5 / 5
アメリカの逆襲そして和平へ
しおりを挟む
1942年4月18日のことだった。東京で空襲警報が鳴ったのは。
「坂崎、お前はどう考える?」と飯田。
「敵軍の行動はおかしいです。こちらの兵站を叩かずに、都市部のみ爆撃する。何か……何かの意図があるに違いありません」
「何かの意図か」
「私が考えるに、士気を下げるのが目的ではないでしょうか。そして敵国では『日本の本土襲撃に成功した』と発表する。これで日米の士気が逆転するかもしれません」
「なるほど」
「そこで……私はアメリカとの和平を提案します」
「和平だと!? お前は何を考えている! 今回の攻撃で我が軍が受けた被害はない。いくら本土を空襲されたとはいえ、ここで和平などありえん」
「戦果が不十分でも、速やかに終結し、戦争目的を達成すべし。これは『孫子』に書いてある言葉です。ハワイのオアフ島襲撃で撃沈したのは戦艦のみ。空母に損害は出ていません。つまり、敵軍が制空権を握る可能性も考えるべきです」
「坂崎、お前は天狗になってないか? 自分の思い描いたストーリー通りに戦争が有利に進んでいると。我々が勝利を重ねているのは、前線で戦っている者たちの犠牲があってこそだ。和平なぞしたら、犠牲者の遺族にどう説明する? 『あなたの家族は犬死にしました』とでも言えと?」
「私は考えを曲げることはしません。速やかに和平を結ぶべきです。今なら、我々に有利に進められます。しかし、敵軍の逆襲が始まれば、それこそ犠牲者に申し訳が立ちません」
「確かに一理ある。だが、どのように進言するべきか……」
飯田がうなっている時だった。
「では、こうしましょう。次の海戦で大敗すれば和平を結ぶ。大勝すればこのまま戦争を続ける。もし、大敗すれば和平の機会を逃します」
「それで上が納得してくれるか……」
ひとまず進言しよう、それが飯田の考えだった。
1942年6月5日。ミッドウェー海戦で大日本帝国は大敗を喫した。悪い意味で坂崎の予想が当たってしまった。
天皇陛下の結論は「和平を結ぶべし」であった。
和平を提案した坂崎は後ろ指を指されるかもしれない。そんなことは坂崎には関係なかった。国民の犠牲を最小限に食い止めた。それだけで十分だった。坂崎の勲章としては。
「坂崎、お前はどう考える?」と飯田。
「敵軍の行動はおかしいです。こちらの兵站を叩かずに、都市部のみ爆撃する。何か……何かの意図があるに違いありません」
「何かの意図か」
「私が考えるに、士気を下げるのが目的ではないでしょうか。そして敵国では『日本の本土襲撃に成功した』と発表する。これで日米の士気が逆転するかもしれません」
「なるほど」
「そこで……私はアメリカとの和平を提案します」
「和平だと!? お前は何を考えている! 今回の攻撃で我が軍が受けた被害はない。いくら本土を空襲されたとはいえ、ここで和平などありえん」
「戦果が不十分でも、速やかに終結し、戦争目的を達成すべし。これは『孫子』に書いてある言葉です。ハワイのオアフ島襲撃で撃沈したのは戦艦のみ。空母に損害は出ていません。つまり、敵軍が制空権を握る可能性も考えるべきです」
「坂崎、お前は天狗になってないか? 自分の思い描いたストーリー通りに戦争が有利に進んでいると。我々が勝利を重ねているのは、前線で戦っている者たちの犠牲があってこそだ。和平なぞしたら、犠牲者の遺族にどう説明する? 『あなたの家族は犬死にしました』とでも言えと?」
「私は考えを曲げることはしません。速やかに和平を結ぶべきです。今なら、我々に有利に進められます。しかし、敵軍の逆襲が始まれば、それこそ犠牲者に申し訳が立ちません」
「確かに一理ある。だが、どのように進言するべきか……」
飯田がうなっている時だった。
「では、こうしましょう。次の海戦で大敗すれば和平を結ぶ。大勝すればこのまま戦争を続ける。もし、大敗すれば和平の機会を逃します」
「それで上が納得してくれるか……」
ひとまず進言しよう、それが飯田の考えだった。
1942年6月5日。ミッドウェー海戦で大日本帝国は大敗を喫した。悪い意味で坂崎の予想が当たってしまった。
天皇陛下の結論は「和平を結ぶべし」であった。
和平を提案した坂崎は後ろ指を指されるかもしれない。そんなことは坂崎には関係なかった。国民の犠牲を最小限に食い止めた。それだけで十分だった。坂崎の勲章としては。
1
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

大日本帝国領ハワイから始まる太平洋戦争〜真珠湾攻撃?そんなの知りません!〜
雨宮 徹
歴史・時代
1898年アメリカはスペインと戦争に敗れる。本来、アメリカが支配下に置くはずだったハワイを、大日本帝国は手中に収めることに成功する。
そして、時は1941年。太平洋戦争が始まると、大日本帝国はハワイを起点に太平洋全域への攻撃を開始する。
これは、史実とは異なる太平洋戦争の物語。
主要登場人物……山本五十六、南雲忠一、井上成美
※歴史考証は皆無です。中には現実性のない作戦もあります。ぶっ飛んだ物語をお楽しみください。
※根本から史実と異なるため、艦隊の動き、編成などは史実と大きく異なります。
※歴史初心者にも分かりやすいように、言葉などを現代風にしています。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記
颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。

近衛文麿奇譚
高鉢 健太
歴史・時代
日本史上最悪の宰相といわれる近衛文麿。
日本憲政史上ただ一人、関白という令外官によって大権を手にした異色の人物にはミステリアスな話が多い。
彼は果たして未来からの転生者であったのだろうか?
※なろうにも掲載

宣託の乙女
雨宮 徹
歴史・時代
時代は中世ヨーロッパ。フランスの北部地方のフランドルに住む少年ジャンと幼馴染のクラリスは平和に暮らしていた。しかし、クラリスが宣託をした日から、運命の歯車が狂い出す。

浅井長政は織田信長に忠誠を誓う
ピコサイクス
歴史・時代
1570年5月24日、織田信長は朝倉義景を攻めるため越後に侵攻した。その時浅井長政は婚姻関係の織田家か古くから関係ある朝倉家どちらの味方をするか迷っていた。
旧式戦艦はつせ
古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

本能のままに
揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった
もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください!
※更新は不定期になると思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる