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終結
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「くそ、奴ら、フランス軍に情報を伝えたらしいな」
僕たちはフランス軍によって、牢獄に入れられていた。見張りは二人。しかし、牢獄の中からでは手も足も出せない。
「ねえ、デュランさん。僕たちどうなるの?」
「そうだな……。まず、間違いなくクラリスの宣託を聞きたがるだろうな。まあ、宣託だから、そんな都合よく聞けるはずはないとは思うが……」
「あの、フランス軍は私にしか興味がないのよね? その……もしかしたら、二人は……」
僕はクラリスの言いたいことが分かった。そう、彼女さえいればいいのだ。僕たちはすぐに殺されるに違いない。
「くそ、これが八方塞がりってやつか。こんな絶望感を味わったのは初めてだぜ」
いよいよ、クラリスとお別れか。でも、悔いはない。クラリスは生き残るだから。その時だった。ある作戦を思いついたのは。
「ちょっと、聞いてくれる?」
僕は兵士たちに聞こえないほどの小声でしゃべる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「なるほど、そいつは妙案だ! それなら、ここから出られる!」
「ちょっと、デュランさん、声が大きいって!」
デュランさんのせいで計画が台無しになりそうだ。案の定、兵士たちがジロッとこちらを見る。だめだ。これでは逃げ出せない。
その時だった。クラリスの様子がおかしくなったのは。
「戦を続けるフランスは、経済が苦しくなり、貧困と『黒き病』により滅びるであろう」
ちょっと待った。こんな時に宣託なんて、まずい。予想外すぎる。それも、フランスが滅びるという内容なんて。
次の瞬間、クラリスが目を覚ます。
「私、どうかしたかしら? なんか急に眠くなっちゃって……」
「おい、小娘。お前……記憶がないのか?」
見張りの一人が尋ねる。このままじゃあダメだ。
「なあ、相棒。これは国王陛下の耳に入れるべきじゃないか? この国が滅びるなんて、あってはならない」
「そうだな。ついでに、この二人も証人として連れて行こう。俺たち二人だけだと、手柄のために嘘をついたと思われるからな」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
状況は最悪だ。謁見の間に通された僕は思った。このままでは、クラリスと離れ離れになってしまう。
「国王陛下、こちらです」
部屋に現れたのは――フィリップ国王その人だった。国王の別名は「幸運王」。この前のイングランドからの反撃時に戦死しなかったなど、数々の幸運を持ち合わせている。そんな彼が宣託を聞けるなんて、まさに幸運としか言いようがない。
「さて、娘よ。お前の言った内容は本当か?」
「あの、分からないです。私、寝ちゃっちみたいで」
「ふむ。では、四人に問おう。娘の宣託は『フランスが滅びる』、その内容で間違いないな?」
僕たちは頷く。嘘をついても無駄だ。すぐにバレる。
「なるほど。戦を続けると負ける、か。確かに、このところ我々は貧困に喘いでいる。しかし、宣託の内容は『戦を続ければ』だ。つまり、ここで戦をやめれば、滅ばないということだ」
確かに、そうともとれる。今はフランスもイングランドもお互いに戦争で疲労困憊だ。
「よし、決めた。早急にイングランドとの和睦の準備をせよ! 『宣託の乙女』よ、礼を言おう。危うく我が国が滅びるところだった」
なんということだ。クラリスの宣託が和睦に繋がるなんて!
