荷物持ちの苦労人、一国の神様に成り上がる

雨宮 徹

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モテすぎて二度殺されちゃった

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 いざ、因幡の国に着くと、ヤガミヒメという女神がこう言った。

「あなた方は私を好きなようですが、言うことは聞きません。オオクニヌシとか結婚します!」

 おいおい、ウサギの言う通りになったぞ。後から礼でもしておくか。まあ、また会えればだがな。

 それは置いておくとして、なんか兄弟からすごく睨まれているんだが気のせいか?


◇  ◇  ◇


「オオクニヌシの奴、荷物持ちのくせにモテやがって」

「やっぱり、おかしいよな兄弟」

「あんな奴、死んでしまえ!」

「俺に妙案がある」


◇  ◇  ◇


「なあ、オオクニヌシ」

「なんだ兄弟? ヤガミヒメの件なら諦めろ」

 まったく、懲りない兄弟たちだ。ヤガミヒメ本人が俺を指名したんだ、文句言われてもいい迷惑だ。

「それがな、この近くの山に赤い猪がいるらしい。俺たちが麓まで追い回すから、お前は麓でそいつを捕まえろ。もし失敗したら……お前を殺す」

 猪を捕まえ損ねたら殺す!? とんでもない話だ。まあ、俺の腕力なら大丈夫だろう。

「兄弟の頼みだ、やってやるぜ」


◇  ◇  ◇


 いやぁ、それにしても兄弟も物騒なことを考えるな。猪を捕まえられなければ殺すなんて。


 ボケーっと考えていると、山頂から赤い物体がこっちに向かってくる! こいつが噂の赤い猪に違いない! なんだ、思ったより小さいじゃないか。これなら楽勝……まて、これは猪じゃない、火がついた大石だ! まずい、このままでは焼け死ぬ。早く離さなければ、俺は……。


◇  ◇  ◇


 俺が目覚めるとそこは天国……ではなかった。なんとか死なずに済んだらしい。もしくは、一度死んだが蘇生されたか。

「おお、オオクニヌシ、目が覚めたか」

 俺を殺そうとした兄弟たちが俺の周りを囲んでいた。本当なら1人残らず殺してやりたいが、多勢に無勢、それは無理な話だ。

「オオクニヌシ、また山に行ってみないか? 面白い噂があってな」

 面白い噂? ろくでもない兄弟のことだ、どうせまた俺を殺そうとしているに違いない。だが、断る理由が見つからない。

「よし、決まりだ。さっそく山へ行こうぜ!」


◇  ◇  ◇


 いざ山に来たものの、何も面白いものは見当たらない。

「おい、兄弟。この山のどこに面白いものがあるんだ?」

 振り向きざまに聞く。

「それはな……お前の死体が転がるっていう話だよ!」

 次の瞬間、俺は木に挟まれて死んだ。


◇  ◇  ◇


 おかしい、確かに木に挟まれて死んだはずなのに、体の自由がきく。どういうことだ?

 そんな疑問を打ち消すかのように、こんな言葉が聞こえてきた。

「あなたは兄弟の嫉妬を買っています。このままでは死んでしまうでしょう。いいですか、スサノオという方がいる根の国へ行きなさい。きっと妙案を提案してくださるでしょう」

 いや、死ぬも何も俺の間違いじゃなければ、二度死んでいるはずだが……。まあ、このままでは俺はもたないだろう。ひとまず、天の声のままにするか。
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