上 下
36 / 44

【伊藤博文・勝海舟】足がかり、ゲットだぜ!

しおりを挟む
 伊藤博文は勝海舟らからの一報を受けて、飛び上がらんばかりに喜んだ。まずはスリランカを落とした。これだけでも大きな戦果だった。あとはフランスからの連絡を待つしかない。こればかりはフランス軍に頑張ってもらうしかない。フランスがイギリスと戦っているアフリカは大日本帝国とかなり距離がある。勝ったにせよ負けたにせよ、連絡が届くのはだいぶ先になる。伊藤博文は一報が来るまでのあと数日、ドキドキし睡眠不足になるに違いないと思った。




 フランスからの一報が入ったのは数日後だった。側近がドアを蹴破る。伊藤博文はどちらの結果か分からなかった。なぜなら勝ち負けにかかわらず、急ぎで来るのは分かっていたから。


「それで……アフリカでの戦いはどうなった? フランスが勝ったか?」


 伊藤博文は恐る恐る尋ねる。早く聞きたいような、聞きたくないような微妙な心境だった。一瞬の沈黙。側近が口を開く。


「……フランスの辛勝です。いえ、辛勝かもしれません……。というのも、ある都市では勝ちましたが、その後は膠着状態です。勝ち負けがはっきりするのは、まだまだ先になりそうです」


 伊藤博文を疲労が襲う。辛勝というよりは引き分けに近い。長い戦いになりそうだ。ここからは根競べだ。この持久戦を制したものが今後の世界情勢を一変させるだろう。伊藤博文は思った。アフリカで両軍が膠着状態であれば、イギリスもインドにはこれ以上戦力を割けないはずだ。これは大日本帝国にとって大きなチャンスだ。インドに進出するうえで。


 伊藤博文は勝海舟らに打電した。「スリランカを拠点として、インド全土を攻略せよ」と。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 伊藤博文からの連絡を受けて、勝海舟のテンションは最高潮に達した。インドの攻略! スリランカ戦はあっけなさ過ぎて戦いと言えるものではなかった。赤子の手をひねるよりも容易だった。インドに進出できるのも、フランスがイギリスに対して手間取っているからである。同盟国が苦戦しているから大日本帝国は領土を広げるチャンスが巡ってきたのだ。勝海舟の心境は複雑だった。まあ、同盟国より、自国の領土拡大の方が優先だったが。


 勝海舟は素早くインドへの進出ルートを計算した。最終的には、首都であるデリーを落とせれば勝ちとなる。では、海軍はどこから侵攻すべきか。ムンバイの港からであれば、首都デリーは近い。上陸できれば、あとは西郷隆盛率いる陸軍に任せればいい。 


 では、いかにしてムンバイを落とすか。速攻しかない。ボケっとしていたら、イギリス側に立て直す時間を与えてしまう。勝海舟は取るものもとりあえずスリランカを出港した。インドを大日本帝国の領土にして、世界征服に近づくために。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

明日の海

山本五十六の孫
歴史・時代
4月7日、天一号作戦の下、大和は坊ノ岬沖海戦を行う。多数の爆撃や魚雷が大和を襲う。そして、一発の爆弾が弾薬庫に被弾し、大和は乗組員と共に轟沈する、はずだった。しかし大和は2015年、戦後70年の世へとタイムスリップしてしまう。大和は現代の艦艇、航空機、そして日本国に翻弄される。そしてそんな中、中国が尖閣諸島への攻撃を行い、その動乱に艦長の江熊たちと共に大和も巻き込まれていく。 世界最大の戦艦と呼ばれた戦艦と、艦長江熊をはじめとした乗組員が現代と戦う、逆ジパング的なストーリー←これを言って良かったのか 主な登場人物 艦長 江熊 副長兼砲雷長 尾崎 船務長 須田 航海長 嶋田 機関長 池田

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)

俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。 だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。 また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。 姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」 共々宜しくお願い致しますm(_ _)m

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

第二艦隊転進ス       進路目標ハ未来

みにみ
歴史・時代
太平洋戦争末期 世界最大の46㎝という巨砲を 搭載する戦艦  大和を旗艦とする大日本帝国海軍第二艦隊 戦艦、榛名、伊勢、日向 空母天城、葛城、重巡利根、青葉、軽巡矢矧 駆逐艦涼月、冬月、花月、雪風、響、磯風、浜風、初霜、霞、朝霜、響は 日向灘沖を航行していた そこで米潜水艦の魚雷攻撃を受け 大和や葛城が被雷 伊藤長官はGFに無断で 作戦の中止を命令し、反転佐世保へと向かう 途中、米軍の新型兵器らしき爆弾を葛城が被弾したりなどもするが 無事に佐世保に到着 しかし、そこにあったのは……… ぜひ、伊藤長官率いる第一遊撃艦隊の進む道をご覧ください ところどころ戦術おかしいと思いますがご勘弁 どうか感想ください…心が折れそう どんな感想でも114514!!! 批判でも結構だぜ!見られてるって確信できるだけで モチベーション上がるから! 自作品 ソラノカケラ⦅Shattered Skies⦆と同じ世界線です

処理中です...