「さて、そこの三人の処遇だが、宮殿に軟禁することにする。恩人ではあるが、他の国のものになるのはまずかろう」
宮殿での軟禁。殺されることに比べれば遥かにマシだ。これ以上は望むまい。それに、僕はクラリスと一緒にいられるのだから。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
僕たちは衛兵に部屋へ案内された。そこは、宮殿の中では一番質素に違いない。だが、僕に取っては夢のようだった。
「それでは、今日より、ここで暮らすように。もちろん、見張りつきでな」
それだけ言うと、衛兵は去っていった。
「ねえ、僕の作戦、うまくいったでしょう? クラリスに偽の宣託をさせるっていう作戦」
「おいおい、俺が大声で気を引かなきゃ、おじゃんだっただろ。一人の手柄にするなよ!」
「もう、二人とも落ち着いて。それに、私の演技のおかげでもあるわ」
僕たちは三人で笑いあった。宣託が地獄を作ることがあれば、偽の宣託が平和を作ることもある。うまく和睦が進むかは分からない。しかし、大きな一歩を踏み出したのは確かだ。
人間はお互いを完璧に理解することは出来ない。でも、歩み寄ることは出来るのだから。
僕たちはフランス軍によって、牢獄に入れられていた。見張りは二人。しかし、牢獄の中からでは手も足も出せない。
「ねえ、デュランさん。僕たちどうなるの?」
「そうだな……。まず、間違いなくクラリスの宣託を聞きたがるだろうな。まあ、宣託だから、そんな都合よく聞けるはずはないとは思うが……」
「あの、フランス軍は私にしか興味がないのよね? その……もしかしたら、二人は……」
僕はクラリスの言いたいことが分かった。そう、彼女さえいればいいのだ。僕たちはすぐに殺されるに違いない。
「くそ、これが八方塞がりってやつか。こんな絶望感を味わったのは初めてだぜ」
いよいよ、クラリスとお別れか。でも、悔いはない。クラリスは生き残るだから。その時だった。ある作戦を思いついたのは。
「ちょっと、聞いてくれる?」
僕は兵士たちに聞こえないほどの小声でしゃべる。
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「なるほど、そいつは妙案だ! それなら、ここから出られる!」
「ちょっと、デュランさん、声が大きいって!」
デュランさんのせいで計画が台無しになりそうだ。案の定、兵士たちがジロッとこちらを見る。だめだ。これでは逃げ出せない。
その時だった。クラリスの様子がおかしくなったのは。
「戦を続けるフランスは、経済が苦しくなり、貧困と『黒き病』により滅びるであろう」
ちょっと待った。こんな時に宣託なんて、まずい。予想外すぎる。それも、フランスが滅びるという内容なんて。
次の瞬間、クラリスが目を覚ます。
「私、どうかしたかしら? なんか急に眠くなっちゃって……」
「おい、小娘。お前……記憶がないのか?」
見張りの一人が尋ねる。このままじゃあダメだ。
「なあ、相棒。これは国王陛下の耳に入れるべきじゃないか? この国が滅びるなんて、あってはならない」
「そうだな。ついでに、この二人も証人として連れて行こう。俺たち二人だけだと、手柄のために嘘をついたと思われるからな」
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状況は最悪だ。謁見の間に通された僕は思った。このままでは、クラリスと離れ離れになってしまう。
「国王陛下、こちらです」
部屋に現れたのは――フィリップ国王その人だった。国王の別名は「幸運王」。この前のイングランドからの反撃時に戦死しなかったなど、数々の幸運を持ち合わせている。そんな彼が宣託を聞けるなんて、まさに幸運としか言いようがない。
「さて、娘よ。お前の言った内容は本当か?」
「あの、分からないです。私、寝ちゃっちみたいで」
「ふむ。では、四人に問おう。娘の宣託は『フランスが滅びる』、その内容で間違いないな?」
僕たちは頷く。嘘をついても無駄だ。すぐにバレる。
「なるほど。戦を続けると負ける、か。確かに、このところ我々は貧困に喘いでいる。しかし、宣託の内容は『戦を続ければ』だ。つまり、ここで戦をやめれば、滅ばないということだ」
確かに、そうともとれる。今はフランスもイングランドもお互いに戦争で疲労困憊だ。
「よし、決めた。早急にイングランドとの和睦の準備をせよ! 『宣託の乙女』よ、礼を言おう。危うく我が国が滅びるところだった」
なんということだ。クラリスの宣託が和睦に繋がるなんて!
「さて、そこの三人の処遇だが、宮殿に軟禁することにする。恩人ではあるが、他の国のものになるのはまずかろう」
宮殿での軟禁。殺されることに比べれば遥かにマシだ。これ以上は望むまい。それに、僕はクラリスと一緒にいられるのだから。
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僕たちは衛兵に部屋へ案内された。そこは、宮殿の中では一番質素に違いない。だが、僕に取っては夢のようだった。
「それでは、今日より、ここで暮らすように。もちろん、見張りつきでな」
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「ねえ、僕の作戦、うまくいったでしょう? クラリスに偽の宣託をさせるっていう作戦」
「おいおい、俺が大声で気を引かなきゃ、おじゃんだっただろ。一人の手柄にするなよ!」
「もう、二人とも落ち着いて。それに、私の演技のおかげでもあるわ」
僕たちは三人で笑いあった。宣託が地獄を作ることがあれば、偽の宣託が平和を作ることもある。うまく和睦が進むかは分からない。しかし、大きな一歩を踏み出したのは確かだ。
人間はお互いを完璧に理解することは出来ない。でも、歩み寄ることは出来るのだから。
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