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殺人現場に詩をそえて
【圭】再訪
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あるマンションの5階、502号室。圭は3年経っても昨日のように覚えていた。
圭がインターフォンを押すと、「け、刑事さん!?」と驚きの声がした。
「すみません、お伺いしたいことがありまして……」と圭。
「3年前のことですか? 知っていることは、全部話したはずですけれど……」
圭は手短に事情を話す。
「それって、つまり、私を疑っているということですか?」舞さんの声には、怒りが込められていた。
「違います。舞さん、あなたが秋葉夫妻から借金をしていたことは聞いています。でも、今日はそのことで来たわけじゃないです。あなたも秋葉夫妻と顔見知りだったはずです。秋葉夫妻の情報が欲しいんです」
圭の想いが伝わったのか、扉のロックを外す音が聞こえた。そして、舞さんが顔を出す。
「上がってください」その声は、前回とは違い、自信に満ち溢れていた。
圭たちが部屋に上がる。3年前とは違いゴミは片づけられ、質素だが清潔感があった。
そして、当然、舞さんにあざはない。DVをしていた男はマッドグリーンによって殺されたのだから。奴の殺人により、ある意味で舞さんは救われたわけだ。なんという皮肉だろうか。もちろん、マッドグリーンを許すわけにはいかないが。
ソファーに座ると、氷室先輩が切り出した。
「前置きなしでお聞きします。秋葉夫妻のことで知っていることをお話ください」
「私が娘さんより詳しいとは思えませんが……。そうですね、一人娘の凛さんですが、実はホストに入り浸っていて。『お父さんに言っても、お金を貸してくれない!』と話していたかと思います」凛さんは自信なさげに喋る。
「でも、赤の他人の舞さんにはお金を貸していたわけですよね? 何か理由があるのでしょうか?」圭はそこが引っかかった。
「それはですね……。以前、渡さんを助けたことがあるんです。あれは、去年のことでした。あの方は目が不自由でしょう? 目が不自由になったのは、病気が原因なんです。ですから、白杖の使い方に慣れていなくて、危うく駅のホームから落ちるところだったんです。それを助けたのがきっかけでした」
なるほど、秋葉夫妻は命の恩人である舞さんだからこそ、お金を貸していたのか。一方、一人娘の凛さんは、喉から手が出るほど、お金が欲しかったに違いない。つまり、遺産目的での殺人は十分にあり得る。でも、犯行文が緑色であることの説明がつかない。
結局、その日に圭たちが得られた情報はそれだけだった。
圭がインターフォンを押すと、「け、刑事さん!?」と驚きの声がした。
「すみません、お伺いしたいことがありまして……」と圭。
「3年前のことですか? 知っていることは、全部話したはずですけれど……」
圭は手短に事情を話す。
「それって、つまり、私を疑っているということですか?」舞さんの声には、怒りが込められていた。
「違います。舞さん、あなたが秋葉夫妻から借金をしていたことは聞いています。でも、今日はそのことで来たわけじゃないです。あなたも秋葉夫妻と顔見知りだったはずです。秋葉夫妻の情報が欲しいんです」
圭の想いが伝わったのか、扉のロックを外す音が聞こえた。そして、舞さんが顔を出す。
「上がってください」その声は、前回とは違い、自信に満ち溢れていた。
圭たちが部屋に上がる。3年前とは違いゴミは片づけられ、質素だが清潔感があった。
そして、当然、舞さんにあざはない。DVをしていた男はマッドグリーンによって殺されたのだから。奴の殺人により、ある意味で舞さんは救われたわけだ。なんという皮肉だろうか。もちろん、マッドグリーンを許すわけにはいかないが。
ソファーに座ると、氷室先輩が切り出した。
「前置きなしでお聞きします。秋葉夫妻のことで知っていることをお話ください」
「私が娘さんより詳しいとは思えませんが……。そうですね、一人娘の凛さんですが、実はホストに入り浸っていて。『お父さんに言っても、お金を貸してくれない!』と話していたかと思います」凛さんは自信なさげに喋る。
「でも、赤の他人の舞さんにはお金を貸していたわけですよね? 何か理由があるのでしょうか?」圭はそこが引っかかった。
「それはですね……。以前、渡さんを助けたことがあるんです。あれは、去年のことでした。あの方は目が不自由でしょう? 目が不自由になったのは、病気が原因なんです。ですから、白杖の使い方に慣れていなくて、危うく駅のホームから落ちるところだったんです。それを助けたのがきっかけでした」
なるほど、秋葉夫妻は命の恩人である舞さんだからこそ、お金を貸していたのか。一方、一人娘の凛さんは、喉から手が出るほど、お金が欲しかったに違いない。つまり、遺産目的での殺人は十分にあり得る。でも、犯行文が緑色であることの説明がつかない。
結局、その日に圭たちが得られた情報はそれだけだった。
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