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【伊藤博文・坂本龍馬】自分でよければ、力になりますよ?

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 坂本龍馬は勝海舟の帰国がいつになるか気になっていた。坂本龍馬はあくまでも海軍大将補佐にすぎない。勝海舟に無断で海軍を動かすことはできない。いわば、留守を任された子どものような扱いだった。


 そんな坂本龍馬が勝海舟の帰国のタイミングを聞こうとしたときだった。首相の執務室から、ロシア帝国の侵略作戦を聞いたのは。いや、正確には「聞いてしまった」だ。別に聞きたくて聞いたわけではない。盗み聞きではないのだ。扉が開いていたから、悪いのだ。確かに前々からロシア帝国の南下作戦の話は漏れ聞こえていた。しかし、よりよって、勝海舟がいないタイミングだ。つまり、坂本龍馬自身が動かなくては、勝海舟が帰国する頃には大日本帝国はロシア帝国の支配下にあるだろう。




「それは、本当か!? 主戦力はインドだぞ? それでも、勝ち目はあるのか、坂本」と伊藤博文。


「絶対ではありません。しかし、可能性は……そうですね80%くらいでしょうか」


「80%!? それなら十分な数値だ」


「ただし、条件があります」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 伊藤博文は坂本龍馬の作戦を聞いて、「これは大久保利通に相談が必要だな」と考えた。なにしろ、お金がかかる大きな買い物だ。それも、どこかに進出するためではなく、自国を守るためだ。出費をしても、補填する方法はない。大日本帝国の経済を回す以外には。


 伊藤博文は坂本龍馬の作戦を聞いてなるほど、と思った。若いだけあって、発想が柔軟だ。あとは、こちらができる限りの手を尽くすしかない。坂本龍馬の作戦を成功させるためには。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 坂本龍馬は目の前に用意された機雷に満足していた。これでロシア帝国の不凍港であるウラジオストクを封鎖すれば、こちらに手出しはできなくなる。



「出港の時間になりました!」


 軍人の一人がそう告げる。


 いよいよ、坂本龍馬の手腕が問われるときがきた。


「あの、一つ質問なのですが、機雷の数、少なくないですか? これではウラジオストク全体を囲えないかと……」


「そこは心配するな。さあ、決戦のときだ」




 坂本龍馬はウラジオストク近海まで来ると、作戦を話し出す。


「いいか? ここにある機雷の数では、ウラジオストクを囲むには半分ほど足りない」


「ちょっと、待ってください! それじゃあ、意味ないのでは?」と先ほどの軍人。


「まあ、そう焦るな。最後まで話を聞きなさい。いいか、機雷と機雷の間は通常の2倍にする。しかし、これだと爆発しても威力が足りない。そこで、。もちろん、水中じゃあ意味がないから、ここにある木の板に乗せてな」


 坂本龍馬はトントンと木の板を叩く。


「つまり、機雷が爆発すればダイナマイトにも着火する。連鎖爆発だ。これならどうだ?」


 先ほどの軍人も納得したらしい。尊敬の眼差しを坂本龍馬に向けていた。


 数が足りないのなら、知恵で補えばいい。なにも数がすべてではない。おそらく、敵軍はこの包囲網から出られまい。たとえ、機雷撤去が終わっても、その頃には主戦力がインドから戻ってくる。そう、今回の作戦は時間稼ぎだ。時間稼ぎも立派な作戦だ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 坂本龍馬が機雷を設置してから数日後。ロシア帝国が攻め入ってくることはなかった。そして、その間に勝海舟が率いる主戦力が無事インドから帰還した。


 伊藤博文は作戦がうまくいったことが嬉しかった。さすが、勝海舟の愛弟子だ。そして、ロシア帝国をウラジオストクに封殺したことで、世界では大日本帝国の軍隊に対する見方が変わった。単なる島国の軍隊ではなく、敵に回したくない軍隊へと。
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