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3日目は勘違い

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 まるで、乾いたスポンジが水を吸収するみたいに、彼は私に快感を与える技を身に着けていく。

 そのスポンジも並の大きさではなくて、特大級だ。

 

 「もう、やめて・・・無理・・・これ以上は・・・」
「夜は俺の好きにさせてもらうって言っただろう」
「う・・・だけど、でも・・・もう・・・」

 口では抵抗しているけど、夫の静まらないモノを受け入れてしまったら、私の口から洩れるのは熱っぽい喘ぎになる。
 彼は睦み事を楽しむ余裕ができている。
 最初の頃の不安気な様子はどこにもない。普段の自信満々さが睦み事の中にも現れてきている。
 それが私にはしゃくにさわる。
 昼間はむしろ冷たいと思えるほど素っ気ない私が、ベッドの中では、彼の唇を、舌を、指を、そして・・・熱いモノを、
 求めて懇願してしまう。それをこの上ない満足感を得たみたいな表情で見ている彼が憎ったらしい。
 いったん体が受け入れてしまうと、私になすすべはなく、浅く、深く、優しく、激しく、彼の動きに奔走される。

 昼間、我慢させるとその分の反動が夜にくる。
 かと言って、昼間にやれるわけはない。そこまで非常識な人間じゃないのだ、私は。
 いや、昼間にやる人間が非常識というのは語弊があった。そういうのじゃなくて、私は昼間は女王として、国のことだけを考えていたいのだ。
 自分を律しなければ、たやすく彼との甘い営みに堕ちてしまいそうなのだ。
 そして、実は彼だって分かってる。求めてくるのは、私がはねつけるのが分かってるからだ。
 それを楽しんでるだけなのだ。
 
 彼の動きが単調になった。ただ放ちたいがための余裕のない動き。
 悦楽に達するための苦行のように、きれいな顔が苦し気に歪む。
 私の好きな表情だ。
 いっしょに到達するのは身も心も繋がりたいという心理なのだろうか。私も、彼と同調して悦楽に身を任せる。
  
 放たれた精は体の奥深く、刻まれる愛の刻印のようだ。

 「レーナ・・・頼みがある」
 達した後の気怠いまどろみをキリウスの声が破った。
「ん?なに?」
「・・・一度だけでいいから・・・」
「ん?」
「・・・・・少しでいいから」
「・・・・・・」
 彼が言い澱んでいるときは私に対する罪悪感があるときだ。警戒するように体が強張った。
「いや、やっぱり、いい」
 いい、とは言ったけど彼の顔は未練がましい。
「・・・なに?気になるからちゃんと言って」
「・・・言っても怒らないか?」
「・・・・・・怒らない」
 約束はできないけど、と心の中でつぶやいて、私はそう答えた。
「舐めて・・・欲しい」
「・・・・?何を」
「だから・・・いや、もういい」
 彼が落ち込んだように目を伏せた。
 舐める・・・って。舐める?どこを
「あ」
 うかつだった。こういう行為って久しぶりだったから、してあげるのをスッカリ忘れていた。
「舐めてほしいの?」
 わざとあどけない口調で聞いてみた。キリウスに翻弄されっぱなしはしゃくだったから、ちょっと意地悪な気分になっている。
「いや、無理にとは言わない」
 どうかな?して欲しいって顔だよ?表情丸わかりなのが面白い。
 私は無言で体をずらして彼の股間に顔を持っていった。立て続けの酷使だったので、さすがに彼のモノもフルチャージ状態とはいえない。
「レーナ!?ナニを舐めるつもりだ」
 頭の上からするキリウスの声が狼狽してる。
「え?ナニって・・・ナニでしょ?」
「いや、俺が言ったのは指・・・いや・・・まさか、そんなモノを高貴な貴女に舐めさせるわけには・・・」
 そんなモノって散々そんなモノで弄んどいて・・・てか、え?
「舐めて欲しかったのコレじゃないの?」
「・・・・・・・・」
 キリウスの心の葛藤が聞こえる。紳士(いまさら)としてここは否と言うべきか、欲望のままに応と言うべきか。
 ・・・・・・・・
 心の状態はともかく、体は正直だった。私が手を添えたソレはシッカリと反応して、舐めて欲しいアピールをしている。
 これ以上じらしたら可哀想だな。
 私は先端をかわいらしく仔犬が舐めるみたいにしてあげた。
「あっ・・・」
 彼の長身が大きく震えた。
 たしか漫画では・・・こういう風にしたら男の人は感じるんだよね?って奴を試してみる。(どういう漫画を読んでるんだって、我ながら恥ずかしいけど)
「レーナ・・・やめっ・・・」
 キリウスが呻いた。やっぱりその声はゾクゾクして、私は悪魔的な気分になってしまう。
 彼が私にするみたいに、優しくしたり、荒々しくしたり。
 そのたびに、反応して呻き声をあげるのが、愛しい。喘ぐ声がたまらなく気持ちいい。
 そうか、彼も私にしているときはこんな気持ちなのだ・・・
 
 「レーナ・・・もう・・・!」
 彼が私の頭を強く押さえた。それが合図だったかのように、私の口の中に苦い物が溢れた。
 嚥下するには口の中に溢れすぎていて、私は苦しくなってゲホゲホとむせてしまった。
「すまない」
 荒く息をしながら、キリウスが詫びた。
「・・・・・抱いてもいいか?」
 私が怒っていると思ってるのか、彼が遠慮がちに言う。私は頷くとキリウスのまだ大きく上下している胸に頬をすり寄せた。
「すまなかった」
 キリウスの声は心底落ち込んでいるように思えた。
 謝る必要などないと思うけど、たぶん、彼の中ではとんでもないことだったのだろう。
「私がしてあげたいって思ったの・・・だから・・・」
 悪いと思わないで、という最後の言葉は声にならなかった。キリウスの胸の鼓動が心地よく耳に響いて、疲れた体に眠りを誘った。
 
 「ありがとう」
 と、聞こえたような気がした。

 夢の中で聞いた声なのかもしれないけど。



  完
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