上 下
23 / 27
殺人現場に詩をそえて

【圭】再訪

しおりを挟む
 あるマンションの5階、502号室。圭は3年経っても昨日のように覚えていた。


 圭がインターフォンを押すと、「け、刑事さん!?」と驚きの声がした。


「すみません、お伺いしたいことがありまして……」と圭。


「3年前のことですか? 知っていることは、全部話したはずですけれど……」


 圭は手短に事情を話す。


「それって、つまり、私を疑っているということですか?」舞さんの声には、怒りが込められていた。


「違います。舞さん、あなたが秋葉夫妻から借金をしていたことは聞いています。でも、今日はそのことで来たわけじゃないです。あなたも秋葉夫妻と顔見知りだったはずです。秋葉夫妻の情報が欲しいんです」


 圭の想いが伝わったのか、扉のロックを外す音が聞こえた。そして、舞さんが顔を出す。


「上がってください」その声は、前回とは違い、自信に満ち溢れていた。


 圭たちが部屋に上がる。3年前とは違いゴミは片づけられ、質素だが清潔感があった。


 そして、当然、舞さんにあざはない。DVをしていた男はマッドグリーンによって殺されたのだから。奴の殺人により、ある意味で舞さんは救われたわけだ。なんという皮肉だろうか。もちろん、マッドグリーンを許すわけにはいかないが。


 ソファーに座ると、氷室先輩が切り出した。


「前置きなしでお聞きします。秋葉夫妻のことで知っていることをお話ください」


「私が娘さんより詳しいとは思えませんが……。そうですね、一人娘の凛さんですが、実はホストに入り浸っていて。『お父さんに言っても、お金を貸してくれない!』と話していたかと思います」凛さんは自信なさげに喋る。


「でも、赤の他人の舞さんにはお金を貸していたわけですよね? 何か理由があるのでしょうか?」圭はそこが引っかかった。


「それはですね……。以前、渡さんを助けたことがあるんです。あれは、去年のことでした。あの方は目が不自由でしょう? 目が不自由になったのは、病気が原因なんです。ですから、白杖の使い方に慣れていなくて、危うく駅のホームから落ちるところだったんです。それを助けたのがきっかけでした」


 なるほど、秋葉夫妻は命の恩人である舞さんだからこそ、お金を貸していたのか。一方、一人娘の凛さんは、喉から手が出るほど、お金が欲しかったに違いない。つまり、遺産目的での殺人は十分にあり得る。でも、犯行文が緑色であることの説明がつかない。




 結局、その日に圭たちが得られた情報はそれだけだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

蠱惑Ⅱ

壺の蓋政五郎
ミステリー
人は歩いていると邪悪な壁に入ってしまう時がある。その壁は透明なカーテンで仕切られている。勢いのある時は壁を弾き迷うことはない。しかし弱っている時、また嘘を吐いた時、憎しみを表に出した時、その壁に迷い込む。蠱惑の続編で不思議な短編集です。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

特殊捜査官・天城宿禰の事件簿~乙女の告発

斑鳩陽菜
ミステリー
 K県警捜査一課特殊捜査室――、そこにたった一人だけ特殊捜査官の肩書をもつ男、天城宿禰が在籍している。  遺留品や現場にある物が残留思念を読み取り、犯人を導くという。  そんな県警管轄内で、美術評論家が何者かに殺害された。  遺体の周りには、大量のガラス片が飛散。  臨場した天城は、さっそく残留思念を読み取るのだが――。

蒼き航路

きーぼー
ミステリー
 新妻と共に新婚旅行の船旅を満喫していた男に、突然の災難が訪れる。なんと彼は旅行中に倒れ、その間の記憶をすっかり失ってしまったのだ。その上、帰国した彼に更に追い討ちをかけるかの様に、ある事実が告げられる。それは彼の元恋人だった女性が、何者かによって殺されたという衝撃の事実だった。果たして彼女を殺したのは誰なのか?アリバイ崩しを主眼とした本格ミステリー。是非、御一読下さい。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

処理中です...