異之国奇譚番外編~OL女王のご寵愛召しませ~

月乃 影

文字の大きさ
上 下
5 / 5

3日目は勘違い

しおりを挟む
 まるで、乾いたスポンジが水を吸収するみたいに、彼は私に快感を与える技を身に着けていく。

 そのスポンジも並の大きさではなくて、特大級だ。

 

 「もう、やめて・・・無理・・・これ以上は・・・」
「夜は俺の好きにさせてもらうって言っただろう」
「う・・・だけど、でも・・・もう・・・」

 口では抵抗しているけど、夫の静まらないモノを受け入れてしまったら、私の口から洩れるのは熱っぽい喘ぎになる。
 彼は睦み事を楽しむ余裕ができている。
 最初の頃の不安気な様子はどこにもない。普段の自信満々さが睦み事の中にも現れてきている。
 それが私にはしゃくにさわる。
 昼間はむしろ冷たいと思えるほど素っ気ない私が、ベッドの中では、彼の唇を、舌を、指を、そして・・・熱いモノを、
 求めて懇願してしまう。それをこの上ない満足感を得たみたいな表情で見ている彼が憎ったらしい。
 いったん体が受け入れてしまうと、私になすすべはなく、浅く、深く、優しく、激しく、彼の動きに奔走される。

 昼間、我慢させるとその分の反動が夜にくる。
 かと言って、昼間にやれるわけはない。そこまで非常識な人間じゃないのだ、私は。
 いや、昼間にやる人間が非常識というのは語弊があった。そういうのじゃなくて、私は昼間は女王として、国のことだけを考えていたいのだ。
 自分を律しなければ、たやすく彼との甘い営みに堕ちてしまいそうなのだ。
 そして、実は彼だって分かってる。求めてくるのは、私がはねつけるのが分かってるからだ。
 それを楽しんでるだけなのだ。
 
 彼の動きが単調になった。ただ放ちたいがための余裕のない動き。
 悦楽に達するための苦行のように、きれいな顔が苦し気に歪む。
 私の好きな表情だ。
 いっしょに到達するのは身も心も繋がりたいという心理なのだろうか。私も、彼と同調して悦楽に身を任せる。
  
 放たれた精は体の奥深く、刻まれる愛の刻印のようだ。

 「レーナ・・・頼みがある」
 達した後の気怠いまどろみをキリウスの声が破った。
「ん?なに?」
「・・・一度だけでいいから・・・」
「ん?」
「・・・・・少しでいいから」
「・・・・・・」
 彼が言い澱んでいるときは私に対する罪悪感があるときだ。警戒するように体が強張った。
「いや、やっぱり、いい」
 いい、とは言ったけど彼の顔は未練がましい。
「・・・なに?気になるからちゃんと言って」
「・・・言っても怒らないか?」
「・・・・・・怒らない」
 約束はできないけど、と心の中でつぶやいて、私はそう答えた。
「舐めて・・・欲しい」
「・・・・?何を」
「だから・・・いや、もういい」
 彼が落ち込んだように目を伏せた。
 舐める・・・って。舐める?どこを
「あ」
 うかつだった。こういう行為って久しぶりだったから、してあげるのをスッカリ忘れていた。
「舐めてほしいの?」
 わざとあどけない口調で聞いてみた。キリウスに翻弄されっぱなしはしゃくだったから、ちょっと意地悪な気分になっている。
「いや、無理にとは言わない」
 どうかな?して欲しいって顔だよ?表情丸わかりなのが面白い。
 私は無言で体をずらして彼の股間に顔を持っていった。立て続けの酷使だったので、さすがに彼のモノもフルチャージ状態とはいえない。
「レーナ!?ナニを舐めるつもりだ」
 頭の上からするキリウスの声が狼狽してる。
「え?ナニって・・・ナニでしょ?」
「いや、俺が言ったのは指・・・いや・・・まさか、そんなモノを高貴な貴女に舐めさせるわけには・・・」
 そんなモノって散々そんなモノで弄んどいて・・・てか、え?
「舐めて欲しかったのコレじゃないの?」
「・・・・・・・・」
 キリウスの心の葛藤が聞こえる。紳士(いまさら)としてここは否と言うべきか、欲望のままに応と言うべきか。
 ・・・・・・・・
 心の状態はともかく、体は正直だった。私が手を添えたソレはシッカリと反応して、舐めて欲しいアピールをしている。
 これ以上じらしたら可哀想だな。
 私は先端をかわいらしく仔犬が舐めるみたいにしてあげた。
「あっ・・・」
 彼の長身が大きく震えた。
 たしか漫画では・・・こういう風にしたら男の人は感じるんだよね?って奴を試してみる。(どういう漫画を読んでるんだって、我ながら恥ずかしいけど)
「レーナ・・・やめっ・・・」
 キリウスが呻いた。やっぱりその声はゾクゾクして、私は悪魔的な気分になってしまう。
 彼が私にするみたいに、優しくしたり、荒々しくしたり。
 そのたびに、反応して呻き声をあげるのが、愛しい。喘ぐ声がたまらなく気持ちいい。
 そうか、彼も私にしているときはこんな気持ちなのだ・・・
 
 「レーナ・・・もう・・・!」
 彼が私の頭を強く押さえた。それが合図だったかのように、私の口の中に苦い物が溢れた。
 嚥下するには口の中に溢れすぎていて、私は苦しくなってゲホゲホとむせてしまった。
「すまない」
 荒く息をしながら、キリウスが詫びた。
「・・・・・抱いてもいいか?」
 私が怒っていると思ってるのか、彼が遠慮がちに言う。私は頷くとキリウスのまだ大きく上下している胸に頬をすり寄せた。
「すまなかった」
 キリウスの声は心底落ち込んでいるように思えた。
 謝る必要などないと思うけど、たぶん、彼の中ではとんでもないことだったのだろう。
「私がしてあげたいって思ったの・・・だから・・・」
 悪いと思わないで、という最後の言葉は声にならなかった。キリウスの胸の鼓動が心地よく耳に響いて、疲れた体に眠りを誘った。
 
 「ありがとう」
 と、聞こえたような気がした。

 夢の中で聞いた声なのかもしれないけど。



  完
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

処理中です...