレ様もお前寄りの思考だ。安心しろ。


 オレ様は『降雷の魔女』と呼ばれた当時冒険者ギルドに所属するSSSランクとして活動していた平民の母から生まれた。息子であるオレ様から見ても国王の正妻や側室と比べられないほどの快活さと美人だったよ。

 名を『エレノア・クリスティア・シュガーレット』。………あ? スイーツと砂糖が混ざった結果さらに凝縮して出来た甘味みたいな名前だと? バカにしてんのか。

 王都で流行ってる(高カロリーな)タピタピ黒糖ミルクをたらふく飲ませてやろうか。

 ………あぁ、言っとくが本当の姓は『クリスティア』だからな。エレノア・クリスティア。母様は苛烈な性格の割にかなりの甘いもの好きでな。『名誉貴族』の称号を提案された際にその姓を強く推したんだ。


 さて、話を戻すぞ。


 経歴が凄まじく『名誉貴族』という名誉を賜われたとしても母様は元を辿れば平民だ。
 そこはどう弁明するつもりだ?………母様が平民というのは王国に住む者ならば周知の事実だからなぁ。


「本当に、私はそれが残念でなりません」
「あ?」
「何故アストレア王は『名誉貴族』とはいえ平民の女をお受けに迎え入れたのでしょう。折角王家が築き上げた由緒正しい血筋が汚れるではありませんか」


 ………。


「あぁ、勘違いなさらないで下さいローランド王子。例え平民の血が流れていようともそんな低俗な繋がりなど高貴な王家の血筋に比べたら些細な物。既に上塗りされてる筈でしょうし問題ありませんよ」


 ………………………。


「過去に功績を上げたとしても所詮は一介の平民冒険者。さぞや一生身に纏うことが無かったであろうドレスを着て舞い上がったことで―――」
「―――良く回る口だな」
「ッ、………」


 貴族至上主義故の思考と歪んだ私見が混合しているぞ。それが結果的に平民であろうとも母様を王家に迎えたアストレア王を侮辱している事に気がついていないのか。

 まぁ何にせよムカつくな。貴様の意見は万死に値する。
 言っておくがオレ様は冷静だ。―――あぁ、冷静だとも。

 オレ様はコイツに近づき言葉を吐き棄てた。


「ふん、どうやら妄言狂言に相当する戯言を吐いているのは貴様らしい。グラディウス公爵家は貴族としての責務はおろか、一般的な血の繋がりを勘違いしているようだ」
「このっ、『混ざり物』の分際で………!」


 ほう、オレ様自ら貴様の恥を今この場にいる皆に晒したというのに王子であるオレ様へ小さな声で言い返す胆力が残っていたか。下種の割にはと褒めて遣わそう。

 丁度良い。


「喜べ、特別にオレ様がドロシーの代わりに相手してやろう。その方が、貴様も都合が良いだろう?」
「………良いでしょう。王族とて手加減は出来ませんので御容赦を」


 おーおー目をぎらつかせやがって。もう少し敵意を上手く隠せよ。駄々つく赤子のようだぞ?

 オレ様は貴様を叩きのめせる、貴様はこの状況を利用してオレ様に挑むことが出来る。正に美味しい場面だろう?


「メルト副団長、合図しろ」
「かしこまりました、ローランド様」


 心なしか嬉しそうだなお前。そういえば団長であるブランが職権濫用してお前に色目を使ってきてぶっ殺したいと言ってたものな。


 実際に今もメルトへチラチラと視線を向けている。


「見ていて下さいメルト殿。誇り高き貴族として研鑽したこの剣技、貴方にも捧げましょう!」
「はぁ」


 平民はおろか母様まで侮辱した挙句、オレ様のモノである部下に色を向ける余裕があるか。

 好意を寄せる相手に良い格好をしたい感情はわからないでもないが、脈の有無を見極められるようにならなければな。一方通行では何も実りはないぞ。

 つくづく気の触る野郎だ。


「では両者一定の距離を置き、位置について下さい」
「ローランド様は模擬剣を使わず素手で宜しいので?」
「必要ない。貴様は自由に使え」
「………では遠慮なく」


 手元にある模擬剣を構えたブラン。同時に目付きや身に纏う雰囲気が先ほどより鋭くなった。ほんの少しだけ、な?


「それでは決闘………開始ッ!」
「―――シッ!!」


 メルトの宣言と同時に攻め込んできたか。まぁここ三年団長を務めただけあって瞬発力判断力は並ではないか。一気に懐へ潜り込んできた。

 だが、オレ様には遠く及ばない。


「『右肩を抉る突き』」
「………なっ!?」


 言質は取っていたので速攻で決めようとしたのだろう。だがそれを読んでいたオレ様は最小限の動きで華麗に避けた。

 ほら、勢い付いてつんのめってないでもっと泥臭く無様にかかって来い。まぁオレ様がこの『真実の瞳』の権能の一部を行使する限り、貴様の勝利は有り得ないがな。

 『頭部を狙ったブラフ』『脇腹への突き』『左肩への振り落とし』『回転による遠心力が込められた袈裟懸け』………。

 おいおいおい、何を動揺しているんだよ。このくらいで焦った表情をするなよ。



「くっ………!? 何故、何故当たらない………!? この私の華麗な剣技が、こんな放浪王子になんぞに………!?」
「生憎とオレ様は『眼』が良いんだよ。護身術程度ならば鍛えているからな」
「チィ、良い気になって………!」


 ふん、誇り高き貴族の剣技? 華麗? ………広言も大概にしろよこの愚図が。凡愚の児戯などこのオレ様には通用せぬわ。貴様の鈍い行動パターンなど『感情』や『思考』を読み取らずとも回避出来る。


 『真実の瞳』は人間の肉眼とは異なり精霊で構成されているからなぁ。意識させれば視界の情報処理速度を上昇させることも可能だ。今回はそれだけを使用している。

 コイツブランには決して言うなよ?


 さて、そろそろ頃合いか。コイツにとっては僅かな疲労だろうが、それが蓄積される事により剣先の鋭さや精度も落ちて来た。

 オレ様はコイツが近づいて来た瞬間を狙って鳩尾部分に足蹴りを行う。

 思ったよりも派手に吹き飛ばされた姿を見つつ、呟いた。


「ぐふっ………!」
「ふむ。余興もこの程度で良いだろう。これで終いだ」
「は、ははっ。偶然放った脚の当たりどころがたまたま良かった程度で何を言って………っ」


 そうか、偶然に見えたか。ならば貴様にもう用はない。

 オレ様は勝負始めに先制攻撃を仕掛けて来たブランよりも更に敏捷な動きで懐へ潜り込むと、


「―――次調子に乗ったら、覚悟しろよ?」
「ひっ………ぶへぇッ!!」


 腕を大きく振りかぶると顔面に拳を勢い良く叩きつけた。

 ブランは貴族には似つかわしくない家畜のような悲鳴を上げると、面白いほど滑稽に転がる。ピクリともしない為、どうやら気絶したようだ。

 ふう。正直まだまだ鬱憤は溜まっているし全然殴り足りないが―――貴族であるコイツをこれ以上追撃したとしたら、弱い者イジメ・・・・・・になってしまうよなぁ?

 ………メルト。スッキリしたような顔してねぇでさっさと勝者を告げろ。


「この勝負、団長の気絶により戦闘不能。ローランド様の勝利ですッ!」



 はっ、当たり前だ。




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